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いじわるなひと。1

【3巻あたりの世界観】【ねつ造】【オリキャラ】

* * * * * * ** * * *
いじわるなひと。1
* * * * * * ** * * *


後宮に美しく咲く花々。

「お妃様の御話し相手に
わたくしが?」

「ああ、そうだ。
くれぐれも粗相のないように」

「はい、お任せ下さい。お父様」

私が後宮に住まう「狼陛下の唯一の妃」のお話あいてとして
後宮を訪問する機会を得たのは、父上の仕組んだこと。

お妃様をかばって傷ついた父は、
手当を受ける間、心配そうに付き添う妃にこれ幸いに、と同情をひく。

「陛下は我ら臣にお心を開かれません。
ご覧くださいませ、かつてあれほど華やかだった後宮も
いまやあなたお一人。
陛下が人を遠ざけるの百歩譲っても、これでは貴女様まで気がめいってしまうのでは。
さぞ寂しくお過ごしのことでしょう――」

付け込む隙だらけの
田舎者丸出しの妃だという。

「あなたが楽しくお健やかにお過ごしになることこそ、ひいては陛下の御ため」
そんなふうに取り入って、半ば強引に取りつけた状況はありありと目に浮かぶ。


* * * * *

「氾青珠でございます
どうぞ青珠とおよびください」

わたくしの顔を見て、見惚れてしばらく声も出ない。

これが、狼陛下の唯一?
――大したことのない。

十人並みといってもよい容貌。
立居振舞もなにやらとってつけたようにギクシャクとした感は否めない。
お里が知れるというもの。

間を埋めるために極上の笑みで微笑みかければ
――何? 
あわあわと慌てているばかりで
言葉も出ないではないか。

ドギマギしているその様子。
真っ赤に頬をそめて…
まるで、恋。

こっちがこっ恥ずかしいから、やめてほしい、その反応。

だがしかし、紅珠の笑顔に心とろけぬ者もあるまい…
それは誰よりも私がよく知っている。
仕方がないことかもしれない。

裾がはためく。
あわく諧調をつけ裾に行くほど曙色に染め上げ
手間暇かかる細やかな刺繍を随所に施し、なおかつ軽い。

…ふうん。紅珠。いつもよいセンスだね。

双子の君だが、こういうところはいつも感心する。

紅珠がデザインした原画をもとに
金糸銀糸をふんだんに織り込んだ最高級の生地を織らせ
蒼玉国で一流の職人に仕立てさせた衣裳。

本当は紅珠が着るはずだったのだけれども。
前の晩からの徹夜あけということもあり
朝から機嫌が悪く、
「今日はぜったいわたくし参りません」と駄々をこね出てこない

「青珠、お願い」と泣かれてしまえば…
わたくしが可愛い紅珠の涙に抗うことなどできようか。

わかっている。紅珠は、ただ
明日のイベントに間に合わせるため、原稿を書きたかっただけなのだ。



私は、氾青珠。14歳。
紅珠の双子の兄。
同じ日に生を受け、見た目そっくりな二人。

我々が生まれた日。
氾大臣家初の姫誕生、ということで父上は大いに喜んだそうだ。

娘ばかりを溺愛する父親の様子を見ていた母君は心配をした。

「紅珠、紅珠」と父上が双子のうち娘の紅珠ばかりかわいがるものだから。

母上は「青珠がこれでは可哀想」と
…そして悪戯心もはたらいて

「お前も父上とスキンシップしておいで」と
私に女装をさせ、交互に私と紅珠を入れ替えたそうだ。

父上がまったく気づかず頬ずりしているのを見た母上は安心し、
そのうち『青珠を、へたに男扱いしない方がよいのでは…』と思ったらしく
私を紅珠と同じように女の格好で育てたのであった。

「母上は、私を女としてずっとお育てになるおつもりだったのですか」
とある時、何気なく尋ねたところ
「ある程度歳をとれば男の姿に戻そうと思ったのだけどね。
あんまり二人とも愛らしくて、なんとなくそのまま」
おほほ、と笑った。

そんなふうに、ユルくなるのも仕方がないといえば仕方がない。

長男の水月兄さまはのんびりしすぎた人柄で「陛下が怖いから」と出仕をしぶるものだから、父上も立場上頭をかかえるありさまだったし。
次男は次男で表にでてこない。

だから私があまりしゃしゃり出るわけにもゆかず、
常に一歩も二歩も引いた立場で物事にあたるうちに
なんとなく女装のまま人生の大半を過ごしてしまった。

もちろん、男の姿に戻ることもあるのだけれど…
最近では父上も公認なものだから、案外気楽に女の格好を楽しんでいる。


* * * * *

あんまりお妃がのほほんとしているものだから
ついつい意地悪な気分にもなる。

琴は水月兄上仕込みで、得意の一つだ。

「お恥ずかしゅうございますわ
まだまだ未熟者で」

嫌味に聞こえぬよう、紅珠のような笑顔を振りまく。

ざわざわとしていたあたりを払う威圧感。
わたくしは分かる。
陛下がこちらに向かっていらっしゃることを。

その途端、噂の狼陛下が現れた。

妃が私を紹介すれば

「ここに来る途中、琴の音がきこえた
よい腕だな」
とお褒めの言葉を頂戴する。

(け、あたりまえだろ)
思わず胸の中では返答するが

「妃をよく楽しませてくれ」

「はい
精一杯努めさせていただきます」

思いっきり可愛い顔をする
そう――目の前の紅珠が、いつもするように。

そんなふうに、陛下の気を引いて。
紅珠がきたとき、イチコロに仕留めてもらえばよい―――。


「お妃様は琴を?」
「いえ、私は聴く専門です!」
へんな返答をするからブッと吹き出してしまいそうになるのを抑えるのに内心必死。

「そういえば、いつもご衣裳も可愛らしいですよね」
そんなふうに褒められれば
それは紅珠の選んだものだから、当然です、と思わず胸を張りたくなってしまう。

可愛い紅珠。私の、半身。
君がどれほど聡明で、どれほど愛らしく、どれほど綺羅綺羅しいか。

そう。この世で一番かわいいのは、紅珠、君だと
わたくしは世界に触れ回りたいほど――君のことが大好きだ。

「蒼玉国の後宮で流行っているデザインですわ…」と
説明にもついつい力がはいってしまう。

「お妃様も陛下にお願いなさってみては?
きっと素敵ですわ!」
といえば

「陛下は国のため民のため華美な生活はお控えですから
私もわがままを言うわけにはまいりません」
とくる。

――変わってる。

「男の方って
甘えられるのもお好きなもの
…ですわ」
とちょっと近くにすり寄れば
真っ赤な顔をしてドギマギしているものだから
この妃はイジリ甲斐がある。


…唯一の、妃?
――にしちゃ、男慣れぜんぜんして無い…?

と、この時。
わたしはふと感じてしまった。


この妃は、男をしらない――と。


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