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恋人の日(1)

* * * * * * *
初出:2013年06月08日18:09
初出:2013年06月12日13:07[白友]※SNSでは限定掲載
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[新・現代風・時代物な黎翔×夕鈴] トピック【両想い設定】コミュの
6/12は『恋人の日』よせて7日(金)~12日(水)に開催されたお祭りに投稿したSSです。

テーマは「恋人」(バカップル・ラブラブ含む)
夕鈴『・・・ん・もぉ・・・・馬鹿!!!』と、甘い声で言わせたい縛り

でお送りいたします。


SNSのほうで[白友限定]にしたのは…それほど意味はありませんが、
気楽に書きなぐった、から
そのあたり御理解いただけることを願いつつ。

[捏造]
読んで「イメージが崩れた~」等 悲しまれませんように…。



それでは、どうぞ。


* * * * * * *
恋人の日(1)
* * * * * * *


「夕鈴、川に遊びに行こうよ!
綺麗な声でなく鳥や、
めずらしい魚がいるよ?」


「川…ですか」

「うん。河原でたき火をたいて
魚を焼くとおいしいよ?

青慎君も連れてさ、一緒に行かない?」


「それ、いいですね!!」


そこで、早速にも話はまとまり
国王とお妃は下町風俗に身を包み、
辻馬車を一台調達し、遁走したのであった。


---

「…で、なんであんたがここに居るの?」

「おまえ、青慎一人だけっつーわけにはいかねーだろ?
いっつも何かやらかすお前のお守を、さ。」

几鍔。と、その子分が4人。

李翔さん、私、青慎。

「川遊び」企画は
なんと8人もの大部隊に膨れ上がっていた。

本来4人乗りの辻馬車はギューギュー詰め。

馬車の中
窓際に青慎、私、反対の窓際に李翔さん。
私と迎え合わせの席に几鍔と子分が2人。
屋根と御者台にも一人ずつ子分がへばりついて。

…なんとかかんとか川へ着いた。

李翔さんがなんとかして私を膝の上に乗せようと画策したけれど、
やっぱり几鍔の前では無理!

絶対、そんなとこ見られたくない!

でも、こっそり李翔さんの外套の中で手を握り合ってた私の顔が始終赤かったので…。

青慎に
「姉さん、大丈夫? 熱でもあるの? 窮屈?ぼく、屋根の方に行こうか?」
と気を遣わせてしまった。


だって、李翔さんが指で私の手のひらをもてあそぶんだもん…。
…・・・ん・もぉ・・・・馬鹿!!

馬たちは疲れ果て、御者さんが「金輪際この客は載せない」とつぶやいたが
李翔さんが気前よくお金を渡したので、帰りも載せてくれることになった。



(つづく、のかしら…?謎です。)
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恋人の日(2)

* * * * * * *
2013年06月12日13:09[白友]※SNSでは限定掲載
初出:2013年06月08日21:32

* * * * * * *



引き続き、宜しくお願い申し上げます。

【両想い設定】

6/12は『恋人の日』よせて7日(金)~12日(水)に開催されたお祭りに投稿したSSです。

テーマは「恋人」(バカップル・ラブラブ含む)
夕鈴『・・・ん・もぉ・・・・馬鹿!!!』と、甘い声で言わせたい縛り、
でお送りいたします。

[捏造]
気楽に書きなぐってます。そのあたり御理解を願いつつ。
読んで「イメージが崩れた~」等 悲しまれませんように…。



それでは、どうぞ。




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恋人の日(2)
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───────
水面に影をおとす緑の木々。川が緩やかに蛇行した淵になっている。

「ねえさーん、みて~~!!」

川岸から差し出した木の枝に上って手を振るフンドシ一丁の青慎。

姉が手を振ると、笑って応え、その直後、バッシャン!!と、飛び込む。

ぶくぶくと沈んでしばらく出てこない。

ようやくぷかっと浮かび、ザバっと水しぶきを立てて、顔をだす青慎の笑顔のなんと可愛いことか。

「せいし~~ん、そこ、深いとこあるから、気をつけてね~~~!」

川に入って楽しそうに泳ぐ青慎。



夕鈴は川岸からハラハラどきどき。

岩を伝って、青慎が泳いで行った淵のほうへなんとか行けないか思案中。



その時、夕鈴の背後からフンドシ一丁の李翔さんが夕鈴の腰を浚う。

「きゃーっ!!」

大岩の上で驚き、滑りそうになる夕鈴。

「こっちからなら、あちら岸に近づけるよ?

青慎君が飛び込んでるあの木の根元。
少し土手になってるとこに、赤いおいしそうな木の実がなってるよ
行こうよ!」

手を引っ張り、岩を飛び移る李翔。

先に渡った李翔が、急に両手を引っ張って
夕鈴はもう少しで岩から落ちるか、と思ってヒヤヒヤした。

李翔は、笑いながら
「ごめん、ごめん!」と滑りそうになった夕鈴を抱き止める。

夕鈴は真っ赤になって
「…・・・ん・もぉ・・・・李翔さんのっ 馬鹿ぁっ!!」と叫ぶ。

だって、だって、だって。フンドシ一丁の陛下に抱きしめられて

眩しすぎて目が合わせられないんだもんっ!!!





「あにきー、あそこ、なんか楽しそーに、イチャついてますぜ?」
子分その1が几鍔にこぼす。

「なんか、無性にイラツクっつーか」
子分その2も迎合する。

「ほっとけ。俺たちはイロリつくって、食事の準備、だろーが!」

一応、食料調達の班と、囲炉裏をつくって火をおこし、食事の準備をする二手に分かれることになったのだが。

『土木作業が得意そう』という理由で、全員一致で几鍔は囲炉裏班を仕切ることになった。

<いろり班>
火の番→几鍔(チーフ)
おさんどん→子分1,2,3

<食料調達班>
採集→青慎(チーフ)、夕鈴、
狩猟→子分4、李翔


食糧班の問題は、チーフになった青慎が川遊びに夢中になってしまったことだ。
「こんなとこ、連れてきてもらったことないや」
眼をキラキラする13歳の好奇心は抑えようがなかった。

その姿をみて、「青慎、かわいー」「弟君、かわいーねー」とギャラリー化する姉とその(自称)上司。
真面目に食料調達しているのは、子分その4のみであった。

子分その4は、即席の竿で、ひょいひょいと上手に魚を釣っている。

「や~、腕がなるっす」彼は釣マニアだった。


李翔と、夕鈴。
どう見てもこの二人の関係はおかしすぎる。

上司だと抜かすが、挙動が怪しすぎる。
いつも暑苦しい外套を被っているくせに、川に付いたらいきなり、スッポンポンだ。

まったく羞恥心というものがねえ。



几鍔が風の方向を地形を考え、几帳面に石を組みながら囲炉裏をきっていると、
しばらくして、頭の上から間延びした例の李翔の声が聞こえた。

「几鍔くぅーん!」

几鍔は顔も開けずに怒鳴った。


「なんだ! てめえ、少しは食料取れたのかよっ!?」

(おめーら遊んでばっかじゃんか!
少しは俺を見習って、働けっ!!)


「ん? これじゃ、少ない?」

と言われ、几鍔は見上げて呆然とした。


李翔のヤロウ。
大イノシシを1頭、肩に乗せて現れやがった…。


肩の右に両前足、肩の左に両後足を掛け、握りしめて
いそいそ嬉しそうに「褒めて、褒めて」と言わんばかりの笑顔だ。

「夕鈴は?」

「まだ、青慎君とあちら岸で木の実を摘んでるよ?
ぼく、もーいっかい行ってくるね~」

李翔は、たたた、と足早に駆けて行った。



絶対―おかしい!

お貴族様の文官に、
大イノシシが素手でつかまる訳がねえっ!!


「わー! すごいすごい! 大猟ですね~!!」
「いやーごちそうですね~」
「ラッキーだな~!!」

子分1、2、3が嬉しそうに李翔のとってきた大イノシシを取り巻く。

おいっ!おまえらっ!? それでいいのかっ?!
少しは人を疑えっ!?

3人は嬉しそうに手に手にナイフを持って、大イノシシをさばき始めた。



(続くの、かしら…?)  

恋人の日(3)

* * * * * * *
初出:2013年06月08日22:1133
2013年06月12日13:12[白友]※SNSでは限定掲載
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【両想い設定】

引き続き。

[新・現代風・時代物な黎翔×夕鈴] トピック【両想い設定】コミュの
恋人の日(1) ※コミュ再掲載[白友限定]

6/12は『恋人の日』よせて7日(金)~12日(水)に開催されたお祭りに投稿したSSです。

テーマは「恋人」(バカップル・ラブラブ含む)
夕鈴『・・・ん・もぉ・・・・馬鹿!!!』と、甘い声で言わせたい縛り、
でお送りいたします。


[白友限定][捏造]
気楽に書きなぐってます。そのあたり御理解を願いつつ。
読んで「イメージが崩れた~」等 悲しまれませんように…。



それでは、どうぞ。


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恋人の日(3)
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───────

結局、李翔の奴は、大イノシシ1頭、シカ1頭、兎3羽、キジ2羽、ウズラ3羽、亀1匹を獲ってきやがった。


「几鍔君、君が少ないって言うから、たくさんとってきたよー」
とヤツは言うが。


!!
普通の人間なら、どれくらいが食料として適量か、普通、分かるろーが!?

毎食ごとに満漢全席の国王陛下とやらならそういう観念もないかもしれんがっ!
普通の人間としてっ! 
食べれる量っつーのが、分からんのかっ!? 奴は!



それも、武器らしい武器も持たねーフンドシ一丁の丸腰で!?
マジ、ありえねえ。



しかも、トドメが、亀、っちゃー なんだ?



まったく奴の思考回路は意味不明だ。

まったくあんな奴が夕鈴の周りをうろちょろして、もてあそぶのは許せねえ。

今回の旅も、青慎がいるってもよ
二人っきりにしたら何が起こるかわかんねーから?

俺がボディーガードでついてやんねーとな。


几鍔の胸中も、結構、複雑だった。


-----

フンドシ李翔さんは
「はー、お仕事、終わった、終わった。」

ずらりと並ぶ料理と、
料理しきれなかった得物を並べて
「褒めて?」と夕鈴を見つめている。

ダメ、耳が出てる… 尻尾が盛大に振られてる!!

「夕鈴。まだ足りない?」

「いえ、いえ、十分です。
むしろ、売るほどあります」

「売れる?」

「はい。」

「やったーーー」ぱあああっと李翔さんは輝く笑顔で夕鈴を抱きしめた。

「僕、いっぱいがんばったから、ご褒美頂戴ね♪」

「あの、李翔さん、そろそろ何か上に羽織ってください…」

「だって、先に褒めてほしいから…」

「でも…ちょっと恥ずかしいです」

「ゆーりんがフンドシ一丁なわけじゃないでしょ? 
…あーゆーりんがフンドシ一丁なら、ぼくドキドキだけど(ぽっ)」

「…・・・ん・もぉ・・・・李翔さんのっ 馬鹿ぁっ!!」
と夕鈴は李翔さんを突き飛ばした。




「兄貴。いちゃついてますぜ?」
子分その4がせっかく釣った釣果が地味に目立たなかったため、几鍔にこぼす。

子分その3が
「でもいー人だよなー、こんなにいっぱいごちそうとってきてくれてさー」
と、子分その4をとりなす。

「そーだなー。俺、魚しかつれないし。
山の幸のお土産いっぱいっていうのはラッキーだなー」


おい。

お前たち。
少しは人を疑え?
おかしくないか?
この李翔ってヤロウは??


「李翔さん、すごいですね~!
ぼく、こんなに大きな亀ってはじめて見ました!」

「え?そうなの? 青慎君。
じゃあ、食べるの止めて、これあげる」

李翔さんに洗面器大の亀をもらった青慎は大喜び。
嬉しそうに「じゃあ、お前はの名前は亀吉だ~!」と名前をつけ、

この日から青慎に弟分ができた。(オスメス不詳)



お腹いっぱいで河原でバーベキューは最高に楽しかった。
ああ、満腹、満腹。



---(もしかして、まだ続く気…?)---

お題が入ってるだけで、
ぜんぜん恋人の日っぽくないのですが、


ここから、一気にコイビトモード展開…?
まさか。


(続…)

恋人の日(4)

* * * * * * *
初出:2013年06月08日23:2336
2013年06月12日13:14[白友]※SNSでは限定掲載

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【両想い設定】

6/12は『恋人の日』よせて7日(金)~12日(水)に開催されたコミュのお祭りに投稿したSSです。

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夕鈴『・・・ん・もぉ・・・・馬鹿!!!』と、甘い声で言わせたい縛り、
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[白友限定][捏造]
気楽に書きなぐってます。そのあたり御理解を願いつつ。
読んで「イメージが崩れた~」等 悲しまれませんように…。

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なんだか続いています。



* * * * * * *
恋人の日(4)
* * * * * * *


「綺麗な星空ですね…」

たき火を囲み、8人は飲み物を飲んだり、
バカ話をしたり、歌をうたったりして過ごす。

青慎は、李翔さんと仲良く肩を並べる姉の姿を見守った。

頬を染めて表情がいきいきしている姉。

きっと李翔さんのことが、大好きなんだろうな…

李翔さんも…

でもなんだか不思議な人なんだ。
李翔さん。

お役人っていう話なんだけど、
なんというか、どうもお役人さまに見えない。


手足の運びやたたずまい、優雅なしぐさは
たぶん貴族のたしなみ、っていうことなんだろうけど。

それだけでは説明つかない…
桁外れの、常識はずれ、というか
生活感のなさっていうか…。


普通の人なら遠慮するようなときでも、

平気で姉さんの手を握ってたり。抱きついたり。
赤面するような言葉を真顔で言ったり…。
でも、それが、
なんていうか、ぜんぜん嫌らしい感じがしないっていうか…。
貴族のお作法って、あんなものなのかな…? 


不思議な人だよね。
李翔さんって。


──────


「李翔さん…
連れて来てくださって、ありがとうございました」

「えー?」

「それも、みんなで、いっぱい。楽しい思い出が出来ました」

「うん」


「そろそろ、火、消すぞー」
火の番チーフの几鍔が声をかける。


川の傍の土手の上にある山小屋を借りてある。

「姉さん、ぼくと一緒の部屋だよね」

「えー、どうして僕が、几鍔くんたちと一緒の部屋なの~?」

「野郎は野郎、あたりまえだろっ!」

大部屋に男6人。

小部屋に夕鈴と青慎。


それぞれに部屋に分かれて、就寝。


ごそごそ。

「…おい、李翔」

「え?」


「お前、なんで、脱ぐ?」

「ええっ? 君たち、お布団入るとき、脱がないの?」


李翔、ラ族!!



