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SS ヤドリギの下でキスしよう

メリークリスマス!

ぽろりと一本、クリスマス向けの短編
(一発書きですがお許しください)


みなさまが幸せでありますように――。

【バイト妃】【微糖】



* * * * * * * * * * * * * * * * *
Let’s kiss under the mistletoe.
~ヤドリギの下でキスしよう~
* * * * * * * * * * * * * * * * *

――その日が何の日かなど。
他国の宗教的な儀式や習慣など一切知らない夕鈴。

それは、寒い冬の日のことだった。


小さな花束を送られた。
「花、束?」
(――紅珠からの贈り物にしては、地味ね…)
夕鈴は内心そう思いながら、不思議そうにその花束を見つめた。

花束といっても、花ではない。
一尺ほどの分枝した緑の枝の節々から、つやつやとした革のような質感の黄色味をおびた丸っこい葉が対をなして生えている。枝先の一対の葉間にはチョコンと白っぽい液果が付いている。
数本の枝は、恐らく外国のものなのであろう、珍しい刺繍が施された錦の細帯で束ねられている。
珍しいといえば珍しいが、たいそう地味な枝で、
価値があるとしたら紅珠が「リボン」と呼んだこの錦の細帯くらいのものじゃないかしら、と夕鈴は値踏みした。

「これを、ぜひ後宮のお妃様のお部屋の入口に吊るしてくださいませ!」
「…吊るす?」
「はい、ここに、このように!」
こまごまと設置方法を説明したあげく、満足そうに紅珠はひとつため息をつき、微笑んだ。
そして、その細く美しい指を絡ませながら嬉しそうに妃の耳に愛らしい唇を寄せた。
「…お妃様がお幸せでありますように――私、心から願っております」

「――はっ?」
夕鈴は慣れたとはいえ、王宮の風習を全て網羅しているわけでもなく、彼女が何かいわくありげに言うのなら、大切な儀式か何かの一種なのだろうと想像はできたが、正直何が何やら分からない。夕鈴はあいまいな微笑みを浮かべながら「…ありがとう」と一言、つとめて鷹揚に答えた。

* * *

現国王、すなわち狼王は、幼いころからその命を狙われて育った。そのため父王は、幼少の彼とその母を辺境の地へやった。
地方にありながら、人より抜きんでた知識を得るためには、貪欲に様々な文化様式に興味を持ち多くの人と接触を持つほかない。他国の言葉を身に着け、最先端の知識を得る。…生き残り新しい戦術を知ることが主な目的だったが、なにはともあれ狼王は博学な人物だった。
その日後宮に渡ると、後宮の入口に吊るされた見慣れぬそれを見るて、狼王は一目でそれが何を意味するか見破った。

「これは?」

「紅珠から送られた飾りものです。…なんでも、幸せになれるのだそうです」
「…幸せ?」

(――王宮の中にいては、幸せになれるものもなれまい)
そんな思いが胸をよぎり、狼王はその表情に暗い影を落とした。

「…といっても、私は幸せ、ですから。こんなもの必要ないんですけどね」
彼女はくったくなく笑った。

「夕鈴――君、本当に、幸せ?」
狼王は彼女を引き寄せ、つぶやいた。

「え?――」
王の真剣な表情に、ふと夕鈴は真顔に戻る。

陛下のことが好きでたまらないのに
それを言えないのは悲しい。

陛下はいつか本当のお嫁さんを迎えなきゃいけなくて
――それは、たぶん。そう遠くない未来。

偽物の私は、
いつかここを出ていかなければならない。

私はいつまでここに居られるんだろう。

「…幸せ、ですよ?」
夕鈴はギュッと王の袖を握り締めた。

「ほんとうに?」
王は静かに彼女を見下ろした。
長い前髪がハラリと目にかかり、彼の表情を隠した。

彼女は、必死で自分で自分を勇気づけ元気を装う。

「側にいられなくても。
私はいつも陛下の味方ですから――」

いい切ったものの、切なくて。
夕鈴の瞳には涙がにじんだ

思わず心が動き、
王は彼女を抱きしめると
その頬を両手で掬い上げるようにはさみ、唇を重ねた。

二人の唇が離れると、ふるふると彼女は震えて固まっていた。

あまりのことに言葉も出ない彼女。

(――しまった!!)
何か言い訳をしなければ、と
黎翔は真面目な顔で話はじめた。

「今日は、西の国では特別な日らしい。
西の国の風習で、ヤドリギの下で、今日口づけをかわした男女は
結ばれて、幸せになるというのがあって――」

そこで言葉を区切って、彼女の反応をもう一度見る。

(…結ばれる?)

