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いきなりクライマックス

* * * * * * *
初出:2013年05月13日22:59
* * * * * * *

(黎翔×夕鈴×青慎)


たあいもありませんが。
どうぞ

* * * * * * *


「青慎っ! あんた、なんていい子なの~!!」
ぎゅーする夕鈴

「夕鈴、ぼくも、ぎゅーしていい?」

「えっ?」
ドキドキする夕鈴

「はいっ!」
青慎を押し出し、抱っこ権を譲る夕鈴でありました。


弟コンプレックス、ここに極まれり。



* * * * いきなりクライマックス(2)もどうぞ。 * * * *

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いきなりクライマックス(2)

* * * * * * *
初出:2013年05月13日23:06
* * * * * * *


(黎翔×夕鈴×青慎)

「青慎っ! あんた、なんていい子なの~!!」
ぎゅーする夕鈴

「夕鈴、ぼくも、ぎゅーしていい?」

「えっ?」
ドキドキする夕鈴

「はいっ! ぼくお兄さんって、ずっと欲しかったんです!
李翔さんのこと、大好きです!!」

青慎は姉の腕を飛び出して、
李翔さんをぎゅー!


夕鈴あわてて
「青慎、ねーさんのほうがいいって言って~!!!」

3人団子状態でぎゅ―ぎゅーしあうのでありました


* * * * いきなりクライマックス(3)もどうぞ。 * * * *

いきなりクライマックス(3)

* * * * * * *
初出:2013年05月13日23:11
* * * * * * *


(黎翔×夕鈴×青慎)

「青慎っ! あんた、なんていい子なの~!!」
ぎゅーする夕鈴

「夕鈴、ぼくも、ぎゅーしていい?」

「えっ?」
ドキドキする夕鈴

黎翔は、すばやく裏木戸をあけ
奥から牛を連れてきて夕鈴に見せた
「牛~!」

(どうしたの!? なんで陛下がオヤジギャグ!?)

本日の汀家のお献立は美味しい牛すき焼きかな?
たっぷりご賞味あれ~

ささみ

* * * * * * *
初出:2013年06月01日09:02
* * * * * * *





他愛もありませんが。


* * * * * *
ささみ
* * * * * *


…くしゅんっ


風邪?でしょうか。

いえ。

あ。
シロさん。


お腹がすいたのですね?


しかたありませんね、
ささ身をあげましょう。

今は缶詰で我慢なさい。


 …くしゅん、くしゅんっ!!


しかたがありませんね。


陛下のお仕事をはやく巻いて。

活きの良い鶏でも買って
ささみ鍋でもしましょうか。



…花粉症の時期になると、

なぜか
鶏肉を所望する李順さんであった。




* * * *(The End)* * * * *



鶏肉の皮が苦手です。

ささみとかムネニクとか。ついつい選んでしまいます。

ヘルシーということで、よろしいでしょうか?


シロさんは、ギャラリー(3)
 に出てくる、パラレル李順さんの脳内に住んでいる犬です。

水月さんに楽器を習おう「縦笛編」

* * * * * * *
2013年06月01日23:25
* * * * * * *

かきちらし。

タグ【他愛もないものよのぅ ふほほほほ】


縦笛編もなにも。

煩悩の発散です



* * * * * * * * *
水月さんに楽器を習おう「縦笛編」
* * * * * * * * *

「水月お兄様、お妃さまが
笛の手ほどきを受けたいとお見えです」

「紅珠。では、私の笛を持ってきておくれ」

「はいお兄様」


紅珠から手渡された布に包まれた笛を、
水月はそっと夕鈴の方に差しだし
ゆっくりと布を開いて楽器を見せた。

「お妃さま。ご覧ください。
これが西洋の縦笛、
リコーダーというものにございます」

夕鈴は物珍しげにジッと見つめる。
「リコーダー…」


「では。まず息の練習です。
笛はまだお持ちにならなくて結構です。
お口で練習してみましょう。

はい。唇をとがらせて。
舌先を上あごの裏に付けます。
そして…このように。

トゥー
トゥー
トゥー」


夕鈴
「トゥー、トゥー、トゥー」

水月
「そうですね、よろしいでしょう。
では次。

トゥ、トゥ、トゥ、トゥ、トゥ~」

夕鈴
「トゥ、トゥ、トゥ、トゥ、トゥ~」


水月
「はぁ…。
今日は大変けっこうです。

お妃さま。
大変お上手になられましたね。

是非、陛下の前で
今日の練習をご披露ください」


少し魂の抜け出そうな笑顔で、
水月は早々に練習を終え、
部屋から下がってしまった。


その後、紅珠とひとしきりお茶会をしながら
夕鈴は
(まだ笛も構えていないのに…?)と不思議に思った。
だが、
楽器なら何でも弾きこなすという水月が言うのだから
たぶん、何か、上達したのだろう。





その晩。

狼陛下が後宮に渡るなり
すぐさまお妃さまは
最近の定位置、陛下のひざ抱っこに収まることになる。

人払いをしても、降ろしてくれない。

「今日は、わが妃は、何をして過ごした?」
陛下が上機嫌で尋ねる。

モジモジしながら夕鈴が答える。
「今日は、水月さんに、笛のご指南をしていただきました」

「ふむ?
では早速本日の練習の成果を
私に披露してみせよ」

(ええ?)

「あ、でも。まだ。本当に、基礎、なんです
楽器も構えておりませんが…」

「構わぬ。今日やった内容を
やってみせよ」

夕鈴は、慎重に習った通り、
唇をとがらせて。
舌を上あごの裏に付けて。
「トゥー、トゥー、トゥー
トゥ、トゥ、トゥ、トゥ、トゥ~」


陛下は、すうっと目を細める

「…もう一度?」


(え?なにか
よくなかったのかしら…)


夕鈴は、もう一度。
頭の中で復習した。

慎重に唇をとがらせて。
舌先を上あごの裏にくっつけて…

「トゥー、トゥー、トゥー
トゥ、トゥ…

そのとたん

陛下は、夕鈴の尖った唇に
チュッとキスをした。



「…!!! なっ! 何するんですかっ!!」
真っ赤になった夕鈴。



「…だって、ゆーりんの
タコチュー口が
か、
可愛すぎるんだもん…!!!


”キスのおねだり”されてるみたいで…

ぼくたまんないよ(笑)



…っあっ! ゴメっ!!

ゆーりん、
枕でぶたないでっ!!!」


---
水月さんは、といえば。

夕鈴の可愛らしすぎるタコチュー口の変顔を思い出して
その後小一時間、笑い上戸が止まらなかった、とか。

池の鯉に餌をやるたびに、上戸にはまり
その後一週間、出仕に差しさわりがあった、とか。




(おわり)


ルパン三世の石川五ェ門の斬鉄剣のサビ

「またつまらぬものを読んでしまった」

悪女妃伝説―1

今日・明日忙しくしております。

すみません。

ささやかで、どうしようもないSSSを、おおくりいたします。

行き当たりばったりですが。…
気分は「嫁が可愛すぎて、どうしよう」シリーズです。


【バイト妃】

* * * * * * * * * *
悪女妃伝説―1
* * * * * * * * * *

―――陛下は

ほんとうの、紳士だと常々思う。

ただのバイト妃である私を、大切に、大切に
扱ってくださる。

この方を困らせたくない。
足手まといになりたくない。

だから。

陛下が私に求めることなら、
なんだって、叶えてあげたい。

小さいことでもいいから。
何かを求めてもらえるって、嬉しい。

私のできることを
一生懸命、こころをこめて
頑張ります!!


「…妃よ?」

「はい?」


前髪ごしに、
陛下の視線を感じちゃう…。

陛下の香りにつつまれて、
頭がくらくらする…

「…なぜ、目をそらす?」


陛下の口元がすぐそばで。

低く声が耳元に熱っぽく響く。

…み、耳が…熱い…

カーッと熱が上がる。

…は、…恥ずかしい…

でも。

…ここは…
陛下の方を……



夕鈴は、

黎翔の胸元に添えたまま
プルプルと震えてしまう手を
必死に…押さえこみ…

大きな目に浮かんだ涙を、
こぼれない様に必死に見開いて。


上目づかいで、そっと見上げた。

「…はい。 陛下」




 きゅーーーーーーんんっ…!!!! 



心の中で、ツッコミ
←(きみって、ぜったい、悪女だよ)

(おしまい)


*

悪女妃伝説―2

日本人のソウル・ドラマ(?)水戸黄門のような安心の定型テンプレを用いて
どうしようもないSSSを、おおくりいたします。

行き当たりばったりは続く。

気分は「嫁が可愛すぎて、どうしよう」シリーズです。


【バイト妃】

* * * * * * * * * *
悪女妃伝説―2
* * * * * * * * * *



―――陛下は

ほんとうの、紳士だと常々思う。

ただのバイト妃である私を、大切に、大切に
扱ってくださる。

この方を困らせたくない。
足手まといになりたくない。

だから。

陛下が私に求めることなら、
なんだって、叶えてあげたい。

小さいことでもいいから。
何かを求めてもらえるって、嬉しい。

不肖ながら汀夕鈴!

今日も、
私のできることを
一生懸命、こころをこめて
頑張ります!!



それは、夜半になって、急に冷え込みが厳しくなった、ある日のこと。


「陛下…?」
いつものようにはにかみながら、夕鈴が口火を切った。

「なあに? ゆーりん」
黎翔は膝の上に囲い込んだ夕鈴が
真っ赤になって見上げてくるので、
読んでいた巻物から目を離して
嬉しそうに見つめ返した。


「…どうして、いつのまに
こーゆーことになってるんですか?」

夕鈴はますます、カチコチに固まる。

黎翔は、びっくり眼で夕鈴に問い返す。

「…どうしって。
ゆーりんが、もっとバイト妃、頑張るって
いうから…でしょ?」

「…でも。
陛下…。
私、重いですよ?

お疲れの陛下を、ますます疲れさせちゃったら…
バイト妃失格です…」

夕鈴はますます居心地悪そうにモジモジした。

黎翔は真剣に打ち消す。

「そんなことないって!
ゆーりん、ぜんぜん重くないよ?」

「…そうですか?」

「ゆーりんがこうやって傍に居てくれると
暖かくて…。

急ぎの確認の巻物だって
なんだか、どんどん読める気がするなぁ…」

「…あったかい、ですか?」

「うん。」

「…じゃあ…もう少しだけ…」

「うん!頑張って読んじゃうから
その間、ぼくをあっためててくれる?」

「…では…」

夕鈴は顔を真っ赤にして、そっと黎翔の背中に手を回し
キュッと抱きしめた。


「…陛下っ!
私、がんばって
あっためてますから…

急いで、巻物
読んじゃってください~~っ!!」






 きゅーーーーーーんんっ…!!!! 



そんな…
密着したら…



無さそで ありそな
ゆーりんの ××××の××××がっ…


心の中で、ツッコミ

←(きみって、ぜったい、悪女だよ)

(おしまい)


*

安心の展開※・テンプレ定型文を用いることにより、リフレインの力強い説得力を狙った、シリーズ。…としておきしょう ←

※例)日本人のソウル・ドラマ(?)水戸黄門のようにお話のパターンが決まっているお話ですね…??


(単なる手抜きSSSだ、とは
決してツッコんではなりません、よ?)