几鍔、子分1、2、3、4、声を揃えて

「「「「「…脱がねえよっ!」」」」」


「えー、そうなんだ…。
そういえば、ちょっと今日の敷布はガサガサするね…」


「この木綿の敷布が? 山小屋にしちゃ、清潔で、上等ですよ?これ」
子分1は生地問屋の息子だった。


「お蚕ぐるみ(絹しか着ない)のお貴族様はっ! これだからよっ」
几鍔がケッと吐き出すように言う。


「うーん、じゃあ、今日はきっちり着込む、ね。」

李翔はかなりきっちり丁寧に着込む。

「せっかり着たから、お散歩してくる」
と夜闇にフラフラと出かけた。


「おいっ! 山の夜は真っ暗だぞっ!? 明かりも持たず…」と引き留める間もなく、李翔はルンルンと出て行ってしまった。


夜目の効く李翔は、真っ暗闇でも危なげなく歩きまわる。
ぐるりと山小屋を回り込み、
夕鈴と青慎の小部屋の窓にコツン、とちいさな石を当てた。

コツン

…コツン

不思議な音が窓際からするのに気が付き、夕鈴は窓をあけた。

「…へっ り、李翔さん!」

「しーっ…!」
李翔は口に指をあてて、窓際のほうへ来い来いと手招きした。

山小屋は桁を組んで高床になっているため、
窓は外から見ると少し高い位置にある。


「星がきれいだよ?
出ておいでよ」

「えっ?ここから…?」

「飛んで! 受け止めるから」

ほんの1、2mだけれど、
真っ暗な中にぼんやり黎翔が見えるだけ。

夕鈴は一寸ためらったが、エイッと窓枠を越えて飛び出した。

李翔は飛び出してきた夕鈴をしっかりと抱きしめる。

眼を閉じて李翔の胸に顔を埋めていた夕鈴は、うまく抱き留めてもらえて、ホッとした。

山小屋から少し離れて、見晴らしの良い丘に出た。

「夕鈴。無茶させて、ごめん。
来てくれて、うれしい」

李翔は、夕鈴の首筋に顔を埋め、ぎゅっと抱きしめる。

「青慎君は?」
「…青慎は疲れて寝ちゃいました」

「じゃあ、ちょっと二人でお散歩しよう」

「はい!とにっこりとほほ笑んだ夕鈴の瞳は上気して、キラキラと星のまたたくようだった」

その笑顔を見て、不意に李翔が夕鈴の唇を奪った。

「んん…  んっ  !! ん いやん…」


李翔は唇を離した。

「…いや?
ぼくはずっと一日、我慢してた、よ…?」
悲しそうな声。


…夕鈴は真っ赤になって、小さな声で囁いた
「…・・・ん・もぉ・・・・陛下の、馬鹿っ!!」



 (つづく…)

恋人の日(5)

* * * * * * *
初出:2013年06月12日12:3259
2013年06月12日13:15[白友]※SNSでは限定掲載
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【両想い設定】

6/12は『恋人の日』よせて7日(金)~12日(水)に開催されたコミュのお祭りに投稿したSSです。

テーマは「恋人」(バカップル・ラブラブ含む)
夕鈴『・・・ん・もぉ・・・・馬鹿!!!』と、甘い声で言わせたい縛り、
でお送りいたします。

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気楽に書きなぐってます。そのあたり御理解を願いつつ。
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* * * * * * *
恋人の日(5)
* * * * * * *


「きれいな星空ですね…」
夕鈴は瞬きもせず夜空を見上げる。

隣にいる彼女の手を握るぼく。

「少し、散歩、しない?」

「はい!」

暗闇の中の笑顔。
ぼくだけにはくっきりと見える。

…そう。
君は、どんな星よりも瞬く、
ぼくの胸のともしび。

足元が見えない暗闇を歩くのはけっこう難儀だろう?
ぼくは、わざとデコボコ道めざして、手を引いて。

…つまづく彼女を期待している。

「…あっ!」

「! 大丈夫?」
腰に手を回す。

「ありがとうございます!」
私の腰に君の腕が回りこむ。
…私の腕はおもわず君を強く抱きしめる。

「危ないから…しっかりつかまっていて?」

「…はい。

…でも…」

「なに?」

「抱きしめられていては、お散歩ができません…」

「…散歩は…
二人の時間ための、口実、でしょ?」

夕鈴の体温は、私の胸の中でカーッと上がった。

「…うれしいですけど…
足元も悪いし…」

「まだ、言い訳をするの?
…しかたがない。

では、こちらへおいでよ」

私は腕をほどき、少し坂を上ったところにある
木々の茂みがきれて少し見晴らしの良い
丘になったところまで彼女の手を引いて上った。

暗闇の中から、川のせせらぎが聞こえる。
虫の声が絶えず聞こえ続け、静かな夜空に響いた。
山肌から靄が立ち上る。

見晴らし台には、1本の大木が生えていて、
ぼくらはその木の根元に立った。

「静か、ですね。
…でも、ちょっと寒くなってきました。
そろそろ戻りましょうか?」

大樹の幹に手をついて、夕鈴はゴールを迎えた気分だったのだろう。

お散歩はここまで。

…のわけはないでしょ?

「寒いの?」

「あ、はい。少しだけ。
立ち止まると、冷えますね」

風になぶられて君の髪が揺れる。

私はそのひと房を捉え、口づけをし…
君の腕をとらえ私の胸に当てる。

「私はしっかり着こんできたから…
ほら。こちらへおいで」

重ねた上着の中に、彼女の体を引き寄せる。
ゆっくり私は上着の端を彼女の体に回し
彼女の体をすっぽりと覆った。

「温かい、です」
私の胸に、彼女の吐息がかかる。

「君がいると、私もあたたかい」

「ふふ」

私は彼女のあごをかるく指で傾け
唇を寄せた。
彼女は拒まず、目をつぶって受け入れた。

「…もう少し、温めて…?」
「…え?」
彼女の背中を大樹の幹へ押しつける。
私の腕の中からは、逃げられない。

「夕鈴…」

口づけは熱っぽさを増す。

おもわず彼女のうなじから肩へ滑らせ
…さらに薄い衣の上から彼女の柔らかい体をなぜる。

首筋に唇を這わせると
彼女から小さな抵抗の声があがる。

「だ…ダメ。」

「…ダメ、なの?」
ぼくは一瞬、手を止め、顔をあげ、
至近距離で彼女の眼を覗きこんだ。

うっとりとしながらも軽い怒りを含んだ目で
「み、みんなが
…青慎や…几鍔たちがいるのに…
こんなところで…っ !」

「大丈夫。気づかれないから…」
私は止めた手の動きを再開し
もう一度彼女の唇を塞いだ。

「あっ あん!
…ダメです! 止めてっ」

ふう…っと口づけを離し、
うっとりと彼女をなでながら、唇は耳元をなぶる。

「…だって…
こんなに、君が可愛いんだもの…」

「…あ・・・ん・もぉ・・・・馬鹿ぁ…ん」

…もう一度、唇をふさごうか……

思ったその時…

私はぴたり、と止まった。

遠くから、数人の気配が、サクサクと山道を上がってくる。

「…お預けか。」

私は手を止め、
彼女の襟元をそっと指で整える。

そして、真っ赤でホテホテになった彼女を
上着から解放した。

遠くにチラチラ明りが動く。

「あにき~~~
もう少しゆっくり歩いて下さいよ~~」

「こんな時間まで、あいつどこほっつきあるいてやがんですかねぇ」

「明りももたず、迷子になったら…」

明りを手に手に坂を上がってくる一団の声が届く。

こんなところみんなに見られたら、と
夕鈴は居たたまれない表情。

「…夕鈴。
裏をかいて、小屋にもどるよ?
几鍔クンたちには悪いけどサ。」

李翔さんはイタズラっ子のような声でヒソと耳打ちするや否や、
私を抱えあげ、几鍔や子分たちが上ってくる道とは別のルートで
すたこらさっさと山小屋まで戻って行った。



  (つづいちゃった)

恋人の日(6)最終回

* * * * * * *
初出:2013年06月12日17:22
2013年06月12日17:25[白友]※SNSでは限定掲載
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【両想い設定】

6/12は『恋人の日』よせて7日(金)~12日(水)に開催されたコミュのお祭りに投稿したSSです。

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恋人の日(6)最終回
* * * * * * *

小屋に戻り。
夕鈴を肩車して窓から戻す。

今日のちょっとした冒険は終わりだね。

おやすみ


じゃあ、ぼくは几鍔クンたちと、
もうちょっと遊んでこようかなっ!

李翔(黎翔)は、また来た道をスタコラさっさと戻って行った。

丘の大樹の下で、
几鍔クンと子分くんたちが休んでいた。

「李翔のヤロウ、どこまで行きやがったんだ…?」
「ほんとうに、よく分からない人ですね」

「きーがく くーん!」

「李翔!! テメー、「「「「どこいってたんだっ!」」」」」

几鍔&子分ズが睨む。


「はいっ!獲ってきてあげたよ」

と、李翔は両手に抱えていたタヌキ2頭を
几鍔たちに渡した。

「夜行性の動物を捕まえるのは、やっぱり夜でないとね~
狙ってたトラは残念ながらこの山に居なかったけど…」

「…トラ?」
まじか。こいつ。

腰に付けたポケットから、大きなクワガタ、カブトムシをぞろぞろ取り出して見せる。
子分3が目を輝かせて、クワガタを見つめる。

「ほら、これは男の子、好きでしょ? 町で売れるかも」
「うん、うん」子分3、4、大はしゃぎ。

「おまえのその、背中の袋はっ?」

「えーっと? これは …フクロウと…」
懐から最後にごそごそと取り出したのは

「モモンガ!!」

几鍔らが手にしている明りの中で、李翔はにぱっと嬉しそうに笑った。
(褒めて、褒めて)とばかりに、リアクションを待っている。

「…フクロウと、モモンガは…食えねえ!」

「フクロウはね、かしこいからね。
なんでもね、外国の『針歩多』という書物を読んだら
フクロウ便っていうらしいんだけど…フクロウがお手紙届けくれるって書いてあったよ?」

(針 歩多 … はり、ぽた??)

「…それ、ないぞ! 絶ってー ナイっ!」

「…え、そうなの?
…じゃあ、青慎君にあげる」

「おまえ、なんでもかんでも青慎にやるんじゃねーよ!
あいつは日中、勉強で忙しいんだっ!
結局ペットの世話は俺が面倒みることになんだぞ?」

「あ、几鍔くんが、面倒みてくれるんだ。
じゃあ、安心!」

「安心じゃねーだろーーーー!」
といいつつ、几鍔は(フクロウの餌ってなんだろう。)とふとよぎった

(フクロウの餌は、ネズミ!
…そんなら、倉庫の番人として飼ってもいいかもな)
…とか考えていた。


「早く小屋戻って、寝るぞ!
明日の朝、馬車が迎えに来るって言ってたからな!」

「はーい」

几鍔がフクロウの入った袋を担ぎ
子分その1&2が狸、
子分その3と4が両手に大きなカブトムシとクワガタ持ち
それぞれに嬉しそうに山小屋までの帰路についた。

李翔はモモンガを懐にいれると、
几鍔たちの後ろをスキップしながら続いた。

* * * * * *

翌朝、夕鈴が目を覚ますと、

青慎と、李翔さんと、モモンガが、窮屈そうに青慎の布団で丸まっているのを発見した。

「きゃーーーー!!! なんで李翔さんがこっちの部屋にいるんですかぁ~~!!」

李翔と青慎は夕鈴の叫び声で目が覚めた。

モモンガは丸まって寝ている。

「あ…、お姉ちゃん、おはよう
昨晩、李翔さんがね。
『可愛い動物見せてあげるっ』て来てくれて…
部屋の中モモンガが飛ぶところ、見せてくれたんだよ…」

青慎は目をゴシゴシこすって、モモンガの姿を探した。

「あーこんなとこ、いた!」
と、青慎は両手でそっとモモンガを包み込む。

(ああああああ…
青慎とモモンガの2ショット…
なっ、なんて、
かわいいぃぃ~っ

夕鈴はこの点についてだけは李翔さんに心の中で感謝した。

「…んー… あ? 
おはよー 夕鈴
よく眠れた?」
まだ寝むそうな李翔さんは寝ぼけまなこをこすっている。

「李翔さんっ!!
ちゃんとあちらの部屋でお休みくださいっ!!」

「…ん…。 ゆーりん、…おはよーのキスは?」
といって、李翔さんが寝ぼけたまま夕鈴の方へ唇を差し出す

隣で見ていた青慎は見てはいけないものを見てしまったように
モモンガを抱えたまま、あわてて壁へグルリと首を向けた


「な、な、な、なに言ってんですか~~~!!!
あーーもぉーー李翔さんの、馬鹿ああああ!」

夕鈴は真っ赤になって李翔さんの胸を突き飛ばした。

* * * * * *

青慎は、後ろ髪引かれながらモモンガを木のうろに戻した。

みんなで朝食を取って
一行はたくさんの獲物を持って
帰りの馬車に…

…乗り切れなかった。


「いーから。いーから。
ぼくたちは後から戻るから

几鍔くんたちは、お仕事。青慎君も学問所、でしょ?
ぼくはもう一日お休みあるし、大丈夫!」


几鍔と子分、青慎と、獲物の山を辻馬車に押し込むと
李翔はさっさと辻馬車のおやじに「行ってくれ」と一言鋭く放ち、
馬の尻をピシリと叩いた。

「ごちそうさまでした~~」子分ズが手を合わせて感謝をささげる
「姉さん、気をつけてね~~っ!」青慎が手をふる
「おい、李翔!!~~××」几鍔くんがなんか叫んでいるけど、
…李翔は聞こえないふりをした。


「楽しかったね~~! ばいばーい!
じゃ、また帰るときは、一緒にあそんでね~ よろしく~~」

と李翔は上機嫌で手を振って馬車を見送った。


くるり
と夕鈴を振り返り

「しかたがないよね~、ぼくらだけ、
山小屋にもう一泊になっちゃった♪ えへ」

「え…? もう、一泊…?
あの、浩大がすぐそこに居て、お迎えしてくれる、とか、じゃなくて…?

りりりり李順さんは…このことを…??」

「あははは~ 李順には、知らせてないよ~♪
浩大も、うまくまいたし… 安心して。
誰も、ついてきてないから!

さあ、夕鈴。 …二人だけの時間、
これから明日まで、いっぱい楽しもうね^^

…えーとまずは、川で~ スッポンポンで遊ぶとかぁ~ 」

いきなり夕鈴の首筋に顔を埋めると
彼女の帯を緩め始めた。


「きゃっ …あ ・もぉっ!!!

陛下のっ ・・馬鹿あああぁ…ん !!!」



(おしまい)

ふー。なんとか大風呂敷まとまった。

【番外ツッコミ】 陛下。夜はやはりラ族ですか?

*

≪続編≫
--- お忍び温泉旅行 前編 ---

お忍び温泉旅行(前編) 9998HITキリリク

* * * * * *
初出:2013年06月14日15:17
2013-06-18 13:17
* * * * * *

【バイト妃】【オリキャラ】

<1万回アクセス御礼祭>
2013年06月12日 23:14 あさ様9998HIT 御礼
----------

【お題】
「浩大&女官長さん&夕鈴&陛下で、こっそりお忍び温泉旅行」
----------




あさ様 に捧げます。


* * * * * *
お忍び温泉旅行(前編)
* * * * * *


熊の住むようなある山奥の村に
後宮管理人のじーちゃんがおすすめの温泉があるという。


なんでも
ぬるーいお湯で
ながーくつかっていると、
美人になって、疲れがとれる、という湯。


お妃ちゃんが、食いついた。



「美人に、なるんですか?」

「なるっ!」

「疲れがとれるんですね!?」

「ものすっご~~っく、とれるのじゃ!」


「…それ、本当ですか?」

「わしが太鼓判押す名湯じゃあっ!」
ハタキを握りしめて、夕鈴の瞳がキラキラ光る。

「バイト娘。

そんなに興味があるんなら、
この湯治場紹介の冊子を陛下にご覧にいれて、
お誘いしてみたらどうじゃ?」


そこで、夕鈴は老子から冊子を預かり後宮に戻った。


* * * * * *

『鶴霊温泉は別名「美人湯」として、古くより慰労と湯治で親しまれてきた名湯。

源泉から豊富な湯量が湧出しており、別名“ぬる湯”としても知られている。

その名の通り泉温は人肌程度の少しぬるめなるも、身体に負担がかからず、くつろぎながら長時間浸かることができることから湯治に最適であると言われている。

肌を美しくし、神経炎・骨及関節等の運動器障害をいやし、疲労回復などの効能を持つ。』


「…ふーん?
ゆーりん、行きたいの?」

黎翔は冊子眼を通すと、パラリと机に置いた。


「はい…」

「そう、遠くはなさそうだけど…
けっこう山奥だから、馬車の入れない山道を歩くことになりそうだね。
…大変、かもよ?
それでも、行きたいの?」

「あ、はい。

歩くのは慣れてますから…」


「どうして、そんなに行きたいの?」

「陛下のお疲れがとれるって。
すっごーく疲れがとれるって老子が。

それに、…
美人になるって…」

夕鈴が恥ずかしげに目を伏せて行った。

「美人…?」

「はい。美人になると」

「…
ゆーりん。
美人になりたいの?」


「あの…その…。

紅珠みたいにつるつる・すべすべのお肌で

きれいなお妃さまなら

きっと、陛下に恥をかかせなくていいかなぁ…と…」

モジモジ答える。


「ああ…


…うん。
じゃあ、行こうか?」


「えっ? いいんですか?!」


「ほかならぬ可愛い妃が
珍しくわがままいうのだから

…叶えぬわけにはいかぬ」

と黎翔はニコリと笑って約束をした。


* * * * * *


黎翔は急ぎの分の政務を午前中こなし
午後、王宮を出立した。

浩大が御者役でめだたない馬車を仕立てている。

私と陛下が先に馬車に乗った。

お忍びなので、人員は極力少なく。

陛下、浩大、私、そして女官長さん。

女官長さんは一緒に女湯に入れるから、と、陛下が抜擢した。

「さすがに男のおれっちが、女湯を守備範囲にしちゃったらねえぇ
…命がいくつあってもたりねーや ははっ!」


「…それって、私が…卒倒ものだって、けなしてる、わけ?」


「そっちの意味じゃなくてさー…」

「えー何――? 夕鈴の…は、卒倒ものなの?」
小犬陛下が慌てて問いただす。

「もう、いい加減にしてくださいっ!!」
夕鈴が顔を真っ赤にして怒る。


「あっ でも、女官長さんがいたら、陛下くつろげないんじゃ?
…あと浩大も」

「安心しろ。女官長には御者 兼 警護の者として、浩大のことを話してある。」

「あ、そうなんですか。じゃ大丈夫ですね」

夕鈴は浩大と女官長が過去わけありで
昔家族同様に暮らしていたことを知らない。

…といってもあの暮らしが家族?
というと言葉に語弊があるかもしれないが。
(別名、虎の穴)


