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狼のーかの花嫁(14)

マッドサイエンティスト老子、夕鈴、でっかいカボチャのタネ。

【現パラ】【ファンタジー】【カボチャ】
もう 何でも恋のかたと なんでも来いの方、どうぞ。

* * * * * * *
狼のーかの花嫁(14)
* * * * * * *

張老子が、きつく蓋をしたガラス瓶をそっと振って、目の前にかざすと
中味はカラン、と乾いた音をたてて裏返った。

「お主の、カボチャのタネじゃ」

「――わたしのタネ?
カボチャって、あの、ちょ、ちょっと待ってくださいっ!
私だってカボチャのタネくらい知ってますってば!
もっと、爪くらいの大きさだったと思います。
友達の明玉が『スタイルが良くなって美容に好い』っていうので、近所から種ばっかりかき集めて、煎ってひたすら食べた夏がありました」

老子の手にあるビンを改めて注視して、夕鈴は首をひねった。

平べったい卵型
片方が少しとがっている。
滑らかな表面や色形をみても
言われてみれば確かにカボチャのタネの面影は、ある。

ただ、カボチャにしては、見たことないほど、大きい。
大きすぎる。

異常にデカイ。
というかむしろ嘘くさい。

「…たしかに、私の握った掌の中から出てきたんですよ。
…こんなに大きかったかしら?」
夕鈴はまじまじ今更ながらに思った。

「じゃが、確かに、お前さんの掌の中から、出てきたんじゃろ?」

夕鈴はコクン、と頷いた。

「…もう少し、詳しく聞かせてくれんか?」
老子は、机の上にビンを注意深く置くと、ノートとペンを取り出し、

夕鈴はなにやら難しい顔をして、その後赤面した。

「…嫌なら、無理に話せとは言わん。
じゃが。わしの勘じゃがの。
…もしかするとこれは、大変貴重なタネなのかもしれん。
だとすればこれは、陛下のお役にたつ、万にも一つのチャンスかもしれんぞ?」

「――陛下の。
お役に立つんですか?」

「いや、それは話を聴いてみなけりゃ、わからん。
今、この種をみてふとよぎった
単なる老人の勘、じゃ」

夕鈴はそれを聞いて、一人でブツブツ言いながらイヤイヤしたり、さんざん百面相をした後、ペチペチと自分の頬を両手で叩き、吹っ切れた表情をみせた。

「…もし、万に一つでも、陛下のお役にたつ可能性があるかもしれない、というのなら…お話しします」

(…仕方がない)と夕鈴は思った。

夕鈴はあの人と約束をしたのだ。
そして現実的には高額バイトの前借までしている。

何より彼女自身が、あの優しい人を助けたいと願っていた。

老子がこの大きなカボチャのタネを見て
「万にも一つのチャンス」というのなら、老子は何かひらめいたに違いない。

どちらにせよ、畑のカボチャは危なくて触れないと言われ
あの中に陛下の欲しがっているカボチャがあるとも思えない。
なんとか解決の糸口をたどらねば――。


夕鈴は重い口を開いて話し始めた。
老子は、ノートのページをめくり、まっさらなページを開くと、さっそく記録を取り始めた。

「さて。お主はこれを、いつ、どこで手に入れたんじゃ?」

「今朝、私の手の中から出てきました」

「手の中から出てくる前は? いつ、これを拾ったんじゃ?」

「覚えてません。眼が覚めたときにはすでに左手がグーになってて、どうしても指が強張って開かなかったんです」

「では、昨晩。寝る前に何かあったんじゃな?」

「昨晩…」

夕鈴は両手で膝頭を握りしめるとカッと豹変し、恐ろしい形相で老子を睨んだ。

「~~っ!」

老子はぎょっとして、恐る恐る
「いいんじゃよ、あたりさわりのない辺りから、順を追って話してくれればのう…」
夕鈴は「ううぅぅうーーーー」と暫く唸り声をあげ「…ぷは」と言って肩の力が抜けた。

「最初、夢だと思ってたんです」
「何がじゃ?」
「あの、私が変なこと言ってるって思わないでくださいね?
私も夢じゃないかって、ちょっと自信がないんです…。
――実は昨晩、陛下のホウキに載せてもらって
カボチャ畑の上を飛んで回ったんです」

