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狼のーかの花嫁(9)

つづきです。
もう、なんでもこい、な方。よろしければ。




【現パラ】【ファンタジーらしく夢物語】【甘】

* * * * * * *
狼のーかの花嫁(9)
* * * * * * *

黒いマントをまとった陛下が立っている。

紅い瞳に、星が映っていた。
真っ暗闇に溶け込む黒い髪。黒いシャツに黒いズボン。
靴も手袋も、黒一色。

窓ガラスを押して隙間をあけるとビョウビョウと風が吹き込む。

…夜風が冷たい。

そんなとこ、開けたらあぶないですよ――?
声をかけたいのだけど、声がでない。

――これは、夢の中。
そう。これは夢

陛下、一人で行かないでください
あぶないですよ?

声がでないけど、陛下は聞こえるみたい。
こくんとうなづいた。

陛下は手を伸ばして
「いっしょに、くる?」と尋ねられた。

ピーターパンとウエンディ?
それとも魔法使いの物語…。

好奇心も手伝って、手を伸ばす。
はっと気が付くと、自分はいつものくたびれたパジャマを着ている。
ベージュの兎柄で、お洗濯のいい香りとお日様のにおいが入り混じってる。
こういうところだけ、妙にリアル。

「寒くないか?」
彼のマントの中に私をくるみこむ。

陛下の香りって…なんだか懐かしい気がした。

「夢の中だから
空だって飛べそうですね?」と笑って答えた
「魔法使いは、ホウキで飛ぶんですって」

陛下はなにか呟いて
私を抱え上げた。

君がホウキがいいなら、ホウキにするか、っていったように聞こえた。

陛下がパチンと指を鳴らせば、
いつのまにか陛下の手にはホウキ。

「じゃあ、いこう」

私を抱えたままホウキに跨った陛下が
ガラス戸を大きく開け放つ。

夢は突拍子がないこともトントン拍子で話が進む。

「一度ホウキって乗ってみたかったんですよ」
「そうか」
と陛下がクスっと笑った。

足元に風が舞い込み、つむじ風のように圧力を感じたと思った途端、
ふわっと体が浮いた

風の音がすごい。
怖くて思わず陛下にしがみついた。

「怖い?」

「あっ、あなたと一緒ならっ
――こっ、怖くなんかありませんっ!」

…どうして、こんな大胆な言葉が出てしまったのか分からない。

――だって、あの、怖い狼陛下よ?
会ったばかり。
私はただのバイトで…

でも、今は夢の中だから
ちょっとやそっと、つじつまが合わなくても気にする必要はないんだ、と納得する。


小犬の顔と狼の顔がくるくる入れ替わる
ぜんぜん分かんない不思議なヒト。

立派にこの地を治めるために怖い狼陛下を演じている
二人だけの時は、ふわりと笑う、優しいひと

『こんな風に、一緒にいられたら…』

…?!
馬鹿、私ったら。
なに考えてるの?
思わず一人ツッコミして赤面をする。


足元になにもない
真っ暗な空を飛んでいる
星空はとおくて
雲が近い

「わあ、綺麗ですね――!」
片手を伸ばして、星の方へと伸ばす。
陛下が私の腰に回していた腕に力をこめ、ぎゅっと抱きしめた。

「落ちるよ、夕鈴!」
「あっ、ごめんなさい!」
「しっかりつかまっていて!」
「あ、はい…」

…そうか。
夢の中って、けっこう落ちるのよね。

じゃあ、しっかり捕まらないと。
おずおずと手を回し、しがみつく。

陛下の腕の中は広くて
あったかかった。

夢だと知ってるから、ちょっと大胆になれる。

「どうしてこんな夜に、空をとんでるんですか?」
「カボチャ畑の巡回」
「カボチャ畑の? ヘーカは昼も夜も、大忙しですね!」と笑った。

「ほら、この時期はゴタゴタしやすいからね…。
でもまあ、君と一緒なら、仕事もはかどる」

…ほら、また。調子のいいことばっかり
陛下って、女っタラシ。

陛下の横顔は一瞬お仕事モードになって。
鋭い視線で遠くを見つめていた。

「カボチャがゴタゴタするんですか」
「そうだね。あいつら、イタズラものだから」

真顔で答えられて、思わず私もきょとんとしてしまう。
カボチャが、イタズラ…?
プッと吹き出し、ケラケラと大声をあげて笑ってしまった。

「い、イタズラ、するんですか? カボチャが?」
「…する」
真面目に私の方を見つめ返す陛下。