ええ。明日まで。
本当に忙しいんです。

ごめんなさい。


*

[ジャンクSS] 浦島黎翔

とりあえず何か。心の隙間を埋めようと努力はしています。
でもとても、くだらないものです…
許せるようでしたら、どうぞ。

スミマセンが【訳アリ品(ジャンク品)】につき、返品・交換・クレームいっさい受け付けません。
ご理解いただける方のみどうぞ。

【ジャンク品】【パロディ】【パラレル】【山なしオチなし意味なし】
* * * * * * * * *
浦島黎翔
* * * * * * * * *

昔むかーし、あるところに
浦島黎翔という若者がおったそうな。

ある日黎翔が浦にでると、
磯で小さな亀をいじめている子供たちがいる。

「こらこら、おやめなさい」と子供たちを諌めると、
助けた子亀をそっと渚のほうへ連れてゆき
「さあ、もう大丈夫、海へお帰り」と逃がしてやりました。

すると子亀は
「浦島さん、ありがとうございました。
ぼくは青慎という名前の亀です。
助けてくれたお礼に、姉さんのいる竜宮城へご案内しましょう」
と丁寧にお礼を言いました。

それで浦島黎翔は子亀の背中に乗せられて
海の中をどんどん深いところまで連れられてゆきました。

海の底にはちょっと下町風な長屋があり
「竜宮城」と看板が出ているのが見えました。

竜宮城の前には門があります。

なんだかチョロチョロ、可愛い雑魚が門の前に勢ぞろいしています。
「おい、アニキに知らせろ」と細目のヒラメの声が聞こえます。

奥から「おう、なんだ、子亀の青慎」と隻眼の鯛が出てきます。

「あ、鯛の几鍔さん、こんにちは。
この方は浦島黎翔さんです。
いじめられてた僕を助けてくれたので
少しおもてなししたくて
お招きしました」

「おい、変な奴じゃねーだろーな?」
「あれ、そんなにぼく、変?」
ケンカ腰の鯛の几鍔に、浦島黎翔さんはニコニコ子犬のように微笑みながら問いかけます。
でも、用心深く腰の釣竿に手がかかっているのを、鯛の几鍔は見逃しません。
(あの釣竿…何か仕込んでやがるな? 俺たちを釣り上げようって魂胆か? チッ。油断ならねえ奴だ)
几鍔は「ま、青慎がそういうなら、入れてやんな」
というと、手下たちは通せんぼしていた門を開けました。

「竜宮城」と書かれた長屋から、かわいらしい娘さんが出てきました。

「浦島黎翔さん、わたしがこの竜宮城の乙姫・夕鈴です。
よくぞ弟の子亀、青慎を助けてくださいました。
お礼にごちそうをいたしますので、どうかここでゆっくりしていってください」

乙姫夕鈴は自ら厨房に立ち、大根をスパスパとなぎ倒し、見事なパフォーマンスで庶民的な夕食を作ってくれました。ほぉおお~と浦島黎翔は感嘆の声をあげ、余興を十分に楽しみ、夕鈴姫の手料理を「おいしいね、おいしいね」と食べました。

こうして夕鈴姫のもとで浦島黎翔は毎日楽しく過ごしていました。
ところがある日
「お仕事が山のようにたまっております。
どうか早急にお戻りください。
お帰り、心よりお待ちしております―――李順」という手紙が、この竜宮城に届きました。

浦島黎翔は「…いやだなぁ。帰りたくないなぁ…」と散々駄々をこねました。

乙姫夕鈴が「さあ、すぐお帰りください。お仕事が待っておりますよ」というのですが、
浦島黎翔は乙姫夕鈴と離れがたい。

そこで、夕鈴姫はおまんじゅうをたくさんふかして、玉手箱へ詰め
「お仕事が終わったら、これをお食べください。
お仕事が終わるまで待てできなかったら、もう作ってあげません」
と言って持たせました。

夕鈴姫手作りのおまんじゅう食べたさに、
浦島夕鈴は仕方なく仕方なくいやいやもと来た道を、子亀の青慎の背に乗って地上へと戻ってきました。

地上に戻ると、見慣れた風景が何とはなく変わっています。
それでも記憶を頼りに戻ると、
李順、周康蓮が待ち構えており、
山のような仕事を盛り付けた箱を次々と運び込んできます。

くたくたになるまで仕事に追われ、
毎日毎晩頑張った浦島黎翔。

ようやく乙姫夕鈴との約束を果たし、
玉手箱を開けます。

すると中からモワっと白いカビが舞い上がり
中のおまんじゅうは腐界にのみこまれ
すっかり菌糸に覆われたナウシカな世界になっていました。

ラン、ランララ ランランラン ラン、ランラララン
ラ ラン、ランララ ランランラン 
ララララ ラン ラン ラン

あまりのショックで髪が真っ白になった
浦島黎翔さんは
おじいさんになってしまった、とさ。

ご愁傷様でした。

(ヤマなし、オチなし、イミなし。)




<おしまい>

――――――――――――――――――――

たぶん、55話の陛下が。

心の変調をきたしているように
私も変調をきたしております。←

可愛いんですけど

ロックしちゃう陛下は…
想像できなかったので
自分の中の陛下像が再構築できず、今ブレまくってます。

(これまでの狼モードは、隙あらばつけ入る
妖艶なまでもの、あの憎たらしい余裕というか。
へー然とやっちゃうあのお方、だったんです)

少女漫画ですかね。
ここで肉食陛下になったら
歯止めがきかないですから。

だからこういう選択肢もありなのです
可愛いですし
ラブラブ~~なのです

ただ書き手として、
原作を重んじて、
登場人物の性格とか考え方とか、極力なぞらえて
二次を再構築しよう、とすると
とてつもなくハードル上がっちゃった気がします。

陛下の弟さんとか
じつは別人、とかだったら
それのほうが、まだ。お話、作りやすいです。

ごめんなさい、
決して味噌つけてるわけじゃないですよ。
自分の中の問題なのです。

ようするに、―――書けない言い訳です。(笑


狼陛下で、夕鈴を妖しく翻弄する、甘ーいお話を、というキリリクも戴いていて
書いてみようかな…と頑張ったんですが

1本書きかけを、捨てて

それで、気晴らしに
もう1本くだらないのをかこうと思ったんですが

これもどうしようもないほど、
書けなかったです。

でも、とりあえず無害なので(?)
こちらを、日記代わりに乗せておきますね…。

ごめんなさい。






長髪陛下の挑発(上)

こんばんは
今日は少しお仕事早じまい。

366666HIT を踏んでくださった まみりんさん のキリリク
──────────────
■お題■
陛下が始終狼陛下で ゆーりんを甘くあやしく翻弄して
要は甘々でお願いします。
──────────────

…すみません。甘くなってません。まだ。←

【バイト妃パラレル】【ねつ造設定】【ギャグ】

まみりんさんにささげます。

* * * * * * * *
長髪陛下の挑発(上)
* * * * * * * *

「…りん… ゆうりん。
…夕鈴、次、君だよ?
―――寝てるの?」

ゆらゆら揺れてカクン、と首がおちて。
その小さな衝撃で夕鈴はハッと、顔を上げた。

「…えっ! あ、はいっ!?
やだっ、私。寝てましたかっ?」

えっと…
目の前の差しかけの碁盤に焦点があった。

「夕鈴。次、君の番」

囲碁…
そうだ。

―――陛下がいらしているのに…。

私、どうしちゃったんだろう?

慌てて頬をパチパチと叩いて目を覚ますが
頭の中がふわふわしてなんだか記憶があいまい。

「―――もう、手がない?
負けを認める?」

陛下が笑って言った。

「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!
今考え中で…」

碁盤をじっと見つめるがどこをどうしたものか、
まったく頭が回らない。


「すみませんっ!」と顔を上げて、陛下を見つめた。

―――あら?

なんだか…違和感。


え?

陛下が、


長髪!??

夕鈴は内心卒倒しかねないほど驚いた。
なにが何だかわからず、碁盤に視線を落として混乱する気持ちを静めようと必死に考えた。

―――陛下が、長髪?

夕鈴はそっと前髪の陰から前方をうかがう。
陛下は腰まで達するつやつやとした豊かな黒髪を背中に流し、くつろいだ寝間着に上着を重ね目の前の椅子に座っていた。

(おかしいわね、
私。
夢を見ているのかしら)

夕鈴は自分のほっぺたをギュッとつねってみた。


「へ、陛下!
そ、その、…お髪は?」

「髪?…どうかした?」

「―――いえっ、なんでもありませんっ…」

夕鈴はギュッと膝元においた手を握り締め、
(冷静に、冷静になるのよ、夕鈴!)とつぶやいた。

「どうした。
わが妃は強情だな…。
―――そろそろ素直に負けを認めぬか?」

盤上の石はどうみても陛下の優勢で、夕鈴に勝ち目はなかった。
あわてて盤上をにらみつけ、何か手はないか、
もわっとする回らぬ頭で夕鈴は必死に考えた。


向い合せに座っていた陛下は
碁盤に首を突き出すようにしていた夕鈴のの耳元の髪の一房をツイっと掬い、
かるく口づけを落とした。

夕鈴はびくっと肩をすくめると、ハタと黎翔を見つめた。

まじまじと見つめ合う。
(やっぱり、髪が長いだけで、いつもの陛下みたい。


黎翔は穴が開くほど変な表情をした夕鈴に見つめられ「ん?」という表情をしながらも、相変わらず余裕の笑みを口の端に浮かべ、夕鈴の亜麻色の髪を指先で弄ぶようにしながら、口許にかるく当てている。

「愛しい妃よ―――もう眠たいのか?」

「ちがいますっ!!」
夕鈴は長髪の陛下の妖艶な瞳にみつめかえされ、ポッと頬に熱が上がるのを感じた。

(どうしちゃったのかしら、いつもよりなんだか…色っぽいというか)夕
鈴はドキドキした。

「そう…見つめられるとますます離れがたいな」
黎翔は夕鈴の髪を指先でクリクリとひねり、二回、三回と愛おし気に口許に当てる。


「へ…陛下!」

「ん?」

「な、なぜ、そんなことされるんですかっ!」

「何故―――? とは何のこと?」


「その。私の髪を…その、あの…」
罰の悪さにモジモキしながら、あれこれ考えるが、答えは出ない。

「…夕鈴の髪に、口づけること?」

「今、二人っきりで。
仲良し夫婦を演じて見せる相手もここにはおりませんのに」

黎翔は苦笑をした。

「二人っきりで…してはいけない、と?」

「今は演技する必要ないじゃないですか?
陛下」

いつもと同じ表情、同じ声。
だけど、なぜか優しくて、物憂げなその瞳に引き寄せられてしまう。

「演技する、必要―――ね」

いつもと変わらぬしぐさで夕鈴の髪の一房を指先をひとしきり愛でると、スルリと名残惜し気に離した。

「演技じゃないとしたら?」

「演技じゃないなら、なおさらおかしいですよ」


「―――何故かな…
?…
何とも説明しがたいが…。
君もやってみればわかると思う。
とても心地よいんだ」

「…!?」

「やってごらん?」

「あ、あの…」

もごもごと夕鈴は口ごもった。

黎翔の指先の感触が思いだされ、

(あれを、―――陛下に? 私が?)

想像しただけで、ボフッと湯気が上がり夕鈴の頬は一気に紅潮した。


「ほら」

陛下に腕をとられ、机の向かい側から引き寄せられるようにグイと引っ張られる。


「…あのっ!!」

「ほら。こっちに来て」

あれよあれよと、腰をとられ、膝の上に座らされてしまう。
間近でみても、やはり陛下の髪は伸びている。
長くてまっすぐな黒い艶やな髪が
白いうなじをチラリと見せて豊かに背中に波打つ。

「君もやってみたら、分かるだろう?」

黎翔の耳元の一房も、見慣れたいつものそれより長い…

夕鈴は畏れ多く触れることもできず、息をのんだ。

「指を…」
黎翔は夕鈴の手を持ち挙げると、指先を開くように反対の手で念入りに広げさせる。

「…っ」

指先をふれられた途端、夕鈴は手をひっこめたい衝動にかられた。
しかし黎翔はあくまで優しく柔らかに触れているくせに、それを許されない。

「…ほら。触れて」

密着した二人が、頬を寄せ合い、指をからめ、
夕鈴はおずおずと黎翔の髪に触れる―――

(無理無理無理ムリ、無理ですっ!!っへいかーーーー)

夕鈴の顔は真っ赤で、今にも爆発しかねない内圧を必死に堪えている様子を見て、黎翔は満足げにうっすら笑った。

「…ほら。指先で絡めると…

―――いい気持、じゃない?」

黎翔の黒髪の一房が、
するり、と夕鈴指先の中で滑った…

掌を滑る髪の、重みと弾力のある滑らかさ。

…!!!!!