夕鈴自身は、かなり素っ頓狂なことを話していると半信半疑の口ぶりだが、できるかぎり落ち着いて、順序立てて話そうという努力は見られた。

老子はうつむいたままカリカリと夕鈴の言葉をノートに書きとっている。
「…うむうむ。
真夜中に退魔カボチャの巡回…と。
陛下は真面目にお仕事をされていた、と――」

それを聞いて夕鈴は、ホッとした。
(そうなのね、ここではそれが当たり前なんだ)
よかった、と夕鈴が胸をなでおろしていると、
真面目に言葉を書きとめているはずの老子の肩が、ヒクヒクと小刻みに揺れた。

「…にしてもホウキとは…」
老子がブツブツと独り言を言う。
数式を書いて、計算をして、首をひねり「…いや違う」と、書きかけの数式をジャジャっと線で消す。

「うーむ…ホウキ、ホウキ。
――わからんっ!」

何やら難しい表情をして唸っている老子を見ると、魔法使いは、素っ頓狂のように見えるそれらの行動の一つ一つに何か意味があるのかもしれないと夕鈴にも思えてきた。

「えっと。でも私が魔法使いはホウキに乗って飛ぶんですかと尋ねたから
ホウキがいいなら、ってそんな具合だったと…」

「なんじゃ! それならここの数値は全部、反故じゃ!」
老子は頭を掻きむしって叫んだ。

「…にしても。真夜中のデートは、ホーキで密着ランデブ~♪
ロマンティックじゃのぉぅ~~、ぬししし…」
老子が嬉しそうに漏れるのを夕鈴は聞き逃さなかった。

「――!! 真面目に聞いてくださいッ!」
夕鈴は、机をバン、と叩いた。

「…」
老子は知らんふりをして、ノートに向かって複雑な書きつけをする(フリ?)。

「それで?」と、改めて先を促され夕鈴も気を取りなおした。
(こんなことで怒っちゃダメ。冷静に話さなきゃ)

「その、地平線まで続く畑中の退魔カボチャが光っていてとても不思議な光景でした」
「魔封じのドルイドが用いたランタンカボチャ、とも言われるでのう」

「それで、ホウキに乗せてもらって飛んでたんです。
陛下は『このあたりの畑にあるカボチャはイタズラ者だから、一人の時は決して触っちゃダメだ』っていうんです。そのくせ、私に『大きくて形がよくて色艶よいカボチャを見つけて欲しい』とか…。
――これって矛盾じゃありません?」

夕鈴は少しムキになって老子に零した。

「…って、老子に怒ったってしょうがないですね」
としょぼんした。

「――まあ、そうじゃなぁ」
老子は仕方なさそうに頷く。
長年、魔払いカボチャを保護してきた魔法族の精鋭農夫を見続けてきた。

魔法を吸い取るカボチャは、魔法使いにとっては究極の弱点となる恐ろしい兵器であり、特殊訓練を積んだベテランの隠密農夫といえども、うっかり逢魔が時に退魔カボチャと対峙すれば、時に命を失う惨劇が起きたものだった。

