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王子と乞食(3)完

ラスト・パートです。

【パラレル】【年齢操作】
青慎10歳、夕鈴6歳、几鍔9歳、李翔10歳、李順13歳。
100万HIT記念、聖瑠桜さまリクお題。

ではどうぞ――。

* * * * * * * * * * * *
王子と乞食(3)完
* * * * * * * * * * * *

そんなぐあいで、几鍔のつてで青慎と夕鈴の三人は、恐る恐る「李」という人の家に足を運んだ。

最初、几鍔から見も知らずの少年から論語を渡された青慎は(こんな大切な本を、ポンッと投げて貸してくれるだなんて、…どんな家の子なんだろう)青慎は不審に思った。
そして更に詳しく聞いてみれば、どうやらその李家というのは、王都の下町、章安区の一角に屋敷を持ち、白陽国の都市部(いわゆる町方)の行政・司法を担当する「町奉行」呼ばれる役職についている貴族の家柄だと聞き、青慎は驚いた。

「そんなとこの子に、僕ら、呼ばれたの?」
「ん、こいって」
「なんで?」
「さあなあ、その李翔ってえのは。ずいぶん気まぐれな感じで…。
何考えてたのか、よくわかんねー。
とにかく青慎さんが念願の本読めて、良かった」と几鍔は笑った。

高鳴る胸に震えながら、恐る恐る論語を紐解けば
「子曰く、学びて時にこれを習う、亦説(よろこ)ばしからずや。
朋(とも)あり遠方より来たる、亦楽しからずや。
人知らずして慍(うら)みず、亦君子ならずや。」
青慎が読みあげる。
「おにーたま、どういう意味?」

「この本には、孔子様という偉い先生の言葉がいっぱい収められていてね。今読んだところは『学ぶことは楽しいよ』――って。
他にもね…たとえば『自分がされて嫌なことは人にしてはいけない』とか、この書物は人として大切な道を指し示して、僕たちの目の前を照らしてくれるんだ」

青慎が優しく夕鈴の頭をなでるので、夕鈴は、その本が兄にとって大切な言葉が詰まった書物なのだということがよく分かった。

「とにかく、お礼を言いたいな。
きっと李翔君って、心のきれいな子なんだろうね」

「うん、きっとそうよね」
ニッコリ笑う夕鈴の頭をもう一度青慎は撫でた。

そんなわけで、数日して三人は李家にお礼に言いに訪れた。

* * * * * *

後から思い出すと、どうしてそうなったのか良く分からないうちに
青慎は李翔の兄、李順の部屋に毎日通って勉強する羽目になり
彼らが勉強している間、夕鈴は李翔と遊ぶことになっていた。

ある日のこと、夕鈴と李翔は庭の片隅でひっそりと遊んでいた。
李翔はどうやら人目のないところが落ち着くらしい。
夕鈴と二人っきりになって、ようやくほっとした様子で
優しい子犬のような笑顔を見せた。