しばらくして
さまざまな支度を準備をしていた女官長が
最後に馬車に乗りこんだ。

「…大変お待たせいたしました。
お支度が整いました」

「では、出発するとしようか、妃よ」

「はい!」

浩大が馬にムチを当てた。

* * * * * *

道が細くなる。
「もう、馬車で入れるのはここまでだなぁ」
御者をしていた浩大は馬車を止めた。

温泉まであとの山道は歩いてのぼる。

「大丈夫?」
黎翔が気遣う。

「はい、がんばります!」
夕鈴の元気な声。

「…いや、女官長…?」
黎翔が振り向く。


振り返ると、女官長は黒メガネで頭巾をかぶりった異様な姿で
荷物を持って付いてくる。

「…はい。木漏れ日で、まだ助かります…」

「女官長さん、昼間、外に出るの、苦手なんですよ」
夕鈴は黎翔にささやく。

「…では、ゆっくり行くか?」

「お気になさらず。」
女官長はわざと足を速めた。

黎翔はフフと笑い
「もう少しだ、夕鈴。頑張ろう」
と逆に歩を速めた。


浩大が女官長の荷物をヒョイとさらい
「おれっち、先に行って、宿の方に声かけてくるね~」
と走り去った。


* * * * * *

宿にはいると、もう日暮れ。
夕日が西の空を焼いていた。

宿に入り、まずはさっそく一浴びしよう、ということになった。

湯場の入口の男女の仕切りで、夕鈴が黎翔に声をかける。


「陛下、お湯にゆっくり浸かって、
しっかりお疲れを癒してくださいね」

髪をあげた夕鈴は、タライを持ち、手布をかけた浴衣姿。

ちらりとのぞく足首。
匂いたつがごとき うなじのライン。
黎翔はドキドキした。

「ああ、きみも美人になるまで
しっかり湯につかるとよい」
黎翔は笑いながらこたえた。

浩大と女官長は待機で着衣のまま控え
黎翔と夕鈴の二人はそれぞれ別々に男湯、女湯の暖簾をくぐった。

国王夫妻のお忍び。
もちろん湯場は貸切にしてある。


「わあ…。古めかしい…」

桶をおくと、カポーン…と音が響く。

辺りを見回したところ
屋根付きの湯場と、露天湯の2つがあるようだ。

ひなびた雰囲気で、庭の作りも雰囲気が良い。
あちらにみえる竹の垣根で男女の湯を仕切っているらしい。

日が暮れかけ、所々にかがり火がたかれ
ぼんやりと照らされる風情はなんともひなびていた。


女官長は、景色がよく見えるよう
小さな木の椅子を垣根側に置いた。

「お身体をお流ししましょうか?」

夕鈴は白い湯あみ衣を羽織り、肩から湯布をかけている。

女官長は裾と袖をめくりタスキがけ姿だ。


「あ、はい。御願いたします」


「こちらが景色が良いですね…」

夕鈴はちいさな木の腰かけにちょこんと座り
湯あみ衣のあわせをスルリと脱ぎ、近くの木の枝にかけた。

夕鈴の肩にかけた湯布を少しずらし、
女官長が湯を掛け背中を磨く。


「うふふ。美人の湯ですって。…楽しみですね」
夕鈴は笑った。

「浸かる前でも、あいかわらずお美しいですよ?」
女官長は夕鈴の背中をこすりながら微笑んだ。

「…紅珠のお肌、ご存知ですか!?」

「はい」

「しろくって、つやつやで…
それでいてプニプニと柔らかくて…

あんなお肌になりたいんです!」


「夕鈴様も…
お白く… やわらかく。
それでいて指ではじけばプリッとした感触で
若々しいお肌と存じますが…」


(ぶっ…!!)

女官長は、垣根の向こうの気配を探った。


(…。
…また、あのお方は…)
女官長は心の中でため息をついた。


夕鈴の肩にかけた湯布をめくり頭にくるりと巻き
垣根に背を向け、立ち上がる。

(………!!!)

「では、さっそく…」

夕鈴は、足からそろそろと湯につかる。


「…ほんとうに、ぬるいんですね…
人肌というか…

だれかに包まれてるような…
やさしい感じです」

夕鈴は気持ちよさそうに、はぁ…と息を吐いた。


(……×××…!!)

日が落ち、
夕日の最後の残照が雲の端をほんのりと照らし
それが刻々とぼやけるように暗くなっていく。

垣根に背中をもたれかけ、夕鈴は静かにじっと空を見つめていた。

しばらくして

「きゃっ!」と声をあげる。
バシャっとしぶきをあげて、夕鈴は垣根から離れた。


「どうされましたか?」
おちついた顔をして、女官長が声をかける。


「なにか、いまするっと、湯の中を…!!
腰のあたりに何か…!!」

垣根は水面の上だけ覆うように設えている。

湯の中は男女の湯の仕切りがないことを
夕鈴は意識していなかった。



「お、おさかな、でも…
いるのでしょう、ね?

お妃さまにまといつくなど
不埒なお魚もいたものです」

女官長が優しくボケた。

(…あの方は。また…。おいたを。
フォローに困ります、ほんとうに)

女官長は気配で察していた。

内心苦笑。



「温泉に…おさかな、なんかいるのですか?」

「さあ…私も存じませんが…」

いつも通りの女官長スマイルで答えた。



「もうそろそろ、あがります」
夕鈴はザバザバと岸に近づき、湯からあがった。


「お妃さま、
お肌つやつやになりましたね」

「え、そうですか?」

うっすらと汗をかいた夕鈴は
辺りが薄暗いことに安心し

全裸のまま大胆にウッフン・ポーズをとった。


「なんだか美人になった気がします!」



(×××××~~~~!!!!)




「それはようございました

さあ、浴衣をお羽織ください…」

女官長は笑いながら(誰に対し?)浴衣を広げて差し出し
夕鈴の肩からかけた。

「はい」




その頃男湯では
黎翔が湯からフラフラと出てきて
のぼせてノビた。


「…陛下~~、ダメだよぉ?
こんなぬるい湯で、
のぼせてちゃ、さあ…」

腰に湯布を巻いただけで岩に横たわる黎翔に
浩大が団扇でぱたぱたと風を送る。



「つ…疲れた…」

黎翔が最後に一言つぶやいた



* * * (後編へ つづく)→  * * *

* * *  ←(関連作品)恋人の日  * * *

お忍び温泉旅行(後編) 9998HITキリリク

* * * * * *
初出:2013年06月14日21:44
2013-06-18 13:20
* * * * * *

【バイト妃】【オリキャラ】

後編です^^

あさ様 に捧げます。


* * * * * *
お忍び温泉旅行(後編)
* * * * * *

「気持ちよかったです…!
さすが老子イチオシの温泉です」

女官長が夕鈴の髪のしずくをふきとり、乾かし
かるく頭上に結いあげる。

「それは良うございました」

「あ、…陛下は
まだお戻りではないのでしょうか?」

「そのようですね。
ゆっくり疲れをいやしておいでなのでしょう」
(笑)

「もうすぐお食事なのに…。」

「ではそろそろ参りましょうか」

食事の間にうつるとすぐに
黎翔が現れ、ぐったりと座についた。


「…へいか?」

「ああ、待たせた」
濡れた髪のままの陛下が笑う。

「いえ。…なにかお疲れがさらに増したように見えますが…
大丈夫ですか? 
…ここの温泉、お気に召されませんでした、か?」


黎翔は少し困ったような笑顔で返事をした。

「いや、とても…
気に入った。」

「本当ですか?」
夕鈴は心配そうに陛下を見上げた。

「ああ。」


「あ、陛下髪が…まだ濡れて」

夕鈴はあわてて手布を差し出し、
黎翔の頭を拭く。


ふわり、と湯あがりの良い香りが漂う。

髪をかるく結いあげ、うなじから鎖骨までが
つやつや真珠貝のように光る夕鈴の姿を見て
黎翔は、内心ドキリとする。


黎翔は夕鈴の手をとると
いつものように自分の膝のうえにいざなおうとした



夕鈴の淡いピンク色の浴衣からのびる
ほんのり桜色の足首を見てしまい、
ドキリとして、つい手をひっこめてしまった。

「…?」

「いや…。ああ。腹がすいた
山道を歩くと、食事が楽しみになるな」
と黎翔はなんとなく言葉を濁した。

食事の間中なんとなく言葉が少なく、よそよそしい。

夕鈴は(?)と思いつつも
いつもみたいに陛下が意地悪してこないから
今日は思いっきりお食事が楽しめるわ、と
おいしい夕食をパクパクと口に運んだ。


部屋に戻ると布団が敷かれていた。

宿はすべて貸し切っているが
「李夫妻」の偽名を用いたからであろう
広い座敷には2組の寝床が用意されていた。


女官長のてまえ、偽妃とは言えない。

「よ、よそのお部屋は、あります、か?」

「はい?」

「陛下がお疲れのようなので…
わたくし別のお部屋で休ませていただいたほうが
ご迷惑をおかけしないか、と…」

「構わぬ。
私は疲れてはいない」

黎翔があっさり答える。

こう言われてしまっては、夕鈴は言いつのれない。


「…ああ、妃。
耳に、湯がはいった…
みてくれないか?」


(まったく。
…おさかなに なるからですよ…)

浩大と女官長は同時に同じことを思った。


「え?それは大変です!」

夕鈴があわあわとしていると
女官長がコヨリと耳かき、大判の湯布をとってくる。



灯火を寄せ、芯を調整して明るくする。

夕鈴が座り、膝の上に湯布を広げると
その上に黎翔はごろりと頭をのせた。

「よく、見せてください。」

「頼む」


「ああ、女官長、浩大。
せっかくだから、おまえたちも、少し湯に浸かってくるが良い」

周囲に危険な気配もない。

今はとくに付き添いがなくても大丈夫、
と、やんわりとした人払いの合図だろう。

浩大は「へーい」とこたえ
女官長もそっと傍を離れた。




夕鈴はコヨリで陛下の耳の水気を丹念にぬぐう。

「どうですか?
ついでに耳かきもしましょうね」


「うん。気持ちいい…」

「ふふ」
夕鈴は耳かきをそっと動かして
丁寧に黎翔の耳朶をなぞった。


黎翔は目をつぶったまま話しかけた。

「夕鈴。」

「…なんですか?」

「来て、よかった」



「それは良かったです

…でもなんだか陛下、お疲れのようで…
わがまま言って申し訳なかった、って
反省していました。」

「どうして?」
黎翔はパチリと目をあける。


夕鈴は耳かきの手を止めた。

「…だって、陛下。
なんだか。疲れてるっていうか…
目をそむけてるっていうか…
怒っていらっしゃるみたいなんだもん…
まえ離宮のときもあまり温泉って興味なさそうだったし…」


「え!?」
黎翔は、ガバリと身をおこす。

夕鈴はびっくりして耳かきを持った手を引き寄せる。


「違うよ?」

黎翔は夕鈴の両肩に手をかけた。
二人は見つめ合う。

「違うんですか?」



「あ…あの。

…なんだか夕鈴がいつもより美人にみえて…

ちょっとドキドキしてた、だけ」

黎翔が赤らんで目を伏せた。


「わたしが、…美人?」

「うん!」


夕鈴の笑顔がパッと花開く。

「わーい、やりましたー!
温泉の効能通りですね~」

思わず夕鈴は陛下に抱きついた。

「わっ!」

陛下は夕鈴に抱きつかれて、ちょっとびっくりしながらも
とってもドキドキ嬉しかった


* * * * * *

その夜、美人の夕鈴と陛下は
衝立を隔て、
さらに部屋の端と端に遠く寝床を離して
灯りを消した。


くうぅ…すうぅ…と
夕鈴の寝息が聞こえる。


ちらりと衝立越しにみると、

枕元にフサリ…と茶色い髪の束が乱れ、渦を巻き
桃色の頬とつややかな半開きの唇がほのみえた。

膝こぞうから下がにょっきりと布団からはみ出している。

(黎翔は気配に敏感で、さらに夜目が効くのであった。)


黎翔はブルッと震えて
布団を頭から被りなおした。


(…眠れない。)


なまめかしい妃の唇が。

白い下肢や

枕元で乱れた茶色い髪の渦が

頭の中をぐるぐるとめぐり



悩殺される黎翔は一晩を悶々とすごした。



* * * * * *

その頃、一風呂あびてすっきりした浩大は、
美しい黒髪の中年女性の膝の上に頭を載せていた。



「…やはり。
お前の耳が一番面白い…」

黒髪の女性がつぶやく。


「がはっ!
リーリー!!!

お願いだからサ…
もう勘弁してくれよぉ」

「その名を呼ぶか?」

冷たい空気が場を包む。


「いえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえ、
し、師匠!! 師匠お許しくださいっ!!」

(この状況じゃ、オレ、無抵抗で即死じゃん?)



「ふ。気をつけろ。

いや、まだこのあたり…

やはり。まだ残っている」


「うぐっ!!

イヤ、だから、ね
だいたい、で、いーから、ね? 師匠っ」

膝の上を見上げた瞬間、背筋に冷や汗が流れた。

(ヤベッ! マジ、眼え開いてるじゃんっ?)



「いや。
お前の。この…
トリッキーに折れ曲がった耳孔の隅に潜む
挑戦的な大物を掘り出すのが…
私にとって、数少ない楽しみの一つなのだ…。

まかせろ。
綺麗に抹殺してやる。」


(勘弁してくれ~~~)

「いや、師匠
ぎゃ! いいからさぁ、オレ

っ!…ぎゃあああー!!

ギブッ!ギブ!」

「あ」

熱中しすぎて、思わず無意識に
スーッ と刺し込むように急所に向かいかけた手を
リーリーは我に返って、停めた。


「…すまん。つい
身体が動いた」

「カンベンしてくださいよぉ~~~!!
(>□<;;ノ)
そこ刺したら、脳みそ穿たれて
オレ、死んじゃうよっ???」


「お前にとっては
早く終って、
好都合ではないか?」


「だから、もぉーっ!!