真夜中の逢魔が時に煌々と光るランタンカボチャ。
それは、魔法使いたちにとって恐怖の光でもあった。


「陛下が求めるカボチャは、魔払いカボチャに在らず、
まったく逆の性質を持つ魔法カボチャのことじゃからなぁ…」

「…え?」

「じゃから。魔、法、カボチャ―」

「魔法カボチャ?
あの光ってるのとは別の?」

「そうじゃ。魔封じのカボチャが魔を呼び寄せ喰いつくし封じ込めるカボチャなら、
魔法カボチャは魔法を発する大いなる力の源となるカボチャじゃ!」

「…それって、どこで手に入るんですか?」

「――じゃから、探しておるんじゃ!」

「ッ…って、陛下にも分からないってことですか?」

「そう、じゃ!」

「そんなものを、門外漢の私に見つけられると陛下は本気で思ってらっしゃるんでしょうか?」

「…あれは与えられるんじゃ
人知れず生まれるんじゃ!
それを見つけるんじゃ!
見出し育み、魔力を備えるんじゃ!」

「…よく、分かりません」

「分からんで、結構!
理想の作物を作るまで、
のーかの探求の旅は長いのじゃ!」

(やっぱり、よくわからない…)
そう思いながら夕鈴は少し困ってしまった。

「…んで?
ホーキで、空を飛んだ、と。その続きを訊かせてくれんか」

「あ。はい。
そんなこんなで
陛下のお話し聞きながら飛んでるうちに、
私、うっかりホウキから滑り落ちちゃって――」

「なぬ?」老子は青ざめた。

「…で、畑に落ちて、カボチャに食べらちゃったらしいんです」

「ひえーーっ!? だだ、だだだだだ大丈夫じゃったのか?
いやまさか陛下がご一緒で…」

「それで、ベッドで眼が覚めたときには、もう左手が開かなく」

「フム、フム!」
サラサラとペンをはしらせ、老子は必至で夕鈴の言葉を書きとめていた。

「で、眼が覚めたら陛下が傍にいて」

「――っフム~~っ!!!」
老子の鼻息があがった。

「…って、何にも、何にもなかったですよっ!?
変な想像しないでくださいッ!!…××××っ!!」
夕鈴は、そこから自分で自分の妄想に絡め取られ混乱し、もがき始めた。

「なんじゃ、なんじゃ!
それで、どうやったら手が開いたのじゃ~っ!
何かきっかけは?
何か直接的なきっかけは無かったのかの?
――例えば、ヘーカが寝台の上でお前さんを押し倒してチューしたとか!?」

大興奮の老子が、ズバリと言い当てた。
その途端、ドカーンとマンガの書き文字(擬音)が見開き2ページで炸裂した(かと思われた)。
夕鈴の頭半分吹っ飛んだ(かと思われたが、実際は無事だった)。

マグマのように溶け落ちる彼女の表情をみて、老子はニヤリと笑った。

「なるほどのぉー!!!
ちょっとまて、いや。わかった、よしっ、これじゃ!」

老子は、ノートにサラサラと何やら見たことのない文字や複雑な数式らしきものを書き連ね、途中頁を繰り3ページにわたる計算式を完成させた。

「お主、ヘーカ。
ヘーカの手料理。
これがあって…ホーキ、いやホウキの影響は除外してよいのじゃな、
として、夜間飛行、カボチャに食べられ…」
ブツブツとつぶやく

「ちょっと前。お前さん、もしかして、何か特殊な才能はないか?」

「は?――仰る意味が分かりませんが」

「いや、じゃからっ…!!」
老子は地団太を踏んだ。

「…そのなんというか。
その天然ボケというか…図太さ。
陛下のお傍にいてもあまり感じないとか? 怖いは怖いじゃろうが
その、つまり。…体調が悪くなったりはしないじゃろ?」

「…へ? 何のことですか?」

「朝床を共にしながら
額の印以外に、陛下お力の魔法のマの字すら漂ってこない…」

床に、とこを共に、と…
なんですとーーーー?

「ぎゃーーーーっ!!!」
夕鈴はゴロゴロとのたうち回った。

「んなっ! なっ! 何もありませんっ!!
おかしなことは、いーっさい、ありませんでしたーっ!!」

「それじゃ!
まさに、そのスルースキルじゃなっ!!
分かった!! ありがとう!!」

老子は興奮して、ノートに再び向かってガリガリとさらに激しくペンを動かし始めた。

そして、ピンと何かひらめいた。

「そうじゃっ!!
スルースキル…スルー…
金の…うさぎ… あの事例があったのじゃ?」

老子は慌ててホコリの被った本棚の方へジャンプして、古い書物を取り出し何か調べ物を始めた。

「お主、やったぞ! 
これで何とかなるかもしれんっ!
ここから想定される数値をこの数式に当てはめて――」

老子はノートに向かいなおし、目にもとまらぬスピードでペンを操った。
夕鈴の眼が急激に悪くなったのかもしれないが
老子のペンを持つ腕は1本ではなく2本、いや3本あるようにも見えた。
(もしかすると、魔法かもしれない)

ペンの先からは次々と沢山の訳の分からない言葉や数式が現れた。
そして、今度は落書き…?
醜い大きなカボチャとつるりとした大きなカボチャ
それから…
「このへたくそな動物の絵… 四足の黒い犬のようなものと、耳の長い…これはウサギですか?」
「ええいっ! へたくそは余計じゃ! 黒狼と金兎、伝説の動物じゃ!!」
動物とカボチャの絵の間には複雑な図形と文字の魔法陣が書かれていた。

「これじゃっ!
――謎は全てとけたっ!!!」

老子は両手でノートを高々と掲げ、見せつけた!


