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秘すれば花なり(4)

100万HIT記念、凛さまリクエスト「女官長と夕鈴の出会い」です。


【オリキャラ】【ねつ造】【微糖】【微活躍】

伝説の死神の仮の姿、女官長さんが
ほんのちょっぴり活躍(小手先)。


* * * * * * * * * * *
秘すれば花なり(4)
* * * * * * * * * * *

薄紅色の衣裳に金色の帯を締め
領巾をなびかせた妃。

遠くには宮殿の楼閣をのぞみ
なだらかな丘陵の花畑を渡る風は香しく。
宮の渡りの階からゆっくりと女官長に手を引かれ降りてくる姿を
黎翔はまぶしげに見つめていた。

「愛しい私の妃よ。
今日の君はまるで花の精か桃源郷に住むという仙女のようだな」

甘い言葉で出迎えられた妃は、恥ずかしそうに頬を染め
困ったような笑顔を団扇で隠す。

(みなさんにそそのかされて、こんな格好で来ちゃったけど。
たかがお散歩に誘われたくらいで、
こんな着飾って――派手だと怒られないかしら?)

黎翔の後ろに立っている、上司のメガネが冷静にこちらを見つめているのが気になってしょうがない。

「薄紅色の衣も、髪飾りも。よく似合っている」
王は嬉しそうだが、李順の表情は一切変化がない。

(あ。――李順さんのメガネ、今、光らなかった?)
やはり着飾りすぎた、しまった、と夕鈴はギュッと目を閉じる。

「では、参ろう。東の花園まで…」
「は、はい」と答えながらも、夕鈴はモジモジするばかり。
黎翔が手を伸ばすが、夕鈴は目をつぶったまま。

女官長は妃の手を引き、差し出された主へと妃を引き渡す。
「…あ。あの」
(ち、近いんですけど――)
妃が身を縮めれば縮めるほど、王は二人の距離を縮め

妃の顔を覗き込んだと思えば、いきなり抱え上げた。
「ん? ――どうした」と問う。

(ぎゃっ!? みなさん、見てるんですけど、恥ずかしいんですけど!)
こんなときでさえも、周りに人がいれば『仲良し夫婦演技をしなければ』と必死な夕鈴。

かくなる上は、このみっともない顔をどこかに隠すしか――

夕鈴はぎゅっと顔を黎翔の頸筋に埋め、心情を吐露した。

(へーか! 李順さんが、怒ってます!)
(…は?)
暖かい妃の吐息を首筋に感じ、黎翔は気をよくした。
甘い狼陛下はますます妃を抱きしめる。

(後ろから、李順さんが睨んでますって!
こんなにチャラチャラ着飾って、浪費家の妃って思われてません?
それか、かんざしでも落としやしないかとハラハラしてるのかも…)

(…そんなことはない。よく似合っている)

ボフン、と湯気をたてる妃を、なだめ愛でる王。

いつまでたっても二人の世界は継続中。
散歩どころか一歩も進まない。


そんなお二人だけの時間を邪魔してはなるまいと
周りの付き人たちは
皆一様におもわず漏れそうになるニコニコ顔を必死に噛み殺した変な顔をしている。

さりげなく遠い目で視線をはずし、待ち続けていた。

李順は無表情を崩さないが、
そんな様子をみて、ますます沸点は上昇中。

あまり長い間二人がひそひそと睦み合っているものだから
ついにしびれをきらした李順が、コホン、と
黎翔の背中で咳払いをした。


この間、その先の繁みの中に潜んでいる人物がいた。

つい先日、国王から処罰を言い渡された男。

名家の次男坊であったが、怠け者で、チンケな贈収賄で出世を願い、管轄地においてゆすりたかりまがいの搾取を行っていたことが明るみに出た。
出世の道を立たれ、家名に泥を塗ったと家からも放逐された。

国王を逆恨みし、何とか一矢報いたいと、
こうして庭で待ち伏せをしていた。

だが、妃を抱き上げた国王は、なかなかこちらへ近づかない。

あと30歩(ぶ)ほどの距離。
もう少し引きつけなければ、奇襲はできない…。

窮屈な格好で花木の繁みにもぐりこみ、腹ばいになり息を潜め
固い地面に身を伏せている間、
繁みを彩る赤い花と緑の葉影越しに、
イチャイチャしている国王の姿だけを凝視していると
無性にイライラとしてくる。


男は腹が立って仕方がなかった。
「散歩とかいいながら、あんなところで抱き合って…
ちっとも近づいて来やしない!」

恥ずかしげな妃の耳元に王が何かを囁くと、
妃は身をよじって、ますます王の胸に頬を摺り寄せる。

そんな彼女の髪や手に触れ、
ちょっかいをかけまくって困らせる王。


『狼陛下が、なんだーー!
卑しい妃に執着し、
堕落しきった愚王め、
貴様に、私の何が裁ける!?」

男のイライラは沸点を超える。



待ちあぐねた挙句、もういっそ、ここから飛び出して…と
決心を重ねた時。

ブワっと風が通りすぎ、
ガサガサっ木々の木の葉を揺らしながら、妃の裾を巻き上げた。
ちらりとのぞいた妃の白い足に、王はすかさず手を当てた。

「(ぎゃ~!)へっ へいかっ
お戯れを~~っ!!」
一際大きな、悲鳴交じりの妃の声が上がり
ハハハ、と国王の大笑いが響き渡った。

風が吹いた瞬間、繁みに潜む男の耳元で
繁みがガサっと大きく揺れ
ポタリ、と赤い花が一輪落ち

男はそのまま気を失った――。



静麗女官長が、そそと立ち上がり
バタついて乱れた妃の衣裳の裾を直した。

「陛下…。
そろそろお進みいただいても…」


「うむ、悪かった。
そんな魅力的な白い足は、私以外の誰にも見せないでおくれ?
君が愛らしすぎるのが悪い。
妃よ、機嫌を直せ――?」

甘い狼陛下に翻弄しつくされ
憤慨し、真っ赤になった妃は総毛だっていたが

黎翔はニコリと笑いかけ
妃を抱きかかえたまま大股で歩き始めた。

「へいかー、お散歩なら
私、自分の足で…!」

「よい」

「陛下が疲れてしまいますっ!」

「こちらの方が、気が休まる――」

のんびりと散歩をする二人の後ろから、
そろそろと付き人たちも目を伏せたまま移動をする。



風の仕業に紛れて、地面に落ちた一輪の赤い花。
広い後宮の庭に、一輪の花が散ろうと
だれも気にもせず。


繁みの中には気絶した男が一人。

いずれ浩大が回収するだろう――。


何があったかは
黎翔とその有能な隠密以外、分かる者もなかった。



風にたなびく女官長の袖から小さな礫が打ち出されたなど、
いったい誰が気に留めよう?

なにしろ目にもとまらぬ速度で飛び出して
30歩(≒約40m位?)も離れた繁みの中に潜む人間の額を
正確に手加減して当てるなど、人間業ではなかった。


――そんなふうに、
表面的には穏やかに
今日も妃の安寧は守られる。


狼陛下の花嫁は
密やかな恋心を秘めたまま

狼陛下に愛でられる。



*


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凛さま

浩大は、女官長さんが近くを守っていたので
ちょい外周のほうに回っていたのかな…と思います

花畑とか開けた庭では
あまり隠密の隠れられる高い木とかなさそうな心象風景だったので←?


結局、陛下はイチャついていたかったのですね(笑
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