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忘却の岸辺(7)

やっぱり昨日は更新間に合わず。
某宅の睡魔ちゃんが最近ちょくちょくやってきて、私も連れていかれるんです…。

今回の陛下のように長い長い夜が欲しい?―――
…あ、でも。眠れないのは辛い。
やっぱり眠れて、なにより。

昼休みに急げ急げ。

【ねつ造】
忘れんぼ黎翔の元に忍び込む浩大のターン

* * * * * * * * *
忘却の岸辺(7)
* * * * * * * * *

その晩、黎翔は眠れなかった。

床に入り、何度寝返りをうっても
安らかな眠りは訪れない。

黎翔にとり、闇は好ましいものだった

闇は汚れたものを包み隠し、
静謐にただ自分を受け入れ包んでくれた――。

なのに、今日は違う。

「何か大切なものが、あったはず――」

胸を押しつぶすように圧し掛かる想い。

何も見通せない闇は
チリチリともどかしい焦燥感だけを煽り、掻き立て
寝苦しさは増すばかりだった。

目と鼻の先にあるはずの己の手すら、見えない。
手を握り締め、その感覚を確かめながら
黎翔は昼間の出来事を思い返す。

 ***

目の前にいたのは、一人の男、
なのに
手ごたえは、一、ではなかった。

倒れた躯は二つ。
確かに、そう見えた。

頭の中の雑音が酷くて半ば呆然とした私ごと
駆け寄った側近が幕で覆い遮断した…。

 ***

造反者の粛清。
それ自体は黎翔の身辺では飽きるほど繰り返された景色で
「いつものこと」の一つに過ぎない。

いちいち呵責を感じる必要もない。

何かを選択すれば、何かを切り捨てる。

文字通り、切り捨てようと
それは国の安寧のための責務の一つ。

『王』は選ばねばならない、
選べる未来は、いつも一つだけ。

一方に良かれと選んだ結果は、他方に不都合なのだ――。
我らにとってたとえ一分の理もなくとも、彼らなりの理はあっただろう。
だが未来は一つ。
夢破れる者は確実に存在し、彼らの望む未来を失う。

やり場のない悲しみと絶望は怨恨を生み
恨みの矛先は『王』に向けられる。


力を実行するものは恨まれる。
その構図は、あまりにも単純にして明快だ。

国の継承者として生まれたものの宿業。

都合が悪ければ、処断し
始末が終われば、忘れる。

それは世を統べる者として
逃れられない義務の一つであった。

「生まれて死ぬ。
作っては、壊す。
世の中はその繰り返しだ――。
誰であれ、代わりはある。
代わりがない歯車など、自分も含めこの世にはない――」

黎翔は諦めにも似た境地で達観していた。

 ***

眠れぬ夜は長い。
シンと物音一つしない室内に一人。
黎翔は目を閉じ眠ろうと努めたが
意に反し、意識は混沌の闇の泥の中をあがくばかりだった。

『何かを選択し
何かを切り捨てた』

殺伐とした毎日に潜む、よくある出来事。
…だが今回だけは
どうしてか、後味が悪かった。


あれごときを引きずるほど
青臭い自分でもなかったはず。

では、何が

――衆目の前だったから? 
いや、違う。

――人々の目が、奇異な色合いを帯びていたから、か。

チガウ。

奇妙なのだ。

自分の内に、無い…記号。
空白のどこか、何かが欠けている。

黎翔には、考えても考えても分からない。

自分には
見えない何かがあって、
聞こえない何かがある、らしい。

光線の具合か、死角かといえば、そんなはずもない。
目の前にあるものが見えないなど、そんな不思議なことがあろうはずもないのに。
では、白昼夢? …にしては、たちが悪すぎる。
一瞬気を失っているとしたら、それは多分未だ体調が万全でないせいだろう。
高熱で寝込んだあと、自分の中で多少混乱ががあるのは承知の上。
体は元に戻ったのだから、あとは時間をかけるしかないのかもしれない。

「大丈夫だ――気にすることはない」
黎翔は、頭を振って、自分を落ち着けようとした。

でも、何か。
何か
大切なものがあったはずなのに――


何かを選択し
何かを切り捨てた……?

