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狼のーかの花嫁(7)

こんばんは~^^
続きです。

よろしければどうぞ。



【現パラ】【ファンタジー】【ねつ造ですよ、カボチャのナゾ】

* * * * * * *
狼のーかの花嫁(7)
* * * * * * *

夕鈴は刈り取られた積み上げたワラの束にもたれかかって、腕組みをして考えていた。

目の前には地平線まで広大なカボチャ畑が続いている。

「――おっかしいわねえ…」

まさか狼陛下と呼ばれるこの地で一番エライ人の偽花嫁役のバイトとは思ってもいなかった、働き者の夕鈴。そもそもこの地へは収穫作業の手伝いでバイトをしにきたつもりだった。

陛下のナゾのお願い。
「収穫祭のお祭りまでに、形よく、色ツヤよく。
そしてなにより一番大きなカボチャを持ってきて…か」

不思議な言葉をもう一度繰り返す、真面目な夕鈴。

「――ちっともよく分からないけど、そんなに大事なことなのかしら?
あたりにはこんなにカボチャがあって。
農業王の陛下なら、鶴の一声でそんなカボチャ、いくらだって貢いでもらえそうなものなのに。
…陛下が手に入れられないようなものを、私が見つけられるのかしら」

それでもとりあえず「バイトの雇主がお願いっていうんだから、仕方がないわね…。カボチャを探しましょう」と、夕鈴は歩き出した。

陛下に頼まれたカボチャ探しのついでに、あわよくば当初目的通り体を動かすバイトでもチャッカリ稼ごうと目論む夕鈴は、研究都市を取り囲むように眼前に広がる農地を睨み、昨日冒険したのとは反対方向へ歩き出す。

ずいぶん歩いてようやく農地エリアへたどり着く。

道端に軽トラックが停めてあるのを見つけて近づき、畑で農作業をしている人を探し、声をかけた。

「こんにちは!
なにかお手伝いすることありませんか? お手伝いします!」
と声をかけると、

「おお、人間のお嬢ちゃん。
どっから来たの?!」

と、気さくに応じていたおじさんは、
夕鈴の顔を真正面から見ると、ハッとして途端に腰が引け青ざめた。

「あのー、私、大きいカボチャを探しているんです。
それで、よかったら働かせていただきたいんですが――」

農夫は顔を背けると「くわばら、くわばら」とつぶやき、
クルリと夕鈴とは反対方向の畑にソソクサと行ってしまった。

「…なに? 
聞こえないふり? 
こんなにカボチャがあるのに。人にあげたくないのかしら?
――失礼しちゃうわねっ」

夕鈴は少々憤慨しながら、次の農地へカボチャ探しとバイトを求めて歩いた。

次にあった人も。
その次に会った人も。
どの人も、夕鈴の顔をみると、急に態度が代わる。

夕鈴がひょいと畦を飛び越えて、畑に立ち入ろうとすれば、慌てて押し戻し
「畑に入らないでくだせぇ!!」と懇願される。

「えー? どうしてダメなんですか?」

ダメ押しを敢行する夕鈴を制止し、必死で押し戻す農夫。

「へっ陛下にお叱りをうけます~!!
決して畑には入らんでくだせぇっ!」

農家の人々は泣き出さんばかりだった。

「その陛下がカボチャを欲しがってるんです!
わたし、陛下のためにカボチャを探して…」

「陛下の唯一を、畑に入れるわけにはまいりませんっ!!
お許しくださいっ――」

「…へいかのゆいいつ?」

夕鈴は首をひねった。

(おかしいわね。私が陛下の花嫁役のバイトをやるっていうのは、つい昨日決まったばかりで。だれも私の顔なんか知らないはずなのに。
…何か名札でもついているのかしら? 
それとも、朝一番に有線放送かなにかで、指名手配でもされた?)

夕鈴は面白くなくて、ぶつくさとつぶやいた。

* * * * * * *

夕鈴は知らなかった。

ここは魔法使いの里で、
この地域に住む農夫らは皆魔法使いだということを。

そして彼女の額には、
魔法使いの一族の眼にしか見えない「しるし」があるということを。

魔法の光で煌々と輝くそれは「魔王の印」で、
額にその印のある少女に、万が一何かあれば、
すなわち冷酷非情の魔王の怒りを買うことになる――。

あの狼陛下の怒り…?
思いだすだけでも恐ろしい。
酷寒の地の吹きすさぶ雪礫に身を打たれたように凍り付き、ゾッと身震いする魔法使いたち。

世の中に「カボチャ」とよばれるものは、形も色もさまざまで、数多く品種・変種が存在する。
その中に、魔法使いたちが恐れるカボチャがあった。
魔力を吸いとる特殊な力を備えた『魔払いの大カボチャ』と呼ばれるもの。

それは固定された品種ではなく、普通のカボチャの中に交じって突然出現する。

古のドルイドは、その特別なカボチャを見分け、魔払いに用いた。

古来、魔を払う行事において、魔払いのカブや魔払いの大かぼちゃで、ランタンをこしらえ魔を払っていたものだったが、魔払いの力を持つカボチャやカブを見分けられるドルイドは絶え果て、魔払いのカブも絶滅した。

現在では単に行事の中での飾り物「カボチャ・ランタン」として形骸化していたのだが、ときおりそのカボチャのなかに魔払いのカボチャがあるから侮れない。

この地の農夫、つまり魔法使いたちの一番の仕事。
それは、世の中に存在しているカボチャの中から、真に魔力を奪う力を持つ「魔払いカボチャ」を全土各地から見つけ、魔払いの行事に使われることがないように確保し、この地で保護、封印すること。

魔法を吸い取るカボチャ。
魔法使いにとっては究極の弱点となる、恐ろしい兵器だ。
そんな魔払いカボチャの扱いは、要注意。

「対・魔払いカボチャ」の特殊訓練を受け、世界各地から盗み出すというベテラン「隠密農夫」でなければカボチャ管理者にはなれない。

であるから『狼陛下の唯一』に、万が一にも魔払いのカボチャが彼女に影響を及ぼせば…魔王の怒りは必至。
――恐れた彼らは、彼女を頑として畑へは入れなかったのだった。

そんなことは一切知らない夕鈴、――狼陛下の花嫁――。
はたして彼女は陛下のお望みのカボチャを見つけることができるのか?