耳かきと引き換えに
散らす命は、ないっつーのーー!」


* * * * * *

こうして、
悪夢の一夜が明けて翌日。


それぞれ、悪女(?)に翻弄され
疲れ切った男性陣二人と

つやつや美人になった
女性陣二人が

王宮に戻った、という。






(おわり)





バイト妃に翻弄される
純朴(ときどき不純)な陛下でした。

-----

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ラ族狩人陛下的日常

2013-06-24 23:37
2013-06-26 08:00
【ラ族狩人陛下】【パラレル捏造】



* * * * * * *
ラ族狩人陛下的日常
* * * * * * *


狩人陛下の朝は早い。

早朝4時に目を覚ます

もちろんラ族。

マッパ、一糸まとわぬ姿で寝台から抜け出す。


目を覚ますと
基本鍛練を黙々とこなす。

このときは、丹を締めるため
フンドシ一丁を身に着けている。


鍛練が済むと、軽くタライで身を清める。

今日は「ヘチマスポンジ」と
最近お気に入りの
コンニャクから造られた「つやの玉」を
宦官に持って来させ、背中をこすらせた。


歯磨きは丁寧に5分間。
歯木に老子の調合した天塩となにやら混ぜた練り粉で念入りに。

お風呂タライの中でついでに歯木を咥えてのんびり磨くときもあるという。


顔を剃り(それほど濃くはないが、当然の身だしなみ)
ついでに襟足の長さを整えて貰い(前髪は触らせない)
サッパリと身づくろいする。


* * * * * *

朝議ではしっかり着込み、普通に過ごしている。

大勢の家臣に恭しく迎えられ、次々沸いてくる案件をさばく。

「昼餉は、妃ととりたい」とごねる。

李順、仕方がないとあきらめる。

トコトコと後宮へ向かう。
後宮へ着くなり、着こんでいた袍を脱ぐ。

「…」
黙々と、どんどん脱ぐ。

「今日は、空気がサラリとして気持ち良いな」
とか何とか、思い出したようにつぶやきながら
止めどもなく脱ぐ。

ズボンにかけた手は止めた。
一応、恥ずかしがり屋の妃に対する思慮は残っているのだ。


妃と昼餉をとる。

黎翔、平然と上半身裸のもろ肌で食べる。

妃、眼を合わせられない。


その時、ガサガサとテラスの方で音がした。

ピクリ、と黎翔は反応すると
すかさず駆け出す。


しばらくすると、テンをぶらりと下げて戻ってきた。

「きみの襟巻にでも?」

獲物を嬉しそうにブラブラさせて、
目をキラキラさせて夕鈴に『褒めて、褒めて』とアピールしている。

「そ、それは素敵ですねぇ」
夕鈴は微笑みを返す。

女官長にスックと腕を伸ばし、テンを手渡す。

諸肌脱ぎごときに女官長は動じない。

夕鈴に濡れた手布を渡す。
夕鈴は陛下の背中と腕をそれで拭う。




食後のお茶を淹れる。

その時、カサッとテラスの方で音がした。

ピクリ、と黎翔は反応すると
すかさず駆け出す。


しばらくすると、カルガモをぶらりと下げて戻ってきた。

「カモは好きか?」

獲物を嬉しそうにブラブラさせて、
目をキラキラさせて夕鈴に『褒めて、褒めて』とアピールしている。

「カモは…好きですよ?」

夕鈴はうっすら汗をかきながら微笑みを返す。

女官長にスックと腕を伸ばし、カルガモを手渡す。

もろ肌脱ぎごときに女官長は動じない。

夕鈴に濡れた手布を渡す。
夕鈴は陛下の肩から腕にかけて、丁寧にそれで拭う。



ようやく食後のお茶を飲む。

その時、ガサガサッとテラスの方で音がした。

ピクリ、と黎翔は反応すると
すかさず駆け出す。


しばらくすると、シカを肩に乗せて戻ってきた。

「大モノがいた」

肩の上にのせた獲物の四肢を握り、嬉しそうに、
目をキラキラさせて夕鈴に『褒めて、褒めて』とアピールしている。

「…それは、お、大きいのがいましたねぇ」

夕鈴は大量に汗をかきながら微笑みを返す。

テラスにドサンとシカを置くと
女官長は手を打って「誰か」と係りを呼ぶ。

上半身裸のもろ肌脱ぎごときでは、女官長は動じないのだ。

夕鈴に濡れた手布を渡す。

「…ああ、わが愛しの妃よ。
背中も良いが、前も拭いてくれないか?」とのたまう。

背中を拭いていた夕鈴は、
内心””ドキ!”としたが、断れず
目をつぶって顔をそむけたまま、陛下の胸と腹を拭う。

バイト妃にとっては恥ずかしすぎる行為。
手の震えが止まらない。

黎翔は妃の耳元に唇を寄せ

「うん、そんなに震えて…くすぐったい…
可愛い妃よ。
そんなに私を煽る気か?」

と囁き、軽く妃を爆死させた。



お茶を飲み終わると、衣をきっちりと着込む。

「楽しかった。
昼の休憩も終わり、か。

また、夕方戻る」

と言い残し
サッパリとした表情で王宮へ戻る黎翔であった。


夕鈴は溜っていた息を吐きだした。

「(…刺激がつよすぎて、
ドキドキが止まりません)

…、で今日の子たちは
大丈夫でしたか?」


「はい。
気を失ってただけのようですよ?」

女官長はニコリと微笑む。

「ああ、よかった。
今日の子たちも、かわいかったですね~」
夕鈴は胸をなでおろした。


最初のころはなぜ次々動物が庭を横切るのか
不思議に思っていた夕鈴だった。

女官長からこっそり聞いたところによると

頃合いに動物を放す係りがどうやらいるらしい。

王宮にはいろいろな係りがいるのね、と夕鈴は思った。


「モモンガ、とか、ヤマネ、とか
小さい子もいつか会えますかね?」


「…モモンガ」

女官長(浩大の顔を)思い出す。

「少々育ち過ぎたのなら
辺りをうろうろしていますが…。

お望みとあれば、係に伝えておきましょう」


「…育ち過ぎ?」

「いえ、別に」




* * * * * *

夕方。

黎翔は後宮に渡る。

一日の疲れを取る、夕鈴との癒しのひととき。


二人で夕食を楽しむと、女官を下がらせる。

黎翔は本格的にリラックスするため
さっさと脱ぐ。

フンドシに手をかけたが、止める。
一応、恥ずかしがり屋の妃に対する思慮は残っているのだ。


長椅子に座り、すらりと伸びた長い脚を組む。

「夕鈴、おいで?」

「いえ、それは…
それに、今お茶を入れようと…」

夕鈴はごにょごにょと呟いて、いつものように言い訳をする。


「いいから、おいで」

黎翔が夕鈴の腕をつかんで引き寄せる。


ひーーー

おひざだっこは…
おひざだっこだけは…お許しください…


「…いつまでたっても、慣れないねぇ」
黎翔はクスリと笑う


(な、な、慣れるわけ無いでしょう~~?!
フンドシ一丁のあなたのおヒザに抱っこされるなんてっ!!)

夕鈴は真っ赤になって黎翔の腕の中で涙を浮かべながらこらえる。


「へ、陛下っ!

す、すごろく、でもしませんか?
今日は、新ネタがあります!」


「んー、そうだね。
…やってみよっか?」

黎翔は残念そうにひざ上の夕鈴を解放した。


「紅珠が、最近貴族の間で流行っているという双六を
わざわざ届けてくれました」

夕鈴は、いそいそと双六の台紙と、サイコロを取り出す。

(…今日届いたばかりで、まだ見ていなかったけど…
貴族の間で今ものすごく流行っているというのなら
きっと面白い内容に違いないわね)

と夕鈴は台紙を広げてさっと目を通すと…


『3つ進む』

『2つ戻る。
恋の歌を一首詠む』

『1回休み
お休みの口づけを貰う』

『1つ戻る
1枚脱ぐ』


『6つ進み
相手の駒を一つ戻す』



双六のマス目のところどころには
上記のような説明がちらほら書き込まれている。


(えっ…!?)

さーーっと青ざめる夕鈴。


「あ、ほんと
これは、面白そーだね
さっそくやろう!」

黎翔は嬉しそう。

「真剣勝負だよ?
勝ったほうのお願いを、
負けたほうが一つかなえる、っていうので
いいよね?」


(何も書いてないマスのほうが多いんだから。
避けて止まれば、大丈夫。
うん。
…大丈夫なはず…)

「出来る範囲で、かなえる、でいいですよね?」

多少の不安を抱えつつ、夕鈴は汗をかきながらニコと笑う。

(あ、でも。私が勝ったら、陛下になにをお願いしようかな…)

ちょっと夕鈴もウキウキしてしまった。


「じゃあ、ぼくは後、でいいよ?
夕鈴からサイコロ振って!」


かくして、双六ははじまった。


夕鈴が賽を投げる。
コロコロコロ、カタリ。
4の目が出る。


「1、2、3、4… 
『1つ戻る』…ああ、一つ戻る、で。
何も書いてないマス、で、止まる、と

はい。次は陛下ですよ?」


「うん」
陛下が賽を振ると、6が出た。

「陛下、いきなり大きい数字が出ましたね?」

「わーい!…1、2、3、4、5、6…
『1回休み』!えーっ? いきなり?」


「1回休みですか。残念でした(笑)」

「あ、でも、おまけが書いてある!!
『お休みの口づけをもらう』だって!

はいっ! ゆーりん、お休みのく・ち・づ・け、頂戴?」


夕鈴は激しく抵抗したが、
フンドシ一丁の黎翔が膝に夕鈴をさらう。

さらに抱きしめて、
至近距離から潤う目つきで
「お休みの、口づけ、でしょ?」
と迫る

夕鈴は黎翔の迫力についに負けた。

…黎翔のほっぺにチュッと小さな口づけをすると
カーッと真っ赤になって燃え尽きた。


黎翔は大満足で、そんな夕鈴の手をとり、サイコロを握らせる。

「はい。ボクはお休み中だから
ゆーりん、2回、ふってね?」

指先まで真っ赤な夕鈴の手を補助し、
サイコロを振らせる。

「6!」
ぱああ…。
大きな数字がでて、嬉しそうな夕鈴。

黎翔の大きな手が夕鈴の手の上から重なる。
二人の手は駒をつまみ、トン、トン、トン、トン、トン、トン!と進める。

なにも書いてないマスで止まる。

(ほっ)夕鈴、一安心。

「もう1回夕鈴振って、ね?」
とまた甲斐甲斐しくサイコロを握らせて、振らせる。

「1!」
黎翔が手伝い、トン!と夕鈴の駒を進めると

「あ~っ 残念!!(と言いつつ、なぜか嬉しそう)

『2つ戻る。恋の歌を一首詠む』だ!
さ、ゆーりん。
『恋の歌』。ね。詠んで」

「えーっ???

私、無学ですから、一首詠むなんて、無理ですよ?」


「じゃあ、歌を歌って。

恋の歌なら、なんでも。
君の知ってるもので…」


夕鈴は困って困って困り果てた。

「じゃあ…
下町のはやり歌でも、良いですか?」

と顔を真っ赤にして黎翔を上目づかいに見上げる。

「うん。歌って?」

この手のゲームにつきものの罰ゲームからは、逃れられない…。

夕鈴は眼を瞑り
ついに絞り出すように歌いだす。


♪遠く、ふれることもできない 
小さな はじめての恋。
淋しくて ただ淋しくて
届かぬ想いを 胸に秘め
好きですと 言えずに 
見つめる あなたを…



黎翔が夕鈴を見つめる。

歌い終わって、ほっとし、
眼を開くと…
まつ毛が触れそうなほど近くに
黎翔の顔があってドキリとした。

「…
いい、歌、だね

すごく、よかった…」

あまりに黎翔の眼が熱を帯びていたので
思わず口づけされるのかと思った。

夕鈴はあわてて顔をそむける。

「…そうですか?
ただの、はやり歌ですよ?」

「うん。
流行るだけあって
いい歌だった

でも。ゆーりん。
さびしかったら、触れても、いいんだよ?」

黎翔はそういうと、夕鈴を引き寄せ
その小さな手をとり
自分の胸に当てた。

夕鈴、押し付けられた掌に感じるマッパの陛下の胸の感触と
ドキドキ脈打つ心臓の鼓動を感じ、ぐるぐる目が回る。

黎翔は、クスリと笑うと夕鈴の手を解放し、
身を引いて間合いを広げた。


気持ちを落ち着けなきゃ!
夕鈴が頭をフルフルと振って「よし、冷静!」と気合を入れなおす。

二人は交互に賽を振り、駒を進める。
夕鈴も、なるべく黎翔の首の下を見ないようにして
ゲームに熱中しているふりをする。

そんなこんなで、いつの間にかゲームは終盤に近づく。


「じゃ、こんどは。ぼく…

…あ

『3つ進む』だね。
じゃあ、3つ」

トン、トン、トン、と
黎翔は自分の駒を進めた。

二人の駒は接戦。


「うーん。いい勝負だね。

…勝ったほうがお願いを一つ。
負けたほうに、かなえてもらえるんだよね?

負けたくないなぁ…。

じゃあ、夕鈴の番」


「あ、はい」

夕鈴が賽を振ると、「1」が出て。

一瞬がっかりしたが、コマを1つ進めると

「あ!ラッキーです!」

『6つ進み
相手の駒を一つ戻す』

やったー!
これで運が向いてきました!
チャンス到来ですよ~」

と夕鈴が、自分のコマを6つ進めると、
ゴールまではあと3マス。

そして、黎翔の駒を持って
「残念でした~」とコマを1つ戻す。

勝利目前で、興奮気味の夕鈴。
黎翔はやられた、とばかりに頭を掻いた。


すると

「あれ?
ぼくさらに、
『1つ戻る。1枚脱ぐ』?


仕方がないなぁ…

えーっと。
一つもどして

そして、1枚脱ぐ、と」


その瞬間、夕鈴は真っ青になった。


黎翔は、身に着けていた最後の1枚
…すなわち
腰に巻いていたフンドシに手をかけ
スルスルと…




さて。
ラ族・狩人陛下 対 兎嫁。

本日の
勝利の行方は?


(おわり)


-----


いつのまにか、定着してしまいました。

パラレル ラ族・狩人陛下
関連作品は、以下の通り。(たぶん。この陛下のしでかしたこと)

恋人の日  3   6完

お忍び温泉旅行前編 後編

・[追加]
もしかすると、これも…?
凄愴の使

ラ族な陛下と池に落ちる

【パロ】【パラレル】


「狼陛下の花嫁」第11話のパロディです。
白泉社 花とゆめコミックス狼陛下の花嫁 3巻 可歌まと先生(C)

130704-01ラ族狩人陛下M
ラ族狩人陛下ですが。なにか? 



* * * * * *
ラ族な陛下と池に落ちる
* * * * * *


――――陛下は
いつもそうやって

全部を脱ぎ捨ててしまう…


「すみません…
陛下は時間の都合がつけられないそうです」

「え…」

「――― そう…ですか
で…では また後日に…」


心が痛い…


―――でも
受け入れられる可能性がないのなら

「―――いいえ
今後も難しいものと思われます」


傷はあさいうちの方が―――


「っ」

「どうしても…
ダメなのですか…?」

「ごめん…なさい…」


―――やっぱり
会わせた方が良かったの?
傷つくってわかってても―――


「…どい
ひどいです
お妃さまはそうやって
陛下や後宮を…
全部ひとり占めにするおつもりなのですか…?」

「え」

「―――少しくらい
分けてくださっても
いいじゃありませんか!」

橋の上で、ぐらつく紅珠。

「!後ろっ 危ない」

夕鈴は紅珠の手を引き、身代わりとなって自分が橋から下へ…

バシャアアアアン!

蒼白になり、橋の下を覗き込む紅珠
「お妃さま!?
だ、誰かっ

お妃さまが…!」

「!!」


その時、水音が。


ザン!!

たなびく王の衣類。ふさぁ…と池の岸に落ちるまえに…
黎翔は池に飛び込んだ。


「―――大丈夫か 夕鈴」

げほっ げほっ


「へ 陛下…!?
なんで…

裸なんですか~~~!?

これはどういうことですかっ

状況を説明してくださいっ!」


池におちたことよりも
裸の陛下に抱きしめられた状況にパニックをおこしかけ
狼陛下を怒鳴りつける妃。


妃にどなりつけられ、一瞬ひるむ狼陛下。
この怒りをどこにむけたら…と
橋の上を振り返り…

「氾紅珠! なにをしているっ!」
と怒鳴りつける。



紅珠は急ぎ懐から巻物を取り出し
お二人の様子を描写中であった。 

下手なりに彼女が素描したスケッチも付いていた。

夕鈴の気遣いをよそに、
ラ族な陛下を受け入れる気満々の紅珠であった。



陛下は目が点になった。

そこにたたみかけるように妃の怒鳴り声が…


「陛下っ 

どれだけ心臓に悪いんですかっ!!

