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オートマータ ~あるいは、機械仕掛けの恋人~3

オフ活動、終わりました。
楽しかったです――。良い思い出になりました^^
今年度中はおそとに出られないので、ゲットしたお宝でホクホク萌をつなぎながら、おとなしくしますよ~。



【現代(たぶん)パラドックス・パラレル】
財界の狼陛下こと珀黎翔社長が愛する自動掃除機は、インテリジェンステクノロジー部門顧問の張老子のお節介でバイト娘の汀夕鈴とそっくりの姿に改造されて――?

* * * * * * * * * * * * *
オートマータ
~あるいは、機械仕掛けの恋人~3
* * * * * * * * * * * * *

夕鈴は曲げていた背中をのばした。
目の前の拭きあげたばかりのガラス仕切りはピカピカだった。

夕鈴は早朝2時間、最上階のフロアをきれいにするこの掃除バイトを始めて2週間になるが、長期夏季休業中ということで普段人とすれ違うことはほとんどない。

秘書室や廊下だけでは手持無沙汰で、フロアじゅう手上がり次第に磨き上げている。

朝早い時間帯のせいか、例の『狼陛下』とは一度もすれ違ったことはない。

「…今日も、みあたらないわね――」

夕鈴は、秘書室の仕切りのあたりであの子を探した。

円盤型の自動掃除機、る□ば。
夕鈴は、る○ばの動く様子が見たくてたまらなかったのだが、初日におじいさんが手にしているのと遭遇して以来、見かけていない。

夕鈴はチラチラと見える範囲で伺ったが、あの子は今日も見えなかった。

時々掃除をしている人影が見えるので、
この部屋から奥のエリアはきっと別の人が担当なのだろう。

「…調子悪いのかしら」

まるで人相手のように調子が気になり、
少々がっかりして肩を落とした夕鈴。

「ふぅ…また今度、会えたらいいなぁ。
――さっ! あとは。水をすてて」
ガラス磨きや拭き掃除に用いた汚れ水が入った重たいバケツを両手にそれぞれ一つずつ持ち上げて、夕鈴は歩き出した。

その時、エレベーターの方で微かにチン…と音がして
珍しく人の気配がしたので、夕鈴は振り返った。

ドアが開いて降りてきたのは小柄な老人で、
チマチマとこっちにむかって歩いてきた。

夕鈴は「あっ、おはようございます!」とあいさつをした。

「おお、お前さんかい。
――ああ、丁度良い!」
長老子は、ずんずんこちらの方に近づいてきた。

「…おい、バイト娘。
ちょっとの間、手伝ってくれんか?」

「え? 何でしょう」

「社長室の中も、しばらく掃除しとってくれんか?」

「えっと、あっちの奥はやらなくてよい、と李順さんから言われてまして。
それに、誰か別の人が担当してるんでしょ?」

「ええと、その別の者をしばらくわしが借りるんでな。その間ちょっぴりお前さんに代わりをしていて欲しいんじゃ」
老子はチラリと夕鈴を見上げた。

「はあ?」

「掃除婦がおらんあいだに、万が一あの方がお出でになられたら、非常に不機嫌になるからのう…」

「…あの方?」

「陛下じゃよ!」

「ああ! あのものっすご~く怖いといわれてる、狼陛下――社長さんですね?」

「恐ろしい方じゃでのう。ま、そういうことでの。
宜しく頼むわ」

「掃除婦が居ないだけで怒るんですか?…」
夕鈴は顔をしかめて、ブルッと震えた。

老人が「うむ」とうなずく。

「分かりました。じゃ、しばらく、そっちの奥のお掃除をしてるだけで、いいんですね?」

「たのんだぞい」

「じゃあ、この水捨ててきたら…」
夕鈴は手にしていた重たい2つのバケツを持ってよっこらしょ、と給湯室の奥の方へ歩き出した。

* * * * * * * * * * * * *
夕鈴がバケツにきれいな水を汲んで戻ってくると、もう長老子は階下に去ったあとで姿がなかった。
夕鈴はおずおずとしながら、今まで入ったことのない社長室の奥へと足を踏み入れた。

全面ガラス張りの眺めは壮観で、地上界がまるでミニチュアのようにパノラマで一望できた。

中は思った以上に広々としていて、
応接セットが小さく見えるほどだった。

――高そうなマホガニーの重厚なデスクと皮張りの椅子。

あの子はいないのかしら…と思ってきょろきょろしてみる。

「あ、この床の装置は…!」
夕鈴は秘書室とオープンフロアーでつながっている仕切り近くに設置されていたものを見つけて指さした。
「あれが噂のバーチャルウォールねっ!?」
夕鈴は少々エキサイトしながら叫んだ。

「あれがあるってことは、やっぱりる★ばはどこかに居るのね♪」
これは、今日こそ遭遇できるに違いない!
あまつさえ、働いている最中の愛らしい動きまでみれちゃったり…
と夕鈴は思わずグッと拳を握りしめた。