あまりの感触に夕鈴は思わずくっと手を縮めた

そのとたん
「…痛っ」と黎翔の声が上がる。

「え?」

手元を見ると、夕鈴の引き込んだ指先に黎翔の黒髪が絡んで、引っ張っていた…

「…ああっ!!ごめんなさいっ!!」

ところが黎翔は厳しい低い声で

「―――許さぬ」
と発した。


「…へ?
ごめんなさい、そんなに引っ張ったつもりじゃ…」

いつもと違い、狼陛下の表情で『許さぬ』と言われた夕鈴は頭が真っ白になった。

「許さぬ。
痛かった。」

冷たい狼陛下の声に、夕鈴は茫然とし、心臓をわしづかみにされたような衝撃で胸にズキンと痛みが走る。夕鈴は一瞬にして蒼白になった。


国王様の髪を引っ張って、傷みを与えてしまった…

「お、お許しください…」

「許さぬ」

夕鈴は黎翔の膝から降りて、床に伏して謝ろうと思ったが、がっちりと腰に回された黎翔の手が、それを阻止した。

「お許しください」

「ダメだ」

「―――なんでもいたします。
どうしたらお許しいただけますか?」

「…なんでも?」

「はい」

「では。

―――もう一度。
明日、政務室で
リベンジの機会を与える」

「…は?
リベンジ?」

「相手の髪に触れ、唇を寄せると。
…何がどう心地よいのか…
何故そうしたくなるのか。

君の愛らしい唇から私に教えておくれ」

「…せっ、せっ、政務しつぅ?!!」

「…何か?」

「あのその」

「君の言う通り。
人前で見せてこその仲良し夫婦であろう?」

「それは…」

「それとも、君にはその覚悟がないのか―――?
狼陛下の花嫁という覚悟が…」

覚悟がないのか、と言われ、
プロ妃をめざし日々精進している夕鈴はカチンときた。

「いえっ!ございますよ?」


「では?」

「ええ、やってやりますとも。
見事やってお見せしましょうとも!」

「私の髪を一房すくって、君が口づけするなんて…
本当にできるの?」
急に弱気な小犬な表情にクルリと変化した。

「ええ!やってみせましょうとも!」

夕鈴は、これは夢だ、と思った。

(だって、陛下が長髪なんだもん。
言ってることがおかしいもん。
きっと夢だから。
明日には醒めているはず)

それで、夕鈴は啖呵を切った。

「政務室でっ!!
みなさんの前で
へ、陛下の髪をひと掬い。
そして口づけをしてタラシなセリフの一言でも見事言ってのけましょう!!」

と。


さて。翌日目が醒めて。
やっぱりまだ長髪陛下であることに気が付いた夕鈴。
(どうしようわたしまだ目が醒めてないみたい)と青ざめた。

やっぱりやらなきゃ、ダメ?

でもたぶんこれは夢だから。

ええい、やってやりますとも、汀夕鈴。あんた女でしょ


(***)


ギャグSS 全開陛下

4/22【白陽国SNS地区】建国の日によせて。

ひょこり。
すみません、お祭りにエントリーだけでも…、というつもりで書き散らしてしまったギャグ短編です。
(コミュのお祭り用に一発書きです)

よいふーふ4122にかけながら、
お妃様より、女房役の側近殿の出番の方がおおいです。

軽いギャグで赦してやるよ、と懐深く接してくださるのであれば、どうぞ。

【多分、バイト妃】


* * * * * *
全開陛下
* * * * * *

左手で筆を持ち署名をし、右の手で捺印をする。
李順がその紙を持ちあげ乾くまでの仮の置場へ据え直し広げる。

「…ご機嫌ですね?」
次の書類が目の前に広げられる。

黎翔は目を通し、忙しく手を動かし、その合間に官吏を呼びつけ質問と、指示を挟んだ。指示を受けた政務官はあわただしく動き出す。

「―――何だ」
黎翔は表情一つ変えず、傍に立つ李順にチラリと一瞥をくれた。
穂先を墨にひたすと、さらさらと見事な手跡を残す。

書き上げたばかりの穂先は細く、乱れもない。

次、と伸びた手に、書面が乗る。

「なにかと効率よく進んでおります」
見事な間合いで、次々と書類に署名がなされ、捺印が押される。

李順と黎翔はまるで餅つきのつき手と返し手のようにリズミカルに次々と案件をさばいてゆく。

「…そうか?
なら良い」

書類に手を取りざっと要件に目を通し、朱筆を取り出しスイッと脇に追記する。
差し戻しの山へのせ、次の書類が差し出されると思って、右手を横に差し出した。

伸ばした手はいっこうに空手のまま、何も乗せられることがなかった。

「…なんだ?」

「…ふぅ。今日は、もう、終わりにしましょう」
李順は疲れたように肩をすくめ、空になった書類箱を差し出した。

「なんだもう、終わりか?」

「すべて終わりました」

「ふうん、そうか」

「やる気があるのは大変良いことですが…。
陛下のようにムラがあるといかんせん、周囲が付いてゆけません。
いつもこの半分、いや三分の一でよいですから
平常運航してくださると助かるんですがねぇ…」

李順の後ろには疲れ切った政務官らが死屍累々、折り重なって倒れていた。

「そうか、今日はもうないな?」
念を押して、李順が「その通りでございます」

「では、私は明日まるまる一日、休みだ。
完全な、休みだ。
誰がなんといおうと、朝から晩まで、休みだ。
誰にも会わん。急な要件であろうと、何一つはさむな!」

「…御意」

黎翔は笑いながら立ち上がると意気揚々と歩き出した。


―――帰ると、部屋には彼女が待っている。

「…あ! 陛下!
お疲れ様でした
お帰りなさい」

満面の笑顔で迎えられれば疲れも吹っ飛ぶ。

「夕鈴、今日は、何をしていたの?」
「陛下のために、お菓子を作っていました」
「楽しみだな、何?」
「うふふ、では、まずはお茶の準備をしますね?
お楽しみに…!」

夕鈴が静かにお茶の準備をしていると、
控えの間から声がかかった。
「―――陛下、おくつろぎのところ、大変申し訳ございません!」

黎翔は、あきらかにムっとした。

「…人払いをしたはずだが?」

「急な御用で、なんとしても陛下にお取次ぎを、と。李順様が」

李順には、先ほど十分釘を刺したはず。
それなのに、
(奴自身も疲れて果てているこのタイミングで)
こうして呼び出しするとは
よほどの『緊急事態』であろう。

「…仕方がない」

黎翔は、あわてて上着を羽織ると、隣室の謁見の間へと移った。

「陛下!」
「なんだ?」

「緊急の事態が…」
「だから、なんだ。私は完全休養だ。と、あれほど…」
「うっかりしていました!」
「うっかり?」
「白陽国SNSの建国記念日です」
「―――は? はくようこく、えすえぬえす?」

「お二人のラブラブ進捗具合を国民の前で広く示す大切な記念日なのです!
国を挙げてお二人にお祝いを…」

「祝い?」

「ぜひ、国王とお妃さまお二人のラブラブっぷりを、国民の眼前でしっかり披露してほしいと全土の国民からよせられた嘆願書が山のようにっ!?」

「馬鹿者っ!
私は、これから休暇だと。
仕事はしないと、あれほど…!」

「そこを何とか…」

そこへ、心配した妃がひょっこりと顔をのぞかせた。
急な仕事云々で、二人がもめているとしり、夕鈴は力いっぱい黎翔に懇願した。

「へーか!
みなさんのために、お仕事頑張りませんか?!」

「…ほう?」

「お妃もそうおっしゃってることですし…」
李順は汗を拭いた。

黎翔は狼の表情でニヤリと笑うと、

「―――では、仕方がない。
最愛の妃のたっての願いとあっては、叶えぬわけにもいくまい。
明日一日の貴重な休みを費やし、仕事に励むとするか」

「…励む?」

夕鈴は意味も分からず、ニコニコと黎翔を見上げた。

「陛下っ!? 夕鈴殿は、バイトですよ?
そして、そもそも!
白陽国ではエ□はタブーですっ!!」

「李順。大義であった」

「え?」
李順はいぶかしげに黎翔を見上げた。

「では、李順!
あとは適任者で仕事を進める!
お前は休め」

「ヘーカ、やる気満々ですね~!
その意気ですっ!」
夕鈴はニコニコと黎翔を見上げた。

「夕鈴、あとは二人で―――
お仕事、いっぱい、がんばろうネ?
ぼく、今日は調子よくってね。
お仕事全開モードなんだ!」

「はいっ!
私、ヘーカのためなら、なんでもお手伝いしますっ!」
夕鈴はぐっとこぶしをつくった。

「頼もしいなぁ」

狼さんはしっかりと人払いをし、兎さんをお持ち帰りしましたとさ。


いい夫婦によせて。

(終わり)

長髪陛下の挑発(後)

お元気ですか

366666HIT を踏んでくださった まみりんさん のキリリク
前編だけ先に公開しながら、後編を上げそびれておりました。(2月26日に下書きしていたものに加筆修正を加え、改めてアップさせていただきます)

大変長らくお待たせしました。
つまらないものではございますが、どうぞお納めくださいませ。

──────────────
■お題■
陛下が始終狼陛下で ゆーりんを甘くあやしく翻弄して
要は甘々でお願いします。
──────────────


【バイト妃パラレル】【ねつ造設定】【ギャグ】

まみりんさんにささげます。

* * * * * * * *
長髪陛下の挑発(後)
* * * * * * * *

コホンと李順が咳払いをワザとらしく…。

李順の咳払いと、過剰なまでも神経質に眼鏡を磨くさまは
先ほどから一度や二度ではない。

それもそのはず。
「冷酷非情の狼陛下」と呼ばれる
この国一の冷酷かつ非情な君主、
若き珀黎翔国王陛下が、悠々と膝の上に妃を抱きかかえていた。


夕鈴は顔から火が出るほど恥ずかしかった。

官吏らがチラリチラリと盗み見る。

あちらから、柳方淵が資料を両手いっぱいに抱え、歩み寄る、
柳方淵は(ケッ)と、白けた見下し目線で夕鈴を突き刺した、

この衆目に晒されるなかで、
夕鈴は約束を果たさねばならない。

条件は、
政務室で。
みなさんの前で。

やるべきことは、
陛下の髪をひと房すくい、口づけをして。
何がどう心地よいのかとか、何故そうしたくなるのかとか
狼陛下のようにタラシなセリフを言ってのけること。

(ええい、夕鈴!
さっさとやり終えて。
約束を果たすの!
―――行くわよ!)

「陛下?」
おずおず、と手を伸ばし、陛下の方へと伸ばす。

「気になる」
「は?」
鋭い視線で見つめ返され、思わずゾクリと背中が凍りつく。
夕鈴は、手をひっこめ縮こまった。

「君はいつにもまして愛らしいが…
そのように思いつめた顔をされては」
狼陛下は軽く妃の顎をすくいあげ、じっとその顔を覗き込む。

(ほら、チャンスは作ってあげてるよ?
―――さあ、いつ仕掛けるの?
やれるもんなら、やってごらん?)

そう言われているような気がしてならず、夕鈴はむっとした。


「―――陛下。
お妃さまは、何かお一人で考え事がしたいのでは?」
すかさず李順が口をはさむ。

「いえ。
ええと、あの…」
(り、李順さんの眼が怖いっ!!
でも…陛下との、約束を、あの…)

「…」

「―――方淵?できたのか?早いな」
じっと側で控えていた方淵に気が付き、黎翔は目もむけず声をかけた。

「は。こちらに」
ずずい、と取り揃えた書簡類を広げ、黎翔の前に差し出す。

「フム…なるほど。」
黎翔は真面目な顔つきで、政務について難しい指示を出し始める。

こんなときに、手出し、できない…じゃないですか。
もじもじと指先をすりあわせ、言葉が切れるのを待つが―――
タイミングが計れない。

そもそも、このような場所で。
なぜ陛下のお膝の上?
なぜ私の頭の上で、国を左右するような指示が取り交わされているの?

