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狼のーかの花嫁(8)

こんばんは~^^
ずいぶん間があいてしまってすみませんでした。
よろしければどうぞ。

【現パラ】【ファンタジー】【シュガーレス微糖】

* * * * * * *
狼のーかの花嫁(8)
* * * * * * *

夕鈴はへとへとになって戻ってきた。
陛下との約束。夕食に遅れたら、きっと盛大にガッカリされる――。
でも、間に合ってもきっとガッカリされるのね、と夕鈴はうなだれた。

というのも、一日歩き回っても陛下に頼まれたカボチャを手に入れることができなかったから。あわよくば、体を動かすバイト先をみつけて…と思っていた夕鈴だったが、取り付く島もなかった。

部屋に戻ると、部屋付きの女の人たちが取り囲まれてぎょっとした。
湯あみを、お着替えを、お化粧を――と、次から次へと世話をやくので、夕鈴は
「もしかして、どこかにお出かけするんですか?」と彼女たちに尋ねた。

「…はぃ?」
逆に不思議そうな顔で見つめ返され
「陛下とお食事される、のでございましょう?」とにこやかに笑って諭された。

髪を結われ、きれいな宝石を次々あてがわれる。
「せっかくですから華やかに…。真紅の石もお似合いですね。…いかがでございましょう?」と尋ねられるが、夕鈴にはどれもこれも不似合なほど高価な品であるとしかわからない。
小さな声でドギマギして
「…あの、もっと控えめでっ! お任せいたします」と答えれば、
「十分控えめですが」
「宝石が…あのっ! …お、大きすぎませんか?」

「…では、これはいかがでございましょう?
あちらに比べればかなり小粒になりますが、散りばめられていて愛らしゅうございます」
「もっと質素なものは」
「あいにく今日はご用意しておりませんので…」
「ではアクセサリーなんてなくて構いません」
「まあっ、そうは参りません! きちんとお世話の仕事を果たさなかったと、陛下に私どもが叱られます。どうかこちらでご勘弁いただけませんか?」
「…」
(そっか――偽の婚約者のバイト。ぜんぜん自分に似合わなくて恥ずかしかろうが、陛下に相応しい格好をするのも、花嫁バイトの仕事のうち…)

仕方がなさそうにコクリと頷く夕鈴。
夕鈴が折れるのを待っていたとばかりに侍女さんたちが次々と飾り立てた。

「では、お召し物はこちらを」

テキパキと進行するので口をさしはさむ隙も無い。
白いシルクのドレスを着せられる。
パールのような光沢を放つ細かいビーズがあちこちに縫いとめられ、良く見れば相当手がかかっていた。肩からかける薄布にも同じモチーフで縫い取りがあり、クラッチバックまで揃っている。
(…こういうドレスって、一点もの、じゃない?)
夕鈴は寒気がした。

『先に申し上げておきます。
このバイト中の御召し物や装飾品類。
――全てレンタルですから。扱いには十分お気を付けて』

李順というメガネをかけた人が、何度も念を押した言葉が、今更ながらありありと脳裏でフラッシュバックする。

――万が一、お食事中に汚しちゃったら?
ゴクリと夕鈴はつばを飲み込んだ。

鏡に映った姿。白いドレスに結い上げられた髪、赤い宝石が散りばめられた装身具。
夕鈴には、いつもの自分とはまるで別人のように見えて気恥ずかしい。

「…あの、やっぱり派手じゃありませんか? …そのたかが食事、に」

「これでもかなり控えめにしたつもりなのですが――」
はぁ…と夕鈴の世話を焼いていたものが皆、残念そうにため息をつく。

(…どれだけやる気だったの?)
夕鈴の笑顔が引きつった。

* * * * * * *

(なんて切り出そう。
カボチャ手に入らなかったって言ったら
陛下、きっとがっかりするわよね――?)

食卓の上には花がかざられ、キャンドルが揺れていた。

ガラス張りの最上階からの夜景。
畑の真ん中のビル街だけで、どうしてこんなに灯りが?と思えば、遠くの畑にあるカボチャというカボチャが、ボンヤリとランタンのように輝いている。

不思議な光景のことをいつ目の前の人に訊ねようかとおもいつつ、
心にのしかかる思いで、なんとなく会話もし辛い。

なんといっても相手が『狼陛下』なのだ。

目の前のカボチャがどうして光ってるの、だなんて気軽に話題にできないままディナーは進行していた。

たった二人のために貸切りのレストラン。
給仕がついた本格的な食事に夕鈴はギクシャクとしながら料理を口に運んでいた。


(…おいしすぎる…)
夕鈴は、ため息をついた。

「…口に合わないか?」
目の前の人は心配げに声をかけた。

夕鈴はヒュッと咳き込みそうになり、
「い、いえっ! 美味しいです!」と全力で否定した。

「そう、畏まらなくてよい――二人だけなのだから。
愛しき我が妃よ」

「きっ、妃ぃ?」

「当主である私の花嫁。この地では習慣的にそう呼ばれている」

ニコリと微笑みながら手を伸ばしかるく指先に触れられる。
夕鈴はドクンと胸が弾み、真っ赤になりながら顔を伏せた。

(こっ、このバイト。なんだか――恥ずかしい~~っ!!!)