「え――どんな?」
「相当な悪さをするよ」
「それ、面白いですね! どんなイタズラするのか、ちょっと見てみたいです」
「んー。止めといたほうがいいな。だって、ゆーりん可愛いから食べられちゃうよ…」
「――まさか!?」
「ほんと。あいつら、やりかねない」
あんまり陛下が真剣にいうから、おもわず私も本気にしかけた…。
抱きしめられた腕の強さも、なにもかも。
それは演技で、雇われバイトの私を『最愛のひと』扱いをしているにすぎない。
…きらびやかな宝石も、シルクのドレスも。豪華な食事も、やさしいこの人の微笑みも。
全部――ウソ。
私は『本当』じゃないって、最初から知っている。
陛下はズルい。だから私は騙されない。

「うそ。また、陛下ったら私が物知らずのバイトだからって、からかってるんでしょ?」
演技が上手いこの人の言葉を信じちゃだめ。
うっかり勘違いしちゃ、ダメ。
「違うよ? ほんとだって。だから、ボクと一緒でない時は、絶対触れちゃだめ」

「触れちゃダメ?
じゃあ、どうやってカボチャを取ってくるんです!?」
私は頬を膨らませて抗議した。

「ぼくの居ない時には、触れたらダメ」
そんなに真剣に抱きしめたら。やっぱり勘違いしてしまうじゃないですか?

――私には、手の届かない人。
夢だから。いまだけ。
ニセのバイトだけど…。

「でも、ヘーカが私に言ったんですよ?
大きなカボチャ、形の良い、色ツヤの良いカボチャを探して持ってきて、って――!
ヘーカが欲しいっていうから、私…」

困ったように陛下は私を見つめた。

「夕鈴…」

触れちゃダメって
へいか…
触れてます…

熱い。


――はっと目をあけた瞬間。

私はホウキに乗った陛下の腕からすり抜けて
カボチャの畑にまっさかさまに落ちていた

カボチャが大きく裂けた口をあけて
私を飲みこもうとゲタゲタ嗤う

支えの無い空中で、空気の塊が私の背を押してる。

陛下が助けようとホウキを全速力で駈って矢のように近づくスピードより
私はもっともっと早く、まるで地上から引っ張られてるみたいに一直線に吸い込まれた。

夢だから
不思議と怖くない。

陛下の紅い瞳が
星の一つに遠ざかる。


暗い闇の中を落ちて
落ちて
おちて――

真っ黒な地面に、カボチャの大群が大きくなって
ぐんぐん近づいた

…ドサッと大きな衝撃とともに
私はカボチャに、見事に食べられた。


(つづく)


*
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パンプキンパイ

10月のハロウィン終わりましたが、11月の感謝祭(Thanksgiving)には、七面鳥、南瓜のパイを食べよう!と、友人達と話し合っているNorah。完全に食欲の秋とかしています…魔法カボチャ、夕鈴特製のパイにしてしまえば良いのに(笑)←だから、食べることばかり考えず、読書もしなさい!芸術の秋!あぁ、パンプキン・スパイスのコーヒーやスイーツと出会いたい、そして、体重気にせず食べたい(笑)と、こちらのブログを読みながら、カボチャ食べることに気が向いてしまうNorahです。こちらでは、カボチャを食べるのではなく、カボチャに食べられちゃってるのが、流石です。予想外の展開にドキドキします(≧∇≦)

聖璃桜(ひじりりお)さま 

なかなか続かなくてごめんなさい。
いつもありがとうございます。
メリークリスマス!

Norahさま Re: パンプキンパイ

食べる続きですが、お元気ですか?
ハロウィンだ
サンクスギビングだといっていたら
メリークリスマス!!

本当に、カメ連載ですみません。
良いお年をお迎えください。
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秘密の苑・刺青の男[織座舎]陛下の花園へようこそ。”狼陛下の花嫁”の二次創作作品を綴っています。足跡などお気軽に残していただければ嬉しいです。【新刊】秘密の苑・刺青の男パラレルアンソロジーパラレルアンソロジーとらさんで取扱。【お詫び】拍手コメ御礼お休み中です。本当に申し訳ありません。お返事ご希望分はコメント欄へm(_ _)m

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