ようやく方淵との用事が済み、少し距離が開く。

だが方淵の怒ったように人を見下すまなざしにはビリビリとした緊迫感がただよう。

そのうえ、李順がますますキツイ顔で睨む。

「お妃さまの顔色が悪いようですよ?
陛下―――そろそろお妃様を後宮に」
「いや、まだ大丈夫であろう」
「いやどう拝見しても―――」
「へーか!!」
もう! とりあえず、約束を果たしてしまえっ!!!
夕鈴は、ぎゅーっと両手で陛下の両側の髪をわしづかみに引っ張り、
それに顔を埋めると叫んだ

「へへへへっへいかの髪はふさふさで
モフモフしてて、大きなワンコみたいに気持ち良いですねっ!!!」

「―――わんこ?」
李順が、ずり落ちた眼鏡を指でクイともどしながら、問いただす。

「は、はいっ!
とりあえず、それだけ申し上げたら、今日はもう
十分です。
オーライですっ!!
失礼いたしますっ!!」

そう言って、ビシーッ!!と背筋を伸ばして立ち上がったものだから、
黎翔の顎めがけて、勢いよく夕鈴が頭突きする形になった。

「はぐぅっ!」
黎翔は顎をしたたか打ち上げられ
夕鈴が「痛たたたたっ…!!!」と騒ぐ。
白目をむいた黎翔は椅子の背もたれにガクンと音を立てて倒れた。

「へ、陛下―――っ!? 脳震盪?」
李順が叫ぶ。

「陛下っ!」
方淵が崩れ落ちる黎翔を押しとどめ、あわてて書類でパタパタと風を送る。

周囲の官吏は真っ白に凍り付いた。

* * * * * * * *
くすん、くすん…

すすり泣きが聞こえる。

「ご、ごめんなさい、陛下…」

その声で、ぼんやりと意識が戻る。

「ゆう、りん?」

―――ここは、どこだ?

政務室の隣の控室の長椅子に横にされていた黎翔は、ゆっくりと目を開けた。

「陛下っ!?
大丈ですかっ?」

「―――顎が、ジンジン痛む」

「ご、ごめんなさい、ごめんなさい…!!」
夕鈴は泣きながら横たわる黎翔にしがみついた。

ふぅ…とため息をつき
「…いや、私も。
少し悪ふざけが過ぎたようだ」
黎翔は夕鈴を引き寄せ、ポンポン、とその肩を叩いた。

くすん、くすん。
「ごめんなさい、私陛下に…」

「―――もう、よい」
更にぎゅっと抱き寄せられる。

「痛かったですか?」
顎のあたりをそっと窺う。

「…痛いから…おまじない、して?」
「おまじない?」
「そう…君の柔らかい唇で
痛みをやらわげて」
「くっ、唇?」
「きっと…痛みが和らぐと思うんだけど…?」
「―――!//////」
「…できない?」
「くぅ…」
夕鈴は恥ずかしさも頂点で、煮詰まってしまった。
「…無理だよね…。うん
そうだよね。好きでもない男に
唇なんて…」
「そんなことありませんっ!!」
目をつぶった夕鈴は、黎翔の赤くはれた顎に、触れるか触れないか、
小さな口づけを落とした。

その途端、黎翔は夕鈴をぐっと抱きしめた。
「え!?」
抱き合ったまま、黎翔はぐるりと長椅子の上で二人の体勢をきように入れ替えた。
覆いかぶされて見上げると、滝のように豊かに流れる長髪陛下のながい黒髪。
夕鈴は思わずその艶やか黒髪を見とれた。

「ありがとう。
それは…夕鈴が私のことを、好きって、こと?」
長い髪に、赤い目。

私の好きな陛下と
そっくりで。
でも…違う。

「す、す、好きでもないなんてことは、ありませんっ!!」

「それって、好き?嫌い?どっち?」

…陛下なら大好き。
でも、本当に、陛下なの?
「―――」
「どっち?
―――言っておくれ」

黎翔があんまり真剣な目で見つめるものだから、夕鈴は胸が止まりそうだった。
「…」
「願わくば。
好き―――だと
言って欲しい…」
黎翔は固まった夕鈴の両頬を包むと
息がかかるほど、近づき…やがて重なるように―――

「夕鈴。
好きだと
―――言っておくれ」

押し返したくても、力が入らない。
だって、彼は陛下で。私のことを夕鈴と優しく呼んで…

陛下、なの?


めくるめくような口づけ。
息ができない…。
息が…
いき、





―――あ。
れ?

* * * * * * * *

はっと大きく息を吸う。

ふと、目の前に碁盤が。

顔をあげると、そこにはいつもの髪の短い陛下。

「―――どうしたの?
やっぱり、眠たいんじゃない?」

(やっぱり、さっきのあの長髪陛下は、夢だったんだ。
うん、うん。
そんなのありえないものね。)


「えーと、あ―――?」

「はい、夕鈴の負け!」

じゃらじゃら、と碁石をかきまぜる陛下。

「え?」
「負けたら、なんでも言うこと聞くって約束、だったよね?」

「へ?ええと、そんな約束
でしたっけ?」

「うん」

ニコニコと、笑う小犬陛下。

「あー、分かりました。
じゃあ、何しましょう?」

「じゃあ。
…今日は、

一緒に寝てくれる?」


ニヤリ、と赤い目で笑った陛下は

長髪陛下だった―――。


(おしまい)

オートマータ ~あるいは、機械仕掛けの恋人~

【パラドックス・パラレル】【むっちゃ呆】

すごくバカバカしい甘いお話が、無性に書きたかったんです。
雑食で消化能力の強いなんでも許せるお心の広い方のみ、よろしくお願い申し上げます。
呆れるとおもいますが。呆れてください。

* * * * * * * * * * * * *
オートマータ
~あるいは、機械仕掛けの恋人~
* * * * * * * * * * * * *

微かな声が聞こえた気がした。

「陛下、お散歩にいきませんか?」

一心不乱に働いていた黎翔は、
それに気づくとふと顔を上げる。

目の前には愛しい彼女がいて
机の向こうで
モジモジと肩をゆすぶり
とつとつと話しかけている。

「いまから、か――?」
食事や休憩の時間、でもなければ
仕事の切れ目というわけでもない。

普段目立たぬよう、差し障らぬよう、
必死に息を詰めている彼女だけに、
わざわざ今、なぜ彼女がそう誘っている理由が分からなかった。

私と目が合うと、
彼女はクルクルと嬉しそうにその場で回った。

いつも彼女は私の理解の範疇の外をいくから
きっと今回も、何か突飛なことで私を翻弄してくれるに違いない。

なにしろ彼女が大胆に私を誘うなど……そうそうないことなのだから。

そう思うと、なによりもこの機会を逃すのは惜しい。

「他でもない君に誘われて
断れるはずもないな」
黎翔はかりそめの妻を見つめ、ふっと頬を緩めた。

ところが彼女はするりと向きをかえ、
ウインウインと音を立て、滑るように移動を始めた。

「あ…、どこへいく」
三方を囲まれた隅を一直線にめざす。

「散歩…に誘ってくれたのだろ?」

「お仕事中です!」

なんだ?…彼女は何かに怒っている。

クルクルと変わる表情も彼女の魅力だが、その理解できないところまで含めて彼女の存在は愛おしい。

そしてついに隅っこの角にスボッと突っ込むと
腹立ちまぎれに
うぃんうぃんヴーーーーン
と微かな音を立てて体をゆすった…

「夕鈴!」

手をのばした――すると、その手をメガネの側近がガッチリと捕まえた。

「社長!」

ハッと黎翔は赤い瞳を見開いた。

「…社長。
遊びはほどほどにしてくださいよ?
アレはお試しキャンペーン中の短期レンタル品、なんですからね」

あいらしいお掃除ロボットを黎翔は目で追い続けた。

「社長、あまり困らせてはかわいそう、ですよ」
李順はハアとため息をついた。

翔は立ち上がると、夕鈴が向き合っていた角からそっと持ち上げ、向きをかえて放つ。
夕鈴はうれしそうに再び動き始める。

広い執務室は、秘書室とバリアフリーでつながっている。

「…あ、そっちは行っちゃダメだ――」

黎翔はいそいで机の下に置いていた、取り寄せたばかりの段ボールをあけ、
追加のバーチャルウォールを取り出し、隣の秘書室にもいけないように慎重にセットした。

「夕鈴。さあ。好きなだけ散歩していいよ」

黎翔が優しく声をかけると、夕鈴はさっそく嬉しそうに動き始め…たかと思えば、すっと充電器の方へ帰って行き、すとんと部屋の隅で動かなくなってしまった。


「そうか。
…君はしばらく、ゆっくり充電するといい――」

黎翔がさびしげに肩を落とすと、
となりで見守っていた李順もため息をついた。

静かにしているだけだが、
何かもの言いたげな表情がうっとうしく
黎翔はキッと向き直った。

「なにがそう気に入らんのだ ――李順」

李順の背中にゾクと冷気が走る。

「正直に申し上げますなら
…あなたのその気に入りすぎているところが」

「あはは。
そんなにしんぱいしなくてもいいよ。
…ただ私は、彼女がごく自然に接してくれるのが
可愛くて楽しくて嬉しいだけだ。
――そう思わなくなれば、
お前の望み通り
切り捨てるさ、今までどおりな」


「私は、最終的には社長の決定に従います。
――ですが意見は変わりません。

早く彼女をここから逃がしてやるのが
彼女のためです――!」

「ぜったい、ヤダ!
妻を、手放せと――?」

「妻じゃありませんしっ!
夕鈴とか名前までお付けになって――!

臨時の
しかも相手は、お掃除ロボット――」

「私にとっては可愛い妻だ―――。
みていて飽きない」

「ですが、家電製品は妻にはなれませんしっ!
いいかげん、ソレをお離しくださいっ!」

「やだっ!
夕鈴を野良にしろだなんて、李順は鬼畜か――?」

「野良ではなく!
秘書室や、その先の廊下まで、
夕鈴殿の掃除範囲にしてほしいと――私は申しているだけですっ!」



ふーーん。

「…だからさ。
あの二人、なんで
お掃除ロボットに名前まで付けて、
盛り上がってんの?」

「ヘーカが擬人化しちゃったからのう…
あの方は聡明にして冷静。誰よりも賢いが――
やんちゃなお方じゃ。
いくらあれがお気に召したとはいえ、
御掃除ロボットでは
お世継ぎはむつかしいのぉ。ふー。」

「じーちゃん、まじ
へーかと、お掃除ロボットCP、あり?」

「…まあ、面白いから
あり、にしとくか。
実害はないじゃろ」

付属する秘書室から二人の様子を覗きながら
のんびり浩大と老子はお茶をしていた。

*

甘い甘い話にしたかったのに…。
どこをどう間違えたのやら――?


オートマータ ~あるいは、機械仕掛けの恋人~2

あっちを連載中で、申し訳ないですが懲りずに。
短期集中で終えますから…。

【現代(たぶん)パラドックス・パラレル】


* * * * * * * * * * * * *
オートマータ
~あるいは、機械仕掛けの恋人~2
* * * * * * * * * * * * *

「……おや、その娘は?」
秘書室の横を通り過ぎた老子は、李順がこまごま指示を出している清掃婦に目を止めた。

「ああ、老子――ごらんの通り、清掃婦、です」

「ほう?」

「優秀な人材を確保するため常々『丸々一か月間のロングバケーション! 自由出社、ネットで楽々お仕事』が売りのわが社では、9月までヒラ社員は誰一人出社しません。
なのに社長が例のお掃除ロボットを社長室のごく一部の限ったところに縛り付け、他のエリアに使わせてくれないものですから…。仕方なく臨時で1か月間だけ、雇うことにしました」

社長の優秀な側近の李順は、眼鏡おさえて「…私もヒラになりたいものです」と小さく愚痴た。

「ああー、これじゃな?」

ひょいと取り出したそれは、円盤型の家電製品だ。

「あーーー! ル◎バっ!」
若い掃除婦は大きな声をあげた。

チョコチョコと老子のそばに駆け寄ると、鼻先を摺り寄せるようにじっと掃除機ロボットをキラキラとした瞳で見つめた。

「…ちょ、ちょっと見せていただいてもいいですかっ?!
わたし、この子、いちど間近で会いたかったんです…!!」
「――ん?」
(この掃除婦も、擬人化妄愛タイプかの…?)
老子は掃除機ロボットを差し出した。

「老子、それをどこへ持っていくつもりですか?」

「いや、ちょと…陛下が外出中のうちに、改良してやろうかと思って。
段差には弱いし、ブツかったり、ゴミを収容する容積が小さいしのう。インテリジェンス・テクノロジー部門、顧問として見過ごせん問題じゃ」

