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狼のーかの花嫁(12)

こんばんは~^^
続きます。

ぶっ飛んだ捏造とか、ダメな方は
早めに離脱下さいますよう…

あんなことやこんなことがあって
勢い余ってビル出(?)した夕鈴。

ひょんなことから
徐々にわかってきたこと、とは――。


復習は
狼のーかの花嫁 (1)~(11)
よろしければご覧ください(*´ω`*)


【現パラ】【ファンタジー】【いろんな人がいろんな役で横切ります】

* * * * * * *
狼のーかの花嫁(12)
* * * * * * *

夕鈴は道路を独りトボトボと歩いていた。
広大な農地を縦断する農道はよく整備されている。端に止まった軽トラが数台。
畑ではせっせと農作業中の人影が遠くにぽつんぽつんとみられた。
その他ほとんど通りがかる車もない。

夕鈴が陛下のためにカボチャを探したのはつい昨日のことだったのに、彼女の眼にはもうその時と違う景色のように映った。

(力になりたかったのに…悔しい)
夕鈴は、ただ彼を助けたくて必死だったはずなのに。

そもそも彼女は高給に目がくらみ、騙されるように狼陛下の偽の婚約者というバイトを引き受けさせられただけだった。
他を屈服させる眼光を放ち、誰からも怖れられる当主、珀黎翔。『狼陛下』と呼ばれるその人物が、実はとても優しい一面を持った人だった。
誰よりも強く、他者を圧倒する狼陛下というのはハッタリの演技と打ち明け、優し気な顔を曇らせて、彼は「10日後にひかえた21歳の収穫祭までに特別なカボチャを探してほしい」と彼女に願った。
陛下と呼ばれる人の意外な一面を見てしまった故の同情と言われれば、確かに夕鈴には小犬のような陛下を捨てておけない気がした。だがもう一方で、あの恐ろしい人に魅かれている自分もいて…複雑な感情に夕鈴は自分自身、戸惑っていた。

「く、く、口づけとか――人の気も知らないでっ!」
彼に寝台の上で口づけされた感触を思い出し、夕鈴はカーッと再び熱が上がり、ボフンと頭が噴火した。

狼陛下のことを、ちょっとでも『カッコいい』と思った自分が悔しい。

「へーかの、女ったらしっ!」

夕鈴は自分が彼に魅かれていたことを素直に認めたくなかった。
だからなおさら腹が立って仕方がない。

「カボチャをくれないとイタズラするよ、って。どういう気よ!
秘密を話すなら、やることやるとか言って、く、く、口づけとか…!!
私が何も知らないからって、馬鹿にして――!」

夕鈴は涙が出そうになったのを必死でこらえた。
「好きでもないくせに…口づけなんて―――」

それが悔しかった。

今なら分かる。
そう「あの人が好き」だと夕鈴は気が付いた。

だから、彼が好きなはずのない自分に対し、あのような行為をしたことが許せなかった。

「狼陛下は、演技上手…」

あの人は、狼陛下を演じているだけ。
妃を愛するふりが上手くて、優しくて。
与えられたその甘すぎる記憶に
まるで愛されていると勘違いしてしまいそうになる。

だけど本当は、縁談よけのバイト。
『誰でもよかったんですよ』と李順さんは言った。
いずれ『ふさわしい誰か』を妃に迎えるとも聞いた。
あの人のやさしさも、ぬくもりも、いずれ誰かのものになる。
私はただのバイトだから、いる間だけ、あの人のお役に立てればいい…。

「ひ、――ヒトを、からかって…!」

ほんのちょっとでも、あの人に魅かれた自分が馬鹿らしくなった。

(泣いたら敗け。からかわれた位で何よっ。
ウソつきの女っタラシのためになんか、私、絶対、泣かない――)

『帰ってやる、帰ってやる、もう帰ってやる――!
カボチャが無くて困るなら、困りなさいっ!!
どうせ私がいなくても、誰か美人で可愛い代わりの女性がすぐに来るに決まってる――』