ノートを持って小躍りする老子の姿を、
へたり込んでいた夕鈴は、はぁ…と?訳もわからず見上げた。


「よーするに。
この大きなカボチャのタネはな~

陛下とお前さんの
愛の結晶じゃぁあ~~♪
でかしたぞぉ~♪」

あ…あ、あい

…なんですと?

唐突なフレーズに、
夕鈴の顔色は赤から白へそして灰色に。
彼女は椅子にへたり込むように崩れ落ちた。


*
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[お知らせ] 遷宮のお知らせ

織座舎ホームページ ( http://www.olz.link/ )にお引越しをすることにいたしました。

突然のご報告となりすみません。
私ももう少し先の話かと思っていましたが、状況が変わったため
急ぎ着手することになりました。


これまでのFCブログ(陛下の花園)での連載中のお話は
 「 陛下の花園 二の宮
http://www.olz.link/blog/ 
にて、引き続き続けて行く予定です。

※お手数ですが、ブックマークしてくださってる方は、上記のサイトへの更新を宜しくお願い申し上げます。



■経緯

当サイトはFC2ブログの無料サーバーを利用させていただいておりました

昨年9月末、FC2に対し警察の強制捜査が行われたと報道で知り
個人的には少なからずも衝撃を受けました。

その後FC2の進退は噂だけで
あまり詳しい情報を得ることが出来ませんでした。

「突然閉鎖されたら怖いなあ」と怯えながらも
やはりFC2ブログさんの使い勝手が良いものですから
念のためサイトのバックアップを取るなどの対策をしたうえで
そのまま利用させていただいている状態が続いていました。

ところが先週2015年4月22日に
FC2の経営と関連性の深い方が逮捕されたと聞きました。

今回もインフォメーションが少なく(大勢の利用者に混乱を招かぬためと思われますが)
不透明なことばかりです。

前回の捜査から約7か月たっての逮捕と時間もかかっていますし
急にどうこうということもないかもしれません。

ただし、無料サーバーを利用させていただいている以上、
突然サーバーが使えなくなる可能性が全くないとは断言できません。

昨年の10月にライブドアブログにミラーサイトを作り、
コンテンツ自体は保護しています(保険)
バックアップ自体は簡単なのですけれども
限られた時間内で「あちらも」「こちらも」手入れをするのは辛く、
手が行き届かないなぁと実感してきました。

不安を抱えているのは精神衛生上あまり宜しくない。

それで今回、
少し手の空いた時期を利用し
思い切って安定的に運営できるサイト一本に絞り、引っ越すことにしました。

サイト構成的には自由度が高いレンタルサーバーを利用することに。(一国一城の主?)

織座舎 ホームページ http://www.olz.link/
├─ ブログ 陛下の花園 二の宮
 
という形で現在引越しをすすめております。

固定的な情報をお知らせしやすいホームページと
日々更新しやすいブログの両方を
併用できる形にしたいと

ホームページのサーバーに、
Wordpress(自家運営のブログ)を設置
で、とりあえず形になりましたので稼働を開始しました。

とりあえず最低限の機能だけの見切り発車なので
今しばらく少々ご不便をおかけするとは思いますが
宜しくお願い申し上げます。

---
■書庫

FC2ブログ「陛下の花園」(当サイト)は
2015年4月末(正確には5月1日未明にアップした狼のーかの花嫁(14)まで)の作品をこのまま置かせていただき
今後しばらく倉庫として利用させていただきます。

新サイトの方には
「狼のーか」の(1)から移植をし、連載を今後も続けて行く予定です。

新サイトの方は、当初できるかぎり作品を移植して稼働する予定でしたが
とりあえずは2015年5月以降の作品で新たに構成する方針にしました。

ぜんぶ連れて行けない理由は、私の技術的限界の問題です…。

Wordpressが英語圏のソフトで
FC2ブログからデータの移植ができるはずなのですけど
やってみたら、日記の数が多くて一筋縄ではいきませんでした…。

まず、英語圏のソフトの為、文字化けが盛大におきて…(文字コードが違う)
形式も違うので、全作品の全コメントの表示/非表示を手動で書き換えの必要がありそうだとか
――とにかく、時間的にも移植は断念しかけています。

そういう理由で
FC2ブログは書庫化して、このまま置いておくことにします。

万が一、FC2が全面的に使えなくなった場合は、
ライブドアブログにミラーサイト(陛下の花園 鏡宮)を開ける予定です。
(当FC2ブログのバックアップサイトとして2015年4月末分までの作品を収蔵)