黎翔は
それすら思い出すことはできなかった。


* * * * * * * * *

寝返りを何度うったことか。
諦めに似た気持ちで、剣でも振るおうかと寝台から身を起こしたとき、天幕のそとから声がした。

「おい。――あんた」

「浩大か? …久しぶりだ」
黎翔はすんなりと『浩大』と自分の口から出たことが不思議だった。

浩大…たしか。
一年ほど地方に――地方?
いや――違う、王宮によびもど、し
なぜ私は、呼び戻した?

「…相変わらず、口が悪い、な」

浩大なら、なぜ、ここにいる

黎翔は再び混乱し、頭の中を音にならないノイズが占めた。
思わず目を固く閉じる。

浩大に関する何か肝心なものが抜けていて、
自分の中でつじつまが合わない。

混乱の最中の黎翔に、どこからともなく浩大の声が続いた。

「あんた――どういうつもりさ?」

「…?」

「俺に守れっていっておきながら
…アンタは、ためらいもせず、消すのかよ」

「なん、の――ことだ?」
黎翔は頭を押さえながら、掛け布を剥ぎ
浩大がいるであろうと思われる方に体を向き直した。

「アンタはあの時、替え玉と分かってて斬ったのか?
それとも知らず斬ったのか。
…もうあの子のことなんか、どうでもいいってか?」

浩大が何のことを言っているのか、黎翔は全く分からなかった。

寝台の幕を片手であけると、重たい空気が流れ込む。

暗闇の中に、ギラと鈍く光る二つの目が浮かんでいた。
森の中で野生の大虎と鉢合わせしたような、気迫を感じた。

「私が、お前に何を守れと言った……?」
黎翔は思い出せなかった。

そうだ、浩大は地方から王宮に呼び寄せて…
浩大に、何を守れと、私は言ったのだった――?
記憶の中には、何もなかった。

「汀、夕鈴――あんたの妃、だろ?」
浩大はつぶやいた。

「――何? 私の……き、さ、き?」
黎翔には肝心な言葉が聞き取れない。

砂嵐の向こうでザリザリとかき消されたように
ノイズが不自然に脳の端をよぎるだけ。

「なんの、こと、だ…」


浩大は、夕鈴の身辺警護を続けるため王宮を離れていた。
だからその間に起きた黎翔の異変については何も情報を持たなかった。

だが浩大には思い当たる節があった。

浩大の中にある拭い去れない光景。
その昔、黎翔の母が何をしたかを、浩大は知っていたから――。

あの時の記憶が、浩大の脳裏にフラッシュバックした。
じわりと汗をかく。

「はん。
そっか…。そういうことか」

浩大は鼻の下をこすり、顔をしかめた。

「――なぁんだ。
あんた、もう
夕鈴。
要らないんだな?」


「……お前が言ってる
×× が何なのか
私には。
分からない」

黎翔は頭をかかえて呻いた。

「じゃ――いいんだな?」

「諾否を問おうと…
私は何を――?」

「それすら分かんねーなら。
…今のアンタに資格はねえな」

「きさま、私を誰だと」

「王様だろ?
あんたは『王様』で
ひとつの未来を選んで、
ひとつの過去を捨てた」

「え?」

「……あんたはもう、
切り捨てちまったんだよ。
もう二度と知る必要はないサ――」

隠密は、目を閉じて、立ち上がった。

黎翔は手を伸ばす。

「――まて!?
お前は…」

黎翔は苛々とした。

「――じゃ、な。
王様。
あんたが切り捨てちまったとしても――
俺にとって命令は命令だ。
悪ぃけど
もうちっと、付き合ってくるぜ」

黎翔は浩大を引き留めようと立ち上がるが
隠密の身ごなしの方が早かった。

「――待て!」
黎翔は小刀を投げた。

隠密は指先でこともなげに飛んでくる小刀を空中で止める。
二本の指で挟んでいる良く研がれた刃物をチラと見つめると、浩大はため息をついた。

「ヘーカ。
…今のあんたが忘れちまったとしても、
あの子を二度切ることはないじゃんか――」

「あの、子?
――誰」

(ふうん、それは聞こえるんだ)
浩大は口角をきゅっとゆがめた。

「ヘーカ。
あんたが『おまえの命に代えても、あの子を守れ』って
そう言ったんだぜ――?」

黎翔は浩大を留める手を降ろした。

隠密は音も立てず、去った。


*
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