「所詮、私じゃなくたって、あの人にとって、どうでもいいのよ。
だって、私はただの――バイトだから…」

彼女の目に、悔しさで涙がにじむ。
道もボンヤリして良く見えない。

「でも、私はほんとに心配していたのに。
私は陛下の見方ですよ、って言ったのに…」

その時、軽トラがトトトトトと通りがかって夕鈴の横を通り過ぎ、ブレーキを踏んで止まった。
張老人は、そのしわくちゃな小さな顔を軽トラの窓からにょっきり突き出した。
「…おや、お前さん。こんなとこで何しておるんじゃ!」

夕鈴は、自分が広い農場の真ん中で立ち往生していたことにハッと気が付いた。
溢れそうになっていた涙をグッと押し戻し、彼女は気丈に応えた。

「――帰るんです!」

張老子は天気の話でもするようにさりげなく返した。
「ほう、帰る?
…どこに」

「家です!」

「家。ふむ。…じゃあ、バイトは辞めるってことかの?
…お前さん。前借した給料は、どうする気じゃ?」

それを聞いて、夕鈴はビクリと動きを止めた。

「あ…。あの、――それは」
夕鈴は急に現実が襲ってきた。

このバイトの待遇はものすごく良い条件だった。
なのに、面接を受ける時点で、既に父岩圭に対し、先払いで一時金を渡したため、夕鈴はこのバイトを断ろうにも断れなかった経緯があった。

新たなバイトを探せばいい、でも…
可愛い弟、青慎の夏期講習の費用は、なんとかねん出してやらねば。
あの子の勉強にとって、今が一番大事な時期なのに…

でも、もし。このバイトを断って、違約金とか取られたらそれこそ元も子も――?

「――それは考えてませんでした」
あっさり夕鈴は敗北を認めた。

「まあ。それはさておき。
…茶でも飲みにこんか? わしの畑の小屋ならいつでも大歓迎じゃ」

ひょいと老子が降りて、車をぐるりと回ると、助手席のドアを開けていた。
促され、張老子の軽トラに同乗した夕鈴は、先ほどまでの勢いはどこへやら。
しょんぼりと座って老子の行く先に付いて行った。

車内にはポップスのような軽妙な曲が流れていた。
老子がラジオの音量つまみを指先でつまみ、ふんふーんと下手くそな鼻歌交じりに音を大きくする。
夕鈴にとって初めて聞く曲だったが無言よりは気が紛れた。

彼女が落ち着いたのを見計らってようやく老子が口を開いた。

「…どうじゃ? 上手くいっておらんのか」

「ええ、まあ」

「…にしては、お前さんをえらくお気に召した様じゃな、陛下は!」
うししし、といやらしい笑いをかみ殺し、老子は飄々と運転を続けた。

老子の方から、ときどき「ふん、ふ~ん」と調子っぱずれな鼻歌が流れる。
見るものが見れば、老子のあの寸足らずな短い手足でどうやって車を扱っているのか疑問もわいただろう。
だが夕鈴は車の免許も持っておらず、老子が運転している状況が不自然と感じる余裕もなかった。まさか老子の鼻歌そのものが運転魔法とも思わず、夕鈴は老子の隣に座っていた。

魔法使いである老子の眼には見える、夕鈴の額に輝く狼陛下の印。
長い直線道路に入ったところで、張老人はチラリチラリとそれに視線をやりながら、夕鈴に尋ねた。

「ところで、お前さん。
陛下と、もうチューしちゃったのかの?」
鼻歌の合間に、いきなり核心をズバリとつかれ、夕鈴は一瞬心臓が止まりそうなほどドキリとした。

カマをかけた途端、夕鈴は自分の唇を両手で覆った。

それをみて老子は察し、途端に顔を赤らめ「いや~わし、なーんも心配することなかった。ラブラブなんじゃな~」と言いながら自分もモジモジしながら「甘酸っぱいのぉ~」とか「ヒューヒュー」とかつぶやくものだから、夕鈴にとって…正直ちょっとウザかった。