「…はあ、なるほど。――しかし、それ。レンタル品ですからね?」
「いいじゃろ、すこーしばかし、改造しても。
あれほど陛下がご執心なら買い取ってしまえ!」

「――へいか?」
掃除婦は、うっとりしながらル◎バをなでながら、聞き耳を立てた。
「ああ、この老子は、社長のことをお小さいころからご存じで、陛下と呼ぶのですよ」

「ところで、その娘っこは―――?」
老子が李順に向かって尋ねた。

「掃除婦として一か月お勤めいただく、汀 夕鈴どのです」

「夕鈴!」

夕鈴は、老子がなぜ驚くのか分からず、あっけにとられた。

「人材バンクにアクセスしたところ、3万人以上の中から人選をするのが面倒くさくてですね。
あの方が、あのようにお気に召しておられるものですから
つい該当する名前で検索してしまいましたよ」
「なるほど、のぉ」
老子はフムフムと笑った。

「このビルの最上階フロアに出入りする以上、外部に委託できませんしね。
それでは、夕鈴殿、だいたい説明は終わりましたが―――何か質問は?」

「…あのぉ」
「なんです?」
「本当に、あんなにお給料いっぱいいただいて、いいんですか?」

「ルールを守り、きちんと掃除していただければご提示通りお支払いします。
夏季休暇中の一か月間、下のフロアにほとんど社員が出入りすることはありません
が―――社長は別です。
大変お忙しくお仕事をされますので、決して邪魔しないように」

「はい」

「ここで見聞きしたことは一切外部に漏らさない、守秘義務を守れますか?」

「はい」

「とくに社長はたくさんの敵をお持ちの方です。何がうっかり弱点となるかもしれませんので、小さなことでも決して外部に漏らしてはなりません。もちろん、バイトを終えても…。一生、ですよ? そのための高賃金ですから」
「はい、決してここでのことはしゃべらないと誓います」

「何かうっかりとでも漏らせば、そのとき一族郎党…」
李順は思わず口を塞ぐ。

「……(み、みなごろし)!?」
夕鈴は青ざめた。

「社長とお会いする機会はそうそうないとおもいますが。
万が一、社長と接触するようなことがあったら
―――社長のおっしゃること、されることは絶対、です。
あの方は大変スケールの大きいかたで
時折一般人には理解しがたい行動をとる場合がありますが
全てを受け入れなさい。
決して逆らってはなりません。
ちなみに…社長に逆らって命を落とした人の話、聞きたいですか―――?」

李順は真顔だった。
そのうえメガネが青白くきらりと光る。
夕鈴はル◆バを抱きしめ、青ざめた。

この会社は恐ろしいほど巨大で、
その若き総帥の威光は遠く海外にまでおよび、
冷酷非情の狼陛下と呼ばれる総帥は全世界から怖れらるほどであった。
――眼光で人がバタバタ倒れたとか――数々の逸話を、夕鈴ですら耳にしたことがある。

コクコクと肯く。

「いえ。お伺いしなくて結構です。よく分かりました」

「宜しい。
では、あちらの机で、契約書にサインを」

夕鈴はサインを、といわれ抱きしめていたル★バを見つめ、残念そうに老子に差し出した。

「同じ職場なら、また会えますね。
この子と遊んでもいいですか?」

「陛下のいないときなら、こっそりと、な――★」
老子はバチン、とウインクをした。

* * * * * * * * * * * * *

「――で、なんだこれは。
李順?」

黎翔は、目の前をうごきまわる物体を指さした。

「――例の、掃除ロボット、ですが?」
李順はくいっと眼鏡を指で押し戻した。

黎翔はじっとみつめた。

すーっと動き、どこに行くのかと思えばほうきでさっさと掃き、
時折くるくると回って見せると次へとのろのろ動き始める。

「そういわれてみると…確かに。
かなり見た目は変わっているが
夕鈴の動きをしているな―――」


(どこをどう改造したら、こうなると?
…また、それをいとも普通に受け止める社長も)
李順は苦笑をした。

「インテリジェンス・テクノロジー部門の張顧問が、改良をしてくださったのですが―――お気に召しませんか?」

部屋の隅に居た老子が、報告を加えた。
「両手両足をつけ二足歩行を制御して段差に強くなったし、掃く、拭く、ハタく、片付ける、なんでも可能になったぞ!
それからセンサーを高い位置に設けてのう、床のみならず高い位置も立体的に掃除ができるようになったんじゃ。
さらに、特筆すべきは、塵取りじゃ!
今まですぐ目詰まりしていたゴミ集積タンクの問題はな、外部に移行することで目詰まりなく長時間働けるようになったしのう。
どうじゃ、何も言うことはないじゃろ!」
と満足げに語った。

「――高性能になったというのなら、歓迎すべき、か?」

李順は勝手に改造したことについて、怒りをこうむるかそれとも、と
少々ビクビクしながら黎翔の様子を注意深く見守っていたが、
どうやら受け入れられたようなので、良しとした。

(だが、この風貌は―――)
李順は冷や汗を流した。

(……掃除婦として雇った夕鈴どのとうり二つではありませんかっ!?)

老子は熱弁を振るい続けた。
「次の商品企画にぜひ盛り込みたいと思ってた技術を駆使してみたぞい。
スリーサイズは上から78・56・82、軽量高剛性の内骨格を採用し、
わが社のインテリジェンス・テクノロジーの粋を極めた学習型コンピューター制御で、経験値をつむほど賢くなるんじゃ!
手触りはあくまで柔らかく、環境に溶け込む自然な風貌を特徴としておる!
どうじゃ! これほどの掃除ロボットはあるまい!」
「なるほど」
黎翔は報告の間、もう一方で仕事に取り掛かっていたが、何かチカチカするものに気が付き、はっと顔をあげた。
「…あ?」

黎翔が指摘する。
「何か、頭のあたりが、ピカピカ赤く光ってるが――」

「ああ、それは電池切れになる前のサインですじゃ」

夕鈴と呼ばれる掃除機ロボットの頭には、兎の耳のように結い上げた髷がついていて、そのあたりが赤いLEDでピカピカ点滅したのだ。

「軽量化のために、バッテリーが小さいので、充電は頻繁になりますがのう」

スルスルとロボット夕鈴は黎翔の側まで近づく。
黎翔が息をつめて見守っていると、ロボット夕鈴は皮張りの椅子に座っている黎翔の膝の上にストン、と載ってきた。

「これは?!」

「今までの充電のホームベースでは少々形状があわなくなったのでな、
非接触型の充電ホームベースをその椅子に仕込みましたじゃ」

「…なるほど」

黎翔は夕鈴を膝にのせて、なんとなく嬉しそうにしている。

李順が突っ込みをいれた。
「老子。このまま、どれくらいで充電完了するんですか?
これでは社長のお仕事の邪魔になってしまいますよ?」

「おおこれは。
非接触型の充電は、クレードルに乗せておくだけで充電できるという、誠に便利な方法じゃが、
いかんせん従来の接触型に比べると少々お時間がかかりますので―――」

「老子、接触型とやらはできないんですか?」

「一応、端子は設置してるのじゃが―――」

「それは?」

老子は極めて真面目に答えた。
「くちもと、じゃ♪」

「はぁ?」
李順は素っ頓狂な声を上げる。

「ブチュっとやれば、一発充電完了じゃよ!
ふぉほほほほ」

黎翔は真面目な顔で二人のやりとりを聞いていたが、
「なるほど。そういう方法もあるのか」
といいながら膝の上の掃除ロボットを見下ろした。

(前の円盤形もかわいかったが…。こんどもまたなんとも愛らしいな…)

黎翔はくい、っとロボット夕鈴の顎を捕らえると、チュッと口づけをした。

するとロボット夕鈴は顔を真っ赤にして、兎耳の髪がミドリ色のランプに変わった。

「お、充電完了、ですじゃ!」

夕鈴はすっと立ち上がると、また次のチリを求めて部屋を移動するのだった。
その様子を見守りながら、李順は黎翔の耳にヒソと。

「――宜しいんですか? 社長」


「いいんじゃないか?
実害はない」

黎翔はすぐに執務モードに切り替わり、机の上の書類をさばいている。

「いいじゃろ」
老子は満足げに笑った。


*

オートマータ ~あるいは、機械仕掛けの恋人~3

オフ活動、終わりました。
楽しかったです――。良い思い出になりました^^
今年度中はおそとに出られないので、ゲットしたお宝でホクホク萌をつなぎながら、おとなしくしますよ~。



【現代(たぶん)パラドックス・パラレル】
財界の狼陛下こと珀黎翔社長が愛する自動掃除機は、インテリジェンステクノロジー部門顧問の張老子のお節介でバイト娘の汀夕鈴とそっくりの姿に改造されて――?

* * * * * * * * * * * * *
オートマータ
~あるいは、機械仕掛けの恋人~3
* * * * * * * * * * * * *

夕鈴は曲げていた背中をのばした。
目の前の拭きあげたばかりのガラス仕切りはピカピカだった。

夕鈴は早朝2時間、最上階のフロアをきれいにするこの掃除バイトを始めて2週間になるが、長期夏季休業中ということで普段人とすれ違うことはほとんどない。

秘書室や廊下だけでは手持無沙汰で、フロアじゅう手上がり次第に磨き上げている。

朝早い時間帯のせいか、例の『狼陛下』とは一度もすれ違ったことはない。

「…今日も、みあたらないわね――」

夕鈴は、秘書室の仕切りのあたりであの子を探した。

円盤型の自動掃除機、る□ば。
夕鈴は、る○ばの動く様子が見たくてたまらなかったのだが、初日におじいさんが手にしているのと遭遇して以来、見かけていない。

夕鈴はチラチラと見える範囲で伺ったが、あの子は今日も見えなかった。

時々掃除をしている人影が見えるので、
この部屋から奥のエリアはきっと別の人が担当なのだろう。

「…調子悪いのかしら」

まるで人相手のように調子が気になり、
少々がっかりして肩を落とした夕鈴。

「ふぅ…また今度、会えたらいいなぁ。
――さっ! あとは。水をすてて」
ガラス磨きや拭き掃除に用いた汚れ水が入った重たいバケツを両手にそれぞれ一つずつ持ち上げて、夕鈴は歩き出した。

その時、エレベーターの方で微かにチン…と音がして
珍しく人の気配がしたので、夕鈴は振り返った。

ドアが開いて降りてきたのは小柄な老人で、
チマチマとこっちにむかって歩いてきた。

夕鈴は「あっ、おはようございます!」とあいさつをした。

「おお、お前さんかい。
――ああ、丁度良い!」
長老子は、ずんずんこちらの方に近づいてきた。

「…おい、バイト娘。
ちょっとの間、手伝ってくれんか?」

「え? 何でしょう」

「社長室の中も、しばらく掃除しとってくれんか?」

「えっと、あっちの奥はやらなくてよい、と李順さんから言われてまして。
それに、誰か別の人が担当してるんでしょ?」

「ええと、その別の者をしばらくわしが借りるんでな。その間ちょっぴりお前さんに代わりをしていて欲しいんじゃ」
老子はチラリと夕鈴を見上げた。

「はあ?」

「掃除婦がおらんあいだに、万が一あの方がお出でになられたら、非常に不機嫌になるからのう…」

「…あの方?」

「陛下じゃよ!」

「ああ! あのものっすご~く怖いといわれてる、狼陛下――社長さんですね?」

「恐ろしい方じゃでのう。ま、そういうことでの。
宜しく頼むわ」

「掃除婦が居ないだけで怒るんですか?…」
夕鈴は顔をしかめて、ブルッと震えた。

老人が「うむ」とうなずく。

「分かりました。じゃ、しばらく、そっちの奥のお掃除をしてるだけで、いいんですね?」

「たのんだぞい」

「じゃあ、この水捨ててきたら…」
夕鈴は手にしていた重たい2つのバケツを持ってよっこらしょ、と給湯室の奥の方へ歩き出した。

* * * * * * * * * * * * *
夕鈴がバケツにきれいな水を汲んで戻ってくると、もう長老子は階下に去ったあとで姿がなかった。
夕鈴はおずおずとしながら、今まで入ったことのない社長室の奥へと足を踏み入れた。