見回すとマホガニーのデスクの上に高性能のパソコンが置かれているだけで、サッパリとした執務室だ。
広すぎるフロアはあまりにも殺風景。

「これならあの子も気持ちよくお掃除できるわね~
…あ、だめだめ。まずは私、仕事しなきゃ!」

出会いへの期待に胸を膨らませながらも、夕鈴は職務に気持ちを切り替えた。

シンプルであまりムダなものもなく、掃除といってもやることもなさそうだったが夕鈴はとりあえずハタキをとりだすと、パタパタと高いところをはたきはじめた。

その時、部屋の奥の方で何か気配がした。
「!」
ドクン、と胸が高鳴る。

夕鈴はちらりと視線をめぐらす。

「――!?」
夕鈴は一瞬固まった。

社長室の奥に扉があり、そこから頭からタオルを被った黒髪の青年が出てきたのだ。
青年はガシガシと拭きながら無表情な顔をしてすたすたと歩いている。

(…いやいや、気を取り直して。ここは職場よ?
る◆ばちゃんに会えなかったからって…シャンとしなきゃ!

それにしても、あんなところにもお部屋があったんだ。 
…だれ? 李順さん以外の…秘書さん?)
と夕鈴は内心思った。

若い黒髪の青年は背が高く、端正な顔をしていた。
顔を洗ったばかりなのだろう。緩んだワイシャツの胸元が少しはだけていて夕鈴はドキンとした。

(社長さんの御用で、徹夜でもしたのかしら――。
奥に仮眠室でもあるのね、きっと)

「おはようございます。お疲れ様です」
夕鈴は離れた場所ではあったが、目を伏せながら挨拶をした。

すると、青年はキョトン、とした顔をしてこちらを見返した。

「――あ? ああ。
…おはよう」

青年は何やらブツブツとつぶやいていた。

(これまで、このような機能はなかったが――もしかして老子のやつ、また勝手に改造してコミュニケーション機能でも追加したのか?)

青年は革張りの椅子の方にすたすたと歩いてゆき、ストン、と座った。

今度は夕鈴が内心(えっ?)と思った。

(いくら社長さんが居ないとはいえ、大胆なヒトね――! 
まあ、私も社長椅子って、一回座ってみたいとは思うけど…)

夕鈴は苦笑した。

(…あっ、だめだめ!
もしこの人が秘書さんなら
私の仕事ぶりを李順さんに報告するわよね。
ちゃんとお仕事しなきゃ)

夕鈴は無言で掃除に集中した。

パタパタをハタキをかけ、ホコリのたまりそうなところを隅々まで拭きあげる。
リズムはすぐ戻ってきて、くるくるといつものように立ち働いた。

雑巾をバケツですすぎ、今度はどこを…と振り向きぎわ
思わず執務机の青年の様子が目に入った。

青年は両手を組んで、じっとこちらを見つめていて、一瞬二人の視線は交錯した。

ドキン!

夕鈴は思わずバケツの方に顔をそむけ、もう一度きれいに雑巾をすすぐ。
きれいになった雑巾を持って、机の上を拭こうと執務机のほうへ近づいた。

すると青年はスルリと夕鈴の腰をさらった。

腰をだかれて、ヒザのうえに座らされた夕鈴は目を白黒している。

「…充電」

「は?
じゅ――充電?」

夕鈴はあまりにも想定外のことが発生したため頭が沸騰した。
あわあわとパニックを起こし不審な動きをする彼女を、青年はギュッと抱きしめ
ぷっと吹き出した。

「――ん? どうした。
なんだ、こんな動き――見たことないや。
やはり、そろそろ充電か」

「充電、あの?」

「…しないと、動けなくなる」

何かにこの青年は疲れているのだろう。
心配そうに顔を覗き込まれる夕鈴は、なぜだか申し訳なくなった。

「えーと」

青年が何をいっているのか全く理解できない夕鈴がたじろいで固まっていると
青年はやおら両手で夕鈴の頬をつつみ
「急ぎのほうか」と問う。

「――え? あ、はい」

何が何だかわからずうろたえているうちに、
夕鈴は自分の唇に
ちゅっ
と、軽く何かが触れるのを感じた。

「――っ!?」

目の前には青年の端正な顔がドアップだった。
夕鈴はさーっと血の気が引き、蒼白になる。

「…あれ? かおが青い」
青年は夕鈴の頭のあたりをチロと見ながら不満げな顔をした。

いつもなら、充電完了とともに頬を赤らめ、兎のように結い上げた髪の髷がピカピカ緑色に光るのだが。

「接触不良か――?
充電完了ランプが光らない…」

そう言いながら、青年は更に念入りに、もう一度――

「ん、ん~~~っ!!!」

目の前の青年が夕鈴に覆いかぶさり、唇を重ねている。

夕鈴はあまりのことに、両手で相手を突き飛ばした。

夕鈴は耳まで真っ赤に染め、口元を手で押さえていた。
不意にボロボロと涙がこぼれた。

「――え?」

二人は至近距離で見つめ合い
青年も驚きのあまり、目を丸くした。

夕鈴は思わずバチンと青年の頬を叩いた。

「ひ、人の
ふぁ、ふぁ、ファーストキス…

…ば、…ばかぁ~~~~~~っ!!!!」

溢れだした涙は、もう止め処もなく

青年が「えっ!? あっ!? ゆーりんっ――?」
と叫んでいるうちに、夕鈴は脱兎のごとく走り去った――。


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