FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

秘すれば花なり(2)

100万HIT記念、凛さまリクエスト「女官長と夕鈴の出会い」です。


【オリキャラ】【ねつ造】
女官長目線。

* * * * * * * * * * *
秘すれば花なり(2)
* * * * * * * * * * *


たとえ心を伴わなかったとしても
上っ面の『笑顔』を浮かべることは
何ら苦労はない。


それは、幼い頃から叩きこまれた作法の一つに過ぎない。

私の姉、弟と伴に
幼いころから厳しい訓練を課せられ
ありとあらゆる教養を身に付けさせられた。


真の姿を見せることなく
もう一人の自分を演じ切るのは
今や息をするよりも容易いことであった。


貴族子女として官吏として王宮に士官する表の顔と、
草としての裏の顔、二つの顔を、持っている。


わたしは、草。

二つの顔を持ち、まぎれ、ひそむ。

ただ一人の主上のため
「その時」に備え、決して本質を人に見せることはない。


表の顔は貴族でありながら、
王家の「裏」を支える一族の宗家に生まれた。

お仕えする主のために
誰にも知られず忍び草として周縁にまぎれ、
諜報活動、破壊活動、浸透戦術、暗殺など
『影』の役目を請け負った“家”

皮肉にも
そんな暗黒宗家の歴代に於いて
最も色濃く血を引き継いだといわれたのは、女の私。


――人は私を「伝説の死神」と呼ぶ。

この世で地獄を見たければ、私の瞳を覗くが良い。
見た者は全て、お望み通りあの世へ送り出そう。

リーリー。

誰もが震え怯え
決して口にしてはならぬ名。




「ねえ、お母さん。リーリーって、どんな人なの?
美人? ――それとも、とっても不細工なの?」

「しっ! 
彼女の顔を見たいだなんて、とんでもない!
それに、リーリーの名を口にしては、いけませんよ?
なんでも一里四方の全てを耳にし、瞬時に現れる化け物だそうだから…。
決して口にしては、ダメ。
彼女の顔はこの世の誰も、見たことがないそうよ
見たら最期、皆、地獄の門をくぐってしまって、
この世には生きていないのだから…」

