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オートマータ ~あるいは、機械仕掛けの恋人~4

本を某書店にお求めくださった方、ありがとうございます。
すごくうれしいです。
イベント会場もとても敷居が高いですが、通販も…ですよね。
私もついこの間まではと○さん通販の存在は知っていても、恥ずかしくて注文なんてできない人間でした。
(自分の作品を置いていただくようになると、少し身近になって抵抗も徐々に薄らいでおりますが)
そこを乗り越えても「読んでみたい」と思っていただけたのなら、書き手としてこれほどの喜びはありません。
本当にありがとうございました。


【現代(たぶん)パラドックス・パラレル】【お年頃の黎翔さん】

財界の狼陛下こと珀黎翔社長が愛する自動掃除機ロボットの姿かたちは、バイト娘の汀夕鈴とそっくりに改造されていました。
そうとも知らず、ある日人間の夕鈴と入れ替わった時に遭遇した黎翔さんはそのあとちょっぴり、変です。

* * * * * * * * * * * * *
オートマータ
~あるいは、機械仕掛けの恋人~4
* * * * * * * * * * * * *

「…社長」
机で真面目に仕事をしていた黎翔は、李順の声にふと顔をあげた。

「本日のアメリカのデルタロイド社の会長とのご会食ですが。
わざわざアメリカよりご同行されたご令嬢が同席されると、先ほど…」

「断れ」
黎翔は有無を言わせず短く言い放った。

「しかし――大切な取引先の…」

「令嬢とやらのプライベートな取引に及ぶのなら、会談などまっぴらだ」

若くして財界のトップに君臨する独身の黎翔には、ひっきりなしに縁談が持ち込まれる。
その手の話題には一際敏感になっているが、李順としてもそろそろ相応の相手と黎翔にきちんと身を固めてもらいたい気持ちはある。

「この際ですから申し上げます。
社長、お見合いをされてはいかがですか?
デルタロイド社のご令嬢など、打ってつけではありませんか…!
家柄よく、美人で。経済専攻ハーバード大学のHBSでMBAを習得され知識教養においても文句ないお相手と存じます。
社長に意中の方でもいらっしゃるのなら別ですが、そろそろ本格的にご良縁があれば――」

「……」
黎翔は李順の言葉はまるで耳に入らないような顔で、広い部屋の隅に視線を飛ばした。
視線の先には、せっせと働いている掃除婦。

「――李順?」

「はい」
李順も黎翔の視線の先を追う。
そこには例の掃除ロボットがいつも通り黙々と掃除をしていた。
無機的な表情で、あちらこちらに移動している。

その動きはなんとも心癒されるのだが――黎翔は「違う」と小さくつぶやき、首を振った。

「ともかく。どうしても会食を実現したいのなら、令嬢は抜きだ」

「御意」
李順は引き下がった。

「――それから。老子を呼べ
…直ちに」

「かしこまりました」

待つ間も、黎翔はよどみなくデスクワークを続けていた。
李順は胸ポケットから携帯電話を取り出すと、短く指示を出した。
ピッと切ると、黎翔に向かって報告をした。

「すぐ、参るそうです」

「そうか」

ほどなくして人の気配がした。

「お呼びでございますか?」

「入れ」
黎翔が声をかけると、社長室のフロアに背の低い老人が手を合わせ神妙な顔でチョコチョコと歩み入る。

「何事に。…ございましょう?」

「同じセリフを返そう」

「は?」

「は?じゃない。…あれは何だ、と聞いている」
黎翔が指差したのは、掃除機をかけながら忙しそうにフロアの中を移動中の掃除婦。

「はて。
自動掃除ロボット、では?」

「違う!」

黎翔がいつになくイライラとして厳しい表情を見せた。

「違う…とは?」
李順はしばらく二人のやり取りを聞いていたが、黎翔が何にそこまでイライラしているのか、皆目わけが分からなかった。

「何か故障しているのか?
確かに充電に不具合があったようだが…
コミュニケート機能はどうした?
なぜ今は、あのようにつまらん?」

「不具合ならば調整はいたしますが
つまらん?とはいったい」
老子は知らん顔でとぼけて尋ねる。

この間、不具合調整をしている間、人間の掃除婦、夕鈴にしばらく入れ替わらせていたことだなと内心分かっていたが、いまだ掃除ロボットと人間の違いに気が付かない朴念仁の社長にチョビットばかりお節介したいというおちゃめな老人心が芽生えていた。