全面ガラス張りの眺めは壮観で、地上界がまるでミニチュアのようにパノラマで一望できた。

中は思った以上に広々としていて、
応接セットが小さく見えるほどだった。

――高そうなマホガニーの重厚なデスクと皮張りの椅子。

あの子はいないのかしら…と思ってきょろきょろしてみる。

「あ、この床の装置は…!」
夕鈴は秘書室とオープンフロアーでつながっている仕切り近くに設置されていたものを見つけて指さした。
「あれが噂のバーチャルウォールねっ!?」
夕鈴は少々エキサイトしながら叫んだ。

「あれがあるってことは、やっぱりる★ばはどこかに居るのね♪」
これは、今日こそ遭遇できるに違いない!
あまつさえ、働いている最中の愛らしい動きまでみれちゃったり…
と夕鈴は思わずグッと拳を握りしめた。

見回すとマホガニーのデスクの上に高性能のパソコンが置かれているだけで、サッパリとした執務室だ。
広すぎるフロアはあまりにも殺風景。

「これならあの子も気持ちよくお掃除できるわね~
…あ、だめだめ。まずは私、仕事しなきゃ!」

出会いへの期待に胸を膨らませながらも、夕鈴は職務に気持ちを切り替えた。

シンプルであまりムダなものもなく、掃除といってもやることもなさそうだったが夕鈴はとりあえずハタキをとりだすと、パタパタと高いところをはたきはじめた。

その時、部屋の奥の方で何か気配がした。
「!」
ドクン、と胸が高鳴る。

夕鈴はちらりと視線をめぐらす。

「――!?」
夕鈴は一瞬固まった。

社長室の奥に扉があり、そこから頭からタオルを被った黒髪の青年が出てきたのだ。
青年はガシガシと拭きながら無表情な顔をしてすたすたと歩いている。

(…いやいや、気を取り直して。ここは職場よ?
る◆ばちゃんに会えなかったからって…シャンとしなきゃ!

それにしても、あんなところにもお部屋があったんだ。 
…だれ? 李順さん以外の…秘書さん?)
と夕鈴は内心思った。

若い黒髪の青年は背が高く、端正な顔をしていた。
顔を洗ったばかりなのだろう。緩んだワイシャツの胸元が少しはだけていて夕鈴はドキンとした。

(社長さんの御用で、徹夜でもしたのかしら――。
奥に仮眠室でもあるのね、きっと)

「おはようございます。お疲れ様です」
夕鈴は離れた場所ではあったが、目を伏せながら挨拶をした。

すると、青年はキョトン、とした顔をしてこちらを見返した。

「――あ? ああ。
…おはよう」

青年は何やらブツブツとつぶやいていた。

(これまで、このような機能はなかったが――もしかして老子のやつ、また勝手に改造してコミュニケーション機能でも追加したのか?)

青年は革張りの椅子の方にすたすたと歩いてゆき、ストン、と座った。

今度は夕鈴が内心(えっ?)と思った。

(いくら社長さんが居ないとはいえ、大胆なヒトね――! 
まあ、私も社長椅子って、一回座ってみたいとは思うけど…)

夕鈴は苦笑した。

(…あっ、だめだめ!
もしこの人が秘書さんなら
私の仕事ぶりを李順さんに報告するわよね。
ちゃんとお仕事しなきゃ)

夕鈴は無言で掃除に集中した。

パタパタをハタキをかけ、ホコリのたまりそうなところを隅々まで拭きあげる。
リズムはすぐ戻ってきて、くるくるといつものように立ち働いた。

雑巾をバケツですすぎ、今度はどこを…と振り向きぎわ
思わず執務机の青年の様子が目に入った。

青年は両手を組んで、じっとこちらを見つめていて、一瞬二人の視線は交錯した。

ドキン!

夕鈴は思わずバケツの方に顔をそむけ、もう一度きれいに雑巾をすすぐ。
きれいになった雑巾を持って、机の上を拭こうと執務机のほうへ近づいた。

すると青年はスルリと夕鈴の腰をさらった。

腰をだかれて、ヒザのうえに座らされた夕鈴は目を白黒している。

「…充電」

「は?
じゅ――充電?」

夕鈴はあまりにも想定外のことが発生したため頭が沸騰した。
あわあわとパニックを起こし不審な動きをする彼女を、青年はギュッと抱きしめ
ぷっと吹き出した。

「――ん? どうした。
なんだ、こんな動き――見たことないや。
やはり、そろそろ充電か」

「充電、あの?」

「…しないと、動けなくなる」

何かにこの青年は疲れているのだろう。
心配そうに顔を覗き込まれる夕鈴は、なぜだか申し訳なくなった。

「えーと」

青年が何をいっているのか全く理解できない夕鈴がたじろいで固まっていると
青年はやおら両手で夕鈴の頬をつつみ
「急ぎのほうか」と問う。

「――え? あ、はい」

何が何だかわからずうろたえているうちに、
夕鈴は自分の唇に
ちゅっ
と、軽く何かが触れるのを感じた。

「――っ!?」

目の前には青年の端正な顔がドアップだった。
夕鈴はさーっと血の気が引き、蒼白になる。

「…あれ? かおが青い」
青年は夕鈴の頭のあたりをチロと見ながら不満げな顔をした。

いつもなら、充電完了とともに頬を赤らめ、兎のように結い上げた髪の髷がピカピカ緑色に光るのだが。

「接触不良か――?
充電完了ランプが光らない…」

そう言いながら、青年は更に念入りに、もう一度――

「ん、ん~~~っ!!!」

目の前の青年が夕鈴に覆いかぶさり、唇を重ねている。

夕鈴はあまりのことに、両手で相手を突き飛ばした。

夕鈴は耳まで真っ赤に染め、口元を手で押さえていた。
不意にボロボロと涙がこぼれた。

「――え?」

二人は至近距離で見つめ合い
青年も驚きのあまり、目を丸くした。

夕鈴は思わずバチンと青年の頬を叩いた。

「ひ、人の
ふぁ、ふぁ、ファーストキス…

…ば、…ばかぁ~~~~~~っ!!!!」

溢れだした涙は、もう止め処もなく

青年が「えっ!? あっ!? ゆーりんっ――?」
と叫んでいるうちに、夕鈴は脱兎のごとく走り去った――。


*

オートマータ ~あるいは、機械仕掛けの恋人~4

本を某書店にお求めくださった方、ありがとうございます。
すごくうれしいです。
イベント会場もとても敷居が高いですが、通販も…ですよね。
私もついこの間まではと○さん通販の存在は知っていても、恥ずかしくて注文なんてできない人間でした。
(自分の作品を置いていただくようになると、少し身近になって抵抗も徐々に薄らいでおりますが)
そこを乗り越えても「読んでみたい」と思っていただけたのなら、書き手としてこれほどの喜びはありません。
本当にありがとうございました。


【現代(たぶん)パラドックス・パラレル】【お年頃の黎翔さん】

財界の狼陛下こと珀黎翔社長が愛する自動掃除機ロボットの姿かたちは、バイト娘の汀夕鈴とそっくりに改造されていました。
そうとも知らず、ある日人間の夕鈴と入れ替わった時に遭遇した黎翔さんはそのあとちょっぴり、変です。

* * * * * * * * * * * * *
オートマータ
~あるいは、機械仕掛けの恋人~4
* * * * * * * * * * * * *

「…社長」
机で真面目に仕事をしていた黎翔は、李順の声にふと顔をあげた。

「本日のアメリカのデルタロイド社の会長とのご会食ですが。
わざわざアメリカよりご同行されたご令嬢が同席されると、先ほど…」

「断れ」
黎翔は有無を言わせず短く言い放った。

「しかし――大切な取引先の…」

「令嬢とやらのプライベートな取引に及ぶのなら、会談などまっぴらだ」

若くして財界のトップに君臨する独身の黎翔には、ひっきりなしに縁談が持ち込まれる。
その手の話題には一際敏感になっているが、李順としてもそろそろ相応の相手と黎翔にきちんと身を固めてもらいたい気持ちはある。

「この際ですから申し上げます。
社長、お見合いをされてはいかがですか?
デルタロイド社のご令嬢など、打ってつけではありませんか…!
家柄よく、美人で。経済専攻ハーバード大学のHBSでMBAを習得され知識教養においても文句ないお相手と存じます。
社長に意中の方でもいらっしゃるのなら別ですが、そろそろ本格的にご良縁があれば――」

「……」
黎翔は李順の言葉はまるで耳に入らないような顔で、広い部屋の隅に視線を飛ばした。
視線の先には、せっせと働いている掃除婦。

「――李順?」

「はい」
李順も黎翔の視線の先を追う。
そこには例の掃除ロボットがいつも通り黙々と掃除をしていた。
無機的な表情で、あちらこちらに移動している。

その動きはなんとも心癒されるのだが――黎翔は「違う」と小さくつぶやき、首を振った。

「ともかく。どうしても会食を実現したいのなら、令嬢は抜きだ」

「御意」
李順は引き下がった。

「――それから。老子を呼べ
…直ちに」

「かしこまりました」

待つ間も、黎翔はよどみなくデスクワークを続けていた。
李順は胸ポケットから携帯電話を取り出すと、短く指示を出した。
ピッと切ると、黎翔に向かって報告をした。

「すぐ、参るそうです」

「そうか」

ほどなくして人の気配がした。

「お呼びでございますか?」

「入れ」
黎翔が声をかけると、社長室のフロアに背の低い老人が手を合わせ神妙な顔でチョコチョコと歩み入る。

「何事に。…ございましょう?」

「同じセリフを返そう」

「は?」

「は?じゃない。…あれは何だ、と聞いている」
黎翔が指差したのは、掃除機をかけながら忙しそうにフロアの中を移動中の掃除婦。

「はて。
自動掃除ロボット、では?」

「違う!」

黎翔がいつになくイライラとして厳しい表情を見せた。

「違う…とは?」
李順はしばらく二人のやり取りを聞いていたが、黎翔が何にそこまでイライラしているのか、皆目わけが分からなかった。

「何か故障しているのか?
確かに充電に不具合があったようだが…
コミュニケート機能はどうした?
なぜ今は、あのようにつまらん?」

「不具合ならば調整はいたしますが
つまらん?とはいったい」
老子は知らん顔でとぼけて尋ねる。

この間、不具合調整をしている間、人間の掃除婦、夕鈴にしばらく入れ替わらせていたことだなと内心分かっていたが、いまだ掃除ロボットと人間の違いに気が付かない朴念仁の社長にチョビットばかりお節介したいというおちゃめな老人心が芽生えていた。

「…あれでは、ただの掃除ロボットだ。
“私の夕鈴”はどこに行った?」

もともと掃除ロボットじゃありませんかっ!という李順の突っ込みには一顧だにせず、黎翔は老子に詰め寄った。

「ちょっとお待ちくださいっ! あなたの夕鈴…?
――バカバカしい。社長。
あれは掃除ロボットですよ?
家電製品ですよ?
そもそもあなたのその掃除ロボットへの入れ込みようは、私には理解できません。」

「分からん…ただ、
彼女が普通に掃除をしてくれているのが
かわいくて、うれしいだけだ――」

「じゃから、夕鈴と名前までつけ、
まるで嫁のようにかわいがっておられたのですな?」

嫁じゃありませんっ、まったく!と、李順が息巻く。

「張。おまえ、あれに手を加えたのか?
何やら要らぬことは吹き込んでおらんだろうな」

「整備と調整は少々させていただきましたが」

「コミュニケート機能は――
この間はしゃべったぞ。あれは何だったんだ?」

「不具合がございましての。
最新技術とはいえ、まだまだ開発途中の機能ですから」
張老子は答えを濁した。

「反応が違う。この間のはまるで――」

「まるで?」

「ロボットとは思えない――」

「社長っ!
この掃除用ロボットはあくまでお試しキャンペーン中のレンタル品です。
短期間で帰っていただくものですから。
社長もそのように」

「もう買い取ったらどうじゃ、メガネの若僧?
ずいぶんと改造してしまったし。
なんといっても
わが社のテクノロジー部門の最新技術を投入したんじゃから。
もはやあれは企業秘密の塊じゃ!
トップシークレットじゃ!」