「りしょうさまは、おべんきょう、しないの?」
ふいに夕鈴は尋ねた。

「私は、いいんだ」

夕鈴にはその言葉の意味が良く分からない。
「――え? 
お勉強、きらい?」

「あそこにある本は、もう読んだ」
「あの本?」
「ああ、全部」

李翔は笑った。
夕鈴は目を丸くしながら後ろにのけぞった。

「ぜんぶ――?」

「うん、だから。いいんだ
順と違って、私は別の…」

「べつ?」

李翔は、袖をまくってみせる。

「――あざだらけ!?」
「私だけ、棒を持った家の者に、四六時中追い回される――
時には見知らぬ男まで」

「そんなに、ぶたれるの? 
李翔さまだけいじめられるの? 大丈夫?」

「…もう慣れたし。
もう昔ほど簡単にぶたれやしない」

「痛かった?
痛いの痛いの、とんでけ?」

夕鈴にあざのある腕をさすられて、李翔は暫く無言になった。
李翔は夕鈴の優しい気持ちが嬉しかった。

夕鈴は李翔がこのあいだつぶやいていたことを思いだし、
悲しそうな顔をして質問した。
「拾いっ子?
ここのおうちの子じゃ、ないの?」

「…さあ。でも、少なくとも
順と私は、全く似ていない」

夕鈴も、そう言われるとそんな気がした。

髪の色も、目の色も。体つきも。
…並んでいても、兄弟にはみえない。

悲しそうに李翔を見つめる夕鈴の手を握り、李翔はなぐさめた。
「君は、ぼくのことで、そんな顔しちゃダメだよ」

「…」夕鈴が静かにポロリと涙を落したので、李翔はそれを拭う。

「――元気出して? 
君がぼくのことで泣く必要なんかないんだよ」

「うん」
分かってるけど、ポロポロと夕鈴は泣いた。
李翔はそんな夕鈴がかわいくて、思わずぎゅっと抱きしめた。

「泣かないで」

ぐす、ぐすとそれでも涙は止まらない。
李翔はどうしても、この腕の中に居る彼女の笑顔が見たくなった。
(どうしたら、喜んでもらえるのだろう――)

「探そう!」
困った李翔は、グイッと夕鈴の手を引っ張り、
唐突に駆け出した。

「え?」
夕鈴は驚いて思わず目を見張った。

「――夕鈴。君が喜ぶものを
探しに行くよ」

庭の片隅の塀の隅に抜け穴があって、
李翔はそこから慣れた様子で屋敷から抜け出した。

「…どこ、いくの?」

「君が笑えるところ!」
李翔は朗らかに言い放つ。

抜け穴から屋敷を飛び出して、貴族館の連なる地区から離れると、のどかな街並みが広がった。

「さあ、何しよう、夕鈴。
なにか食べたいものある?」

「…ううん」
夕鈴は首をふる。
――本当は、夕鈴はおなかが減っていたけど。
こどもの李翔に食べ物をねだるのは、恥ずかしいことだと思った。

「じゃあ、何か欲しいものは――?
服とか、キラキラする髪飾りとか…」

「ううん」
夕鈴は首を振る。
常につつましやかに、贅沢とは程遠い環境で育った夕鈴にとって、お正月でもないのに新しいものを欲しがるだなんて、悪いことだと思っていた。

