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狼のーかの花嫁(3)

雨の音が静かです。

ハッピー、ハロウィン!
みなさま楽しいハロウィンをお過ごしですか?

(とはいえ、お店のさりげない装飾に接する程度で
実生活上、特別ハロウィンらしいことは何もない寂しい日本人←)


ハロウィンは今日までなのに
今日までには終わらなかった現パラSS。

残念だったらすみません。

【現パラ】【カボチャの謎】【微糖】

* * * * * * *
狼のーかの花嫁(3)
* * * * * * *

夕鈴はカボチャ畑の大冒険を終えて、飛び出した元のビルに戻ってきたとき、外はもうすっかり暗くなっていた。
イライラと迎えに出た李順にさんざん怒られた。

「どこに行っていたんですか!」
「あの、あたりを見ようとおもって…帰り道、迷ってしまいました――」
「…はぁ」と李順は目頭を指で押さえた。
「あなたと夕食をと、陛下は次のご予定の会合の時間まで、ギリギリお待ちだったんですよ?!」

――そんなこと、聞いてませんから…ともいえない。

「こちらは、宿舎の管理人です!」
と紹介されたのは、駅からここまで軽トラに乗せてくれたちんまりとした老人だった。
李順は管理人である老人に夕鈴を任せると「では」と消えてしまった。
「遅かったのう。メガネの小僧にたっぷり絞られたようじゃな」と笑われた。
「あ、駅から送ってくれたお爺さんですよね?
その節はお世話になりました!」
「いやいや。普段あの駅を使う者も少ないでの」
「――え?」
ニコニコと老人は笑っている。
それ以上説明がないので、夕鈴は何がなんだか意味が分からず、少し困ってしまった。

少し話題を変えて夕鈴は話しかけた。
「…ええと、ずいぶんとお忙しそうですね」
「まあ、のう。陛下も側近も、それが仕事じゃからなあ」
「お仕事、ですか」
「お前さんはどこに行っておったんじゃ?」
「途中みた、カボチャ畑を見に行ってきました!」
「ほう」
「…見たこともないようなすっごく大きいカボチャが、ゴロゴロありました!」
「…もうすぐ、収穫祭じゃでのう」
老人は笑ったが、なんとなく少し寂しそうに見えた。
「…えっと。それから。トマトの樹を見て、お魚のイケスの研究室でお茶をいただきました! あと、道すがら焼き芋をごちそうになったり…」
「トマトの温室に寄ったのか。偏屈なやつがおったじゃろ?」
「――いました!
眉間にしわ寄せて、怒鳴られました」
「魚に音楽を聞かせる男には会ったかの?」
「会いました!
もしカボチャを大きくしたかったら、持っておいでって…」
「そうか、そうか。そりゃよかった」
老人はニコニコと笑った。

『何がよかったのか』夕鈴にはさっぱり分からなかったが
張老人が「よくやったの」と褒めてくれたので、
夕鈴の心はほぐれてニッコリ笑った。

ビルの一部が宿舎にあてられているらしい。
大きな職員食堂があったがもう既に営業は終わっていた。
「腹が減ったじゃろ」と布巾をかけたトレーを出され、逆に手間をかけてしまったと夕鈴は悪い気がしてしまった。広い食堂の端でぼそぼそ食べた。

世話人の張元老人は、ここでの生活を大まかに教えてくれた。

(…一人で食べるのは味気ないわね。
でも、あの恐ろしい陛下と一緒に食べるのはもっと居た堪れないでしょうね

正直、怖いモノは怖い――。
コロッと別人のような笑顔を見せられても…。
あの人の偽の婚約者だなんて、ほんとうにできるのかしら…)
と、夕鈴は悶々としていた。

豪華な個室スイートをあてがわれ、ドアから先は男の張老人から身の回りの世話をする女性たちにバトンタッチされた。

(なんの、冗談――?)と思いつつ、過剰な世話に目を白黒する夕鈴。

「お疲れでしょう、どうぞ湯あみして一日のお疲れをお取りください」と勧められる。

「背中をお流しいたします」と言われ、当然のように服を脱ぐのを手伝われはじめた夕鈴は、あわてて両手で前身をブロックし、赤面しながら辞退した。

風呂を出るとふわふわのタオルとバスローブがきちんと畳んで置かれていた。
その横には白いフリルのネグリジェ。

「…これ、着ろっていうの――?」

夕鈴は赤面をしながら胸の周りにバスタオルを巻き付けると、パタパタとバスルームを飛び出し、部屋に戻って自分のボストンバッグに一目散に飛びついた。

手荒くバッグのチャックを開けると、少々くたびれた茶色いパジャマをひっぱり出す。
ベージュの木綿生地に白い兎を染め抜いた愛用のパジャマ。

「…ふう。バイトっていうから
作業着しか持ってきてないのに…」

ボタンをはめて、肩からバスタオルをかけな、濡れた髪にドライアーをあてながらブラシで梳いていると、突然部屋の続の間からコンコンとノックされ夕鈴は面食らった。

「夕鈴さま、陛下がおみえです」

(えっ!?こんな夜に――
もうお風呂はいって…)
泡を食った夕鈴は声も出せず…というより返事をする間もなく扉は勝手に開けられてしまった。

顔を出したのは狼陛下。
夜着の上に藍色のガウンを羽織っている。

「――なんでっ!?」

ガタン、と立ち上がれば

「――なぜも何も
妻の元へ夫が通わぬ法がどこにあるのだ」
と、相手は余裕しゃくしゃく。

5m以上の距離をとって、つねに注意深く結界をはっていたのに、
黎翔はスイと身をかわすと容易く夕鈴の至近距離1mにすべりこむ。

頬を撫でられながら夕鈴は凍りついた。
(――て、貞操の危機!?)