「…あれでは、ただの掃除ロボットだ。
“私の夕鈴”はどこに行った?」

もともと掃除ロボットじゃありませんかっ!という李順の突っ込みには一顧だにせず、黎翔は老子に詰め寄った。

「ちょっとお待ちくださいっ! あなたの夕鈴…?
――バカバカしい。社長。
あれは掃除ロボットですよ?
家電製品ですよ?
そもそもあなたのその掃除ロボットへの入れ込みようは、私には理解できません。」

「分からん…ただ、
彼女が普通に掃除をしてくれているのが
かわいくて、うれしいだけだ――」

「じゃから、夕鈴と名前までつけ、
まるで嫁のようにかわいがっておられたのですな?」

嫁じゃありませんっ、まったく!と、李順が息巻く。

「張。おまえ、あれに手を加えたのか?
何やら要らぬことは吹き込んでおらんだろうな」

「整備と調整は少々させていただきましたが」

「コミュニケート機能は――
この間はしゃべったぞ。あれは何だったんだ?」

「不具合がございましての。
最新技術とはいえ、まだまだ開発途中の機能ですから」
張老子は答えを濁した。

「反応が違う。この間のはまるで――」

「まるで?」

「ロボットとは思えない――」

「社長っ!
この掃除用ロボットはあくまでお試しキャンペーン中のレンタル品です。
短期間で帰っていただくものですから。
社長もそのように」

「もう買い取ったらどうじゃ、メガネの若僧?
ずいぶんと改造してしまったし。
なんといっても
わが社のテクノロジー部門の最新技術を投入したんじゃから。
もはやあれは企業秘密の塊じゃ!
トップシークレットじゃ!」

「なんてことしてくれたんですか~っ!」
喧々諤々ともめる李順と張の二人をよそに、黎翔はつぶやいた。

「……最新技術?
トップシークレット?
――違う」

くるりと振り返り、黎翔は立ち上がった。

掃除機ロボットはトコトコと黎翔の方へ近づいてきた。

「充電か…」
黎翔は掃除機ロボットと入れ違いに座を離れ、一面ガラス張りの窓の方へと向かう。

「社長?」

これまで、いそいそと人形を抱きしめていた人物とは信じがたいほど、黎翔は興味を失っていた。
掃除機ロボットは自力で椅子に座り、充電を開始した。

「社長っ!
このまま社長椅子にロボットが居座っていたら、あなたのお仕事が――
さっさと急速充電でもなんでも速攻やっちゃってくださいっ!」

「――否

あの時の夕鈴と。
これは、違う――」

寂しそうに肩を落とし、黎翔はとぼとぼと仮眠室の方へと歩いて行った。

「しばらく休む――誰も近づくな」

黎翔は社長室の奥へ行くと、小部屋の扉をあけ、ぱたりと閉じた。

社長椅子には、掃除用ロボットが充電中。
仕事半ばにして社長に逃げられた李順は呆然と見送った。


「…何ですか?
あれは」

李順がヒソヒソと老子に耳打ちする。

「恋わずらい、じゃ♪」

「はああああっ?」
李順は馬鹿にしたように張元を見下ろした。

「まあまあ、若僧。
みておれ。
ラブラブ・どっきりハプニング部顧問として、このイベントはワシに任せろい!」

「わが社にはそんな部はありません~っ!!」


*
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慎 さま

こんばんは、コメントありがとうございました~
以外に鈍いというか心が広いというか、動じない黎翔社長。
…さて。本物夕鈴と、どうなっちゃうんでしょうかね。
るんばるんば。

くまねこ様

はじめまして、コメントありがとうございました(*´ω`*)
王の環。これだけはいつか紙媒体に…と念願をかなえることができまして
お手に取っていただければ幸いです。
これからも、どうかよろしくお願い申し上げます//ω//
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