ハンドルから離した両手を揉みしだきながら頬を染めた老子が夕鈴の方へ振り被る。

「で――実際、お前さん。どうなんじゃ?」

「ちょ、ちょっと! 前みて安全運転してくださいよっ!
ハンドルっ、ハンドル握ってください~っ!!」

夕鈴は老子を押し戻し、ちゃんと運転席に座るよう促した。

「…お堅いのう」
「固い柔らかいの話じゃありませんっ! 
事故でも起こしたらどーするんですかっ! その齢で大けがしたら大変ですよっ?
もうっ!」
夕鈴があまりにも真剣なものだから、
老子はブツブツ言いながらも真面目にハンドルを握ってみせた。

「ほれ、大丈夫じゃよ。わしは10年間無事故無違反のゴールド免許だから。
…だがなんじゃか、わし、ごまかされたような気分がするんじゃが?」

「ご、ごまかしてなんかっ」

「チューは、したんじゃろ? そのデコにある印が更に輝いておる。
お前さん、ヘーカとどこまで行ったんじゃ?」

「どっ、ドコ?! 印って」
腰を浮かして車のミラーを引っ張り、
自分の顔が見える位置にあわせると
必死で自分の顔を見ようと覗き込む。

だが人間の夕鈴には、自分の顔に何も変化など見えなかった。
ホッとしながら(老子にまで、からかわれたんだ」と夕鈴は思った。

さらには今朝、寝台の上で受けた彼からの口づけを思いだし、尚更真っ赤になった。

「お前さんの目にはみえなくても、わしにはみえる。
あの方はお前さんを守りたいんじゃろ。
あの方は強大な力をお持ちの特別の方じゃからな…。その額の印が何よりの証拠。
ふぅーーむ? 
…にしては、それ以外からはあのお方の魔力を感じないが――」

「…魔力?」

「…もう、お前さんも、気づいておるんじゃろ?」
老子は少し真面目な顔をして、ハンドルのその先を見つめていた。

『…魔法使い』だと、陛下は言った。あれが冗談なのか、本当なのか、それは夕鈴も混乱していて正直よく分からない。
(でも、彼は。私の耳に入れる必要がないことは一切話さないけど、嘘はつかない。
いつも狼陛下の演技しているから、せめて私の前だけは嘘つかないのが楽だというから…それを私も叶えたかった。
じゃあ、夜ホウキで空を飛んだのも、カボチャに食べられたのも、ヘーカが魔法使いの王様っていうのも、全部――?!)

夕鈴は考え込んでしまった。
そのうち軽トラの音の悪いラジオが聞くともなしに耳に入ってきた。
そのうちラジオの内容の違和感に夕鈴は気づき、耳をすましてラジオに聞き入った。

何故か、先ほどからラジオでは聞いたことのない音楽ばかりかけるし、
人を食ったような冗談めいた話や、時には聞いたことのない言語まで飛び出した。
そして、極め付けの情報コーナーの内容に、夕鈴はギクリとした。

「――このコーナーは、あなたのマジック・ナビゲーター、桃香ちゃんがお送りしまーす♪
さあて今週のパンプキン・トーク情報コーナー。
いよいよ9日間で、待ちに待った収穫祭ですね~。みんな準備は万端ですかー?