「なんてことしてくれたんですか~っ!」
喧々諤々ともめる李順と張の二人をよそに、黎翔はつぶやいた。

「……最新技術?
トップシークレット?
――違う」

くるりと振り返り、黎翔は立ち上がった。

掃除機ロボットはトコトコと黎翔の方へ近づいてきた。

「充電か…」
黎翔は掃除機ロボットと入れ違いに座を離れ、一面ガラス張りの窓の方へと向かう。

「社長?」

これまで、いそいそと人形を抱きしめていた人物とは信じがたいほど、黎翔は興味を失っていた。
掃除機ロボットは自力で椅子に座り、充電を開始した。

「社長っ!
このまま社長椅子にロボットが居座っていたら、あなたのお仕事が――
さっさと急速充電でもなんでも速攻やっちゃってくださいっ!」

「――否

あの時の夕鈴と。
これは、違う――」

寂しそうに肩を落とし、黎翔はとぼとぼと仮眠室の方へと歩いて行った。

「しばらく休む――誰も近づくな」

黎翔は社長室の奥へ行くと、小部屋の扉をあけ、ぱたりと閉じた。

社長椅子には、掃除用ロボットが充電中。
仕事半ばにして社長に逃げられた李順は呆然と見送った。


「…何ですか?
あれは」

李順がヒソヒソと老子に耳打ちする。

「恋わずらい、じゃ♪」

「はああああっ?」
李順は馬鹿にしたように張元を見下ろした。

「まあまあ、若僧。
みておれ。
ラブラブ・どっきりハプニング部顧問として、このイベントはワシに任せろい!」

「わが社にはそんな部はありません~っ!!」


*

オートマータ ~あるいは、機械仕掛けの恋人~5完

【現代(たぶん)パラドックス・パラレル】【ギャグですからね】

レンタル品ではあるが、勝手に老子に改造されまくった自動掃除機ロボット。
渋ちんの李順は頑としてレンタルの返却を要求し…。
「あの夕鈴」が忘れられない黎翔と、ファーストキスをいきなり奪われた夕鈴は、はたしてどういう結末を迎えるのやら。

* * * * * * * * * * * * *
オートマータ
~あるいは、機械仕掛けの恋人~5完
* * * * * * * * * * * * *

李順はしばらく分厚い書類を抱えたままジッと立ちつくし、おもむろにそれらを机の上にドサリと置くと、インテリジェンステクノロジー部門顧問の張元に向かいなおった。

「張老子」

「なんじゃ?」

「この状況は如何なものでしょうね?」

「ほう? なにがじゃ?」

「ロボットがのうのうと社長椅子に座り、
そのため社長のお仕事ができないという現状が
問題だと私は申し上げたいのですよ」

「ふむ…」

張老子は頭をカリカリとかくとロボットの方へと近づいた。
「…しかたないのう」

「それに、先ほどの社長のご様子を見る限り
もうこの掃除機ロボットにも飽きたご様子。
このタイミングをのがさず、返却です!!
レンタル期間内で、きっちり返却しておいてください」

「……」
張老子は何かつぶやいたが、それは決して李順の耳には届かなかった。

「――分かりましたか?
返却ですよ?」

「……」

老子はブツブツ言いながら、ポケットからリモコンを取り出し社長椅子に座るロボットに向けてピッとボタンを押した。

すると、充電中だった掃除ロボットは立ち上がり、老子の方へ歩き出す。

「お前さんの言いたいことは良く分かったじゃ。
老い先短い老人の楽しみを――
若いもんはちっともわかっておらんのじゃ…」

老子が歩くと、ロボットも付いてくる。

その無邪気にトコトコ付いてくる様子がドナドナのツボを押したのか
老子の涙を誘った。

李順はメソメソと泣き出し可愛い子ぶる張老子のズルさに、カッとなって言葉を重ねた。

「…泣いてもっ ダメなものは、だめです!!」

「でも…。返さんでもいいじゃろ?」

「でも、じゃありませんっ!
レンタル終了したら、返品ですっ!」

「だって、これほど、最先端のテクノロジーを搭載した素晴らしい掃除機ロボットは…他には無いんじゃよぉ? なあ、返さんでもいいじゃろ?」

命乞いするような目線ですがる張老子。

李順は爆発した。
「だって、じゃありませんっ!!
返すといったら、返します!!
――良いですか? 張老子。
便利であることは良い。
しかし、テクノロジーを何でも搭載すればよいというものではありませんっ!
いうなれば今回の事例は
『人の生活に寄り添ったものでなければ、いずれ飽きられる』という反面教師です!」

張老子が社長室の敷居をまたぎ先を行こうとしたが、ロボットはその場でウインウインと軽く2、3度イヤイヤをすると立ち止まってしまった。

「わしは、その、陛下の人生に寄り添う――」

「四の五の言わず、ちゃんと元のとこに返してらっしゃい!」

「…お前さんは――それでいいんじゃな?
あの御方がどんなに気に入ったものでも、
『用済みになれば切り捨てろ』というんじゃな?」

仁王立ちになった李順は腕組みをしたままメガネをクイっと押し上げた。
老人の言葉に譲歩や妥協を示す様子は、全く見出せなかった。

「そうです」

張老子はうなだれたまま、社長室の入口に屈みこんだ。
足元に設置されていたバーチャルウォールの電源を切る。
バーチャルウォールが切られた今、ロボットは社長室からの縛りを解かれたのだ。

「――あい分かった。
連れて行けばいいんじゃろ?
そして元通り箱に詰めて、
何もかも忘れたふりをして。
返してしまえばいいんじゃ…。
あれほど陛下がお気に召した、唯一の、この嫁を――」

「嫁じゃあ、ありませんっ!」

李順が叫ぶ。

もう一度だけ、チラリ、と振り返り李順を見つめ、
あきらめたようにハァとため息を一つ付くと
掃除ロボットを後ろに従えて、とぼとぼと張老子は去って行った。

* * * * * * * * * * * * *

夕鈴が朝早くいつものように出勤した。
フロアはいつものように誰もいない。

「もう、夏休みも終りね…
私のバイトももう、今日で、終わり」

タイムカードをホルダーの一番下から取り出す。

最後の欄が空いているだけだった。

夕鈴の契約期間は終わろうとしていた。
もともと社員が居ない夏の間だけの短期バイト、という契約だった。

これまでうす汚れた狭いビルやオフィスの清掃などもしてきた夕鈴にとって、広々とした場所でやりがいがあり、最高級の建築材で仕上げられた美しいオフィスビル内の清掃は楽なことこの上なく、楽しかった。

怖いという社長さんとも会うことはなかった。
契約の時に、上司の李順というエライ人から『絶対逆らってはいけませんよ』とあれほど口酸っぱく言われたから、いつ遭遇するのかといつもビクビクしていたのだけれど、結局拍子抜けだった。

「狼陛下…だっけ
ちょっと見てみたい気もしたけど――そんな雲の上の人にお会いするなんて。
最初っから無理な話よ」

「狼陛下じゃなくって、――すごく失礼なヒトには遭ったけど…」
思い出しただけで、ボッと熱があがり夕鈴は真っ赤になった。
風変わりな書生風の若い人――きっと若い秘書さんの一人だとおもうのだけど、失礼なことに社長椅子にも堂々と座るし…。私にいきなり…
いきなり――
「…うっきゃぁ~~~~っ!」
自分の声が広い天井を反共し、エコーがかかって聞こえた。
真っ赤に爆ぜそうな夕鈴は自分の叫び声にビクリと跳びずさった。

ハッとなって辺りを見回す…。
ドキドキ心臓の音が聞こえそうなぐらい、あたりは静かだった。

(誰も居ない。よかった…)
「はぁ…」

(…あれは、事故。あれは…事故~~~!!)

なにせ、いきなりファーストキスを奪われたのだから…。
多分、あの人は徹夜仕事あけで、朦朧としていて何か勘違いしたにちがいない…。
だって、前後の会話の脈絡が通じてなくて、全然おかしかったもの――。

(何か、他の楽しいもの、他のことを考えて――冷静にならなきゃ…!!)
夕鈴は必死に冷静になろうと努力した。

そういえば。
『例のあれ』にもあれっきり会えなかった。

「ル★バちゃんの働くところが見たかったわぁ…。
でも担当部署が違うし、社長室の中じゃ会えないわよね」

それはすこーしガッカリしたが
(また、電気屋さんで立ち見しよう♪)と心を切り替えた。

「本当は、この広いフロアをスイスイと動く
自然なまま、野生本来のあの子の姿がみたかったんだけど――」

夕鈴の中では、家電量販店の見本コーナーの半畳にも満たない枠の中で動くル□バは、『あの子の本来の姿』とは言い難かったのだ。

サバンナで暮らすシマウマの群れが砂煙を立てて走る姿のように、ル★バちゃんが広々とどこまでも続く平たい床の上を、スイスイと自由に動く様子が見たかった――。

タイムカードを持ったまま、想像の翼を広げていた夕鈴は、ハッと我に返った。

「ダメダメ。さっ!
お仕事お仕事」

カシン、とタイムカードを打ち込む。

「さ、最後だから。綺麗に仕上げてゆきましょう!」
夕鈴はガッツポーズを作った。

夕鈴は愛用となった掃除道具を取り出すと、頭巾をキュッと締め上げ奮起して仕事にとりかかる。

閑散としたフロアではあったが、仕事するうちにあちこちに思い出ができた。
ハタキをかけ、広い廊下を端から端まで思いっきり掃除機をかけるのも楽しかった。
水拭きをすれば高級な大理石は艶々と光る。
ガラス素材があちこち多用されているのはちょっと手こずるけれど、曇りひとつなく仕上げると心まで洗われたような気がする。

大まかなところを終えると、今度は細かいところ。

廊下の隅、角、リム、金具、スイッチ、照明器具の裏の裏まで。
どこもかしこもピカピカに磨きこんだ。

「綺麗で、楽で。…割のいいお仕事だったから、残念だわ――」
ピカールとからぶき布と、古歯ブラシを持ったまま、辺りを見回す。

「もう磨くところはないかしら――?」
ほぅ、と額の汗をゴム手袋のまま拭う。

「――あら?」

社長室の方の仕切りごしに、チラリ、と何か動くものが見えた。

それは丸い円盤型の例の自動掃除機ロボットだった。

夕鈴と目が合うと※、一瞬くるくると嬉しそうに回ったように見えた
(※視線があうとかどうとかは、完全に夕鈴の気のせい)。
ゴム手袋をはずし掃除道具ごと素早く置くと、夕鈴は社長室にそっと足を踏み入れた。

(最後の日に、ようやく会えたわ――!)

ル◆バは広い広い社長室のフロアを生き生きと動き回り楽しそうに掃除して回っていた。
夕鈴は暫く膝をかかえてジッとその様子を見つめていた。

夕鈴のすぐ傍にきて、良く見えるように働いてくれていたかと思うと、今度は気を引く様にスッと奥へと移動する。
夕鈴は思わず愛らしいル○バに連れられ、社長室の奥へと進んで行った。

あまりに可愛らしい動きで、夕鈴は思わずそれを捕まえてみたくなった。
そばにきたとき、思い切って両手で捕まえる。
(やった♪)―――と思ったその瞬間。
広いガラス張りの社長室の奥に置かれた机のさらに奥の、立派な革張りの社長椅子の背中越しに、ふいに声がかかった。

「――夕鈴」

夕鈴は、びくっとした。
驚いて声を出しそうになったが、手をあてて口を閉じた。
そして、何故だか叱られるだろうと思い、捕まえたル☆バを思わず背中の後ろに隠した。

「君は…もう。今日限りで。
行ってしまうんだろう」

(―――え?)

「李順が言っていた。
君はまた狭苦しい箱に詰められ、元の世界に戻るんだね」

(…確かに。ここを解雇されたら、元通り、狭いビルの掃除婦にもどるんだわ。私。それをなぜ、この方はご存知なの?)