おちおち池にも落ちられません!」


(おちおち落ちられない、
…それはすばらしいオチですわね)

オヤジギャグがお好きな紅珠は
妃の怒鳴り声を、採用した。



(おしまい)

130705-012ラ族ことはじめ

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SSS ラ族ことはじめ

夏です。今日は蒸し暑いです。

お家に帰ると、仕事着を一刻も早く脱いで、
シャワーの一つも浴びたいというものです。
(私はラ族ではありませんが)


小学生男児(ムスコ)の足もむんむんとにおいます。
即刻足をあらってもらいたいものです。

短いSSSを一つ。
【パロ】【パラレル陛下】【ラ族】

パラレル星にお住いのラ族陛下のシリーズが定着しつつあります。
苦手な方はご無理なさいませんよう…。


* * * * * *
ラ族ことはじめ
* * * * * *


「…どうして、ヘーカは ラ族なんですか?」

「え?」

「だから、どうしてすぐお脱ぎになるんでしょう」

「えっ?! 
…みんな一人の時は、普通に脱がない?」

「脱ぎませんよ!?」

「ゆーりんは、恥ずかしがり屋の女の子だから…
でもきっと、オトコはふつう…」

「オトコも普通は脱ぎません!」

「そうなの? …知らなかった…


だって、小さい頃から。

衣類は自分で着るものではないって

女官や宦官が来るまで。
着せてもらえないから…。

いつも、そのまんまいたけどなぁ…?


せっかく珍しく自分で着ても、
昨日は××だから、これを着ろ、といったのに
今日はそっちのです、と二度手間になったり。

何か一つ終ると、脱がされて
こんどはあっちを着ろって…

だから、結局さ、素っ裸でいるのが
一番効率が良かったっていうのもあるかも。

もちろん、オンとオフはきちんと心得てるよ?

身支度をしっかり整えて威厳を保つのも、
義務だからね!」


夕鈴は、子どもの頃放任されたという黎翔のちょっぴり悲しい(?)過去を
聞いてしまってよかったのかどうか…けっこう悩んでしまった。

それで、つい。

「…わたしは、いつでも、陛下の味方ですよ。
一緒にいますからね」
と、
陛下をギュッと抱きしめてつぶやいてしまった。


「わーい。じゃあ、もう、脱いでいーんだねー?^^」

黎翔は即座に脱いで、
フンドシ一丁の陛下にドキドキさせられる夕鈴。

「おひざ抱っこだけは却下です!!」

「どうして? 今のいままで
文句言わずおひざ抱っこされてたのに…?」


こうして、
今日も二人の夜は更けてゆくのであった。





(おしまい)


*

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SSS 狩人ことはじめ

今日は朝一で大事なミーティング
昨日遅く帰ってからの資料作り
終わってほっとしましたです.
さあ、今日もお仕事頑張る。


短いSSSを一つ。
【パロ】【パラレル陛下】【狩人】【血】

流血モノに弱い方は避けていただきますよう
ご注意ください。


* * * * * * *
狩人ことはじめ
* * * * * * *

「…どうして、ヘーカは 狩人なんですか?」

「え?」

「だから、どうして何でも狩ってみえるんでしょう」

「えっ?! 
…みんな、普通に狩らない?」

「狩りませんよ!?」

「ゆーりんは、か弱い女の子だから…
でもきっと、オトコはふつう…」

「オトコも普通はそれほど狩りません!」

「そうなの? …知らなかった…

だって、小さい頃から。

女官や宦官が食べ物を持ってくるまで
お腹がすくから…

それによく盛ってあったし…」

「盛って…?」

「うん。毒とか?」

「毒!?」

「ふつー、入ってるよね?」

「入ってませんよ?! 
毒は。
ふつー。」


さらりと重たい過去の話を聞いてしまい、
ゆうりんは聞いてよかったのかどうか悩んでしまった。

「じゃ、じゃあ。
また。
わたし、頑張ってお料理しますね!」


「うん。ぼく、ゆーりんのご飯、好き!
なんといっても

あったかいし…」


「あったかい…


つかぬことをお伺いしますが。
へーか
獲った食料は
どうやって調理を?」


「え?
ナイフでさっさっさーと捌いて
で、
食べる」

「なま?」

「あー、大丈夫なやつは。
たいていね~

時間があって
火がおこせるときは
あぶるときも、あるよ?」


「な、生で
だ、大丈夫ですか…?」

「うーん。
どれがダメで、どれが大丈夫、とかは
だいたい経験でわかってる。

ときどき消化できないモノ食べちゃうと
ちょーっとお腹ゴロゴロするかな~?

でも
毒入りよりは、マシ」

あははは、と笑う子犬陛下。

(消化できないモノって…なに?
 毒よりマシって…?
 …)

血まみれで肉をすする
もののけ姫ならぬ、もののけ王…

”超肉食・陛下”を
うっかり想像してしまった夕鈴であった。

(あくまで、想像)


ちゃんちゃん。




(おしまい)


*

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SSS アニキとホーホー君

【パラレル】
恋人の日(6)、狩人陛下ワールドに住む几鍔アニキとフクロウ君のその後のショート・ショート・ストーリー。


130707 アニキとホーホー君 M



* * * * * *
アニキとホーホー君
* * * * * *



アニキがフクロウを連れて帰ってきた。

なんだか、結構、気に入ってる…

ホーホー君と、名前をつけた。


「倉庫のネズミが激減した」と
倉庫管理のおやじにも有難がられ、
賢いフクロウはすぐに几家の福の神となった。

今では『ホーホー君』は倉庫になくてはならない存在だ。

アニキ。
こんな仏頂面していながら
かなりの笑顔だと、
誰が理解していることやら…。

好きなら好きって、
素直に顔に出せば、
いいのにさぁ…


(おわり)

SSS 即断即決

すっかり夏に。

宮廷でしっかり着込んでいるあの方たちは…


【パラレル】




* * * * * *
即断即決
* * * * * *


「陛下は、黒っぽい色をいつもお召しですね。
それも重ね着して…。

…暑くないですか?」

「フツーに暑いよ?」

その返事を聞くと、夕鈴は悲しそうに
後ろを振り返った。

(お気の毒に… 
身分の高い人お方は
権威のためには、お身体を犠牲にしても、
身なりを整えていらっしゃるのね…)


夕鈴は、胸の痛む思いがした


「…お身体は、大丈夫ですか?」
と心配そうに、クルリと黎翔の方を振り向くと

…上半身、ハダカ?


「ギャー!? いつの間に?」

「え、脱いでいい、って
言いたかったんじゃないの?」


即断即決
即座にいつでもどこでも脱げる漢(おとこ)、ラ族陛下。


今日も絶好調。



ラ族陛下バンザイ\(^o^)/



(おしまい)


*

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SSSオン-オフ [日記付き]

今日も、なんだかとんでもなく多忙でした。

明日も、今日より多忙になりそうです。


夏休み。

学校、せめて半日で良いから

有料で結構ですから…。

できれば給食付きで
やってくださらないかな…と思うのでありました。

いや、学校の先生も、大変なのですよね。
はい。

すみません。
勝手なお願いを。

---

王の環の番外編も
いよいよ佳境にはいってきて
最後お話をどっちにもってゆこうか…と
いろいろい考えている間に

なんとはなしに書きはじめた
人魚姫シリーズが好調に頭の中を回りはじめ
ほんとうは
書きたくて、
書きたくて、
描きたくて。

でも、時間がない。

人魚姫のほうは、映像で浮かぶシーンが多いので
下手はヘタなりに「画」で表現できれば
それが一番早そうなのですが…

脳内を転写できる機械があればいいなぁ…

ついでに、思ったストーリーが自動的に
ブログ化してくれればいいなぁ…

(なんという手抜き!)

…などなど思う今日この頃です。



人魚姫の後半もスゴいことになりそうです…

突っ走ってよいものか?
いや、
もうパラレルで、ファン多事ーぢゃない ファンタジーだから、
どう転んでも許してくださいませ、ね。

では今日はとりあえず
お風呂入って、
寝たいなぁ…。
とおもいつつ。

明日、明日。




暑いせいでしょうか。

ミョーに陛下が脱ぐのよ…。


もし、タグに【ラ】があったら
付けまくることになりそうです。



「ラ専」の異名がつく前に。


誰か止めてください>□<;;


え? Go! Go! ですか?




【ラ】 ← さっそく、使ってみました。

ただの、陛下と李順さんの情景です。


* * * * * * *
SSS オン-オフ
* * * * * * *


今日も、暑い。

そろそろ、次の予定がはいっている時間。
国王の自室にお迎えに行く。

入り口から中に声をかける。

御簾越しに垣間見える人影から察するに

陛下は自室の机に向かって筆を持ち、
なにやら仕事をこなしているもよう。

(よろしい)と李順は心の中で思う。

拱手し国王陛下の背中から声をかける。


「陛下、お召し替えは、すみましたか?」

「李順。いや…
ああ、もうそんな時間か」

陛下はカタリと筆をおき、
ふぅとため息をひとつ

椅子から立ち上がって御簾をあげ、一歩振り返る。


( … 

お召し替え、以前の問題、でしたね… )


李順は陛下のその姿を見ると、
顔色を変えずに付け加えた。

「陛下…いくら自室でおくつろぎとはいえ…
せめて下帯(ふんどしの上品な表現)をお召しになっては?」

「あれ?
いつ、脱いだっけ?」

「…あれ、じゃありませんよ?」


「ここ(自室)は、私の城だ!
文句をいうのなら、勝手に入ってくるな!」

黎翔はすこし不機嫌になった。


「ここいら一帯、
正直に申し上げれば、まるごと国一つ

全部あなたのもの
ではありますが。

なにとぞ、すっぽんポンは…」


「…まったく

…窮屈なものだ!」


黎翔はぶーと頬を膨らませた。


李順がパチリと指を鳴らすと、
控えていた宦官が部屋にはいり、
黎翔の着替えを手伝う。

次々と衣を重ね、帯を巻き
重厚な衣裳を身に着けてゆく。

「李順。
お前はちと、堅苦しすぎる」

「あなたは、自由すぎますよ?
陛下」


「そうか?
ごくごくフツーだとおもうが…

お前が神経質すぎるのでは?」


(どこが…?!
まったく。

無自覚極まれり、ですね)

李順は、はぁ…とため息をついた。


黎翔の着替えが終わり、宦官が退く。

最後に、懐刀と脇に愛剣を挿す。

「これで、おまえは満足か?」

剣の柄に手をあて、
狼陛下の不敵な笑いを浮かべ
どうだ、とばかりに袖を広げて
李順に見せる。


「結構です。
文句ございません。

…では参りましょう」

李順は恭しく礼をする。

黎翔はまっすぐと表をあげると堂々と一歩を踏み出す。

あくまでもしなやかで、足音も立てず。
ただ衣擦れだけがサラリと室内に風を生む。

李順は無言で
敬愛すべき王の後に従っていった…。


(おしまい)

--------


えーんえーん

ラ族陛下バンザーイ\(ToT)/



*

続きを読む

SSS キンチョーの夏。

おはようございます

今日も一日、頑張る^^



ほんとうにしょうもない超短いの

【駄文失礼】 【あっちの陛下】です。


---
SSS キンチョーの夏。
---

盛夏。
雨上がりに日が照ったせいか
いっきに湿度と気温があがった。



「…蒸し暑いなぁ」

と言いながら
すすっと指を差し込んで

めずらしく
襟元を着崩した陛下

「暑いですね」

近寄ってうちわで扇いで風をおくる


「…あ、もっと

こっちにも

風、送って?」

といって片袖をハラリと脱いだ。


「…きゃっ!」


だだだだだだ


ラ族の夏

白陽の夏 *


いつでも、どこでも
脱ぐ陛下に

キンチョー(緊張)
うさぎ、逃げるの図。


*
キンチョーの蚊取り線香の古いキャッチコピー
「キンチョーの夏 日本の夏」

のパロディ。

---

SSS 暑い

こんにちは。

【パラレル】【ラ】【捏造】【オリキャラ】



* * * * * *
SSS 暑い
* * * * * *

窓を開けると
澄んだ空気が寝苦しかった一晩にヒヤリと涼感を与える。

登り始めた太陽から真っ直な光の束が届き、隅々まで地を覆う。

…強い日差しが眼底を直接射抜かれ、
静麗女官長は眼を細め、顔を手で覆う。

( 夏…は。苦手。)

女官長はすぐさま巻簾を下ろし
涼やかに揺れる布幕を整える。


背後から、声がする。


「女官長さま。…陛下がまだ。

…いかがいたしましょう?」

「お声はかけず、そのままに。
…いつご下命を拝してもよいよう
我々は朝のお支度を」

主上が珍しく朝まで
お二人でお過ごしになっていることに
仕える女官たちがソワソワしている。


隔てたご寝所の方からガタガタっと音がする。

( ……また。あの方は )

表情を変えずに、
女官たちには動かぬよう申し伝える。

「お前たちは、ここに」

「はい」


* * * * * *

待機まもなく、涼やかな男性の声がかかる。

「…誰か!」

「はい、ただいま」

次の間の扉をあけ、そっと室内の端に入り、跪拝する。


寝台から離れ、室内を大股で歩いていた主上が
私を見てホッとしたように声をかけた。

「…ああ、女官長。」

すっと、指を指す。

垂れ幕を閉じた寝台の方中から
くぐもったお妃さまの「うきゃー」とか「あわわ…」とか不可思議な声が聞こえる。

(……)
主上は、昔のようにお茶目な表情を一瞬見せると
またフイといつもの陛下のお顔に戻った。

私は、微笑み、ちいさく主上に頷き返す。

「…畏まりました」

「…妃を頼む」

そういうと、マッパの主上は、
長椅子に掛けてあった夜着を手に取り、
すっと肩に載せた。

「…お手伝いいたします」

「たのむ」

テキパキと着つけを済ませ

「朝餉はいかがいたしましょう?
すぐご用意できますが」

「…では。
妃の支度が済むまで
テラスで待つ」


(さて、今度は…)

「…お妃さま、おはようございます」

寝台の外から小さく声をかける。

「女官長さんっ!?」


「…はい、おはようございます
今日も良いお天気ですよ?

…朝のお支度を?」


「…」
寝台の幕をそろそろと開ける。

中で真っ赤なお顔をされた夕鈴様が
憤懣やる方ない表情で身体をおこして
敷布を身体に巻き付けていらした。


「へ、へんなこと聞きますけど…

…へ、…陛下は
何時いらしたか……?

女官長さんは
ご存知ですか?」

(ふふ…)

内心、うっかり笑いそうになるが
事務的な表情を崩さずに
普段通りの声でお答えした。

「未明…ごろ、でしょうか?」


「…な、何か…
へんなこと…?」


「…え?」

「いえっ、いえいえ、すみませんっ!!
変な質問しました!
忘れてくださいっ!!」

(わ、私は、仮にもお妃さまなんだから。
ふーふ役なんだからっ
そーいうことを女官の皆様に聞くのは
とっても変、よね?!?)