自分の口から出た言葉が自分自身の脳に届いてはじめて、
彼は急にオロオロしはじめた。

(しまった! うっかり口が滑っちゃったけど
――夕鈴が、それを望んでいなかったらっ…
どうしよう!?)

黎翔は、夕鈴の肩を押しのけるように、二人の距離を取った。
急によそよそしくなった彼の態度に、今度は夕鈴が目を丸くする。

「え?」

「…ぼ、ぼくは。そんな迷信、信じてないけどね」
うろたえた陛下は、うそぶくように平静を保とうと試み、逆にますます墓穴を深くした。

「へ!陛下っ!
へーかにとったら、気軽な冗談でしょうけど――
陛下は、ヘーカは…
女の人ならだれでもいいんですねっ?」

夕鈴の両目から大粒の涙があふれた。

「…ち、違っ!」
黎翔はあわてて否定するが…夕鈴はボロボロと泣き始め――彼の胸を叩いた。

「陛下の、女っタラシ~っ!」

ドンっと彼を突き飛ばした彼女を
あわてて腕を引き、つなぎとめる。

「――ゴメン、夕鈴!
君が僕を嫌ってるのに、
無理強いしたことは謝る――」

「嫌い?」
夕鈴はハタと動きを止めた。

「嫌いな男に、口づけされれば君だって怒るよね」

「…嫌いじゃ、ありません。」
黎翔は焦りながらも、彼女に嫌われていないことにホッとした。
だが、夕鈴はうつむいたままで表情が見えない。

黎翔は力なく手を離した。

突然こんなことをされれば、怒るだろう。

(どうしたら夕鈴に、許してもらえるのか)
…黎翔は必死で考え続けた。

「嫌いじゃ、ない? なら…よかった。
でもゴメン。
――じゃあ、仕事があるから、これで」

謝って、退散する。
お互い、頭を冷やす。
――それが一番いい。

うっかり先走った行動に出たことを盛大に反省しながら、黎翔はクルリと踵を返した。

「き、嫌いじゃ――」

彼女がぎゅとつかんだ黎翔の裾が、ツンと小さな抵抗を生んだ。

黎翔は立ち止まった。

「…す、好きです、大好きです!」

夕鈴は顔を真っ赤にして叫んだ。

「…え?」
黎翔は振り向く。

「ヘーカが大好きっ!
離れたくない――」









――ヤドリギの下をくぐる者は 争いをしてはならない。
愛に満ちた口づけを交わすのみ――

メリー、クリスマス!

(おしまい)
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風花さま Re: ギリギリメリークリスマス‼︎

風花さま、メリークリスマス♪
ありがとうございました

やり逃げ…?

そうですねー
ほんとですねー(笑

陛下は多分
普段ならどんな相手に対しても、すごく冷静に「対処できるライン」というのが見えていて、
隙あらば機会を逃さず圧せるヒトなんですが

夕鈴のこととなるとテキメンにダメダメ。

というのも、彼女が普段、
彼の想定の斜め上の反応を見せるので
必要以上に慎重になりすぎる。

それで、自分で意識いしている以上に
彼女のことが大事すぎて
「彼女を傷つけるくらいなら」引いちゃう。

更に
彼は多分『恋愛』というエモーショナルな情動に疎いから
引く方向を見誤る

――という設定の元に書いております。

紅珠、可愛くて、好い人。

最初は「毒花?」みたいな登場でしたのに。
いまやすっかり癒し処(笑)ですね~

本誌は萌えました
あの陛下
この陛下
やー。私すごく陛下好きなのです。

そんでもって、夕鈴かわいすぎですよねー(´ω`*)))



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