* * * * * * *

その時、後ろから軽トラックが通り掛かった。
運転手の若い男は、すれ違いざまにバックミラーで光る何かに気が付いた。
いまやり過ごした、農道を歩いてる子。
軽トラの運転手はスッと目を細め「ふぅん…」と小さくつぶやくと、キキッとブレーキを踏んだ。
「彼女おでこにあるの、あれ。狼陛下の印じゃね?」

彼はブゥゥンと軽トラをバックさせ、少し驚いて立ち止まった彼女のすぐ傍まで戻ると、車を止めた。

開け放した窓から腕をニョッキリ突き出し、
ちょいちょい、と夕鈴のほうへ手招きした。

「ねえ、そこの彼女――?」

夕鈴はいきなりすれ違った軽トラがバックしてきたので、何事かとガードを固め不審げな表情で声の主を見つめた。
軽トラを運転していたのは若い男性で、少年のようもみえた。

「あんた。お妃ちゃん、でしょ?」

クリクリっとした茶色い瞳。
白い歯を見せて、ニシシと笑った。

「誰、あんた?
まだ子供みたいだけど、運転免許、ちゃんと持ってるの?」

と夕鈴はブスッと尋ねた。

少年のような顔立ちの小柄な男は、胸ポケットからホルダーに入った免許証を見せて
「…なんだケーサツ? ちゃんと普通免許、もってるヨー?
安全運転の模範みたいなオレちゃん、浩大」

「こうだい?」

「狼陛下が妃を雇ったって話、ほんとだったんだ~!
なんかの冗談かと思った」
とゲラゲラ笑う。

(いきなり、何? 失礼な!)と夕鈴は頬を膨らませた。

「あなた、陛下のお知り合い?」

「オレ? んーとね――
陛下の隠密!」

「へーかの、おんみつ?」

「そう
狼陛下の陰で暗躍する有能な下僕(しもべ)…
うわっ、オレかっこいい! 
あっ、気軽に大ちゃんって呼んでね、お妃ちゃん!」

あっ軽い、明るい ――隠密っていったい?

「ほんとのほんとーに、陛下の隠密、なの?」

「そーだよー? ほら。白陽ビルの社員証」

あのビルの社員証…たしかに。
みんなこんなのを首から下げてた。

夕鈴はようやくガードをほどいた。

「…でさ、お妃ちゃん。
こんなとこで何してんの?」

「陛下から頼まれたものを探しにっていうか…
ちょっとバイトっていうか」

「え?(ぷっと笑う)
…ま、乗りなよ」と助手席をクイッと指で示された。

正直歩き疲れた夕鈴は助かったと思い、素直に助手席に乗り込んだ。
「何探してんの?」

「カボチャ。大きくて、形がよくて、色つやのいい…」

「あー。…なんだソレか」

さもあたりまえのように浩大がうなづくので、
夕鈴は(…浩大は何かを知ってるのかしら)と思った。

当の浩大は、ニヤニヤしながら夕鈴の額にある印をジロジロと眺める。

「…そのおでこ。
ヘーカにキスされた?」

「――へっ!?」
夕鈴は突然の浩大の言葉に、おでこをあわてて両手で隠し、
顔を赤くしていきり立った。

「で! どうやって陛下をローラクしたの!?」
ヒューヒューと口笛で囃されて、わなわな震えていた夕鈴

「してません」

「?
じゃあ、どーやって
オトしたの?」

「オトしてないっ!
私はただのバイト!!
陛下とは夫婦の演技をしてるだけっ!!」

浩大は目を点にして、目に見えてテンションが下がる

「二人はデキてないってコト――?」

「そうそうっ!」
夕鈴はやけっぱちだ。

浩大はキョトンとして肩を落とす。

「…へえ。
なあんだ。
期待したのに――

やっぱアンタもダメなんだな。
陛下も相変わらずか、つまんね」

(何なのよー!?)

夕鈴は腹が立って、思わずドアノブを引いた。

浩大は慌てて軽トラをキキっと急停車した。

「あっぶねー! お妃ちゃん、走行中はドア…」

「うるさいっ!
私、降りるっ!」

夕鈴はドアをあけると、ピョンと飛び降り、バタンと力任せにドアを閉めた。

「おーい、お妃ちゃん…」

「放っておいてちょうだいっ!」

ズンズン…と夕鈴は歩き出した。

浩大は肩をすくめてつぶやいた。

「ま~、好きにさせますか。
どうせあの人のアレが付いてる限り。
手の内、だもんナー」

そのまま彼女の後姿を見送り、おもむろにハンドルを握ると、シフトレバーをRに入れ、スイッチバックをして逆方向へと走り去った。

「いったい何よ、あの子。
もーっ!
失礼じゃないっ?!」

夕鈴はプリプリしながら、
「こうなったら、意地でも陛下のカボチャを見つけて帰ってやるわよ!」
と青空に向けて吠えた。


(つづく)


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