---

夕鈴さまはすぐにお顔に出る。
隠しごとができない誠実なお方。

慌てて打ち消す仕草にも心の葛藤が現れて

…ああ。
なんて、可愛らしい。

本当は、お伝えしたい。
『私は何もかも存じております』と。

『私は王家に、現世の国王唯お一人に仕える隠密です』と。

しかし、万が一のその時のため
誰にも知られず草として長年潜伏するのが私の役割。
その秘密を知るのは、主上と、浩大のみ。
決して知られるわけには、参りません。


…知らない、ふり。
それが最大限の真心です

---

「はい。
わたくしは何も聞いておりません
…ご安心ください」

私は極力事務的にお返事した。

「…この時期は大変暑いですから…
ついつい薄着になるものでしょう」


さりげなくフォロー。

( …薄着? )

夕鈴様は、不思議な表情をされたが
納得しかねないものを無理やり呑みこむように納得しようと
努力されている風情だった。


緊張の糸がほぐれたのか
プシュー…と空気がぬけるように
夕鈴さまは脱力され…

みるみるまに小さくなった。


「…起きます。
お支度、宜しくお願いいたします」

「はい。おまかせくださいませ」

手を叩き、女官ら合図を送り
お妃さまの朝の支度を急がせた。


* * * * * *

テラスの椅子に座り
お庭をご覧になりながらお妃さまを待つ陛下

「静麗女官長。

…夕鈴、は
―――落ち着いたか?」

と悪びれもせず。


( …
夜中、知らないうちに
真っ裸の男性が寝台にもぐりこんでたら
それは普通に
目が覚めたら驚くでしょう…。)


「…暑い時期ですから。」

「ああ、今日も暑くなりそうだ」


あの方はすがすがしく、
笑った。



* * * * * *

ラ族陛下は今日も脱ぐ。
ゆけゆけ陛下。


ラ族陛下万歳\(^o^)/


(おしまい)

*


「もうちょっと押して」の期待をよそに
すがすがしく「脱ぐだけ」の陛下。

なんでしょ。


*

SSS 狩人陛下@着衣 一本目

残暑はつづくよ、どこまでも。
みなさまお暑いなか、お元気でお過ごしですか?

車に乗ると平気で「38°」とか温度表示がでています。

…なので「32°」位だと、
「あれ、涼しい… 
クーラーいらないじゃない?」
とか
一瞬思ってしまったりしますね。
だいぶ肉体改造されてしまったようです。


お盆帰省の疲れか
なぜか周囲で調子を崩している方が多いです。

かくなる私もここ数日頭痛気味。
次女も、末息子も、なんとなくお腹が痛いとか
声がかすれてたり…。

それはさておき、どうかみなさまは
お身体ご自愛くださいませね。




では、短いですが
どうぞ。


-----------
SSS 狩人陛下@着衣 一本目
-----------


すうっと汗が冷えて
プルリと震えた。

「…どうした?
寒い?」


「え? まさか。
この暑い盛りに…」

…クチンッ!

小さなクシャミ。


「…あら?」
口元を手布で押さえた夕鈴

 もしかして、夏風邪?
…もしそうだったら
 陛下にうつしちゃっう?…
 大変!?

とっさに頭の中に廻ったのは、
自分のことより陛下の体調だった。


夕鈴はあわてて陛下の胸をおして
遠ざけ、その膝の上からスルリと降りようとした。


その途端、兎は後足を
ガッシリと掴まれた。

「うぎゃっ!?」


中途半端な体制から動こうとしたところ
足を引っ張られて空中姿勢を崩した夕鈴。

顔面まっ逆さま
床に倒れる~~!?


と思ったとたん

「…危ない!」

夕鈴のフィッシュダイブを目の当たりにした黎翔は
本能的に腕を伸ばす…

すなわち、
川を遡上するシャケを捕獲するクマのように
両手で獲物を捕らえたのであった。


ビチビチ生きの良い獲物が腕の中で跳ねる


別に何をどうしようという思惑もなかったのに…

陥ったシチュに、急激に狩人の血が騒ぎ
手が離せない。


「…どうしよう。ゆーりん」
なぜか赤面する黎翔。


「へ、へ、へいかっ!
は、離してくださいっ!?」

夕鈴はパニックで激しく抗う。


「今離すほうが、アブナイでしょ?」


--- うん。
これは不可抗力。
仕方ないよね?


黎翔は一人納得しながら、

本日一本目の獲物をお持ち帰りした。



ちゃんちゃん。



二本目があるのでしょうか…? ←


*

アニキとホーホー君・続

2013年8月30日 15:00前後、88888アクセスをお迎えいたしました。
ありがとうございます。


【捏造】【オリキャラ】


だいぶ前にかいた、ラ族狩人陛下の世界に住んでいる
兄貴、青慎、ホーホー君(オリキャラ)とその子供たちの短い続編です。

参考:SSS アニキとホーホー君( http://olyza3.blog.fc2.com/blog-entry-133.html )



* * * * * *
SSS アニキとホーホー君・続
* * * * * *



「よう、青慎。」

往来で背中から声をかけられた青慎は振り返った。

貴重な書物を大事そうにかかえている青慎は
学問所からの帰りだろうか。

「…あれ?几鍔さん…」

青慎は、眼をごしごしとこすり、几鍔をぽかんと見つめた。

「…こんにちは! お元気ですか?」

「おう!」

往来はざわざわと活気にみちている。
青慎はトコトコと小走りに几鍔の方へ近寄った。

「…?」

几鍔はいぶかしげに様子を伺う、上目遣いの青慎の視線に気が付いた。

「なんだ? 青慎」

「その…肩と、頭にとまってるの…」

「ああ…これか。

(…とおもむろに頭にとまった
羽毛姿の子フクロウを手に止まらせる)

実は、李翔のヤローに押し付けられた
ホーホー君のやつが。

ある日卵産んで…」

「え?」

「あいつ、ホーホー君とか名前つけてやったけど

メスだったんだな!?

…それで、ヒナがかえって。
生まれて最初は、ホーホー君の奴も真面目に餌やってたんだが

商店の納屋でピーピーとチビどもが泣きやまねえから…
何事かと思えば…

ホーホーの奴、急に姿くらまして…ここ1週間、帰って来ねえ。

仕方がねぇから、
このチビさの里親替わりよ。」

「え?ホーホー君…大丈夫かなぁ
事故とかじゃなきゃいいけど…」

「さあな。
そのうち帰ってくるだろ?」

…と言いながら、腰に下げていた袋から
ヒョイと指でつまみだして、
パクリと子フクロウに食べさせる」

「…今の、何ですか?」


食べた子フクロウが糞をするまで
丁寧に様子をみて、始末をする。

「んー? これ?
スペシャルフードさ。

本当は、ネズミとか生がいいんだろーが。
おれの仕事の間も面倒見ねーといけねーから
ま、いろいろ、食うモン工夫してるとこだ」

どうやら、子フクロウの健康を考えて
几鍔なりにいろいろ栄養バランスを考えている模様。

「ところでさ、てめーの姉貴、
最近帰って来てるか?」

「それが…なんだか忙しそうで。
手紙はやりとりしてるんですけど」


「フン…相変わらず。
まったくあいつ何やってんだか…」

ブツブツいいながら几鍔は
エサを食べ終わった子フクロウを頭の上に戻し
今度は肩に留まっていたフクロウに
さあ、お前の番だ、と話しかけながら、エサをやる。

「あ、じゃあ、几鍔さん。
ぼく、ここで」

汀家のある方角と分かれる四辻で、几鍔と青慎は分かれた。


「…あいかわらず、几鍔さんって面倒見がいいや…」

青慎は感心した。


几鍔は子フクロウたちを撫でながら

「まったく、はねっかえりの女どもってぇのは
手におえんなぁ…。


何しでかすか、
ちっともわかんねー。

…お前らの母ちゃんも
はやく元気で早く帰ってくるといなあ…」

子フクロウは、几鍔の大きな手にワシャワシャされて
眼を細めた。



(おしまい)

SSS 寒さと風当たり

更新が遅れておりすみません

お仕事で身柄を拘束されてて、自由の身になるまで妄想活動を禁じられております(?)

青の庭の最終回がすすまないので一応言い訳、なのかしら。

寒くなってきました。
お喉がいがらっぽいです。
皆様もお腹にはしっかり巻いて
ぐっすりお休みくださいませ^^





* * * * * * * * * *
SSS 寒さと風当たり
* * * * * * * * * *



「おはよう」

いつになく低いガラガラした陛下のお声に驚く。



「…へ、陛下っ!?

なっなんですかっその、お声はっ!!」




「えー?そんなにヘン?」


「酷いですっ!! 大変です!」


「…あはは、寝冷えしちゃったかなあ…?」


「それは大変っ!!
上着をもう一枚お羽織ください!!
万が一、本格的なお風邪を召されたらどうします!?」

手近いあるものをぎゅうぎゅうと巻き付ける。

額に手をあてて熱は、とはかる。

『手より、こっちのほうが分かりやすいよ」とおでこコッツンされる。


ついでに、どさくさに紛れて

「これもいいけど…君の方があったかい…」と抱きしめられる。


真っ赤になって…でも陛下のため、と我慢して。

「熱はまだあまり出てませんけど…
とにかく酷い声です。
大根の汁をすったのを飲んだらどうかしら…

それより、はちみつを?

でも…それよりなにより。

何か原因は思い当りませんか?」


と、よくよく話を伺ってみると

「えー? 普段と変わらずいつも通りにしていたのに…」
と、とおっしゃる。


「…へーか?

普段と変わらず、というのは、もしや…

なにもお召になっていらっしゃらない…?(ラ族)」


「え?―――だめなの?」



「大切なお身体ですから、きっちり暖かくしてお休みください~!!!」


「じゃあ。

…一緒に寝て、温めてくれる?」



「!!!!!!!! …!!!!

へ、

陛下の…


ばかぁ~!!!!」


せっかく抱きしめていたのに、
暴れたウサギは軽くキックを喰らわせて逃げ出した。





…ふう。



ラ族への風当たりは、寒くて、厳しい…。






(おしまい)


当初、SSSのカテゴリーに入れようかと思いましたが、

あ、これは?


ラ族陛下シリーズに収納します。




*

ラ族陛下の秋。≪絵≫

前回(SSS寒さと風当たり)体調管理上の問題点を夕鈴に指摘された陛下は、
きちんと上かけ布をかぶって寝ることになさったとか。

131004-heika nesugata-M

「きちんと被っている」かどうかは、
主観の違いによって異なるのであろう。



*


ラ族陛下のハロウィン前夜

【捏造】【ラ族狩人】

* * * * * * * * * * * * * * * *
ラ族陛下のハロウィン前夜
* * * * * * * * * * * * * * * *


「…えっと
『御馳走してくれないと、イタズラするぞ』…?

なに、それ?」


いつものようにゆったりとした部屋着をお召しになって、長椅子でくつろいでいらした陛下が身を乗り出した。


「紅珠が…」と私は話し始めた。


「…外国で行われている秋の行事だ、と教えてくれました。
もともとは収穫祝い悪霊などを追い出す宗教的な意味合もあるそうです。

今では仮装した子供たちが『トリック オア トリート!』と言いながら、あちこち回ってお菓子をおねだりする楽しい行事、っていう感じらしいですね。

それで、明日の夕方
紅珠が上流貴族のご夫人や御令嬢がたと、孤児院を回って手作りのお菓子や御馳走を振るまう、ちょっとしたイベントをするんだそうです。

『お妃様もいかがでしょうか』と誘われてしまって…。

『たとえ非公式でも、お妃様がおいでになれば、きっと子供たち大喜びですわよ』ですって。」


「――え?夕鈴、何か作って持って行くの?」

陛下は前のめりになって、私の肩に両手を置いた。


不意に肩を抱かれて、やっぱりダメなのかしら…とおもったけれど。

楽しそうなイベントだし、なにより孤児院の子供たちに喜んでもらえるなら、何かできたらな、と思っていたから、ちょっと上目づかいに陛下にお願いしてみた。

「あの…ダメですか?
最低一人一種類ずつ、手作りのお菓子や食べ物を持ち寄ることになってるらしいので…
ちょっとだけでも、お役に立てればと思うのですけど…」


「うーん。
君が行きたいなら、いいけど…。
…手づくりって、何を持ってくつもりなの?」


「陛下は。
どんなものが良いと思います?」

「大勢に配るんでしょ?」

「はい」

「じゃあ、ちいさくって、可愛いお菓子がいいな…ぼく。」

「はい?…あの、陛下じゃなくって」

「うん? …ああ。もちろん。子供たちに、だよね?
ゆーりんの手づくりだったら、なんでも喜ぶと思うよ?」

「…分かっていらっしゃいます、よね?」

陛下はニコニコしながら、うん、うんと相づちを打ってる。

…本当に、分かっていらっしゃるのかしら…。
私は思わず不審げに見つめてしまった。


「うん!
で…何作るの?」

「そうですね…配りやすい形状ということで…あんまりポロポロしたりベタベタしたりしないのが良いと思いまして。可愛い小さめのチマキとか、どうでしょう?
冷えてもおいしい甘いお饅頭もいいですね…。形つくっても可愛らしいし。
個人的にはお餅もいいなぁと思います。」

「えー? せっかくゆうりんが作った食べ物を
みんなに配っちゃうの?」

「ええと? 
…だから。
配るためにつくるんですよ、陛下ぁ?」

「そうかぁ…配っちゃうんだ…。
残念だなぁ…。

…ねえ!

じゃあ。
どんなお菓子にするか、さっそくつくってみて?
手を動かした方が、良いアイデアもわくんじゃない?」

そういって、強引に厨房へ連れてゆかれた。


「今日はどんなお菓子にするか試作品を作るだけだし。
夕鈴の好きなように作って。ね?」


…ええと。

なぜ、陛下。上着を御脱ぎに?


「え?

―――でも。ほら。お餅つくときは汗かくデシょ?
女の子のゆうりんに杵は重いよ?
力仕事は男の仕事」

いそいそと身に付けていた衣類を脱ぎ、ふんどし一丁になる陛下。


ギャー――― 脱いだ―――っ!!!!

どうして陛下ったら、こんなに簡単に脱いじゃうの?

…いっいっ、いくら慣れたっていっても
こっちは目のやり場に困るんですけどぉっ!!!


「陛下っ!!
お、お、…お餅はそんなに簡単じゃないんです!

本当に準備が大変なんですっ!

私のところでは、前の日からお米を水に浸して
翌日、男衆さん女衆さん集まって、総出で蒸して、つくんです。

杵も、臼も、出してきていただかなければなりませんし…
それぞれ手入れや準備にとっても時間がかかるから
今日はやめにしておきます~~!!

明日本番の準備は、みなさんにもお願いしようと思います。
人手が要りますから
料理人さんたちに手伝ってもらいますね。

陛下の杵つきだなんて…それこそ配れませんっ!!」


「えー? せっかくやる気になったのに…」

ブツブツ残念そうにあたりを見回す。

一向に服を身に付ける気配もなく、チマキに使うもち米を洗う私の後ろでウロウロする。


どうしてっ!!

広い厨房に、ほぼ全裸の大きな図体した男がウロウロしてるんですか…!?


「おてつだい…

したいなぁ…ぼく?」


…はいはい、分かりました。

この時点で、たぶん、私は負けたと思う。


「今日はお饅頭と、チマキの試作をしますね」

陛下はコックリとうなづいた。


えーと。一番弊害の少ないのは…

「陛下は、じゃあ!
チマキ用の竹の皮を水に浸して、柔らかくなるまで、みていてください!
頼みましたよ?」


「はーい!」

陛下はうれしそうにいそいそとカリカリに乾いた竹の皮を、タライの水にひたしてみた。

つん、つん、する。

思ったほど、柔らかくならないなぁ…

水の中でもみもみしてみる。

…パリっと皮が裂けてしまった。


「ゆーりん!ぼく、新鮮な竹の皮と、具を獲ってくる!」

「…って、ちょ、陛下、どちらへ?!」

弓矢を手に、腰に短刀をさげたフンドシ一丁の陛下が、厨房の裏木戸をあけ、寒空に飛び出そうとしていた。

裸足じゃないですかっ!?

「へーきへーき。
チマキって、シシ肉とか、鶏肉とか、木の実とか入ってるやつ、でしょ?」

「はい…でも、今日は試作ですし?
そっ…それに!
料理長さんが『厨房の食材倉庫のものはなんでも使っていい』って!!」

「うん!
わかった!
ちゃんと夕鈴の試作品ができるよう、ぼく、協力するね?
安心して~」


だから、陛下。
文脈がつながっていませんっ!

安心って…王宮でいきなり狩りですか~!?


ほんとうにあっというまに、陛下は帰ってきた。
ウズラ3羽と、小ぶりのメス猪1頭。

なぜ王宮で?と深く考えてはいけない。

とにかく、陛下は獲物を担いで、いそいそと帰ってきた。


まーっ、すごいですね

さすが、陛下です

立派な獲物を、ありがとうございました


この頃は、陛下のこういう性癖にもずいぶん慣れてきて、いちいち獲物をみせたりするのも『褒めてほしいから』と分かってきたので、ずいぶん大げさに褒めたたえた。


「竹の皮も採ってきたよ?
すぐ使えるよ?」

…はいはい、分かりましたから…

採集もしてきてくださったんですね?
有難いことです。


ささ、陛下。
もう、何もしなくて結構ですから!