目の前の人は冷酷非情な狼陛下。
(御給仕とはいえ、人前では気をぬくこともできないのね…この方は)と夕鈴は堅苦しくもバイト嫁としての務めを果たしていた。

「口に合わねば、変えさせようか?」

「いえっ! 口に合わないとかじゃありませんっ! 
逆です!
それはもう、美味しすぎて――ほっぺたが落ちるっていうか
慣れないもの食べて、舌がびっくりしてるっていうか――」
夕鈴は慌てて否定した。

「…そうじゃなくって。
弟に食べさせてあげたいな…って。思っただけです。
私だけ贅沢して申し訳ないっていうか」

「弟?」

「はいっ! 今13歳の、名前は青慎っていいます!
姉の口から云うのも少々はばかられますが…
すっごくお利口で可愛い、自慢の弟なんです!」

弟の話題になれば、調子も出てくる夕鈴。
ようやく二人の間に会話が弾みだした…ように夕鈴は感じた。

「仲がよいのだな」

黎翔はフッと目を細めたが、その瞳の奥にさみしげな色があることまでは夕鈴には気が付かない。

「それは、もう! 
陛下は、ごきょうだいは?」

夕鈴は箸を振って黎翔の方を見上げた。

「兄がいた。弟も。それぞれ母は違うが」

いた、という過去形。
それぞれ、母が違う…

夕鈴は言葉を飲みこんだ。
あまりにもそっけない声音に、逆に胸をさされ、夕鈴は困って首をすくめた。

「…ご、ごめんなさい」

「何も。君が謝ることはない」
目の前の狼陛下は、何ら変わることなく淡々と料理を口元に運んでいた。
夕鈴はカチャンと箸を置いた。

「ごちそうさまでした!」

夕鈴の宣言に、給仕がそばから耳打ちをした。
「このあとのデザートは…」
「もう十分いただきました」
お茶を飲んだ夕鈴は、手をあわせて感謝の意を表す。

「…よい。あとは二人にせよ
みな下がれ」

黎翔は立ち上がり、夕鈴の手をとって歩き出した。

白いドレスを身にまとった夕鈴を、黎翔は優しげに見つめた。

「よく、似合ってる」
黎翔の言葉が、自分が着飾った姿に対してだと知り、
夕鈴は思わず顔を赤らめた。
(バイトの身に、似合うも何も――)

手を引かれて、窓へと近づく。
足元から切り立ったガラス越しの夜景を二人で眺めた。

「…そうだ。今日は何をしていた」
黎翔は明るい声で切り出す。

夕鈴はさらに申し訳なさげに切り出す。
「あの。カボチャを探しました」
水平線まで広がる畑にぼんやりと光る無数のカボチャランタン。

「…それで。あの。
――ごめんなさいっ!!」

数歩下がり黎翔と距離をとる夕鈴。

黎翔はきょとんとしながら夕鈴を見つめた。
必死に頭を下げる夕鈴の両肩に手を伸ばし、顔を覗き込む。

「…どうしたの? 
何を謝ってるの?
そんなに思いつめた顔をして」

いつのまにか、狼陛下の緊張した雰囲気は和らいで、優しい小犬陛下になっていた。

夕鈴は小犬陛下にちょっとほっとした様子で切り出した。
「あのですね? 
実は、今日一日中歩き回ってあちこち農家さんでお願いしたんですけど。
陛下の御要望に添うようなカボチャどころか、小さなカボチャ一つ分けてもらえませんでした――」

