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白い影

ご無沙汰しております。
本誌で浮かれてゴロゴロのたうち回っております。


そんなうきうき萌え萌えな時に
地味ーなお話
つまんないとおもいますが
よろしければ。


若干のネタバレ含むので
ご注意下さい。

---
<ささやかな業務連絡>
現パラWORLDの告知サイトは
お役目を果たしましたので閉じました。
ありがとうございました。
---



【陛下の過去ねつ造】【ネタバレ注意※】
コミックス派の方はご注意下さい。

* * * * * * * *
白い影
* * * * * * * *

たぶん
私が成人するまで生きる確率は
極めて低かった。

私は私の命について
さほど気にも留めてなかった。

それでも生き延びたのは
単に運が良かったのか
それとも
何かの意志で生かされたのか、
…それは分からない。

ただ言えるのは
私は生き残った。
そして、
王位を継いだ。

* * * * * * * *

宴会の席に彼女を出すのは気が進まない。

「…。夕鈴」

「はい?」

彼女の手にあった杯を、私は手で蓋した。
つとめて優しい声を出す。
「そろそろ、戻ろう」

「――えっ!? 陛下。今、席についたばかりですよ!?」

せっかく何時間もかけて、おしゃれしたのに…。
彼女はブツブツと不満げに小さくつぶやいた。

そう。
彼女は人目を引いて
とても美しかった。

白い肩も、細いうなじも。
男の私が本気を出せば、いともたやすく縊(くび)れるほどに
華奢だった。

彼女の手の中にあった杯をさりげなく取り上げ、卓上に置き去る。
「そのように艶やかな姿は、私にだけ見せれば良い」
そういって私は彼女を抱き上げれば
夕鈴は私にだけ聞こえるような声で
んもー、んもーと小さく唸った。

背中にあてた手を回し込み、抱きしめる。

彼女はいつも暖かい
生身のぬくもりに
私は安堵する。

さっき、酒杯に仕込まれていたもの。

――私にとってはたいした毒ではない。

しかし、毒に対する耐性をさほど持たぬ彼女であれば
少量であっても害をなしたことだろう。

どんな場所であれ
彼女の口に入れるものすべてに事前の毒見は命じている。

しかし、どんなに頑強な体制を編もうと
どこかをすり抜けて彼女の元にまで至る悪意はたしかに存在する。


彼女はまったく気が付かず、
酒宴での私の義務について真面目に全うすべきだとか
着飾るために費やされた侍女らの労力や膨大な時間をあげ
「きちんと私にもお仕事させてください!」と
足をバタバタして私をなじる。