過去作品に関しては
そんな感じですが、よろしくお願い申し上げます。

*

イベント参加予定

今回も黄昏博物館さんのご厚意により、合同サークル託本でささやかに参加させていただきます。
[業務連絡] 新刊・とらさんでの扱い開始しました (2015.4.22) 


■開催日■2015年5月3日(祝)・東京ビックサイト
■SUPER COMIC CITY24(1日目)
■サークル名■黄昏博物館&織座舎

西1ホール I (アイ) - 51b

--≪予定≫-------------
☆黄昏博物館さん 
 ・新刊
 ・既刊 2冊

☆織座舎
 ・新刊白の国サイドストーリーズ
 ・現パラアンソロ
 ・既刊(あるもの※をチョコチョコ)
  ※詳細情報おご希望はコメント欄よりどうぞ

狼のーかの花嫁(15)

サイトお引越ししました。(→織座舎新サイト
いろいろご不便をおかけしてすみません。
この後のお話は「陛下の花園 二の宮」でノンビリ更新を続けてゆきたいと思います。ご訪問お待ち申し上げております。


---

引き続き、マッドサイエンティスト老子と夕鈴のシーンからどうぞ。
あの人も出てくるし…。

ファンタジーです。捏造設定の塊です。まるっと飲み込んで、生暖かく見守ってください。
無理なさいませんよう…。

【現パラ】【ファンタジー】【カボチャ】

* * * * * * *
狼のーかの花嫁(15)
* * * * * * *

「よーするに。
この大きなカボチャのタネはな~

陛下とお前さんの
愛の結晶じゃぁあ~~♪
でかしたぞぉ~♪」

張老子の衝撃的な言葉に、床に崩れ落ちる夕鈴。
「よ、嫁入り前の娘に、なんてことを…」とつぶやきながら引き付けを起こしたように身悶えた。暫くしてようやく体を引き起こしノロノロと老子の方を振り返る。

夕鈴は『二人の間には何もない』ことを釈明しようと立ち上がった。
「――冗談は…」
「これは冗談ではないのじゃっ!」老子はすかさず夕鈴の口を封じた。

老子は種の入ったビンを夕鈴の鼻先につきつけ、彼女に説明を始めた。

「まあ、ちょいと落ち着いて話を聴かんかい。
これは、あの御方にとって、実に貴重なタネなんじゃ。恐らくは。」

「はあ…。」
恐らくは、という言葉に、少々腑に落ちない感は否めないが、夕鈴は老子の向かい側の席に座りなおした。

「魔力というのは人の世の理を全く無視したエネルギーでな。
非常に便利じゃが、もろ刃の剣ともいえるのじゃ」

「もろ刃の剣?」

「そう。善なる心で使えば益もある。じゃが、悪の心で用いれば闇に染まる。そして大いなる力を持つな魔法使いはこの闇の魅力に心奪われやすいのじゃ…」

「闇の魅力?」

「そう。この世の全てを統べる大いなる力はことごとく心の負の面を引き出しやすい。
…かつて絶大な魔力を得た者の中には、闇に染まり人々を恐怖に陥れたものも多い。
現代のようにだれもが豊かになり、魔法教育も整った環境であっても時に闇落ちするものが生まれるが、その数は少ない。じゃが、昔はそうではなかったのじゃ。
大いなる魔力を持ったものはほぼ皆、野心に心を乗っ取られ闇に落ちたのじゃ。

その昔、人々を脅かす魔の存在に対抗できるのは、修行を積んだドルイドだけじゃった。
魔封じのランタンカボチャは、魔法使いの持つ魔力を吸いつくし封印する恐ろしいカボチャじゃ。いにしえのドルイドは、この魔を封じ込める力を持つカボチャを見つけだし、魔封じに用いたものじゃった」

「はぁ。それが、この地域に集められてる、あのカボチャ、なんですね?
でもどうして、魔法使いの里で、魔法使いの一番苦手なカボチャを育ててるのか…よく分かりません」

「そうじゃろうな。実はあのランタンカボチャは、最初はふつーのカボチャの中から突然生まれる。夜光りはじめるころに魔封じのカボチャと気が付いても、もう魔法使いの手におえないのじゃ。それで全世界中に我々の隠密をとばし、早期のうちに魔封じカボチャの苗を速やかに回収しこの地で保護しておるのじゃ。あともう一つ理由もある…」