「…そっか。
今日初めてだもんね」
黎翔はやさしく慰めた。

「でも、明日は頑張りますっ! 任せてくださいっ」
夕鈴は胸を叩いた。

「…あんなに沢山あるのに。
どうして分けてくれないのかな…
畑の手伝いもさせてほしかったのに。だれも――」

夕鈴は遠いカボチャ畑を見つめた。

薄暗いガラスに反射する夕鈴の姿の額に金色に光る印があるなど、夕鈴は一向に気が付くこともない。

「君は私の大切な唯一だから――」
黎翔が彼女を抱き寄せるように腕を回す。

夕鈴はペチ、と手を叩き、距離を置いた。
「陛下っ! 今は、演技いりませんからっ!」

ドキドキしながら離れて…必至で取り繕う。

「…あ、そう?」
コロリと黎翔はアハハ、と笑う。

「どうしてあんな風にひかるんですか?
昼間は普通のカボチャみたいに見えましたけど」

「――あの光、見える?」

黎翔は振り返り、夕鈴の顔を見つめた。
夕鈴はキョトンとしていたが、黎翔の顔が至近距離だと気が付いて、
おもわずそっと両手で黎翔の胸を手でおした。

「ボンヤリですけど。カボチャの一つ一つが光ってるんですよね?
だから畑のところがあんなに賑やかなんでしょ?
オレンジ色のイルミネーションみたいです。
地平線まで広がって…綺麗ですね」

夕鈴はキョドキョドしながら答える。
黎翔は再び夕鈴を覗き込み、その額の中央を指でなぞった。

彼女自身は気が付かないが、黎翔の目には光って見える、それ。
唇が触れたところに、残された狼陛下の印。

「…魔払いの大カボチャ、とか。ランタンカボチャとか呼ばれたり」
黎翔は今度は少し乱暴に、夕鈴の髪をクシャクシャっといじり、ぽんぽんと頭を軽くたたいた。

「…ふうん?
魔払い、ランタンカボチャ?
なにか特別なカボチャなんですか?
だから光るんですか?」

「そうだね。
この地方だけでみられる特別なカボチャ。
昔っから、魔払いのカボチャは、そういうものらしい」

「ふうん…」

分かったような、分からないような
夕鈴はコクリと頷いた。

「…そうなんですか。
珍しいカボチャなんですね、すごく綺麗です。
こんな景色が陛下とみられて、よかったです」

「そうだね。
私も君がきてくれて嬉しいな。
…ボクがお願いしたカボチャ。
きっと見つけてね?
明日はきっと見つかるといいな」

「任せて下さい!
必ず探してきますから!
お給料しっかりいただくんですから
陛下のお役にたてるよう、私頑張ります!」

夕鈴が力をこめて拳を握った。

「いいよ、そんなに頑張らなくても。
のんびり探せば」

「だって、収穫祭まで、なんでしょ?
ところで、いつがその収穫祭、なんですか?」

「んー。あと10日後、だったかな?
例年、この月末にやるはずだから」

「え!?
…じゃ、急がなきゃ!!」

「大丈夫。
君なら、見つけてくれそうな気がするな」


「そもそも、どうして
大きくて形よく色つやのいいカボチャを探して、とか…」

「理由が必要?」

「あの、でも――やっぱり」

「知りたいなら…もう一つか二つ、印を増やさないと
アブナイよ?」

「印? 危ないってなんですか?」

黎翔は少し声落して、つぶやいた。

「やっぱり、知らないほうがいい」

夕鈴はそういわれると、今度は引くに引けない性でもあった。

「知りたいです!」

「やめといたほうがいい」

「わっ、私は陛下のお役に立ちたいんですっ!
そのためなら、なんだって…」

バイト代分はしっかり働く。
それが汀夕鈴、あんたの心意気でしょ?

「本気?」
「本気です!」

「じゃあ、触れても、いいの?」
「…は?」

「えーっと。だから。
こうやって…君に」

黎翔は自分の唇を指さし
おもむろに夕鈴のあごをクイッと指先で引き上げた。

黎翔の薄い唇がうっすらと開いた。

「…え? え?」

夕鈴の驚き見開かれた茶色の瞳に、
黎翔の端正な顔が大接近するのが映った。

触れる、って――

き、す――?

「ぎゃぁぁーーーっ!」

夕鈴は慌ててドンっと黎翔を押し返して、逃げ出した。


「へっ、陛下っ、なんの冗談ですか?
近いですっ!
バイトですからね?
冗談はよして下さいっ!!
陛下の、女ったらし~!」


白いドレスの裾をからげ、脱兎のように走り去る夕鈴を
黎翔はすこし困ったように苦笑しながら見送った。

(つづく)


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Author:おりざ
秘密の苑・刺青の男[織座舎]陛下の花園へようこそ。”狼陛下の花嫁”の二次創作作品を綴っています。足跡などお気軽に残していただければ嬉しいです。【新刊】秘密の苑・刺青の男パラレルアンソロジーパラレルアンソロジーとらさんで取扱。【お詫び】拍手コメ御礼お休み中です。本当に申し訳ありません。お返事ご希望分はコメント欄へm(_ _)m

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