私は一顧だにせず、笑いながら彼女を抱いたまま酒席を離れた。

「へいかの分からず屋!」

ふくれっ面した妃がジトリと私をにらみつける。

そんな顔されるのは心外だ。


…だけど
私は、嫌われたっていい。

ほとほとと脈打つ彼女に触れ
わたしはホッとしている。

彼女が生きていることに感謝した。


* * * * * * * *

幼い頃の記憶は薄らボンヤリとしている。

あれはまだたぶん、後宮にいるときだ。

私は、寝ていた。

なぜ寝ていたのか、前後の記憶があいまいだが
幼い自分は特に気にも留めていなかったように思う。

見ていた天井の文様や、
薄暗い後宮の部屋の一角の情景だけが断片的に思いだされる。

当時の自分にはよく分かってはいなかった。

今思えば、おそらくあれは
解毒後の体のだるさだったと解る。


母は表情の消えた
紙のように白い顔をしていた。

黒い瞳は濡れているように見えた。

私はだるくて仕方がなかったが
手を差し出して母の頬に触れた。

母の瞳からは新たな涙がこぼれ、私の指を濡らした。

「ごめんなさい、黎翔…」
絞り出すような声。

私は何の事だかわからなかったが
母がそのように悲しむのなら
悪いのは自分だと思った。

* * * * * * * *

旅をした。

生まれて初めて経験する長旅は
見るもの聞くもの、周りのすべてが新しく
刺激的だった。

終着点の北の辺境は、遅い春を迎え
あたり一面、白い花が咲いていた。

馬車から降りた私は、はしゃぎまくって
あたりを駆け回った。

振りかえると
母が遠い眼で私を見つめていた。

「黎翔。気にいった?」

「…うん!」

旅ではしゃぎまくり、高揚していた私は
ハッと冷水を浴びせられたかのように感じた。

母の顔は
白い花びらとおなじくらいに白くて儚なかった。

後宮では、さまざまな宝石や豪華な衣裳で着飾った母の姿を見ることが多かったが
今はもう仰々しい衣裳は身に着けていなかった。

白っぽい打掛をかつぎ、風に吹かれた母は華奢で、
今にも消えてなくなりそうだった。

私は急いで母の元に駆け寄って
その体に必死で抱き付いた。

「…ここはどこ?」

「ここ? 
ここは、これからお母様とあなたの二人が暮らす場所よ」

「ふうん…」

見まわすと殺風景などこまでも荒涼と広がる台地に
白い花が咲いていた。

「いままでと違って、不便するとは思うけれど」

不便というのはどういうことか
幼い私には分からなかったけれど
今までもほったらかしで育った私にすれば
何が便利で何が不便かなどにはおおよそ頓着もなかった。

「お母様と、二人…だけ?」

「そう。二人で暮らすの」

「…そうね。
あと何人かは人も雇ってるけど。
二人で暮らすのよ」
「ふうん」
うふふ…と子供だった私は笑ったと思う。

後宮の息苦しい雰囲気にくらべれば
ここは別天地だ。

嬉しくなった私は母の両手をつないで
ぐるぐると回った。

母は急に手をとられせいか、
ふらついた。


大人の母が
私に引っ張られただけで、風に吹かれた花びらのように揺れた

母があまりにも軽いことに
私は驚いた。


私は急に怖くなった。

「――お母様、どこにもいかないで」

「黎翔?」

母は寂しげに微笑んだ。

「ずっと一緒だよね?
どこにもいかないで」

「……」
母は私を抱きしめてくれたけれど
私の願いに対する約束を口にすることはなかった。

「ここにいれば、安全」
「? あん、ぜん?」
「そう」
「黎翔のためなの」
「…ぼくの?」

「あなたのために、ここにきたのよ」


そうして、私たちは北の地で暮らし始めた。

けれども寒い土地での暮らしに
母はすぐになじむことはなかった。

早春はせかされるように過ぎ
短い夏に、足早に立ち去る秋。

北の辺境の一年間のほとんどは
長い冬に支配され何もかも凍える寒さで覆われていた。

母は体を壊し、
寝台の上で根雪のように横たわっていることが増えた。

白い花びらのように薄く軽く、小さく。
この地での暮らしは、母の命を削っていくばかりだった。

わたしのために、
母と私はこの北の地にいる


母には悪いけれども

私が生きているから
母を苦しめていると自分には思えて仕方がなかった。


そんな北の僻地にはほとんど人は立ち寄ることもなかったが
年頃になると荷文応という賢者とさまざまな武の師、そして李順という年上の子供が
遣わされた。

私は、強くなりたかった。

白く、軽くなる母を
この世にずっと、とどめるためにも
私は強くなりたかった。


李順は文に長け、武の方面では私の相手にはならなかったが、
武芸に熱中する私にあまりよい顔をしなかった。

小さな擦り傷でも
「あなたには尊い血が流れているのですから
もっと御身をお大事に」と口うるさかった。

そんなことを言うのは李順くらいのものだったし
母はいよいよ小さく病弱になるばかりで
人が言う「尊い」父の血がこの身に流れていることに
あまり良い思い入れものなかったからだろう。

母の命以上に

自分が
生きるとか
死ぬとか

私にとって
そんな大事なことではないと思っていた。


強くなって、母を守る
それしかできないと思っていた。


自分の命など
母の代わりにいつでも差し出せると
私はずっと思っていたのに

ある年、ことのほか厳しい冬の終わり
母はあっさりと逝ってしまった。


* * * * * * * *

あんなにも母を苦しめた王宮。

そこに今私は住んでいる。




*
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非公開コメント

発売日は明けて明日。まだ待て状態です。コミックス派ですしね(笑)

彼方此方のネタバレ記事を読んで。
陛下、壁ドンのし過ぎで…
左手首骨折→筆を持つことかなわず→側近の怒り→姑の嫁イビリの加熱→それでも頑張る嫁→夫婦仲良くお説教される→李順氏の声がれ
とか
右肩の故障で投球不可ぢゃなくて、剣を握れず→刺客に襲われるも浩大にオイシイ所を持って行かれる→王の怒りに大ちゃんピンチ!
等と余計な心配をしているFullむんっであります。そんなヤワな方々じゃありませんけどね(笑)


常々、陛下は夕鈴以外 全てに於て執着する事がなくて、それが自らの命であっても。と思っていた一つの答えを頂いた感じです。


PS 仕事がシーズンに入ったせいか、学校が春休みになるせいか、ご本をゆっくり読む時間が… ナナメ読みしか出来ないでおります(涙)

スミマセン

発売日、今日でした(汗)
寝ぼけてるみたいです。失礼致しましたm(_ _)m

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

Fullむんっ 様

ふるさまプレゼンツ・ストーリー2本立て。頭の中でマンガのネームみたいにコマ割りでもやもやと妄想されました。面白かったです^^

常々の疑問の一つの答え、なら
励みになります

春は忙しいですね。
ナナメでも飛び石でも
お楽しみいただければ幸いです

…という私も
まだプチのお宝ほとんど手つかずですorz

まだしばらく調子でないかもしれませんけど
筆を持つリハビリ期間で
ときどき書くように頑張ります(笑

というか
5月のスパコミあわせに
何か書こう、という気持ちだけはあるんですけどね…。
印刷所さんの早割入稿締切みたら、3月末とか4月上旬とか。
わー(笑
こりゃ、早期はむりねー(笑

あきらめたり。


白い影の続きの甘々を書き加えて薄い本一冊にしようかなーとか
思ったりしてます。

えーと。
本当にまだ構想段階です
というかさっき思いつきました←

ではでは(´ω`*)



Fullむんっ 様 >発売日

あー

私も「土曜日、フライング発売らしい」とうかがって
出張先でわざわざ本屋探しましたけど見つからずモヤモヤ。
で、結局月曜日の早売りで手に入れて
火曜日が本当の発売でした(笑

ますたぬさま

しっとり

カボチャ畑?

あれはぜったい、書きますよー

ただ自分のコンディションを整える必要がありまして
(もう一度、自分の中をカボチャでひたひたに満たすのに
頭から読みなおして、頭の中の先のあたりを捕まる旅に出ますね)
作業工程上、取りかかるタイミングを選んでおります

時間がかかってますけど
気長にお待ちください(笑

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秘密の苑・刺青の男[織座舎]陛下の花園へようこそ。”狼陛下の花嫁”の二次創作作品を綴っています。足跡などお気軽に残していただければ嬉しいです。【新刊】秘密の苑・刺青の男パラレルアンソロジーパラレルアンソロジーとらさんで取扱。【お詫び】拍手コメ御礼お休み中です。本当に申し訳ありません。お返事ご希望分はコメント欄へm(_ _)m

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