「きっと、恐ろしい顔なんだろうね。
見たら心臓が凍ってしまうくらい…」

「…さあ、お前たちも、もうおやすみなさい。
伝説の死神に、魅入られるまえに
眼を閉じて、お布団で寝てしまいなさい?」
…と。

今ではそんなふうに
すでに各家庭で母親が子供たちを寝かしつけるため
語り継がれているという――。


* * * * * * * * * * *

李順殿に連れられ、庭を横切り四阿へと向かう。

正直、陽光は好まぬ。
だが仕事とあらば仕方はない。

そもそも後宮の『女官長』と言う立場は
真昼間に陽光にさらされるのは不本意であるが
国王陛下直々のお達しとあらばいた仕方がない。

うつむいて従う。

池畔には涼やかな風がそよぎ、我が主上は凛と立ち尽くす。

その傍らの女性に私は紹介をされた。

「これから、君の世話をする女官長だ」

目の前には、質素な成りの若い女性が立っていたい。

李順殿がイライラ、ハラハラされるのもなるほど、と頷ける。
あまりにも『王宮とかけ離れた少女』だったから――。

『国王が身分の氏素性の知れぬ低い身分の妃を突如王宮へ』
『国を傾ける悪女』
『父王と同じ轍を踏む愚王』

…そんな噂がちらほらと市井でも流れ始めていることは知っている。
それらが主に悪意を持つ者により、意図的にまき散らされた情報であることも…。

――だが私は、そんなことはどうでもよかった。


私は私なりの方法で、彼女の氏・素性はすでに調べを付けていた。

我が主の傍に置かれる人物であれば、それは私にとって必要欠くべからざる一手順にすぎず、あくまで独自に調べをつけていた。

だから、李順殿から詳しい説明を受けることはなかったが

彼女が、下町の娘であることも、その家族構成も。
彼女がたまたま採用されたバイトであることも。
下町での交友関係も、父親の背負った借金も、弟の成績も――。

もっと深いところまで、一通りの情報は持っていた。

まあ、彼女が町娘であろうと、大貴族の愛娘であろうと
私にとってはどうでも良いことだった。

私は、私の役目を、淡々とこなす。

それは私が草として役目を全うする上でもっともささやかで、最も大切なルールであった。


「お初にお目にかかります。わたくし静麗と申します。
お妃様、これからわたくしが一身を賭して貴女様のお守り申し上げます――」

深々と礼を尽くす。

儀礼上、主上の定めた妃を遇するに、それは当たり前の作法だ。


微笑む。


――多分、私は心の底から笑うことを知らない。

だからその微笑みが本来あるべきように、あくまで自然に行われるべく
私は常に細心の注意を払っているのだ。

私は後宮を束ねる女官長として仕官している。
これまで、長い間下積みを経てこの地位に就いた。

李順殿も、その点について何も疑う余地は無かろう。
私は貴族の娘で、後宮に身を捧げた、いわゆる『嫁き遅れた古参』の一人に過ぎない。

…そう、あくまで自然に見えるよう、私はキャリアを積んだということだ。

だから、たとえ心が空であろうと
私は全てを完璧にこなすことができる…はずだった。


私が礼をした時、
妃、という町娘はいきなり私の手を取って、跳びはねた。

「女官長さん、
これから宜しくお願いいたします!!」

曇りなき眼は、まっすぐに私を見つめた。

思わず私はドキリとした。

その眼差しはあまりにもまっすぐで、
眩しすぎた。

嬉しそうに私の手を両手で包む。

「仲良くしてくださいねっ!」

手を取られ、つよく揺すぶられ…

その温もりと、流れ込む血脈の波動に
私はクラクラとめまいがする思いだった。


私にとって
血の持つ因子のその人たる本質は、素通しで
手を触れれば隠しようがない類のものであった。


だから、それまで私は
人に触れることを好まなかった。

人の持つ害毒に、身を汚すことを好まなかったから――。



ところが、この「偽妃」の持つ波動は透明で、
他を侵すことがなかった。

それどころか
闇の住人である私ですら、そのあまりの心地よさに魅かれてやまぬ甘露をたたえ…まさに彼女は『泉』であった。


だから、思わず
私は心の底から『笑った』のだ。


「はい。
何事も御心のままに
お任せくださいませ」

と――。




胸が暖かくなる、心の底からわき上がる『笑顔』というものの存在を――

この日、
私は、この夕鈴という
狼陛下の唯一の妃に、教わった。



*
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

凛さま

女官長さんに愛のメッセージありがとうございました(´ω`*)

今回は女官長さん話でいっぱいです、
楽しんでいただければ幸いです
検索フォーム
最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
カレンダー
10 | 2018/11 | 12
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
プロフィール

おりざ

Author:おりざ
秘密の苑・刺青の男[織座舎]陛下の花園へようこそ。”狼陛下の花嫁”の二次創作作品を綴っています。足跡などお気軽に残していただければ嬉しいです。【新刊】秘密の苑・刺青の男パラレルアンソロジーパラレルアンソロジーとらさんで取扱。【お詫び】拍手コメ御礼お休み中です。本当に申し訳ありません。お返事ご希望分はコメント欄へm(_ _)m

アクセスカウンター
ただいまのご来訪数
現在の閲覧者数:
ありがとうございます
■(キリ番)カウンターでキリのよい番号に遭遇された方はお気軽にご一報ください^^

■オフ活動■ おりざの本[織座舎] 一覧 → こちら
陛下の花園へようこそ
~ご注意~
≪以下あらかじめご了承のうえ、本サイトをお楽しみください。≫

・原作者様ならびに出版社様とは一切関係ございません。
・此のブログは日々の日記並びに二次創作作品の倉庫、管理人本人の自由な自己表現の場です。
・この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件、史実などにはいっさい関係ありません。また原作と異なる設定など、表現、その他多数捏造あります。

・二次創作の場です。
・ブログ内容に関する苦情は受け付けておりません。出来る限り注意は払う意向ですが個人的表現の場という位置づけの運営上、万人に対して万全を保障するものではありません。
・読む際は各作品の冒頭の説明・ご注意等にてご判断ください。読後いかなる不都合が生じても当方はその責任を負いかねます。

・ご感想お待ちしております。

・当ブログ内の作品の著作権はブログ管理人に属し、無断コピー・無断転載は固く禁じます。
Twitter
 
RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。