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秘すれば花なり(1)

100万HIT記念、凛さまよりリクエストいただいたお題です。

━━━<お題>━━━
女官長と夕鈴の出会い
━━━━━━━━━━
夕鈴と女官長さんが初めての顔合わせをしたお話が読んでみたいです。
そして女官長さんが陛下の、夕鈴の、恋心に気づくまでみたいな…( ・∇・)
どこまで女官長さん好きやねんって話ですけど、大好きなんです(* ̄∇ ̄*)

…とのことで、女官長リーリーと、夕鈴との出会いを。


凛様にささげます。

【オリキャラ】【ねつ造】

* * * * * * * * * * *
秘すれば花なり(1)
* * * * * * * * * * *


――白陽国 国王 珀黎翔

即位後の反乱制圧、中央政治内部の粛清。数多の業績を持つ彼を
人々は恐れて
冷酷非情の『狼陛下』と呼ぶ。


そのお方から直々にお呼び出しとあらば、それは勅命で。
私には一切の選択肢もなく
私は後ろにゾロゾロと侍女らを引き連れ、非常に居心地悪いまま、広い広い後宮の庭園の中を歩いていた。

一挙手一投足、何か変ではないかと、気を配ることに必死で、
抜けるように青い空も、美しく咲き乱れる後宮の花々も、何一つ目には入ってこなかった。

生垣越しに、ザワザワと人の気配がし、私は思わず歩を止める。

突然、大きな声が響く。
「――もうよい!」

キン…と、凍えるような空気があたりを支配した。
陛下―――?

生垣の向こうから、ザッザと大股に歩みながら現れたのは、ほかならぬ国王その人。
「しかし、この度のご処断はあまりにも――!
どうかもう一度、お考え直しくださいませ! どうかっ…」

あたりには官服を身に着けた数人の人々が取り巻き、
そのうちの一人が必死で国王の裾を握り締めんばかりに這いずりながら後を追っている。
だが、誰も彼もこの狼王を恐れ、下手なかばいだてで失態でも犯せば、即ち自らの命がないと、ピリピリと青ざめた顔をひきつらせて、王の後を無言で付き従っていた。

「命が惜しくば、即刻立ち去れ!」
すがりついていた男は、陛下が腰の佩き物に手を掛けたのを見て、ついに絶望し伏して泣きわめいた。両脇からすぐさま屈強の兵士が男の両腕を抱え、引き上げ連れていかれた。
彼がむせびびすすり泣く声は風に乗って遠くまで聞こえた。

私はずっと息をすることも忘れ、小さく固まっていた。

国王は、ゆるゆるとその先の四阿まで歩き、その側近が人払いを命じると、あたりはやっと静かになった。

「さ、お妃様…」といざなわれ、私は再び歩き出す。
垣根の曲がり角を先へ進む。
あたりが開け、美しい花々に囲まれた白い四阿が一望できる。
湖面のさざ波にキラキラと反射した美しい景観の中に、私を呼び出した主は立っていた。


国王陛下は私の姿を認めると、朗らかな声で呼びかけた。
「――夕鈴!」

名を呼ばれ、ドクンと鼓動が胸を突き破りそうなほど大きく跳ねる。

――私は、汀夕鈴。

そんな彼の唯一の妃だ。

陛下の隣にいるメガネの人がこちらを見ている限り、迂闊な行動はできない。
四阿へ続く玉砂利の径を一歩一歩踏みしめながら、
『どうか妃らしく見えますように。何も落ち度がありませんように』と願う。

そんな私をもどかしく思うように陛下は大股にこちらへと歩み寄ると、ひょいと私を抱き上げる――。
「きゃっ!」

はっ、恥ずかしいんですけど
ひ、人が見てるんですけど?

『な…なに、するんですかぁ――っ!?』
胸はバクバクと高鳴り、思わず悲鳴を上げそうになりながら、必死で押さえる。

後ろには侍女さんたちがいて、
目の前には、小姑よりうるさい私の上司が、立居振舞の一つ一つを査定している――。

逃げ場のない私は、赤面しながら必死に耐える。

「お、御待たせして申し訳ございません…!」

陛下は
「なに、時間通りだ。
――わが愛しい妃よ、待ち焦がれたぞ」
と甘い言葉をかける。

(がっ、我慢よ…夕鈴っ! これは、仕事―――)