「じゃあ。君は一番何をしたいの?」

「おにいたまを、喜ばせたい!」

満面の笑みを浮かべ、兄を慕う夕鈴。
彼女の言葉を聞いて、ズキンと李翔の胸は痛んだ。

「…夕鈴」

「にいたま。ご本が欲しいって…
でも、李翔さまのお家で本いっぱい、叶えてくれたから」

「他に、君のために僕は何ができる?
どうやったら、君は僕のために笑ってくれるの?」

「――李翔さまからは
いらない」

「…え――?」

李翔はガーンとショックを受けた。

その様子があまりにも気の毒だったので、
どうしたのだろうと夕鈴は不思議そうに李翔をみつめた。

しばらくしてようやく言葉の出る李翔。

「――僕は、だめ?
どうして」

明らかに、いじけている。

「李翔様、働いてる?」

「働く――?」
李翔は夕鈴を呆然と見つめた。

「働かない人、だめ!!」

そう言われると、困った。
李翔は働くなど、したことがなかった。

「うーん。
じゃあ、働いて手に入れたものなら
君は受け取ってくれるの?」

コクと、夕鈴はうなづいた。

そうか。
だから彼女は物乞いをしたんだ――と思い至り
李翔は笑った。

「では、君の言う通り
働いてみるか」

李翔はポンと手を打つと、夕鈴の手を引いてどんどん道を歩き出した。
高級住宅街を抜け、細道に入る。
夕鈴の手を引っ張り、風のように走る。

夕鈴は必死で李翔についていった。

* * * * * *

李翔と夕鈴の二人が屋敷の中に居ないことに気が付いた

李順、青慎、几鍔の三人が二人を探し出した時、
李翔と夕鈴の二人は
乞食の層元締めのヤクザ者三人に囲まれていた。

夕鈴が兄のために働こうとした職業――乞食。
李翔はそれにチャレンジをしていた。

だがそれはもの知らずな子供。
だが知らない、では済まされるはずもない。

「おうおう、兄ちゃん、誰の許しを得て、
…ここで店、開いてんだ?」

「ここは天下の往来だ。
誰のものでもないだろう」

李翔はムシロの上で悪びれる様子もない。
自分の背丈よりもずっと大きいチンピラを、ギラギラと赤い瞳で真正面から見返す。

李翔の背中には夕鈴がいて、必死にしがみついていた。

「物わかりの悪い小僧。
ここらはな、オレらのショバなんだよ
勝手にされちゃぁ、困るなぁ、ん?
ここはキッチリとカネで片付けちゃあもらえねえかい?」
李翔と夕鈴は、物乞いの暗黙のルールも知らず、
路上で勝手にショバ荒らしをした、という角で
ここら一帯を取り仕切る組のチンピラ共に、いちゃもんを付けられていた。

そこに駆け付けたのが、李順たち。

こ汚いムシロの上に、
服から顔から、泥を擦り付け汚し、
乞食のふりをしている二人を見て、李順と青慎は卒倒しかけた――。

普段冷静な李順が、これほど激怒しているのも珍しい。
翔はつーんとそっぽを向いて、李順から視線を避けた。

途端に李順が吠える。
「――あ――あなたと言う人はっ
こんなところで、何をなさっていらっしゃるんですかっ!?」

(――順は、こんな時まで、他人行儀なのだ)
李翔はむっとした。

「ご覧のとおり…物乞いだが?」
サッパリとした顔の李翔。

李順は更に怒鳴ろうとした途端、

「いま取り込み中だ」と
一触即発の口火を切って翔は大立ち回りをやらかした。

10歳の李翔は、あっというまに三人の大人を投げ飛ばし、片づけた。

「ああああああ~~~~っ!!!」
李順が叫ぶ。

彼は父から厳しく言いつかっていた。
――決して口にしてはならぬ、大切な李順の使命について…。

ドシーン

大地を揺るがし、男が投げ飛ばされた。

大の字でノビたチンピラ達を見て
いつの間にやら取り囲んでいた物見高い野次馬の中から
やんやの歓声が上がった。

チャリンと銭が投げ込まれた。




李順は鬼のように赤くなったり青くなったりして
二人を見つめた。

そう。
『弟』などではない――。

『畏れ多くも――
あなた様は…この国の
――王子なのですよ――?!』

ひとたび読めば、すべて覚え、
ひとたび耳にすれば、忘れない。
その特異な才は
秀才の李順ですら並び得ず。

腕の立つ大人ですらいまや相手にならぬ、
その武に長けた才も。

その勘の良さも
瞬時に見通すその才気走った眼力も。


だから、あなたは別メニューなのに!

(貴方は、
特別な方なのですよ――?!)


ムシロの上に置かれた皿に投げ込まれた小銭を、
李翔は嬉しそうに指先でつまみ上げた。


「…夕鈴」

李翔は背中の夕鈴の方を振り返る。

「ぼく、働いた、よ?
ね――?」


夕鈴はにっこり笑った。

「李翔様、
お仕事がんばりました!」



「~~~~~~~!」

李順が大声で叫びたくとも、
それは一切、口にはできない相談だった。


王子と乞食
おしまい。

*


こんなかんじで
ごめんなさい。

時間はかけたんですけど…。
要素に振り回されて、心が見えなくなっちゃいました…。

でも楽しく書かせていただきました。
聖さま、リクエスト、ありがとうございました^^
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秘密の苑・刺青の男[織座舎]陛下の花園へようこそ。”狼陛下の花嫁”の二次創作作品を綴っています。足跡などお気軽に残していただければ嬉しいです。【新刊】秘密の苑・刺青の男パラレルアンソロジーパラレルアンソロジーとらさんで取扱。【お詫び】拍手コメ御礼お休み中です。本当に申し訳ありません。お返事ご希望分はコメント欄へm(_ _)m

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