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オートマータ ~あるいは、機械仕掛けの恋人~

【パラドックス・パラレル】【むっちゃ呆】

すごくバカバカしい甘いお話が、無性に書きたかったんです。
雑食で消化能力の強いなんでも許せるお心の広い方のみ、よろしくお願い申し上げます。
呆れるとおもいますが。呆れてください。

* * * * * * * * * * * * *
オートマータ
~あるいは、機械仕掛けの恋人~
* * * * * * * * * * * * *

微かな声が聞こえた気がした。

「陛下、お散歩にいきませんか?」

一心不乱に働いていた黎翔は、
それに気づくとふと顔を上げる。

目の前には愛しい彼女がいて
机の向こうで
モジモジと肩をゆすぶり
とつとつと話しかけている。

「いまから、か――?」
食事や休憩の時間、でもなければ
仕事の切れ目というわけでもない。

普段目立たぬよう、差し障らぬよう、
必死に息を詰めている彼女だけに、
わざわざ今、なぜ彼女がそう誘っている理由が分からなかった。

私と目が合うと、
彼女はクルクルと嬉しそうにその場で回った。

いつも彼女は私の理解の範疇の外をいくから
きっと今回も、何か突飛なことで私を翻弄してくれるに違いない。

なにしろ彼女が大胆に私を誘うなど……そうそうないことなのだから。

そう思うと、なによりもこの機会を逃すのは惜しい。

「他でもない君に誘われて
断れるはずもないな」
黎翔はかりそめの妻を見つめ、ふっと頬を緩めた。

ところが彼女はするりと向きをかえ、
ウインウインと音を立て、滑るように移動を始めた。

「あ…、どこへいく」
三方を囲まれた隅を一直線にめざす。

「散歩…に誘ってくれたのだろ?」

「お仕事中です!」

なんだ?…彼女は何かに怒っている。

クルクルと変わる表情も彼女の魅力だが、その理解できないところまで含めて彼女の存在は愛おしい。

そしてついに隅っこの角にスボッと突っ込むと
腹立ちまぎれに
うぃんうぃんヴーーーーン
と微かな音を立てて体をゆすった…

「夕鈴!」

手をのばした――すると、その手をメガネの側近がガッチリと捕まえた。

「社長!」

ハッと黎翔は赤い瞳を見開いた。

「…社長。
遊びはほどほどにしてくださいよ?
アレはお試しキャンペーン中の短期レンタル品、なんですからね」

あいらしいお掃除ロボットを黎翔は目で追い続けた。

「社長、あまり困らせてはかわいそう、ですよ」
李順はハアとため息をついた。

翔は立ち上がると、夕鈴が向き合っていた角からそっと持ち上げ、向きをかえて放つ。
夕鈴はうれしそうに再び動き始める。

広い執務室は、秘書室とバリアフリーでつながっている。

「…あ、そっちは行っちゃダメだ――」

黎翔はいそいで机の下に置いていた、取り寄せたばかりの段ボールをあけ、
追加のバーチャルウォールを取り出し、隣の秘書室にもいけないように慎重にセットした。

「夕鈴。さあ。好きなだけ散歩していいよ」

黎翔が優しく声をかけると、夕鈴はさっそく嬉しそうに動き始め…たかと思えば、すっと充電器の方へ帰って行き、すとんと部屋の隅で動かなくなってしまった。


「そうか。
…君はしばらく、ゆっくり充電するといい――」

黎翔がさびしげに肩を落とすと、
となりで見守っていた李順もため息をついた。

静かにしているだけだが、
何かもの言いたげな表情がうっとうしく
黎翔はキッと向き直った。

「なにがそう気に入らんのだ ――李順」

李順の背中にゾクと冷気が走る。

「正直に申し上げますなら
…あなたのその気に入りすぎているところが」

「あはは。
そんなにしんぱいしなくてもいいよ。
…ただ私は、彼女がごく自然に接してくれるのが
可愛くて楽しくて嬉しいだけだ。
――そう思わなくなれば、
お前の望み通り
切り捨てるさ、今までどおりな」


「私は、最終的には社長の決定に従います。
――ですが意見は変わりません。

早く彼女をここから逃がしてやるのが
彼女のためです――!」

「ぜったい、ヤダ!
妻を、手放せと――?」

「妻じゃありませんしっ!
夕鈴とか名前までお付けになって――!

臨時の
しかも相手は、お掃除ロボット――」

「私にとっては可愛い妻だ―――。
みていて飽きない」

「ですが、家電製品は妻にはなれませんしっ!
いいかげん、ソレをお離しくださいっ!」

「やだっ!
夕鈴を野良にしろだなんて、李順は鬼畜か――?」

「野良ではなく!
秘書室や、その先の廊下まで、
夕鈴殿の掃除範囲にしてほしいと――私は申しているだけですっ!」



ふーーん。

「…だからさ。
あの二人、なんで
お掃除ロボットに名前まで付けて、
盛り上がってんの?」

「ヘーカが擬人化しちゃったからのう…
あの方は聡明にして冷静。誰よりも賢いが――
やんちゃなお方じゃ。
いくらあれがお気に召したとはいえ、
御掃除ロボットでは
お世継ぎはむつかしいのぉ。ふー。」

「じーちゃん、まじ
へーかと、お掃除ロボットCP、あり?」

「…まあ、面白いから
あり、にしとくか。
実害はないじゃろ」

付属する秘書室から二人の様子を覗きながら
のんびり浩大と老子はお茶をしていた。

*

甘い甘い話にしたかったのに…。
どこをどう間違えたのやら――?


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乱心しております(笑
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