お茶でも飲んで座っていてくださいっ!!


「解体は外でやってもらっちゃおうね
匂いもするし。
血抜きとか、夕鈴は、あんまし見たくないでしょ?」


そうですね…できればそうしていただければ…。


四半刻ほどで、綺麗なお肉になって盆に盛られて届いた。


そうしている間にも、蒸し器から湯気が上がって甘い匂いが漂い始めた。


そろそろ…

「わぁ…甘い匂い」

「簡単な、あんこのお饅頭です。

食紅でちょんちょん目をつけて。
耳がついたらうさぎさんですよ。

どうです? 可愛いでしょ?」


「わー!うさぎさんのお饅頭!
ねっ!
食べていい?
食べていい??」

「どうぞどうぞ。
お召し上がりください…

…(ダメと言っても、どうせ食べますよね?)」


「…あれ?それ、どうするの…?」

「あ、せっかく試作をつくるのなら
少し取り分けて、
李順さんにも試食してもらおうかと」

まだアツアツだから、籠にいれて
あとで持っていけば…

と、厨房の机に取り分けた籠を置いておいたら…


…トスっ

 と軽い音がして、

籠に何かが刺さっている。


ハッ!? と振り向くと

陛下が小ぶりの弓を構えていて
いままさに射ったばかりの弦がビイイインと振動していた。


「あ♪ 当たった♪

…それ、ぼくの獲物ね?」


「陛下っ!!!
危ないですので、室内では弓を射ってはいけませんっ!!!」


もうっ!
せっかく李順さんにおすそわけしようと思ったのにっ!!

陛下ったら、今日作るお菓子、
全部ひとり占めする気なんじゃないかしら?


あっというまにあらかた、出来上がったお饅頭は陛下のお腹に収まってしまって…。
私は軽い頭痛とめまいを覚えた。


―――気を取り直しましょう。

「さ、さあっ!

次は、チマキを作りますよ?
もち米も水を吸ったようですし。

具の準備もOKです。


あとはお米と具を竹の皮につめて、結んで、蒸すだけ…」

「へぇ、夕鈴手際いいね?」

「青慎が好きで…お祝いのときにいつも作ってたんです。
もち米とか高いし、それほど豪華な具は入れられませんけど…ね」

「ふぅん。
そうなんだ。
じゃあ、今日は代わりにぼくがいっぱい食べてあげるね?」

ええと
誰が
誰の代わりに…

なんで?


もう考えるだけ馬鹿らしくなってきたので、
どうせ今日のお料理は
『試作品づくり』という名の『陛下の食卓』だとあきらめて。

「では、あとは蒸しあがりまで、楽しみにお待ちください^^」

やることがなくなってしまって、静かな空気が戻ってきた。

私は厨房の片づけをはじめなきゃ。

「陛下の獲物」の余ったお肉は、食品貯蔵庫へ入れて貰って明日の本番にそなえましょう。

それから、使った調理器具を洗って…

汚れた調理場を清掃しなきゃ…!

タワシを持ち上げたとき

ふいに、手首を捕えられた。


「トリック オア トリート!!」


「…へ?」

「だから。
トリック オア トリート!


御馳走してくれなきゃ、いたずらするよ?」



「え?
え?

え??

ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいっ?!
だって、いま、チマキ蒸し上がるの待ってるところですよ?
まだ美味しくないですよ?」


「だから。今。―――頂戴」

「さっき、お腹いっぱい、お饅頭、食べたでしょ?」

「うん。でもいま
トリック オア トリート
したいんだ、ぼく」

「ハロウィンの本番は明日ですよ?」

「ぼくは、今したいの。
ね。

…ご馳走くれないなら…

君をぼくのご馳走にしちゃうよ…?」


赤い眼がキランと怪しげに輝いて…。


「っうっ! きゃーーーっ!!

 や、やめてくださぁあああ~~~いっ!! …」



じたばたしたけど… さすが。

ラ族陛下は、だてに狩人じゃなかったんです…


くすん。





(おしまい)

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黒猫

* * * * *
黒猫
* * * * *


…みゃあ みゃあ とかすかな声が聞こえてきた。

――子猫?

テラスから庭に出て、あたりを見回したが、声が小さすぎてどこから聞こえてきているのかがよくわからない。

部屋の中に入ると、庭にいた時よりは少し大きい声のような、気がする。

『床下かしら…?
王宮の床下なんて。
どこから入り込んだの?』

聞こえてくる方角に向かって祈るように
『迷子になって、出られなくなってるの?
はやく出ていらっしゃい?』
と、心の中で願ってはみるのだが、いつまでたっても鳴き声は続く。

「どこに居るのかすらよく分からないのに…
どうやって助けたらよいのかしら…」

それ以上は、どうしようもないと夕鈴は手をこまねいた。


こんなとき、浩大が顔を出してくれたら…と思いつく。

饅頭をこれ見よがしに盛り付け、窓際の机に置いて、窓からチラチラと外をうかがうが、こういうときに限って彼は現れない。


早朝から聞こえた鳴き声は、お昼過ぎになっても続いた。


断続的に届く、その切ない微かな鳴き声が、次第に疲れ、掠れていくことを、夕鈴はひどく憂慮した。

もう、半日…。

夕鈴はついに机の上の鈴を手にした。

本当は、人を煩わせたくなかったのだけれど…。

チリン…と鈴を鳴らすと、奥からハイと声が返る。

「夕鈴さま、お呼びですか?」

「あら?…女官長さんは」

ニッコリと微笑んだその人は、いつも女官長さんの脇で控えている上席女官さんだった。

ああ、そういえば。
「明日はわたくし、所用があり他出いたし、お傍を離れますが何卒お許しください」と女官長さんの言葉を思いだし、あらためて女官さんに向かって尋ねた。

「あの。猫の声が」

古株の女官さんは少し困った顔で頭を伏せた。

「…お気に触りましたでしょうか!!
大変申し訳ございませんっ!

…朝から人をやって、声の主を探させているのですが」

「あ、いえ。
気に障るというより…
可哀想で気になって。

―――そうなんですか。
探してくださっていたんですね」

「床下も覗かせましたが見つかりません。
どうやらお妃さまのお部屋の近くから聞こえるようなのですが
『お妃さまのお気に触らぬよう静かに、遠巻きに』と指示していたこともあり
どうにもハッキリとは居場所が分からないと」

「それでは、しかたありませんねぇ…」と夕鈴はふぅっとため息をついた。

そのとき
シャリン…と微かな先ぶれの鈴の音がして振りかえると
陛下がそこに。


「どうした?」
あの方は厳しい瞳で、何事かと女官の方へ低い声で尋ねた。

「申し訳ございません!」

「陛下。猫の子が迷い込んだようなのです。
朝から声が聞こえますが、
どこに居るのかも分からず助けてやることができません。

ずっと鳴きどおしで
少しずつ弱っているのか、
声が掠れてきて…。

心配していたのです」

「妃の居る後宮に、猫の子が紛れ込む…?
なんという不手際を」

ジロリと睨まれ女官長代理の女官さんは肝を冷やした。

『たまたま今日、女官長代理を務めることになったに…
ほんとうについていない…』と、生きた心地がしない。

「ならば、私が探そう」

と、突然上着をはだけ諸肌になった。


いきなり、脱いだ~~~っ!!

 きゃー 狩人モード全快のまなざしっ!!


夕鈴は慌てた。

「へ、陛下~~っ!

猫は美味しくありませんよっ?!
獲物ではありませんからね~~っ!!!
絶対、殺してはなりませんからっ!!」

「…ならば、
生け捕りならよかろう?」

赤い目を光らせ、ニヤリ、と笑う。

どうにも狩人の血がうずくらしい。


彼の御方は、目をつぶり耳を澄ますと、フムとあたりを見回し
そろそろと夕鈴の私室の居間と寝室を隔てる壁に近づく。
壁に耳をあて暫く音を聞いていたかと思うと、コツコツとノックするように丹念に壁や周辺の床をあちこち叩いてみる。

黎翔は手ごたえを確認すると「斧を」と声をかけた。

「…お、おのっ?!」

夕鈴は両手を拝むように握りしめ、眼をみはった。


女官長代理は冷静に「は」と小さく返事をすると、
すぐさま手に斧を持った宦官を連れて戻ってきた。


「どのように?」と宦官が斧を構える。


「…いや、私がやる」

黎翔は、宦官が奉げ持った斧を右手で掴みあげた。

軽く2、3度ふるい重さを確かめると
彼の御方は流麗な装飾が施された壁に向かい
軽々と振り上げると躊躇もなくバン!と斧を打ちおろした。


2度、3度振りおろし、メキメキ、バキバキと大きな音が鳴り響く。

その間夕鈴は両手で耳をふさぎ、驚きで飛び出しそうな眼をひんむいてその姿をみつめていた。


黎翔は端板をバリバリと手でめくると長い腕を穴の中へ突っ込む

どうやら、増築のときに壁と壁の間に、雨どいのような細い隙間があり、
そこに迷い込んでいたらしい。

増改築を繰り返した広大で複雑な後宮のつくりの細部は、今や誰も把握していない。


彼の御方は手が届かないと、メリメリと装飾を施した美しい壁を容赦なく引っぺがす。


『…ああ、この修理代。いくらになるのかしら…?

 もしかして、…もしかしなくても

 私の借金に、加算ってことに???』


と深いため息をついたとき、夕鈴の眼に、壁の穴に肩や頭まで突っ込んでいる、黎翔の逞しい背中が目に入った。

「ああっ!
そこ、ささくれだってますよっ!?

陛下ったら、ハダカに、素手でっ…
危ないじゃないですかっ!!

…木片のトゲは鋭いですから、お気をつけてくださいっ!!」

と言っている間にも、黎翔はヒョイと黒い何かをつまみあげて意気揚々と笑った。



「妃の部屋へ忍び込む不埒者を捕えたぞ!」

得意満面の笑顔を夕鈴に振りまく。

「ああ、よかった!
陛下も、猫さんも、ご無事で!」


黎翔は、
(私の獲物ゲットより、
この猫の心配をしていたのか?)と、一瞬ムッとした。


振り向きもせず斧を宦官に差し出す。

恭しく斧を奉げ持ち、宦官が部屋を引きさがると
黎翔は黒い子猫の首筋をつまみあげたまま、スタスタ歩きだした。


「あっ!

どこへっ!?

…見せてください!!」


夕鈴は、思わず背中に飛び付いた。

「…つっ!」

うっすらと汗をかいた黎翔の地肌の弾力を感じ、夕鈴は電撃が走ったように手を引いてあとじさった。


(~~っ!!!
うっかりハダカのへーかに、抱きついちゃった~~!!)

黎翔は真っ赤になって、固まった。

黎翔は両手を宙に浮かせている夕鈴を振り返ると

「…なにもそのように…」

と、軽いため息をつきながら
猫をつまみあげているのと反対の腕を素早く夕鈴の腰にまわした。

「…見たいか?」

ニヤと笑う。

上半身ハダカの黎翔に腰を引き寄せられた夕鈴はたまらず、両手で顔を覆った。

「いえっ、いえっ!?
いいえっ! 断じて陛下のハダカを…じゃなくってっ!!
あっ、はいっ!!
ねっ猫っ!
猫が見たいですっ!!!」


「…ん?
私の身体ならば、どことなりと。
すみずみまでも。
いつでも見ているではないか…
そのように照れることはないぞ?」

…と、顔を傾け夕鈴の首筋に唇を寄せると、
妃の愛らしい耳に低い声でヒソとつぶやいた。

夕鈴は…わなわなとふるえ

「ね、猫ですっ!!」

と怒ったような声で言うので精いっぱいだった。
黎翔は、わななく妃の朱に染まった耳たぶを鼻先でもてあそぶように、美しい顔をすりつけた。

「…何だ。
賊の…命乞いか?」

「ですからっ!! ―― 賊ではありませんっ!!
可哀想な迷子の子猫ではありませんかっ!?」

黎翔は夕鈴が必死に伸ばす腕を封じ込めスルリと身体をかわし、つまみあげた黒猫をブラブラと妃の眼の前で振り子のようにもてあそぶ。

「…陛下ぁっ!」

そろそろ本気で怒りそうだな…と気配を感じ、黎翔は仕方なく黒い毛玉を夕鈴の手のひらに載せた。

「…仕方がない。
私の獲物なのだが」

黎翔は残念そうにドサリと長椅子に腰かけた。


夕鈴は黎翔の膝の上に拘束されたままだったが、
黎翔が猫を素直に渡してくれたのが嬉しくて掌の黒い毛皮をそっと両手で包み、見つめていた。


なでなですると黒い毛の塊は、大きな耳をもたげて「ミィ!」と鳴いた。

「…か、可愛いですね!
あでも、一日鳴いていたから…お腹がすいたかもしれません
何か与えても、よいですか?」


とにかくこの猫の腹を満たしてやりたい思いで一杯にだった夕鈴は上目づかいで、国王陛下にお伺いをたてた。

夕鈴が夢中になっている姿をじっとみつめていた黎翔は

「…その願いをかなえたら、
私の願いも叶えてくれるのか?」

「はいっ!
私に出来ることでしたら
なんでも」
夕鈴は無邪気に答えた。

「――本当に?」

「はい!」
胸を叩いて太鼓判を押した夕鈴に

「…では。
妃の部屋の壁の修繕が終わるまで、しばらく。
私の部屋で、毎晩。
眠りつくまでずっと
その猫のように、私を撫でていてくれるか?」とつぶやいた。





―――― もちろん。
その後、後宮の妃の部屋の壁の修繕は…

念入りに念入りに、
日数をかけて行われたことは云うまでもない。



(おしまい)

*


---いまごろ、タグをだしますよ。

はい。

【ラ族狩人】


今回は、狼のまま狩人モードスイッチが入ったラ族陛下をお送りしました。


合言葉は、狩人な「ラ族陛下バンザイ\(^o^)/」

ラ族な陛下とみんなで焚き火。(前編)

オフ本の原稿がようやくアップしてやれやれ
まだ少々余波を引きずっております。

書きおろしが甘美な闇のお話で憑りつかれてしまいました

脱却のために少々崩壊気味の楽しいお話…ということで。


【ラ族狩人】【オリキャラ】【なんでもあり】【笑】

細かいこと抜き
それでもお許しいただけるのなら。


* * * * * * * * *
ラ族な陛下とみんなで焚き火。(前編)
* * * * * * * * *


いつものように夜。
後宮を訪れた黎翔と双六をしていた夕鈴は、
ポン、と思い出したように手を打った。

「…あ。へーか!
焚き火の許可をいただけますか?」

「───え?」
何のことだろうと、黎翔は見つめていた双六の盤面から顔をあげ、怪訝そうに夕鈴を見つめた。

「えっと。後宮のお庭はいつも掃き清められて、
落ち葉一つ落ちてないなぁと思って、お散歩の時に庭師さんの小屋の方に行ってみたんです。
そしたら…!!落ち葉が山のように積み重なってて!!
もう、すっごいんです! ふっかふかの落ち葉が、こーんな。山みたいに集められていて。
これなら、青慎の大好きな焼き芋ができそうだなぁ…って思って。
えーと。
それで。
───つまり。

落ち葉焚きがしたいんです!」

「───ああ…!」
今度は黎翔がポンと手を打った。

「落ち葉で焚き火かぁ。
それで、焼き芋…?
焼き芋というものを、私は食べたことないなぁ」

「生のお芋を埋めて焼くんです。
ほっくほくで美味しいですよ~」

「ゆーりんも好きなんだ」

「はいっ!! それはもう!
きっと陛下もお気に召すと思います」

「じゃあ…。うーん。でも
後宮の庭とはいえ、火を使うとなると。
───火は怖いからね。
一応、管理方を通さないといけないかなぁ…。
李順に話してから、になるけど。いい?」

