FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

二人の収穫祭

某国SNSのうりうり様のハロウィン企画で
ご用意しましたお菓子(読みきり短編)です。

ハロウィン期間も終わりましたので、
お下がりですがよろしければ…。








【バイト妃】
* * * * * * * *
二人の収穫祭
* * * * * * * *
by おりざ



「今日午後、南の四阿にいらしてください」
と後宮へ言付けがあった。

(…いったい何事かしら)と私はいぶかしがりながら、
侍女さんたちと庭に出た。

後宮の秋は美しい。

秋も深まり、空はのびやかに青く
白く儚い雲がうっすらと刷毛ではいたようにかかっている。

暑苦しい夏が過ぎ、さわやかな空気の中で息を吹き返した植物。
咲き誇る花木や草花は、あたり一面に良い香りを漂わせる。

朝晩の寒暖の差はあるが日中は過ごしやすく、気持ちの良い風が吹く。

(…こんな中、陛下と一緒にお散歩できたら…)
とささやかな願いに心も弾む。
(…はっ。
――いやいや、今日はお仕事で呼び出しよ?)

キッチリ自分に言い聞かせる。

淡いピンクの花が今や盛りと咲き誇る薔薇の叢の角を曲がれば、
目の前には池が広がり、
その傍にしつらえられた四阿の象牙色の屋根が目に入る。

遠目に臨む四阿には既に人がいて、
メガネをかけているのは、李順さん…

そして、
あ。
――陛下。

思わずドキッと胸が弾む。

陛下は、深い紫色の衣裳をまとい
匂い立つように鮮やかなお姿。

こんなに離れていても、まるで目の前にいらっしゃるみたいに
鮮やかすぎるあの方

厳しいお顔で何かお話されている口許も
黒髪が風に揺れる様を見ても、
天がこの世にお遣わしになった我らが王の姿は
世にもまれなる存在で
思わず畏敬の念に身が引き締まる。

ぼぉっと一瞬気持ちがとんで
(…いやいや、私、バイト妃だから
分をわきまえなさい――!)

思わず足が止まっていた私に
「お妃さま…?」と背中から声が掛かる。

(今は人目があるんだった!!
ちゃんとしなきゃ!)

慌てて取り繕った妃スマイルで、侍女さんの方を振り向く。

「あ、いえ。あまりにお庭が美しくて
思わず見入ってしまいました」

そうでございましょう、と、侍女さんもニッコリと微笑み返す。

ようやく、今更ながら周囲が目に入る。


あたりには大勢の野良仕事の下男下女が地に頭を擦り付けてかしずき、
なにやら物々しい雰囲気。

陛下のそばには李順さん、宮廷庭師の頭領ら面々がいて
一枚の図面をはさみ、難しい顔で打ち合わせ中。


(しまった!
お時間でも間違えてしまったのかしら?――)

お邪魔しては悪いと、思わず二の足を踏んでしまった。

「――あ。失礼いたしました。
お仕事中でしたら、私しばらくお待ちいたしますと、お伝えください」と
侍女にヒソと耳打ちをし、女官らと下がろうとした途端
李順さんから足止めの声がかかる。

「お妃様、どうぞこちらへ――」

陛下はクルクルと図面を巻き取ると、ポンと李順さんに手渡し
こんどは私の方へ歩き出す。

「ただいま参上仕りました
…御呼びでございましょうか」

恭しく礼をすれば

「妃よ、堅苦しい挨拶は抜きだ
――さあ、早速。
君の目で見ておくれ」
上機嫌の陛下はズカズカと歩み寄り、ひょいと私は抱き上げられてしまう。

(ぎゃー、いったい、何事ですか?)

抱き上げられて、目の前の陛下はこれ以上ない満面の笑み。
『…喜んでくれる?』
と耳元に小犬の声でヒソと囁かれる。

(ヘーカ、み、耳が出てますよ――?)