恐ろしい狼陛下の陰の中にすっぽりと納まり
夕鈴は恐ろしさでガタガタ震えが止まらない。

「――初々しいことだ。
妻が恥ずかしがるのでな。
…おまえたち、もう下がってよい
二人きりにしてくれ」

「かしこまりました」
とおつぎの間から声が掛り、さらさら…と人の気配が去って行った。

完全に人の気配がなくなり、シーンとあたりが静まり返った。

「は~~~、肩こったぁ」
夕鈴の傍から離れ、ボスッと長椅子に座り込む陛下。

「あ、驚かせてゴメンね。
李順がとりあえず行っとけってゆーから」
ニコニコしている陛下。

あまりの変わり身の早さに呆然としながら夕鈴は見つめた。

* * * * * * *

――この白陽の土地で今求められているのは、諸外国とも渡り合えるくらい、地域一丸となって引っ張れる、強いリーダー(当主)だから――

『強くて怖い王様を演じているんだ』という黎翔の言葉を聞きながら
夕鈴は他人事ではなく、まるで自分のことのように切なくなってしまった。

(冷酷非情な狼陛下は幻で――
そこにいるのは、
自分とは全然違う自分を演じている
優しい王様。…)

夕鈴は思わず怖さも忘れて黎翔の隣に近づく。

「それって、カッコいいことだと思います!」

夕鈴は思わず熱く語るものだから、逆に黎翔が気圧されるほど。

「ありがとう」

「――そうよね。曲がりなりにも一度引き受けた仕事だもの。
やりとおすのが筋ってものよね。
よぉし、陛下っ!
できることがあったら、バンバン言って下さい!
なんでもやりますっ!
私っ、お給料分は頑張りますからっ!!」

「…うん」
黎翔はクスリと笑い「よろしくね」と彼女の手を取った。

「――あの。
…なんだか、ちょっと近いんですけど?」

「…そう?」
黎翔はニコニコと夕鈴の手に自分の手を絡めた。

「奥さん、なんだよね?」

「え?」

「OKってことでしょ?」

――バッと夕鈴は赤面すると、慌てて立ち上がった。

「…そっ、それはっ!!
あ、あくまで、バイトでっ!
表向きのことです~~~っ!」

黎翔はツイっと手をのばし
立ち上がった彼女の腕を取ると、軽くひっぱる。

夕鈴はポスンと黎翔の腕の中に飛び込んだ。

「なんでもやってくれるって?
…嬉しいなあ」

(茶色のくたびれた普段着パジャマなんか着なければよかった――)と
ふと変なところで夕鈴は冷静になって、後悔した。

「ぱ、パジャマ…」

「…うん?
よく似合ってる。
兎さんの柄、可愛い」

黎翔は木綿の生地越しにやさしく彼女の背を撫でた。

ドキドキと動悸は高まり、耳まで朱に染めた夕鈴は、
思わず相手を押しのけようと抵抗したが、
子犬のような黎翔は見た目に似合わず力があった。

「…え?」

にこやかにほほ笑む青年は何一つ特別に力んだ様子もないのに
クイッと軽く手首を返しただけで、あっというまに二人の距離は縮まった…というより密着していた。

(えっ、ええっ?
近い、近い、近い~~~!!)

抱きしめられた夕鈴は、ほとんどパニック寸前。

まったく身動きもままならず
黎翔の腕の中で釘づけになっていた。


「夕鈴、お願いがあるんだけど」
耳元にささやかれる。

「…なんですか?
藪から棒に」

せめて、言葉だけでも距離を置こうと
必死に他人行儀な言葉で抵抗する夕鈴。

「収穫祭のお祭りまでに。
私に、大きなカボチャを持ってきてくれない?」

「カボチャ?
――いっぱい、畑にありましたよ?」

「ううん、一番のカボチャ。
いちばん形好くて、色ツヤ良い、大きなカボチャが欲しいんだ」

「え?」
どこかで聞いたフレーズ。

――形よく、色ツヤよく。
そしてなにより一番大きなカボチャ――

「――21歳の収穫祭、だから…?」

「え?
――誰かに
何か聞いた?」

「いえ、その。さっき。
散歩してるときに出会った人から、
不思議な呪文みたいな言葉を聞いて――」

「…ふうん?」

黎翔の眼がキラリと光った。

「――夕鈴?」

名を呼ばれて、ドクン、と胸が跳ねた。

「はい?」

こわごわ夕鈴が見返すと、陛下はスッと紅い目を細めて
ジッと夕鈴を見つめていた。

そこにいたのは狼陛下。

夕鈴の額に口づけを落した。

「夕鈴――。
カボチャをくれないと
イタズラするよ?」



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秘密の苑・刺青の男[織座舎]陛下の花園へようこそ。”狼陛下の花嫁”の二次創作作品を綴っています。足跡などお気軽に残していただければ嬉しいです。【新刊】秘密の苑・刺青の男パラレルアンソロジーパラレルアンソロジーとらさんで取扱。【お詫び】拍手コメ御礼お休み中です。本当に申し訳ありません。お返事ご希望分はコメント欄へm(_ _)m

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