「理由?」

「――ここで育てた魔封じカボチャは、めっぽう美味いんじゃ」

「はあ?」

「もちろん市場で高値が付くが、通常市場には出回らんほどじゃ。
なんといってもここで採れる白陽かぼちゃといえば三ツ星レストランのシェフや世界最高峰のホテルなどから注文が引っ張りだこで、空輸して世界各国に送られんじゃ!」
老子は嬉しそうにニシシと笑った。

「なるほど!」
確かに、あのカボチャたちはみんな福々として立派だった。危険もあるが、その分さぞかし美味しいのだろうと夕鈴は深く納得した。

「…で、それがあの魔封じのカボチャだというのは良く分かりました。
それで、陛下が欲しがっているカボチャっていうのは?」

「魔法カボチャはもっとレアなんじゃ」

「レア!?」

「魔法、というのはそもそも形がない。封じ込めて器に入れておくことができないんじゃ」

「はあ?」夕鈴にはピンとこない。

「魔法の電池みたいなもんがあれば、ヘタッピの魔法使いでも、何でもしでかせるのじゃろうが、魔法の力というのはそういうものではないんじゃよ」

「なるほど」夕鈴は納得した。

「収穫祭で行われる陛下21歳の公開評議じゃが…」
夕鈴は、張老子の話がいよいよ陛下のことに…と思い、ピシッと背中を正した。
「国王、王位継承権の持つ者が21歳になるで行われる儀式じゃ」

「王様にふさわしい魔力の持ち主かどうかを試す儀式、ってことですね?」

「平たく言えばそういうことじゃな」

「正当な王には、魔法カボチャが天からくだされる…。そういうことになっておってな。
どこから手に入れたのかは歴代の王の秘中の秘とされ、魔法カボチャを手にした王以外、誰も知らんのじゃ」

「だから魔法カボチャがレアって。…でも、王様自身が手に入れ方を知らないというのなら、実際手に入らないってことはないんですか?」

「…まあ、中には魔法カボチャが手に入らず、偽物で儀式にのぞみ、こてんぱんに評議会にやられる者もおったものじゃが…。そういう者は王位につけぬか或いはその治世は長くは続かなんだ」

「…なるほど。その儀式って、どんな内容なんですか?」

「最初に三人の評議員が一人ずつ、形、色艶、大きさをで対決するのじゃ。
まずは形。防御力と、その所有者の魔力の質、つまり善なる魔法か闇の魔法かをはかる大事なパラメーターじゃ。堂々とした型のよいカボチャは善なる魔法使いである証、心が闇に染まった魔法使いのカボチャは、いびつな醜い形に育つといわれておる。
色ツヤは魔法の影響力。同じ魔力でも効き目のあるなしが分かれるのがここじゃ。いわゆる攻撃力、じゃな。
そしてなんといっても大きさじゃ――これは…」

「大きさがヒットポイント。つまりトータルの体力のようなもので、
形が防御力、色艶が攻撃力、ということですね?」

「…ほう、お前さん、なかなかのみ込みが良いのう」

夕鈴はニコっとした。夕鈴自身はゲームなどはやらないが(そんな時間があったら勤労につぎ込んでいた)小学校の頃は男子(主に几鍔の周りの男グループ)が相当やりこんでいて、暇さえあればそんな話をしていたのを耳にしたものだった。
当時はいつも『くっだらない、あんたたちそんな暇あったら宿題でもしなさいよ』とわめいていたものだが…。

「それで、三人の評議員さんとの対決に、勝てばいいわけですね?」

「そうであればまだよいのじゃが。それはまだ前哨戦、その後が本番じゃよ」

「本番?」

「つまり、こんどは評議員の用意した退魔カボチャでの攻撃を受けるんじゃ」

「…退魔カボチャ?」
夕鈴はポカンとした。

「いまある畑中の全部の退魔カボチャ対陛下お一人の魔法戦じゃ」

「――えっ?」

「この地にある全ての退魔カボチャを封じられるだけのお力がなければ、国王たる資質は認められん」

「…って。それって、すごく危ないことなんじゃ…だって。退魔カボチャ一つだって、魔法使いにとっては致命的な天敵なんでしょ?
それを、地平線までどこもかしこも広がるあのカボチャと戦うって――
敗けたらどうするんですか!?
陛下も死んじゃうってこと?…後宮に奥さんいっぱいより悪いじゃないですかっ!」