人払いをすると、侍女たちは下がり、いつまでも抱っこされているのが途端に恥ずかしくなる。

「へ、へーかっ! 大げさですっ!
降ろしてくださいっ!!」

「陛下、仲良し夫婦演技はもう結構ですよ?」
李順さんの淡々とした声がかかり、
陛下は「えーっ?」といいながら
不承不承、降ろしてもらうことができた。

途端に厳しい言葉が、メガネの上司の口から矢継ぎ早に飛び出した。

「夕鈴殿! なんですかっ、さっきの歩き方といい、
陛下にお会いした時の引きつった笑いといい…
もう一度、お妃教育を一からやり直さねばなりませんね!」

李順さんに小声で注意され、――ゾッとした。
また特訓――?
想像しただけでも、汗が噴き出す。

『ちゃんとしなきゃ、これは仕事!』

――私の役職名は、正確にいうと狼陛下の『臨時花嫁』、…ただのバイトだ。

四阿にはすでにお茶の準備がされていて
陛下は、ニコニコと私の入れるお茶を楽しむ。

――そしてこれが、さっきの人と同一人物。
若くして即位した彼は、臣下や他国へのはったりのため
…この子犬のような本性を隠して恐ろしい『狼陛下』を演じているのだ。
これらは後宮でも本当にごく一部の人しか知らない秘密…。

…私はここで備品を壊してしまい、その借金のために働いているわけだ
が。

「それで、夕鈴殿。
あなたの勤務についてですが――」

そう、せっかく一旦借金がの返済が完了しそうになった時、私はまた次の備品を壊して借金をしょい込んでしまった。

「…で、あの壺のお見積もりは―――」
「…お気の毒ですが」
とメガネの上司がそろばんをはじいで見せた数字は、目の玉が飛び出すような額だった…。

今回割ってしまった青磁のツボは最高級の逸品とのことで、
「なにも、よりによって…」
と李順さんはため息をつくばかり。

壊してしまったものは仕方がない、弁償するしかないじゃないですか――!

「それで、今日あなたにここに来ていただいたのはですね。
その借金の月々の返済額と、今後バイトが長期化するにあたって、確認しておきたいことを少々、というわけでお呼び出ししたわけです――」

「はあ」

李順さんはパチパチとそろばんをはじく。
「あの、もう少し弟への送金額を増やしたいんですが――」
「…このくらい?」パチと珠をはじく。

「すると、月賦の回数が増えて、利息分も増しますが――それでも宜しいのですか?」
「え? 利息?」
「当然でしょう!」
「…それは困ります――じゃあ、やっぱり、これくらい、で」
パチリとそろばんの珠を指で押し戻す。
「まあ、このあたりが妥当でしょうね…。小娘の稼ぎとしては…」

「それで。
危険手当等出るようになれば、随時返済は繰り上がってゆきますので
機会があればしっかり働いてくださいよ?」

「――え?」
「李順!」陛下が急に狼になる。
だが、李順さんはドライな笑いを浮かべ
「あくまでも、危険なお仕事が生じたら、という仮定のうえで
先に条件を申し上げただけですよ?」とカラカラ笑う。

「…」
陛下は気に入らなそうな顔をなさっているが、
パチンと指をはじき「――李順、例の」
「…あ!」
李順さんがそこで思いだしたように、立ち上がり一旦四阿から消えた。

「…何ですか?」
「君に会わせたい人がいる。李順に呼びにやらせた」
「はぁ」

しばらくして李順さんが戻ると、後ろからきれいな人を連れてきた。

つややかな黒髪。
伏し目がちの切れ長な目を縁取るまつ毛。
白い顔にくっきりとした美しい眉。

官服を身に着けていなければ、王族にさえ見間違えそうなほどの威厳。

「これから、君の世話をする女官長だ」

「…え?
そんな、偉い方を…宜しいんですか?」
思わず心苦しさに、眉をひそめてしまった。
これまでの侍女さんたちの甲斐甲斐しい献身的な仕事ぶりにだって、申し訳なくて涙がでるというのに…後宮を束ねる、女官長さんが?


「今まで下っ端妃ということで、あなたにも最低限の侍女はお付けしてしましたが。
これからバイトが長期化するとなれば、口の堅い信頼できる者を身近におかねば、
我々の神経がすり減ってしまいますよ――」
李順さんがそういうのなら、そういうことなのだろう。

陛下も「安心して任せたらよい」と狼陛下の口調で言うものだから、
私には良いも悪いもなく、お任せするほかなかった。

女官長さんは、私の方をみるとうっとりするほど美しい微笑みを浮かべ、
深々とお辞儀をして挨拶を述べた。

「お初にお目にかかります。
わたくし静麗と申します。
お妃様。
これからわたくしが一身を賭して
貴女様のお守り申し上げます――」

あまりに優美なその動きに見入ってしまいながら
私はハッと正気に戻った。

「あっ、はっ、はいっ!
ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願い申し上げますっ!」



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