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SS はちみつの日

8月3日は「はちみつの日」として一本SNSに上げたものをブログに重複移植。


【バイト妃】【微糖】【オリキャラ※】
※静麗女官長(伝説の死神リーリー)がチョイ出ます。


細かいこと気にならない方に…。

では、よろしければ、どうぞ。

* * * * * * * * * * *
SS はちみつの日
* * * * * * * * * * *

いつものように政務室にお邪魔する。

陛下は嬉しそうに私の顔を見てニコと笑った。
だけど、
それっきり。

立ち上がりもせず、政務をつづける。

それに―――なんだか無口だった。
いつもの椅子の方に歩を進める。
その間に、もう陛下はいつもの真面目顔で
お仕事モードに戻っていた。

―――へん。

…いつも。
ならあれやこれや、甘い言葉をささやくくせに―――。
手を握って…私をだきしめるのに。


私。なにか、しちゃった?
陛下は何か…おこっていらっしゃる?

すごく心配になって、団扇の陰からチラリチラリと政務室の中に視線をめぐらせる。

物陰からチラっとだけ視線をめぐらせたはずなのに、
古株の官吏さんとバッチリ視線があってしまった。
私は心の中で「しまった」と叫び、思わず緊張感で耳たぶが赤くなるのを感じた。

その途端、ビシッと音がしたみたいに冷気が走った。

魔法にかかったように、部屋中の人が一瞬にして動きをとめた。

「―――」
陛下が、すくっと席から立ち上がる。
普段、身についた優雅なしぐさで物音一つたてないお方が、
珍しくドカドカと乱暴に足を踏み鳴らし、座っている私の方へと…。

やっぱり…何か私のことを、怒って―――
目の前にニュっと二本の腕が差し出され、私は息を飲む。

冷たい視線と凍り付くような室内の重苦しい空気の中で、
熱い手が私を捕らえ包んだ。

「…―――っ!」
ドクンと動悸が高鳴り、ギュッと目をつぶった。

ふわり、と浮遊感。
両手で抱え上げられた私は、とつぜんのことに驚き、思わず「きゃっ」と声を上げてしまう。
握り締めていた団扇を思わず取り落とし、パサリと地に落ちる軽い音がしたとき、
私は息もつけないほど強く抱きしめられていた。

―――熱い。そんなに…お怒りなんですか?
私は、思い当たる節もなく、おろおろしてしまう。
でも、きっと私が何かしてしまったんだ。
…悲しくなった。

「―――陛下っ!」
李順さんの鋭い声が飛んできて、続いてなにか言っていた気がするけれど、次第にその声は遠ざかった。

陛下はずっと無言。

どうしたらいいんだろう。
…涙が一粒、ポロリとにじむ。

「へーか。
私のこと、
何か怒っていらっしゃるんですか」

と、私は必死に絞り出した。
陛下は答えず、大股でズンズン歩き続ける。

「へーか!
わ…私。
何が悪いのか―――分かんない」
思わず涙がこぼれる。

「…!」
ぴく、と陛下の腕が動き、様子が変わった。

(…やっぱり、なにか…
私はしてしまったんだ―――。)

鈍い自分が悔しくて、どんどん悲しくなってくる。

「―――私が何か悪いこと、したんなら―――教えてください。
じゃないと、
私、わかんないです…」

ヒック、ヒックと嗚咽が上がる。

後宮のすぐ手前の渡り廊下まで来ると
陛下は「…」と声なきため息を一つ。

そして、欄干の手すりに私を下ろし、腰かけさせた。

泣いている私の頭を陛下は優しく撫でた。

「―――へーか?」
ようやく、私は陛下のお顔をみることができた。

陛下はすごくへんなお顔をしていて―――。
真っ赤で…目が潤んでて…

そういえば。
手が
熱かった―――!?

「へーかっ!?
も、もしかしてっ
おっ…おお熱がっ出てるんじゃないですかぁー!?」
私は叫んだ。

「ご め…ん」
絞り出すように口を開いた陛下の喉から
聞いたこともないようなガラガラ声が―――。

「陛下! 大変ですっ!!」

私は欄干から飛び降りると、陛下の手を引っ張て、後宮へと走った。


明るいうちから、陛下の手を引いて、あわただしく後宮に戻った私を見て、女官長さんが驚いた。

「お帰りなさいませ…。
まあまあ、何ごとでございましょう!」

「女官長さんっ、へーかが、へーかが
―――ひどいお熱をっ!」
私はまた涙があふれてきた。

「ゆーりん、いいから。
ちかづか、ないで
きみ、に うつったら 大変だ…」

ダミ声の陛下がかすれた声で。

「だって、私を抱き合げて
さらってきたのは、
へーかじゃないですかっ!」

「…だって。
こんな体調だから、
急いで仕事終わらせようと頑張ってるのに―――
人の気も知らない君が、官吏らと目合わせて顔赤らめたりするから…
おもわず…カッと…」

私の寝台におもわずギュウギュウと押し込めて
私は陛下の額に手を当て熱を測る。

「お熱、さっきより上がってるじゃないですか?!
こんな時に、お仕事―――だなんて!!
へーかのバカっ」

カーッと怒りが湧いて来るわたしは、陛下を子供みたいに叱ってしまう。

「…だって。明日。
―――君と約束があったから」

「…え?」

「君と、約束しただろう?
明日は君を下町の祭りに連れてゆく、と」

「―――あ!?」

そうだった。
明日は楽しみにしていた下町の夏祭り。

陛下は私が何気なく言ったことを覚えていてくださって。
だから、調子が悪いにもかかわらず無理をおして…?

