FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

忘却の岸辺(11)

お盆を故郷で過ごされた皆様も
東のお祭りをご堪能された皆様も
お元気ですか?


【ねつ造】

陛下は夕鈴を忘れ
浩大は幻となった言葉を胸に
克右は花の盾となる

* * * * * * * * *
忘却の岸辺(11)
* * * * * * * * *

夜闇にまぎれ王の元を離れた浩大は
予てより克右と約束していた手段で連絡を取ることにした。

すぐに夕鈴や克右の元に合流せず、連絡を取ることを選択したのは、
本能的に『今戻ればヤバい』と察知したから。

背後から嫌な感じがする。
浩大は敏感だ。

浩大は目立たぬ町人の格好で用心深く人に紛れた。
ことさら目立たぬ体格、年齢が一見して分かりにくい童顔はこういうとき便利だ。
忍びのくせに顔を平気でさらす、と言われたらそれまでだが
むしろ隠さない方が自然、それほどに目立たぬということもある。

個人的技芸に秀でた浩大は単独行動を得意とするが
集団行動が嫌いというわけではない。

ただし、それは組む相手によりけりで
軍部所属の克右は、忍びの浩大にとっては反りが合わない。

組織が違うから、やり方もお互い気に食わないのは仕方がない。
なにしろ、請け負うものがそもそも違うのだ。

だが、仲間として組むのは、正直面白くはない、と思いつつ
今回の「お妃ちゃんを守る」という仕事に関しては
仲間がいることは頼もしく
それが腕の立つ軍人であればなおさらだ。

あれだけ内外に敵の多い人の唯一の弱点。
それを何としても手に入れんと躍起になっている輩が相手。
手段を選べず修羅場に突入することも覚悟していた。

依頼主である国王本人がその命を出したことを忘れ去っている現状、
宙ぶらりんになってしまった「彼女を守れ」という過去の命令のため自らの命を張るというのは浩大にとってすでに意地に近い。

「だけどさ。
あんときの言葉を。いまさら。
―――忘れちゃった、はいそうですか。
じゃ、あの子のことは放っておきます―――なーんて。
口が裂けても言えるわけねーじゃんかよ。
何があっても守り抜く…そんな律儀なオレだから。
ヘーカ、あんた。オレに頼んだんだろ?」

浩大は独り言ちた。

浩大は短い手紙をしたため、
そのあたりで手に入れた土産物の中に埋め込むと、克右と約束していた連絡手段通り、
駅伝を扱う宿場に届ける手はずを整えた。

つけられている。
それも複数。

「オレってば、有名人になったもんだよな―――」
浩大は鼻の下をこすった。

さて、大人しく見逃してくれるかどうか…。

浩大はニヤリと笑うと、闇にまぎれ駆け出した。

* * * * * * * * *

夕鈴は、荷馬車で克右と向き合い、息詰まっていた。

おもむろにかぶっていた外套をぐっと手でかき寄せ、顔をうずめた。

「……違う」
「は?」
向かいの席に座り、目を合わさぬようそっぽを向いていた克右が問い返す。

「違います、違いますよ。克右さん。
同情して、勢いで。
そんなのダメです。
『―――冗談だよ』って。いつもみたいに、
笑ってください!」

夕鈴は泣きそうな笑顔で、克右の外套を脱いだ。

違う。

私は、克右さんの優しさに甘えているんだ。

誰かの影に守られて、自分だけ良ければいいって―――
そうじゃなくて。

『私は、陛下の役に立ちたい』
って―――
まだ今でも
未練がましく思ってる。

『あなたの味方ですよ』っていいながら、
忘れられて、他人みたいに知らんぷりされて
一人前に傷ついてるなんて。

私は何の見返りを期待していたんだろう。


なんでもできる あの人に
何をして『あげる』なんて、偉そうなこと考えて

不器用なあの人に
優しくして欲しくて


あの人に振り向いてほしくて―――

未練がましくて―――

馬鹿で―――


(…克右さんの優しさに、甘える自分がいやだ。
そんな資格なんて、ない)

夕鈴は克右に借りた外套を脱ぐと、きちんとたたみ、克右の膝に乗せた。
伊達メガネをはずすと、克右をまっすぐに見つめた。

「克右さん。
わがままいってすみませんでした
―――私が勝手に自分のやりたいことして
みなさんを振り回して
みなさんに迷惑かけてたんですね?」

「……いや、そういうことは…。
どっちにしろ、あんたが何かに利用されるようなことがあれば
あの方にとって―――」
どう言ったもんか、と克右が苦慮しているのが夕鈴にはわかる。