コンテストといえばカボチャ・コンテスト。みなさん、期日を守ってしっかりエントリーしてクダサイね♪ 
そして!『ミスター魔術師&ミス美魔女コンテスト』。
例年最高の盛り上がりを見せますよねー。
この後お知らせするけど今年のミス美魔女には豪華特典付きよ!
特典コースは年齢制限有りでクオリティも高い超難関だけど、
腕に覚えのある20代以下のヤング美魔女の皆様、
振るってエントリーしてくださいね!
それから今年の目玉情報。
今年はガチな祭祀儀式も見逃せないですよ。
そう、なんと、今年は歴史的な魔法比べが開催されるんです!
例年、王宮特別祭祀の儀式場で公開評議が開かれるのは皆も知っての通りよね。
でも今年は特別。
だってなんといっても狼陛下21歳の収穫祭ですもの! 
審査対象は、色つやよく、形よく、そしてとびっきり大きなカボチャ!
いったい狼陛下はどんなカボチャを見せて下さるのかしら! 
陛下お一人のお力と、選び抜かれた評議会議員連合メンバーの総合魔力。
果たしてどっちが格上か、今から桃香ドキドキしちゃう。

圧倒的な魔力を誇る狼陛下? 
それともやっぱり古株の練り上げられた魔力を結集した連合? 
ちなみに私のボスも評議会メンバーで参加するんで。
いやー桃香ちゃんもどっちを応援しようか思わず迷っちゃうんですけど~(笑)。

もちろん一対多だから毎回評議会連合が有利でしょうけど
狼陛下のお力はそれをもしのぐんじゃないかって評判も信憑性高いし。
今から白熱した魔カボチャ合戦にみんな期待も高まってるわよ。

そ、し、て♪
なんといっても今どきの魔女子が注目してる最大のポイント!

陛下が評議会議員連合に敗れた場合、
『ミス美魔女』コンテスト20代以下フルスペック部門の
上位入選・入賞者全員は、もれなく後宮入りの栄冠を手にするそうよ♪

家柄、魔力、美しさを兼ね備えた20代以下の皆様、
国中からふるってご応募下さいねー♪
ま、うちのお嬢様にかなう人はいないとおもうけど。
でも特典は上位入選、入賞の全員の大盤振る舞い! 
これは見逃せませんよ、是非エントリーしなきゃ。
だって、陛下。最高に強くてカッコいいものぉ。

最近一人婚約者をお迎えになったというけど、
今回の魔力比べの結果次第でみんなにもチャンスはあるってわけ! 
…かくいう私もお妃様の椅子ねらって頑張ってま~す。
って、お嬢様に叱られちゃうけど、てへ♪ 

どんなお妃様が迎えられるのかみんなウズウズしてますよねー。
そんなわけで、今年の収穫祭は話題性十分、
私もこれから毎日いろんな情報をお届けする予定デス、チェックしてね♪
エブリワン、エブリデイ!
パンプキン・トーク情報コーナーを明日もお楽しみに~っ♪

さ、次のリクエストは
『ケータ君@こんな名曲リクエストするとはオレ様はなんて偉大なんだ』さんから戴いた…」

唐突にラジオはスチャラカなメロディーに切り替わった。

いつの間にか、老子の鼻歌が止んでいた。
「…着いたぞい」

のほほんとした声に、夕鈴はハッとなってキョロキョロあたりを見回した。
軽トラは減速して道の脇に寄せて、張老人はギッとサイドブレーキを勢いよく引いた。
エンジンが止まったとたんにラジオもピタリと音が止んでしまった。
あたりがシーンと静まり返る。

夕鈴は老子の方を振り返り、襟元を掴んで引き寄せた。

「…張老子、このラジオ――?」
「ん? ああ…」
夕鈴はものすごく複雑で変な顔をしていた。

「…これって。もしかして、冗談じゃなくて?
ホントのラジオ放送なんですか?」

「んー…」
老子はケラケラと笑って、バシバシ夕鈴の肩を叩いた。


(つづく)


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Author:おりざ
秘密の苑・刺青の男[織座舎]陛下の花園へようこそ。”狼陛下の花嫁”の二次創作作品を綴っています。足跡などお気軽に残していただければ嬉しいです。【新刊】秘密の苑・刺青の男パラレルアンソロジーパラレルアンソロジーとらさんで取扱。【お詫び】拍手コメ御礼お休み中です。本当に申し訳ありません。お返事ご希望分はコメント欄へm(_ _)m

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