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狼のーかの花嫁(6)

間があいたうえ、短くてすみません。



【現パラ】【ファンタジー】

* * * * * * *
狼のーかの花嫁(6)
* * * * * * *

「陛下って、不思議なヒト――」
クルクルと変わる表情。
怖い狼陛下の目をしているとき。体中が冷え冷えとして胸がギュッと絞られる。
なのに、一瞬で表情が和らぐと、子犬のように人懐っこくじゃれついて…

「…そう。
『まるで小犬みたい』って思ったら
―――耳が、見えたのよ。それから、パタパタ動く尻尾も!?
…あれって、幻覚の一種かしら?」

首をひねりながら、朝食を終えた夕鈴はテラスから自分の部屋へと戻った。

夕鈴のが戻るタイミングを計ったように、すうっと女性が現れる。
「おはようございます」
昨日、夕鈴の身の回りの世話をしてくれた女性。

にっこりと笑いかけられ、つられて照れ笑いを返す。

落ち着いた紺色の仕事着は上等な薄手のウール。
手入れの行き届いた髪や爪。朝いちばんだというのに薄化粧もきちんしている。

かたや夕鈴は、ボサボサ頭でくたくたの茶色の兎柄パジャマのまま、今の今まで陛下と朝食をとっていた…。

そのとき、お世話の女性がごく自然に夕鈴がパジャマの上に羽織っていたガウンに手をかけた。

「え?」と夕鈴が真っ赤になって振り向くと

「お着替えを…」とあたりまえのようにいう。

夕鈴は、茶色のくたくたのパジャマを見られたくなくて、
とっさにギュッと羽織をかいこみ、首回りを手で引き寄せた。

「…あっ!…あのっ」
夕鈴は困ったように赤面したまま、彼女にどもりながら言い訳をする。
「…すみません。一人でできますから。
そういうの、恥ずかしいんで!!」

必死な形相でボサボサの髪を振り乱しながらぶんぶん首を振ったとたん、
彼女の前髪が逆立った。

「…」
彼女は夕鈴の額をチラ、と見つめ、一瞬表情をかえた。
…一瞬だったが、確かに。

夕鈴は自分の額をジッと見つめられた瞬間、
『ここ、って。陛下が口づけを…』と思いだし、ますます赤くなって、額を手で隠した。

すると侍女は勝手に何か得心したように『わかりました』とうなずき妙にニコニコする。

「はいはい、わたくし、なにも見ておりませんから…」とつぶやいて
控えの間へ続くドアへ急ぐ。

「失礼いたしました。ではごゆっくりお着替えください。なにかご用がありましたら、いつでも机の上の呼び鈴を振って、およびくださいませ」
必要なことを伝えると、深々と頭をさげ、部屋から引き下がった。

「…え? なにを見てない、って」
いったい、なにを誤解したのかしら――。

まさか。
あわててベッド脇のドレッサーを覗き込む。

(ふだんどおり。よね?

キスマークがあるわけでもなし…)

と自分で思いながら、ギャーッと夕鈴はのけぞった。

「き、キキキスマークだなんて…!
そんなわけないわよっ~~っ!」

ブツブツいいながらガウンを脱ぐ。

「――第一陛下ったら。冗談がすぎるんだわっ!
カボチャをくれなきゃ悪戯する、だなんて――」

少々憤慨しながら柔らかい唇を押し付けられたそこに、あの感触がよみがえる。

「イタズラって…」
再びポーッとピンクに染まる自分が恥ずかしくて、前髪をギュッとおろすと夕鈴はバサバサと兎柄のお気に入りのパジャマを脱ぎ捨てた。

荷物から衣類を引っ張りだす。
「勤労精神」と白いロゴが入ったTシャツを頭からかぶる。
ストレッチ・ジーンズをはいて、スニーカーの紐をぎゅっと締める。

風よけの軽いジャケットを羽織る。
ペチペチっと音を立てて、両手で頬をたたく

「なに呆けてるのよ、夕鈴っ!
私は働いて稼ぐために、ここに来たんだから!
とりあえず農場を目指すわっ!」

帽子のつばを持って、額が隠れるようにぎゅうぎゅうかぶる。



身支度が完了すると、夕鈴は部屋を後にした。


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秘密の苑・刺青の男[織座舎]陛下の花園へようこそ。”狼陛下の花嫁”の二次創作作品を綴っています。足跡などお気軽に残していただければ嬉しいです。【新刊】秘密の苑・刺青の男パラレルアンソロジーパラレルアンソロジーとらさんで取扱。【お詫び】拍手コメ御礼お休み中です。本当に申し訳ありません。お返事ご希望分はコメント欄へm(_ _)m

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