「もう、私は妃じゃないです」

もともと、バイト妃ですから。
そもそも妃なんかじゃなかったんですけどね。

小声で夕鈴は付け加えた。

「ああ、そうだな」


「あの方は、私のことを忘れたと」

「…」
克右は困った顔をした。

「忘れられたっていい。
私は忘れません―――」

そうキッパリ言いきると、
夕鈴はにっこり笑った。


その時、すぐそばでけたたましい叫び声があがった。
ガタンと馬車が大きく弾み、衝撃に思わず夕鈴は脇の荷物にしがみついた。

周囲から複数の蹄の音が聞こえ、馬車の馬の足並みが急に荒立った。
馬は狂ったように暴れ出し、夕鈴たちの乗っていた荷馬車は右へ左へと大きくかしいだ。

「きゃっ!?」
慌てて克右が夕鈴に覆いかぶさる。

暴走する馬は気が狂ったようにいななく。
馬車はそのままガタガタと跳ねるように大きく街道を外れ
ひっくり返りそうになりながら側溝の段差をガクンと乗り越えるのが分かった。

荷馬車は大きく傾き、克右の大きな体で庇われながらも夕鈴は体が斜めに滑るのを感じ
馬車はようやく止まった。

「くそっ!」
克右は夕鈴を守るので精いっぱいで、チッと舌を鳴らした。
「―――」

バサリと馬車の幌が乱暴に捲られ、
二人は白昼にさらされる。

「荷物は―――女、か。
おい、お前。
顔をみせろ―――」

数人の騎馬の男たちが取り囲んでいた。
覆面をし、武器を手にした黒っぽい服装の男たちは、一見してマトモな者たちではなかった。

克右は腰の刀に手を伸ばしていたが、多勢に無勢。
四方を敵に囲まれ、夕鈴をかばう克右は形勢的には不利であった。

夕鈴はすでに顔をさらしており、逃げも隠れもしなかった。

暴漢のカシラと思しき人物が柳葉刀の刀尖を克右の喉元に突き付け近寄った。
「おい、その女を寄越せ」
克右は恐れる風もみせず、その刀尖を指でチョイと押してどけた。

暴漢らに取り巻かれたこの期に及んで、
一切おびえるそぶりも見せず、
カシラの顔を睨みながら平然と答えた。

「すまんが―――それはできない相談だ。
大切な嫁さんなんでね」

「なっ!?」
夕鈴は克右の人を小ばかにした言葉に一人反応し、真っ赤になった。
(…って、ああ。そういう設定、だったかしら)と後から思いだすのだが。

「―――ほう、肝の座った男だ」
カシラはズイと一歩詰め寄る。

克右は夕鈴を押し下げ間合いを保つと、腰の刀を手にした。

「…ヤル気か?
五対一。どう考えても、貴様に勝ち目はないぞ?」

「勝ち目があろうとなかろうと―――」
克右は刀を振るった。
「やらなきゃならん時は、あるさ!」
克右はその大きな図体に見合わぬ素早い動きで夕鈴を荷馬車の床に押しつけるように伏せさせ、刀を振るってカシラに飛びかかった。

カシラの腕にツツウと赤い筋が走る。
ひるむ間もなく第二波、第三波の攻撃を繰り出す。

克右の鬼気迫る形相は他を圧し
そのあまりの腕前に周りの者たちは気勢をそがれる。

ガタガタと大勢を崩し尻餅をついたカシラは、手をこまねき取り囲む手下にハッパをかけた。
「男をやれ!
女には傷をつけるな―――!」

「…なあるほど」
克右はフン、と鼻を鳴らすと
「やっぱり…そっちの筋の―――」

「黙れ!」

克右は片手に刀を構え血走る眼で対峙した。



*
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
カレンダー
08 | 2018/09 | 10
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
プロフィール

おりざ

Author:おりざ
秘密の苑・刺青の男[織座舎]陛下の花園へようこそ。”狼陛下の花嫁”の二次創作作品を綴っています。足跡などお気軽に残していただければ嬉しいです。【新刊】秘密の苑・刺青の男パラレルアンソロジーパラレルアンソロジーとらさんで取扱。【お詫び】拍手コメ御礼お休み中です。本当に申し訳ありません。お返事ご希望分はコメント欄へm(_ _)m

アクセスカウンター
ただいまのご来訪数
現在の閲覧者数:
ありがとうございます
■(キリ番)カウンターでキリのよい番号に遭遇された方はお気軽にご一報ください^^

■オフ活動■ おりざの本[織座舎] 一覧 → こちら
陛下の花園へようこそ
~ご注意~
≪以下あらかじめご了承のうえ、本サイトをお楽しみください。≫

・原作者様ならびに出版社様とは一切関係ございません。
・此のブログは日々の日記並びに二次創作作品の倉庫、管理人本人の自由な自己表現の場です。
・この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件、史実などにはいっさい関係ありません。また原作と異なる設定など、表現、その他多数捏造あります。

・二次創作の場です。
・ブログ内容に関する苦情は受け付けておりません。出来る限り注意は払う意向ですが個人的表現の場という位置づけの運営上、万人に対して万全を保障するものではありません。
・読む際は各作品の冒頭の説明・ご注意等にてご判断ください。読後いかなる不都合が生じても当方はその責任を負いかねます。

・ご感想お待ちしております。

・当ブログ内の作品の著作権はブログ管理人に属し、無断コピー・無断転載は固く禁じます。
Twitter
 
RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。