「…陛下の調子がお悪いんなら
―――そんなの、どうでも良いことです」

「そうか」
陛下は、目をつぶって言葉を切った。

…どうだってよくないから。
陛下は頑張ってくださったんですよね―――。

私はシュンと頭をうなだれた。



すぐに冷たい水を張ったタライを持ってきて、寝台の脇に私のための椅子を置いてくれる。
絞った手布を額にあて、寝台周りを整え、女官長さんは何も言わないうちにあっという間にテキパキと看病しやすく整えてくれた。

「お医者様を、すぐにお呼びして…」
と私が言うと
「侍医はよい。
大げさにするのは止めてくれ。
今呼ばれては、仕事が進まん」
陛下が手をあげて制す。


「でも、すぐに診ていただいた方が…」
と必死で陛下を説得したけれど

「たいしたことはない」
と取り付く島もない…。

今の今まで政務にお励みだったというのは、今日やることがあって、
のんびり寝ているわけにはいかない、ということ、なんですね?

「どうしても、仕事しないとダメなんですか?」

「ああ。寝ている暇はない」

「人間、体調不良の時は、寝て直すものです!
無理してこじらせるたら長引きますよ。急がば回れ。結果的にそれが一番早道です!」

「知ってる。だが」

腹を立てて、私を抱えて政務室から飛び出してきたのは自分のくせに―――陛下は譲らない。

あー、っもうっ!
なんて、この人は…―――強情なのっ?!

「そんなに陛下がご政務がお好きとは存じませんでした!」
私は思わず腹が立ってきた。

「…」
陛下はゴホゴホと咳をした。

すると女官長が「畏れながら、失礼いたします」と陛下の脈をとり、様子を見る

「こちらを…」
女官長さんが小さな丸薬を包んだ薬包紙と吸い飲み、そしてはちみつ壺を持ってきて差し出した。

「このお薬をおのみくださいませ、すぐに楽になりましょう」

陛下は手を振り、人払いを要求する。

女官長は、にこ笑い
「皆、下がるがよい」と人払いをし、
「何かございましたら、いつでもおよびくださいませ」と、自分も下がった。

私は陛下にお渡しするが、陛下は頑として飲まない。
「いやだ―――薬は好かぬ」

そういえば、陛下って普段から薬類に対しては神経質だった。

「毒でも入ってると思って、警戒されてるんですか?」

「…いや、静麗女官長の薬なら間違いはないと知っている」

「なら!、すぐさまお飲みください!」

「ぜったい、やだっ!」
(―――へーか。小犬がでてますよ?)

キューンと尻尾を垂らして、おびえるような顔をする陛下。
人払いしているとはいえ。
熱で体が弱っているとはいえ
…なんて。

無力で可愛い… ←

「…どうして?」

「静麗の薬はことのほか効くが、―――酷く苦い!」

「ヘーカの、意気地なしっ! どうしてもお仕事したいって我儘貫くんなら、お薬が苦いくらい、何ですかっ!」

「…じゃあ。
君が飲ませてくれるの?」

「―――へ・?」

「苦くても、我慢しろって。
他人事だから言えるんだ、ゆーりんは。
君が口に含んで。その苦さに耐えられるかどうか試してみればいい
それができなきゃ、ぼくも、口にはしない!!
人のこと、意気地なしだっていうんなら
君が飲ませてみてよ!」

「ええ、判りました!」

よーし、そうまで言うのなら、やってやろうじゃないの!!

私は腹をくくった。

「あれ…。やるの?」
「やります!」

「―――口移し、だよ?
本気?」

「分かってます!」

「…ゆーりん。目が座ってるヨ?」
「女に二言はございません。
やるといったら、やります!
へーかと唇と唇がくっつくくらい、なんてことはありませんっ――
たんなるお仕事ですしっ…
これまでも…何度もっ」

私は思わずカーッと熱があがった

それを隠すように、あわてて、丸薬のはいっている薬包紙をガサガサと広げ、
吸い飲みの水をくーっと煽ると、丸薬を二粒、口に含んだ。

口に入れたとたん、強烈な薬臭さが口内から鼻をつき抜け、
言葉にはできないような苦みと…、痺れと、ありとあらゆる嫌なものに五感に支配され、体中が総毛だった。

「ふんが~っ!!!!!」
声にならぬ叫びを発し、私は猛然と陛下の頬を両手でつかむと、その口許目指し唇を寄せた。

その瞬間、陛下はキョトンとした顔をしていた。
赤い眼差しが見開いて…近づいて…
私は無我夢中でギュッと目をつぶったから、そのあとの陛下の表情は、分からない。

恐ろしい勢いで陛下に接吻をし…

そのあと二人で嵐のような苦い薬を味わった。

鼻も口も薬の味と匂いに支配され、
口の周りは痺れて、
頭も朦朧としてもう何がなんだか分からなかったけど
―――べろべろと、飼いならされた大型犬に口の周りを舐められてるような感触がしたのは気のせい?

ようやく陛下の喉がコクンと動いて、確かに飲み下した。

まだ痺れるような苦さが残っていて、苦悶にのたうつ私。

陛下は、はちみつ壺から大匙でトロリとした液体を掬い上げ
やおら自分の口に含み、
私にたっぷりとお返しを―――。


――――――――

だから、どちらにせよ、
陛下のお仕事は
はかどらなかったと思われます。

(おしまい)



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Author:おりざ
秘密の苑・刺青の男[織座舎]陛下の花園へようこそ。”狼陛下の花嫁”の二次創作作品を綴っています。足跡などお気軽に残していただければ嬉しいです。【新刊】秘密の苑・刺青の男パラレルアンソロジーパラレルアンソロジーとらさんで取扱。【お詫び】拍手コメ御礼お休み中です。本当に申し訳ありません。お返事ご希望分はコメント欄へm(_ _)m

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