思わず夕鈴は声をかけた。
「あの、あなたは?」
「…」
椅子の向こうの主は、一瞬息をのむと、間をおいてゆっくりと返事をした。
「…ここの社長、だよ」
クルリと革張りの椅子が回り声の主はこちらを向いた。

ちょうど床から天井までの大ガラスの窓越しに朝日が差し込み、背もたれのらかい革張りの椅子越しで、逆光になった社長の顔は夕鈴の位置からはとても見えにくかった。
だが、相手には掃除婦姿の夕鈴はつま先からてっぺんまで光に照らしだされ、逃げ隠れもできなかった。

「やっぱり、夕鈴。――君か」
社長は優しい低い声でつぶやいた。

社長? 社長?? あの、狼陛下と呼ばれる、社長―――!!!??
絶対逆らってはいけない、
Noといったが最後、一族郎党皆殺し―――という?

「おかしいな。もうすべて元通りにして
君は帰るって聞いてたんだけど、な
たしかにさっきまではそうだったよね。最初にあったときのまま。
何もかも元通りだと―――。
最後のあいさつに僕のところに戻されて…」

コツ、と指先でデスクを叩く。

「―――僕はもう二度と“あの君”に会えないと思っていたから。
うれしいよ、夕鈴。こっちへ、おいで―――」

(…逆らっちゃ、いけない、のよね?)

夕鈴は真っ青になってぎくしゃくと動き始めた。

まっすぐ進むようで、なんとなくまがってしまい、ハッとしながらまた戻る。
その時、背中に持っている機械をどうしようかと思わず考えてしまい、うーんとうなりながらさりげなくクルリとまわってエプロンの裏に隠した。

「ははは。君の動き。
やっぱり面白いや―――。
正直言うとね。最近、もう、どうでもよかったんだ。
…でも、なんだろう。
最後の最後でそんな愛らしい様子を見せられては―――」

夕鈴が机のそばまで近づく。

「…手放せなくなる」

夕鈴はドクンと胸が高鳴った。
目の前に居るのは、机にり腕組みをして頬を預けた男性。
逆光で影の落ちた前髪の影から、赤い両眼がちらりと見えた

(――え?)

夕鈴はようやく気が付いた。

(この若いひと。この間の…!? え、この人、秘書さん、じゃ、なかったの―――?)

その時、急に立ち上がった社長は、夕鈴の手をつかみ、ぐいっと引き寄せた。
(ちょっと! いったい、どういうこと?)
夕鈴は目を白黒させて蒼白になって考えを巡らすが、一向に現状が把握できない。

「私の願いを君は叶えてくれたんだね。
…ふふ。またそんなに青くなって。
それほど(電池切れが)怖いのか? では充電を――」

(狼陛下に逆らったら、皆殺し! 
青慎も? 父さん?? 一族郎党、皆殺し――!?)
夕鈴はギュッと目をつぶり、念仏を唱えた。

黎翔は夕鈴をゆっくり抱き寄せ椅子にドサリと座りこむと、軽く彼女の顎を引き上げチュッと口づけをした。

ギュッと目をつぶった夕鈴。顔は真っ赤になっているが、頭がピカピカ光らない。
「えっと…あれ?」
黎翔は『んー』と顔をしかめた。

「なんだか…違う?」

もう一度口づけをする。
今度は少し念入りだった。

「あれ…」
黎翔は眉間にしわを寄せ、指先でぐっと押しながらプルプルと顔を振った。

「もしかして…夕鈴。
君――ついに『人』をなれたの? 
えっと、あれ、キスで、だっけ。童話にあったよね(笑)
ファンタジーだな。こうなると」

「はああっ?!」
夕鈴は理解不能な会話を続ける社長に、ついに逆切れしそうだったが、李順の言葉が頭の中によみがえった。

―――社長のおっしゃること、されることは絶対、です。
あの方は大変スケールの大きいかたで
時折一般人には理解しがたい行動をとる場合がありますが
全てを受け入れなさい。
決して逆らってはなりません―――

夕鈴は口づけを一度ならず二度までも念入りに施され、これ以上恥ずかしさに耐えきれなかった。
ジワリと涙が浮かんだ。

「ひ、ひどすぎます。
いくら社長だからって―――突然、こんなっ…
わ…私。
こんなことされたら、
お嫁にいけないじゃないですかぁ…!」

夕鈴の涙を不思議そうに黎翔は指ですくった。

「…じゃあ、僕のとこにいたら」

「――は?」
夕鈴のぬれたまつ毛がシパシパと瞬く。

「だから、ね?――決まり!
ずっと、ここに居てくれるよね?」

真っ赤に顔を赤らめて口ごもる夕鈴に、黎翔は半ば強引に答えを強いた。

夕鈴はしばらく唇を噛んで考えていたが、
彼女にとってもここは良い職場だったので、
思わず彼の強引さに加え、条件の良さに返事をしてしまった。

「あの。は…、はい」
夕鈴はまたしばらく収入面で安定しているこの職場で働けるのかと思い、嬉しかったので、素直に笑ってみせた。

夕鈴の笑顔を見ると、黎翔は満足げにうなずいた。

「じゃ、夕鈴はずっと僕のお嫁さんだね!!
そうすると…やっぱりレンタル解約させとダメかなぁ…
李順を呼ばないと――」
ブツブツと黎翔はつぶやいた。

その時、力の抜けた夕鈴の掃除エプロンの影から
ゴトリと大きな音をたてて、ル◎バが床に落ちた。

「……ああああああああっ?」
黎翔は床に落ちたその掃除用ロボットと、夕鈴を交互に見比べ、にぱっと笑った。

「なぁんだ、君。
…レンタル品じゃなかったんだ」

そういうと安堵しながら腕の力を更に強め
「じゃあ、問題ない」

「…問題ないって?」

「だから、君は正真正銘人間で、僕のお嫁さんで、かわいい奥さんだってこと」

「ええっ?」

いつのまにそういうことになっているのか、何がなんだか分からないままの夕鈴の困惑をよそに、黎翔はお気に入りの彼女を深い口づけで縫いとめた。


* * * * * * * * * * * * *

そんなわけで
数式と無機質に囲まれて育った、ちょっと人間づきあいが悪い理系オタクの擬人化大好き社長の黎翔さんと、御掃除好きで可愛いもの好きな実は高校生の夕鈴さんのお二人は
晴れて結ばれたそうな―――。


不思議家電を次々生み出すインテリジェンステクノロジー部門は今日も大活躍。


「ところで、老子。今度は何してんの?」

「これはのう―――うぷぷぷ♪
ラブラブお世継ぎゲット兵器の研究じゃあっ!!」

マッドな機械よ、永遠なれ―――。

*

ss 天高く、兎肥ゆる秋。

ss秋。
SNSの日記の再掲です。

【侍女さん目線】【設定はご自由に】←


* * * * * * * * * * *
天高く、兎肥ゆる秋。
* * * * * * * * * * *

気持ち良い風が吹く。

…ははは、と声が響く。

静かに控えながら、侍女はそっと含み笑いを互いに漏らす。

この後宮で男性の声が響くとすれば
それは国王以外あり得ない。

その膝の上には、今日もお妃さまが囲われている。

巷では冷酷非情と恐れられる国王陛下を、
これほどまで寛がせ、笑わせることのできる存在も他にはいない。

春の日差しのようなお妃さま。
今日は何をお話されているのやら――。

* * * * * * * * * * *

「陛下っ!
こんなにいただけません!」

「君はこれが好きだと…」

「でも――こんな贅沢は
よくありませんから」

すすめられた菓子を、陛下の手ごと脇へ押しやり――
(そのようなことがおできになるのも、お妃さまだけですわっ!!)
ちょっとすねたように頬を膨らませ
(…なんて愛らしいほっぺたでしょう!!)
お妃さまはそっぽをお向きになられる。

陛下は少しお困りになられた模様。

「……」

お妃さまの髪を一房救い上げられ、口づけを…

雷でも走ったかのごとく
お妃さまは全身ビリビリと硬直されると
いきなりピョコン、と陛下のお膝から飛び降りられます。

お妃さまは
まるで熟柿のように真っ赤になられて…
なんともまあ初々しいことでございましょう。

これが、初めてのことならいざ知らず
今なお、毎日、毎日繰り返され
恥じらわられるのですから…。

愛ですわ。

…お妃さま、なんとまあ、
陛下のことをお好きなのでございましょう!!

お二人の間には誰も入り込むことなどできないと
わたくし共、間近に仕えさせていただき、いつも思うのでございます。


陛下は
目の前に山と積まれお菓子を手で押し退けて、
ほうっと小さくため息をお付きになられました。

せつない、ため息にございます――。

美しく並べられたお菓子では
お妃さまのお心を掴むことはできぬのかと
さぞ、陛下もご落胆のなのでございましょう。

わたくしどもには、分かります。
お妃さまのお心内が…。

本当のところ、お妃さまは
お菓子をお断りになったことで
陛下を傷つけてしまったのではないかと
胸にこたえておいででしょう…。

「――それならば、
ひととき。
散策でもどうか」

陛下は、お妃さまをお誘いになられました。

すると、お妃さまはいじらしく、上目づかいで陛下を見上げ
「はい」と、小さくうなずかれたのです…。


僭越ながら――正解ですわ。陛下!
実はこのところ、お妃さまは
ちょっと食べすぎをお気になさっておられるのです!

…とはいえ、そのようなご事情があるとは
わたくし共の口からなぞ
恐れ多くて申し上げられるはずもございません。

ですが、応援しております!

今日の占いでは、
お散歩やちょっとした運動がベストチョイス!
ラッキーカラーは、白!

あとは白い何かがあれば…
きっとお妃さまのお心を攻略できるはずにございます…!


もう、お傍で伺っていても
切なすぎるご表情で――

ご夫婦でありながら、
初めての恋の甘酸っぱい切なさが
今なお持続しつづけているお二人のご様子は――たまりません。

わたくしたち侍女の立場は
決してでしゃばるわけにはまいりません。
しかし、精いっぱい、お妃さまと陛下が居心地よくお過ごしになれるよう
万事において、取り計らいますから…どうかご安心なさってくださいませね。

わたくしどもにとって、お仕えすることがどれほど嬉しく、
そしてやりがいのある職場であることか…。


庭へ下りるお二人と、適度に距離を取りながら
わたくし共もお供仕ります。

最初の数歩こそ、お妃さまはご自由にご自身のおみ足でお歩きになっていたのですが、やはりそこはそれ。

あっというまに陛下に
背中から抱きしめられてしまいました。

「ギャあぁっ!」

ああ…お妃さま。
ぎゃっは、いけませんわ。
うふふ…(*´ω`*)

このやり取りがまた、いつものように甘く、楽しく
それゆえ陛下は何にもましてお楽しそうでございました。

しかし、体重を気にされているお妃さまには、いろいろストレスがかさむもの。

「陛下っ! 自分の足で歩けますっ」

「愛しい妃を疲れさせてはいけない」

「陛下の方がお疲れでしょう?
私、重いですから…」

「重くなんかない。君をこうしていると、
疲れが吹き飛んでゆくようだ――」

「絶対、重くなってますからっ――降ろしてくださいっ!」

あらまあ、なんと。ほほほ。
陛下の腕の中で運動される方など、
それこそこの世にたったお一人だけにございましょう…。

そして結局、いつものように陛下に抱きかかえられたまま
ご散策なさることになっておりました。


そこに、スイーっと
白い大きな鷺が池の方から飛んでまいりました。
そう、白いアイテム。

侍女B、ナイスタイミングでございます。

こういう小さな演出は、わざとらしくてはいけません…。
あくまで、さりげなく――が
わたくしたち侍女の仕事でございます。


白い鷺は美しく、青い空にそれは映えておりました――。
そしてうまい具合に、鷺は陛下とお妃さまのすぐ目の前を横切りました。

それまでふくれっ面をされていたお妃さま。
あっという間にその様子に心奪われ
たいそうはしゃがれました。

「あっ、陛下!
白い鳥です――!」
と指さされ、
大きくお手をお振りになられました。

そのとき、袖がはらりとめくれ
むっちりと白い二の腕が
陛下の御前に露わとなり――

その途端

陛下がその白い腕に
吸い込まれるように引き寄せられ

噛みつかれたなど――


わたくしたち
きちんと職務を全うし、他所を向いておりましたので
決して見てなどおりませんし
気が付くはずも、ございません。

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