『ダメです。こんなに大勢の前で、子犬は…!?』
と、陛下の胸を必死に押しとどめれば、

コホン、と軽い咳払いのあと、
今度は威厳を保った狼陛下の声で、
私に説明をし始めた。

「愛しい妃は、食することのできる花が好きだというから。
このたび後宮の一角に
食用花ばかりを集めた花菜園を作ることにした」

「――え」

抱きしめられたまま、歩き出す。

あたりで作業される方がたは目を伏せ必死に作業しているふりをして…気を遣ってくれているのがすごく分かる。

陛下はお構いなしに造成中の花菜園を見まわる。

「どうか?」
ニコと私を覗き込むくすぐったい視線…。

「…コホン」
背中から咳ばらいが聞こえた。
李順さんがすぐ後ろに張り付く様に立っていた――!

(っ! こっ、これは仕事っ!
――ラブラブ夫婦演技デスねっ?)
必死に心の中で探す。

「う、嬉しゅうございます!!
――め、目を楽しませそのうえ食糧も兼ねるお花に
お目を留められるとは…さすが陛下。
…ま、まさに一石二鳥でございます」

妃を寵愛する王と
愛される妃を演じるのが、バイト妃としての私の仕事――。

再三再四、立場をわきまえろ、と言われても
やはり喜びは隠せない。

「――本当に。
覚えていてくださって
…嬉しいです」

その最後の言葉に心を込めた。

陛下はうむ、とうなずいて
目があった瞬間、ニコっと笑った。

「ざっと打ち合わせはしたが――
君の眼で見て、要望があれば伝えてほしい」

「食べられる花ばかりの庭って
――何を植えるんですか?」
と尋ねると
陛下の後ろから付き従っていた李順さんが
代わりに答える。

「花時の苗を揃えさせておりますよ。
秋と言えば、菊。食用菊はもちろん、秋桜(コスモス)、桔梗(キキョウ)、撫子(ナデシコ)などをメインに。足元には、擬宝珠(ギボウシ)、花紫蘇(シソ)、金蓮花(キンレンカ、ナスタチウム)。こういった趣の庭はあまり人工的すぎてもよろしくないかと、野趣を添えるのに、紫詰草(ムラサキツメクサ)、葛の花、野豌豆(カラスノエンドウ)なども…」

「――そんなに!?
食べられる花って、あるんですか――!?
それは楽しみです!!」

わたしはドキドキして思わず興奮してしまった。

陛下の目をみれば、わかる。

対面を保ちながらも
『褒めて、褒めて』とばかりに、
心の中で小犬陛下が尻尾を振っているのが。

その嬉しそうな目の色につられて、ついつい陛下の首にかじりついて、
「ありがとうございます」と囁いてしまった。

瞬間的とはいえ
頬を摺り寄せるほどに接近したものだから
――陛下はちょっと意外だったのか
しばらく私をきょとんと見つめたが、すぐに満足げに微笑まれ

「私のプレゼントは気に入ったか?
――妃よ」
と優しく私の頬をなでた。

女官さんや侍女さんたちのニコニコした顔と
ぶすっとした李順さんの顔が目に入る。

いたたまれないけど
――嬉しかった。


* * * * * * * *

陛下のくださった素敵な花菜園

お返しに、ささやかな『収穫祭』を思いつく。

まずは、夜のお茶会に。
可愛いお菓子をつくりましょう。

陛下のためのスペシャルに
お饅頭に乗せるトッピング。


甘くて可愛い砂糖菓子を作りましょう。




収穫は丁寧に。

お花を丁寧に水で洗って
水気をきったら
ほぐした卵白を絡めて
特別に手に入れたサラサラの白いお砂糖をまぶす。

よおく乾燥させて、できあがり――。

綺麗なお花の砂糖漬け。

黄色、赤、ピンク、オレンジ、白、紫、青…。
鮮やかな色の砂糖菓子ができあがる。

どれもこれも綺麗

陛下――
喜んでくださるかしら?


