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オートマータ ~あるいは、機械仕掛けの恋人~2

あっちを連載中で、申し訳ないですが懲りずに。
短期集中で終えますから…。

【現代(たぶん)パラドックス・パラレル】


* * * * * * * * * * * * *
オートマータ
~あるいは、機械仕掛けの恋人~2
* * * * * * * * * * * * *

「……おや、その娘は?」
秘書室の横を通り過ぎた老子は、李順がこまごま指示を出している清掃婦に目を止めた。

「ああ、老子――ごらんの通り、清掃婦、です」

「ほう?」

「優秀な人材を確保するため常々『丸々一か月間のロングバケーション! 自由出社、ネットで楽々お仕事』が売りのわが社では、9月までヒラ社員は誰一人出社しません。
なのに社長が例のお掃除ロボットを社長室のごく一部の限ったところに縛り付け、他のエリアに使わせてくれないものですから…。仕方なく臨時で1か月間だけ、雇うことにしました」

社長の優秀な側近の李順は、眼鏡おさえて「…私もヒラになりたいものです」と小さく愚痴た。

「ああー、これじゃな?」

ひょいと取り出したそれは、円盤型の家電製品だ。

「あーーー! ル◎バっ!」
若い掃除婦は大きな声をあげた。

チョコチョコと老子のそばに駆け寄ると、鼻先を摺り寄せるようにじっと掃除機ロボットをキラキラとした瞳で見つめた。

「…ちょ、ちょっと見せていただいてもいいですかっ?!
わたし、この子、いちど間近で会いたかったんです…!!」
「――ん?」
(この掃除婦も、擬人化妄愛タイプかの…?)
老子は掃除機ロボットを差し出した。

「老子、それをどこへ持っていくつもりですか?」

「いや、ちょと…陛下が外出中のうちに、改良してやろうかと思って。
段差には弱いし、ブツかったり、ゴミを収容する容積が小さいしのう。インテリジェンス・テクノロジー部門、顧問として見過ごせん問題じゃ」

「…はあ、なるほど。――しかし、それ。レンタル品ですからね?」
「いいじゃろ、すこーしばかし、改造しても。
あれほど陛下がご執心なら買い取ってしまえ!」

「――へいか?」
掃除婦は、うっとりしながらル◎バをなでながら、聞き耳を立てた。
「ああ、この老子は、社長のことをお小さいころからご存じで、陛下と呼ぶのですよ」

「ところで、その娘っこは―――?」
老子が李順に向かって尋ねた。

「掃除婦として一か月お勤めいただく、汀 夕鈴どのです」

「夕鈴!」

夕鈴は、老子がなぜ驚くのか分からず、あっけにとられた。

「人材バンクにアクセスしたところ、3万人以上の中から人選をするのが面倒くさくてですね。
あの方が、あのようにお気に召しておられるものですから
つい該当する名前で検索してしまいましたよ」
「なるほど、のぉ」
老子はフムフムと笑った。

「このビルの最上階フロアに出入りする以上、外部に委託できませんしね。
それでは、夕鈴殿、だいたい説明は終わりましたが―――何か質問は?」

「…あのぉ」
「なんです?」
「本当に、あんなにお給料いっぱいいただいて、いいんですか?」

「ルールを守り、きちんと掃除していただければご提示通りお支払いします。
夏季休暇中の一か月間、下のフロアにほとんど社員が出入りすることはありません
が―――社長は別です。
大変お忙しくお仕事をされますので、決して邪魔しないように」

「はい」

「ここで見聞きしたことは一切外部に漏らさない、守秘義務を守れますか?」

「はい」

「とくに社長はたくさんの敵をお持ちの方です。何がうっかり弱点となるかもしれませんので、小さなことでも決して外部に漏らしてはなりません。もちろん、バイトを終えても…。一生、ですよ? そのための高賃金ですから」
「はい、決してここでのことはしゃべらないと誓います」

「何かうっかりとでも漏らせば、そのとき一族郎党…」
李順は思わず口を塞ぐ。

「……(み、みなごろし)!?」
夕鈴は青ざめた。

「社長とお会いする機会はそうそうないとおもいますが。
万が一、社長と接触するようなことがあったら
―――社長のおっしゃること、されることは絶対、です。
あの方は大変スケールの大きいかたで
時折一般人には理解しがたい行動をとる場合がありますが
全てを受け入れなさい。
決して逆らってはなりません。
ちなみに…社長に逆らって命を落とした人の話、聞きたいですか―――?」

李順は真顔だった。
そのうえメガネが青白くきらりと光る。
夕鈴はル◆バを抱きしめ、青ざめた。

この会社は恐ろしいほど巨大で、
その若き総帥の威光は遠く海外にまでおよび、
冷酷非情の狼陛下と呼ばれる総帥は全世界から怖れらるほどであった。
――眼光で人がバタバタ倒れたとか――数々の逸話を、夕鈴ですら耳にしたことがある。