「そのための魔カボチャ、じゃよ」

「じゃ、魔カボチャを陛下もたくさん用意しないとだめなんじゃ――」

「いや、魔カボチャは1つでよいのじゃ」
平然と老子はうそぶくが、夕鈴は興奮してバンと机をたたいた。

「なんで?
たった一つでどうしろって…」

夕鈴は陛下が心配で蒼白になった。

「本来魔法は器に入れることはできん。
だが、魔カボチャにだけは所有者の魔力を貯めることができるんじゃ。
更には魔法使い自身の持つ器量によっては蓄えたその力を何倍、何十倍、何百倍、いやそれ以上に増幅するという…持つ者によっては、ま~さ~に無敵!
それはそれは、ものスゴーいレアなアイテムなんじゃっ!!」

老子はビンをもう一度振り上げて、ニヤリと笑った。

* * * * * * *

「――とにかく。早くこれを育てねば…
もう、日が無いんじゃ!」

「…でも、あと9日って?
そんなんで、本当に陛下の欲しがってるスゴイ魔カボチャって
できるんですか~?」

「それは、お前さんと、陛下ご自身が
考えることじゃっ!!
とにかく頑張らんかい、バイト娘!!」

ポイっと小屋から送り出された夕鈴はキョトンとした。

小屋に来るときは、ずいぶんと歩いた末、トラックで延々走った気がするが、今外に出されてみれば白亜の殿堂、白陽ビルの目と鼻の先だった。

夕鈴は小瓶に入れて貰ったものを大事に握りしめ、ビルのエントランスに向かう階段を見上げてぼんやり立ちすくんでしまった。

勢い余って飛び出してしまった手前、少々バツが悪い。

夕鈴は『やっぱり…陛下に会わせる顔がない』と踵を返し、クルリと背を向け歩き出したとたん背後不注意で、後ろにいた人にまともにぶつかってしまった。

『しまった!』と思った時には
もう、そのぶ厚い胸板にまともに顔から突っ込んでいた。

太陽の匂いのする作業服。大柄な相手は、倒れかけた夕鈴を「おいおい、大丈夫かい」と両腕を掴んで助けた。
したたかにぶつけた鼻柱を「いたたた…」と押さえながら夕鈴は相手を見上げた。

浅黒い肌に、ザンバラな黒髪を後ろで一つに束ねた作業着の大男。
腕をつかんでいる手は大きくて、熊の掌のよう。

「ぎゃっ、ふ、ふ、ふみまひぇんっ(すみません)!!!」
と夕鈴は1,2歩あとじさる。

「おいおい娘さん、よそ見してると危ないぜ?」
人のよさそうな笑顔でニカっと笑ったあと、「ん?」と夕鈴の額をまじまじと見つめた。

(あっ、そうだった!…陛下の印がおでこに)
夕鈴はあわてて額も手で隠した。鼻と額、隠すところばかりで両手がふさがった。
その手には、大きなタネの入ったビン。

「娘さん。なんだか面白いもん、持ってるなぁー。
…えっと。ビルに用事があるのかい?」

「いや、ちょっと用があるっていうか…その、あったんだけど。
やっぱり、出直そうかって――」

夕鈴があわあわしているのを見て、その男は気の毒に思ったのか

「…まあ、落ち着きなって、娘さん。
そりゃさぞ大事な用事なんだろうな。
こんなところにあんたみたいな娘さん一人で、気後れするのも良く分かるが、なんなら、案内についていってやろうか?」

男が、夕鈴をなだめる為にポンポンと軽く方に手をかけた。
その時、背後から声がした。

「…その手を離せ、徐、克右!」

「――へ?」

*

サイト移転しました。
続きは引き続き「陛下の花園 二の宮」にてお楽しみください。


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Author:おりざ
秘密の苑・刺青の男[織座舎]陛下の花園へようこそ。”狼陛下の花嫁”の二次創作作品を綴っています。足跡などお気軽に残していただければ嬉しいです。【新刊】秘密の苑・刺青の男パラレルアンソロジーパラレルアンソロジーとらさんで取扱。【お詫び】拍手コメ御礼お休み中です。本当に申し訳ありません。お返事ご希望分はコメント欄へm(_ _)m

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≪以下あらかじめご了承のうえ、本サイトをお楽しみください。≫

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