そんなふうに思いながら
貸し切った厨房での作業に熱中していたら
後ろから抱きしめられた。

「――夕鈴、ひとり?」

陛下の不意打ちに、私の頬にかぁっと紅が走る。

「へ、へーか!
お、王様が、こんなとこ、来ちゃだめでしょ?」

とジタバタしたけど、陛下はそんなことお構いなし。
身動きがとれない私を楽しんでいるみたいに…
「なに作ってるの?」と話し続ける。

「ヘーカが作って下さった、花菜園の収穫祭に…
お花の砂糖漬けを」

「収穫祭!
それは、いいね。
――僕もご相伴できるのかな?」

「もっ、もちろんですっ!
っていうか、むしろそのためです
花菜園を作ってくださった、お礼にっ!」

「それなら、二人の収穫祭だね。
嬉しいな…ああ、ずいぶんと彩りよく仕上がってるみたいだね」

背中ごしに覆いかぶさるように、私の赤い頬に頬を摺り寄せる。
ドギマギしてしまう。
(こ、ここで甘い陛下におされちゃダメよっ)

「わ、我ながら、綺麗にできたとおもいますっ!
でも、まだメインのお饅頭はこれから仕込むところなんです。
これは、その上に乗せるちょっとしたアクセントっていうか――」

真横に陛下の長いまつ毛が見えて、息づかいが頬をくすぐり、くすぐったい。
目の前に広げられた食用花の色とりどりの砂糖漬け。

「ふん。メインがまだって?
…でも。
君、綺麗に仕上がってるみたいだけど――」

「――え?」

「真っ赤に染まって――可愛い」

背中からギュッと抱きしめられる。

「あ、あの!
だ、ダメですよ、厨房で――誰かきたら」

「――今は、貸し切り、でしょ?」


そういって、笑いながら。

白い砂糖にまみれた私の指を握ると
陛下はそれを口許に運び


パクリと。


「…うん、やっぱり君が
一番
甘い――!」



*
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

うりうりさま

こちらこそ、お世話になりました~!!
ハロウィン前後が一番多忙で
なんだかそのままで失礼いたしました

現パラアンソロ
ぎゅーっと愛の込もったおメッセ
参加お待ちしております^^

検索フォーム
最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
カレンダー
10 | 2018/11 | 12
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
プロフィール

おりざ

Author:おりざ
秘密の苑・刺青の男[織座舎]陛下の花園へようこそ。”狼陛下の花嫁”の二次創作作品を綴っています。足跡などお気軽に残していただければ嬉しいです。【新刊】秘密の苑・刺青の男パラレルアンソロジーパラレルアンソロジーとらさんで取扱。【お詫び】拍手コメ御礼お休み中です。本当に申し訳ありません。お返事ご希望分はコメント欄へm(_ _)m

アクセスカウンター
ただいまのご来訪数
現在の閲覧者数:
ありがとうございます
■(キリ番)カウンターでキリのよい番号に遭遇された方はお気軽にご一報ください^^

■オフ活動■ おりざの本[織座舎] 一覧 → こちら
陛下の花園へようこそ
~ご注意~
≪以下あらかじめご了承のうえ、本サイトをお楽しみください。≫

・原作者様ならびに出版社様とは一切関係ございません。
・此のブログは日々の日記並びに二次創作作品の倉庫、管理人本人の自由な自己表現の場です。
・この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件、史実などにはいっさい関係ありません。また原作と異なる設定など、表現、その他多数捏造あります。

・二次創作の場です。
・ブログ内容に関する苦情は受け付けておりません。出来る限り注意は払う意向ですが個人的表現の場という位置づけの運営上、万人に対して万全を保障するものではありません。
・読む際は各作品の冒頭の説明・ご注意等にてご判断ください。読後いかなる不都合が生じても当方はその責任を負いかねます。

・ご感想お待ちしております。

・当ブログ内の作品の著作権はブログ管理人に属し、無断コピー・無断転載は固く禁じます。
Twitter
 
RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。