コクコクと肯く。

「いえ。お伺いしなくて結構です。よく分かりました」

「宜しい。
では、あちらの机で、契約書にサインを」

夕鈴はサインを、といわれ抱きしめていたル★バを見つめ、残念そうに老子に差し出した。

「同じ職場なら、また会えますね。
この子と遊んでもいいですか?」

「陛下のいないときなら、こっそりと、な――★」
老子はバチン、とウインクをした。

* * * * * * * * * * * * *

「――で、なんだこれは。
李順?」

黎翔は、目の前をうごきまわる物体を指さした。

「――例の、掃除ロボット、ですが?」
李順はくいっと眼鏡を指で押し戻した。

黎翔はじっとみつめた。

すーっと動き、どこに行くのかと思えばほうきでさっさと掃き、
時折くるくると回って見せると次へとのろのろ動き始める。

「そういわれてみると…確かに。
かなり見た目は変わっているが
夕鈴の動きをしているな―――」


(どこをどう改造したら、こうなると?
…また、それをいとも普通に受け止める社長も)
李順は苦笑をした。

「インテリジェンス・テクノロジー部門の張顧問が、改良をしてくださったのですが―――お気に召しませんか?」

部屋の隅に居た老子が、報告を加えた。
「両手両足をつけ二足歩行を制御して段差に強くなったし、掃く、拭く、ハタく、片付ける、なんでも可能になったぞ!
それからセンサーを高い位置に設けてのう、床のみならず高い位置も立体的に掃除ができるようになったんじゃ。
さらに、特筆すべきは、塵取りじゃ!
今まですぐ目詰まりしていたゴミ集積タンクの問題はな、外部に移行することで目詰まりなく長時間働けるようになったしのう。
どうじゃ、何も言うことはないじゃろ!」
と満足げに語った。

「――高性能になったというのなら、歓迎すべき、か?」

李順は勝手に改造したことについて、怒りをこうむるかそれとも、と
少々ビクビクしながら黎翔の様子を注意深く見守っていたが、
どうやら受け入れられたようなので、良しとした。

(だが、この風貌は―――)
李順は冷や汗を流した。

(……掃除婦として雇った夕鈴どのとうり二つではありませんかっ!?)

老子は熱弁を振るい続けた。
「次の商品企画にぜひ盛り込みたいと思ってた技術を駆使してみたぞい。
スリーサイズは上から78・56・82、軽量高剛性の内骨格を採用し、
わが社のインテリジェンス・テクノロジーの粋を極めた学習型コンピューター制御で、経験値をつむほど賢くなるんじゃ!
手触りはあくまで柔らかく、環境に溶け込む自然な風貌を特徴としておる!
どうじゃ! これほどの掃除ロボットはあるまい!」
「なるほど」
黎翔は報告の間、もう一方で仕事に取り掛かっていたが、何かチカチカするものに気が付き、はっと顔をあげた。
「…あ?」

黎翔が指摘する。
「何か、頭のあたりが、ピカピカ赤く光ってるが――」

「ああ、それは電池切れになる前のサインですじゃ」

夕鈴と呼ばれる掃除機ロボットの頭には、兎の耳のように結い上げた髷がついていて、そのあたりが赤いLEDでピカピカ点滅したのだ。

「軽量化のために、バッテリーが小さいので、充電は頻繁になりますがのう」

スルスルとロボット夕鈴は黎翔の側まで近づく。
黎翔が息をつめて見守っていると、ロボット夕鈴は皮張りの椅子に座っている黎翔の膝の上にストン、と載ってきた。

「これは?!」

「今までの充電のホームベースでは少々形状があわなくなったのでな、
非接触型の充電ホームベースをその椅子に仕込みましたじゃ」

「…なるほど」

黎翔は夕鈴を膝にのせて、なんとなく嬉しそうにしている。

李順が突っ込みをいれた。
「老子。このまま、どれくらいで充電完了するんですか?
これでは社長のお仕事の邪魔になってしまいますよ?」

「おおこれは。
非接触型の充電は、クレードルに乗せておくだけで充電できるという、誠に便利な方法じゃが、
いかんせん従来の接触型に比べると少々お時間がかかりますので―――」

「老子、接触型とやらはできないんですか?」

「一応、端子は設置してるのじゃが―――」

「それは?」

老子は極めて真面目に答えた。
「くちもと、じゃ♪」

「はぁ?」
李順は素っ頓狂な声を上げる。

「ブチュっとやれば、一発充電完了じゃよ!
ふぉほほほほ」

黎翔は真面目な顔で二人のやりとりを聞いていたが、
「なるほど。そういう方法もあるのか」
といいながら膝の上の掃除ロボットを見下ろした。

(前の円盤形もかわいかったが…。こんどもまたなんとも愛らしいな…)

黎翔はくい、っとロボット夕鈴の顎を捕らえると、チュッと口づけをした。

するとロボット夕鈴は顔を真っ赤にして、兎耳の髪がミドリ色のランプに変わった。

「お、充電完了、ですじゃ!」

夕鈴はすっと立ち上がると、また次のチリを求めて部屋を移動するのだった。
その様子を見守りながら、李順は黎翔の耳にヒソと。

「――宜しいんですか? 社長」


「いいんじゃないか?
実害はない」

黎翔はすぐに執務モードに切り替わり、机の上の書類をさばいている。

「いいじゃろ」
老子は満足げに笑った。


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ますたぬ様

お仕事中はポーカーフェイスで…(笑

よかった、ウケて… ←

うりうり様

> リアル夕鈴と社長の遭遇が楽しみにでなりません(*^_^*)

次回、
ご期待通り、リアル夕鈴と社長の遭遇です(笑

ギャグですから、基本このシリーズ。

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