「───李順さん、ですか?
怒られませんか?」

「あー…」

二人はショボンとした。

「…じゃあ。」

「はい」

「───紅葉狩りに行こうか?」

「紅葉狩り、ですか?」

「そう。山に行って。紅葉を楽しんで。
ついでの外で焚き火をして。
いろいろ焚き火で焼いたりするっていうのは。
焼き芋も美味しそうだし…。
ついでにお肉とかも焼いて、バーベキューとか、どう?」

「え?! 
私のささやかな焚き火欲を満たすためだけに、そのような大げさなお話しにしていただくことはないんですが…」

「でも楽しいよ? …じゃあ、決まり!」

黎翔が嬉しそうに小指をさし出した。

「約束。今度一緒に焚き火をしよう」

夕鈴は思わずその指に小指を絡め、指切りをした。

「…連れて行って下さるんですね?」

「うん!」
夕鈴がキラキラ瞳を輝かせ頬を染め嬉しそうに乗り出す様子をニコニコ見守りながら、黎翔は約束をした。

* * * * * * * * *

勝手に抜け出すわけにもいかないと考えた黎翔は、さっそく李順に話を通すことにした。

「───狩り?
お二人で?」
李順は眼を丸くした。

「いや、紅葉狩りだ」

「それは風雅ですねぇ。」

「落ち葉を焚いて、焼き芋や、バーベキューを楽しむんだ」

「それは風雅というより…
───、いま、なんと?
…バーベキュー?」

李順がピクリと反応した。

「うん。ゆーりんがお芋を焼きたいって」

「バーベキュー…とは…。
それは聞き捨てなりません!!」

「…え?」

「陛下っ!」
李順が語気を荒げた。

「何だ、李順」
黎翔は李順の何か地雷を踏んでしまったのか、と面倒くさそうな表情で見返した。

「バーベキューにおける有段者の私を差し置いて、お二人で!?」

「…なに?」

「ですから。私はバーベキュー道の有段者なのですよ? ───こう見えても。
まだ始まったばかりの検定ですから、一段が最高段位なのですが。
実力的には国の中でも指折りと自負しております。
…ついでに申し上げれば『鍋奉行検定』も三段の腕前です!!」

…おい。李順が眼をキラキラさせている?
少し気持ち悪い。

「なるほど?…それで」

「となれば、わたくしもご同行し
正しい『バーベキュー道』を夕鈴殿に対し妃教育の一環として、実地訓練でお手ほどきをいたしましょう!」

「…いや、彼女はただ、焼き芋が…」
黎翔は少し慌てた。

(だって、夕鈴と二人っきりで楽しむから、楽しいのであろう?
…李順が付いてきてみろ!?)

「陛下!!
お分かりですか?
陛下が後宮は要らない、などとおっしゃるから。
夕鈴殿は現在のところ、この国唯一の妃です!!」

「───それが何か」
メンドクサイが、とりあえず相手の出方を見て方策を練らねばならない。

「認めたくありませんが、あの娘が…
この国における、トップレディです!!」

(何を言っているんだ? 李順のやつは)

「…そうだが」

「国のトップレディが、バーベキューも焼けないなどと
諸外国で恥をかいたら如何いたしますか?!」

「いや、外国に夕鈴を連れてゆきバーベキューをする予定は
今のところ特にないが…」

「そうはいっても、いつ、その状況になるか分からないではありませんか」

「…李順。冷静なお前らしくないな?」

「ですから、私は、バーベキューがしたいのです」

(…ときには奴のガス抜きの福利厚生事業も大事なのかもしれない)

「───分かった。
そこまでいうのなら、お前も連れて行こう。」

黎翔は観念した。




* * * * * * * * *

そんなわけで、よくわからないうちに、
李順と浩大と女官長の三人。いつものメンバーが付き添い、
御領地の一画で焚き火が行われることになった。

浩大が御する馬車が御用地に到着する。
李順の手配で、予め頃合いロケーションを下見してあったのか、
晩秋の最後の燃えるような紅葉といい、それが湖に写り込む様子と言い、
なんとも良い景色のベストポジションに落ち着いた。


絨毯が広げられ簡易天幕も運び込まれている。
椅子、机、水瓶、炭、食料や酒の入った飲料のはいった桑折、食器類。
バーベキュー用の網など、もろもろ。

もちろん、すでに人払い済だ。


「あの、紅葉狩りって、どういう順番でするものなのですか…?」

夕鈴が陛下を見上げた。
黎翔は夕鈴の肩を抱いていたが、眼が合い、ん?と笑った。

「───ああ。良い景色を見て。
うっとりしながらこうして二人で手をとって。
それから…見つめ合って…燃えるような…」

「───ああ、まず設営をいたしましょう!
陛下。お妃様とこちらへ。」

李順が2つの椅子を指さし、座る様に促した。
李順がキビキビと仕切った。

「───まかせる」
黎翔はため息をつきながら答えた。
夕鈴の手を取り、椅子に座る。

いつものように膝の上にのせられ、夕鈴は真っ赤になった。


屋外の気持ちの良い木漏れ日の下で、
黎翔の膝の上で肩を抱かれて夕鈴がぼーっとしていると、
皆それぞれに、いそいそと立ち働いているのが見えた。

簡易天幕が張られ、絨毯が敷かれた。

李順はバーベキューのための石で炉を組むよう浩大に采配をしている。

夕鈴の目当ての焚き火は少し離れた場所ですることになり、
女官長が箒を持って「ここらあたりでよろしいですか?」と場所を確認した。

女官長はいつも以上に厳重な井出達で、黒い頭巾と黒メガネをし、マスクをかけていた。
「…女官長さん?」

「少々不格好ですが、お許しくださいませね」

いや、不格好とかそれ以上に…。
ツッコむ暇を与えず、女官長は「では、ほほほ…」と軽く笑いながら箒を扱いだした。

「夕鈴のお芋は?」
黎翔が尋ねたので、夕鈴は黎翔の膝から滑り降り、トトトと荷置場にかけよると、うろうろと目的の物体を探しはじめた。

桑折をあけて、そこに入っているお芋の袋を確認し、ちょっとホッとした様子でにっこり笑った。

(───ああ、夕鈴ってば。可愛い)
黎翔も微笑み返す。

「この袋に入ってます。
料理長さんが、大きいのを選んで詰めてくれましたよ?」

まるまるとしたお芋を見て、夕鈴は生き生きとしている。

二人はみなが設営する様子を一通り見守っているうちに、周囲をぐるりとめぐらし、黎翔はピクと、聞き耳を立てた。
林の一角をじーっと見つめる。

その眼が鋭く光った。───狩る者の眼。

うずうずとした表情に夕鈴が「あれ?」と思っていると、そのうち堪らなくなったのか黎翔はおもむろに立ちあがった。


「では、妃はここで
火を焚いて、待っていてくれ」

「はい。…陛下は?」

「少し獲物を」
黎翔はニッコリと笑う。

「───は?」

言うが早いか、陛下は上着をばさりと脱ぐと、上半身裸になった。

「…陛下っ!? この寒空にっ!!」

黎翔は不敵に微笑むと、狩猟刀を口に咥え、腰に山刀を下げ背中に弓を背負った。

抜き身の狩猟刀をおもむろに右手に持ち帰ると、近くの竹にバサリと振り下ろし、狩猟刀の切れ味を確認する。
竹の脇枝をタンタンと落とし、適当な長さにすると先端を斜めに落とし、槍のように尖らせた。
ブンブンと振り、うん、とうなづく。

スタスタと愛馬に近づくと、鐙に足をかけ、ひらりとまたがる。

「君は、火をおこして待っていろ」
と言い残し、木立の中へ消えた。

「へいか! おいらも連れてって」
李順の手伝いの炉を組み終えた浩大が嬉しそうに、ブチの馬の手綱をさばき、黎翔の後を追った。

「あ───。
陛下、いってらっしゃいませ」
夕鈴は、ああ、やっぱり行ってしまった…とショボンとした。

(へーかは。…こんなふうに自然な森や木立を見ると、血が騒ぐのよね)

「やはり。狩りお出になられましたね?

トリと、しし肉をとってきてくださるとよいのですが…」
黎翔を見送った李順は、つぶやいた。
小枝と料紙、炭を上手く組み合わせ、バーベキュー用の炉に火を熾こすことに熱中しはじめた。

あっけにとられて夕鈴が二人の後ろ姿をぼーっと暫く見送っていた間に、
女官長は相変わらず顔色一つ変えず夕鈴のために山盛りに枯れ葉を掃きよせていた。

「お妃さま、どうぞご点火を」

楚々とした立ち居振る舞いでありながら、掃き集められた枯れ葉は小山のよう。
夕鈴がどうやって火をつけようかと迷っていると、
「こちらからどうぞ」と女官長が、枯れ葉の山から、ひょっこり突き出しているコヨリを指差した。

「上手く組んでございますから」
導火線となるコヨリに夕鈴が火打石で火をつけると、火はすぐに燃え広がり、徐々に枯れ葉の山に温かい炎が広がって行った。

パチパチと微かな音がする。炎が揺らめくさまは見ていて飽きない。
夕鈴がほうっと眺めていると、

「燠(おき)のぐあいは宜しゅうございますね。そろそろでしょうか?」
と女官長がお芋の袋を引きずって持ってきた。

夕鈴は長い木の枝で焚き火をつつくと、お芋を投げ込んだ。

パチンとはぜる火の粉。
煙がまっすぐ立ち上る。

「今日は風もなく、よい焚き火日和でございますね」
女官長が箒を置いて、空を見上げた。
…が、すぐに目を伏せ、黒いサングラスをしっかり掛けなおした。

「焚き火って、いいですねぇ」

「本当に」
女官長も(黒ずきんとマスクの下で)やさしく笑った(と思われた)。

「女官長さんは…焼き芋を食べたことはありますか?」

「え? …ない、ことはございませんが」

「お好きですか?」

「畏れながら、嫌いなものは御座いません」

「ではお好きなんですね」

女官長は静かに笑った。
(良質の炭水化物と食物繊維が含まれておりますからね)

嫌いなものはないが、好きなものもない、というと角が立つからだ。

───好き嫌い、というより、基本、食事は必要とする栄養とカロリーが取れれば十分だと思っているらしい。

(このお芋には、各種ビタミンやミネラル類が豊富に含まれ、セルロース・ペクチンといった食物繊維が非常に多く含まれているのが特徴でございます。
生体膜を守りガン細胞の増殖を抑制すると言われるベータカロチン、
糖質の代謝を助けるビタミンB1、
むくみを予防するカリウム、
「若返りのビタミン」と呼ばれるビタミンEなども、
バランス良く含んでおります。
特筆すべきはなんといってもリンゴの10倍以上ものビタミンCが含まれていることでしょう。このお芋のビタミンCは、なんといっても加熱調理しても糊化したでんぷんの作用により壊れにくく、残存率は高いですから。焼き芋は大変素晴らしい食べ物と申せましょう。
このお芋は様々な栄養素を含んだ、高機能・低カロリーで美容にも効果的な食材でございますよ)

とツラツラ考えていたが、とりあえずは、ニッコリと笑っておいた。

「───楽しみでございます」
女官長は、夕鈴の肩に風よけを打ち掛けた。

ドカドカと地響きが聞こえてきて、振り返ると馬上で上半身裸の黎翔が意気揚々と獲物を担いで帰ってきた。

「…待たせた」
黎翔は馬から降りると、夕鈴に抱き付いた。

「キャー!? へいかっ!
は、裸で抱き付くのは止めてくださいぃい~っ!!
お風邪をひきますよ!? 早く上着を…」

「え? 妃がいれば、寒くはないぞ?」
そういって性懲りもなく夕鈴を抱きしめる。

「獲れたよ~」浩大もあとから追いかけてくる。

猪、鹿、兎、キジ…。
猪、シカの大物は二人がそれぞれ担ぎ、
小動物は黎翔が手にしていた竹串にずらりと結び付けられてあった。


李順が近寄り、ほくほくと手を握った。

「陛下、ご立派な狩猟成果にございます」

「いや、まだ物足りないが」
黎翔は夕鈴の背中から抱きしめて答える。

「この人数のバーベキューには十分かと」

「うーん。クマもいたんだが…。
一旦帰ろうかと戻った
───きっと妃が寂しがってるだろうから」

「妃、関係ありません。
…寂しがってませんでしたよ?」

李順がきっぱり答えた。

夕鈴はじたばたするが、なかなか逃げられない。

「あと、蝶を捕まえれば…役が揃ったな」

「は? この時期に、蝶、ですか?
…食べれませんよ」

「───いや、特に意味はない。忘れろ。
だから夕鈴が蝶々の役で、ほら、───揃った。」

「ほらって。意味わかりません。
だから、なんですか、蝶って?」

夕鈴はさらに強く抱きすくめられ、もがきながら叫んだ。


「ああ?
何だったか。東洋の遊戯札の役か。

猪とシカと蝶で。10点、10点、10点、だろ?
夕鈴の髪型。蝶々みたいにも見えるし…
今日は蝶々の役ってことで」

「何の話ですか~っ!?」

「うん、なんでもいーんだ。
君が居てくれれば…」

ごろごろとすり寄る大型獣に、夕鈴はどう対処してよいのかわからなかった。

「あの、あの。だからっ!
裸で直接抱き付かないでください!
せめて、上着を着てくださいっ」

「…では、上着を着れば良いのだな?」

わかった、と言いながら黎翔は急いで上着を取りに行き、
羽織ったとたん夕鈴を捕まえて抱きしめた。

「だめです!
羽織っただけじゃ!
ちゃんと襟を整えて、帯を締めてください!!」

「…面倒くさいことを…。
では、手伝ってはくれぬか?」

「…もうっ! 仕方ありませんねっ!!」
ブツブツ言いながら夕鈴は黎翔の着付けを手伝った。



その間にも浩大がさっさと獲物をさばく。

女官長が包丁で野菜を刻んだ。

李順は串につぎつぎ食材をつきさす。



「───で、味付けはどのように?」

女官長が調味料の入った籠を持ってきた。


「っ女官長サン~~っ!!」

浩大が慌てて飛んできて体で押しとどめた。


「女官長さん。味付けは結構ですから、こちらで…」
(一瞬遅れていたら… どうなっていたことか)


黎翔もゾッとした。

「ああ、今日は李順が奉行だ。
味付けは奴に任せておけ」

女官長の味付けは天下一品のとんでもない味になるのだ。

その事実を本人は余り認識していない。

黎翔の着付けが終わったとたん、夕鈴はさっと身を翻した。

「女官長さん、私たちは、こちらで焼き麺でも作りませんか?」
夕鈴が女官長をさそう。

「~~ああっ! お、お、お妃ちゃんっ!!
焼き麺はおれ、おれ、おれ、俺が作るから
お肉捌いたら、お肉一杯いれて、あとであとで、もっとずーっと後で、オレ作るから
置いておいて!!」

浩大は慌てた。

「…夕鈴、あちらのお芋を見に行かない?」
黎翔がすすめた

「あ!…そろそろひっくり返さないと!」
夕鈴は思い出したようにパタパタと焚き火の方へ走って行った。
女官長がその後を追う。

黎翔も追っかけて行って、夕鈴を抱きしめようと虎視眈々タンカラリの隣組。



李順と浩大の二人は、炉の周りでポツンと。

「あーーーーあぶねー」

浩大が汗を拭いた。


「何が、ですか?」
李順がいぶかしげに浩大を見つめる。

「…いや、女官長さんってさぁ~」

その時、遠くの焚き火の方から
うすら寒い気配がずしんと背中に圧し掛かってきた…


(───げ。
一里以内じゃん。ここ。…ヤバい。
下手なこと言ったら、俺、死ぬわ)


「いやぁとにかく。俺たちで作っちゃいましょう
バーベキューは男の料理っすからね~あはは、あはははは」

浩大は汗と涙を流しながら笑った。




(つづく)


どうなるのでしょう?
後半もハチャメチャな予感。

ラ族な陛下とみんなで焚き火。(後編)

【ラ族狩人】【オリキャラ】【なんでもあり】【笑】【甘】

* * * * * * * * *
ラ族な陛下とみんなで焚き火。(後編)
* * * * * * * * *

「ほら、これ。もうよさそうですよ?!」

夕鈴が枝でつつくと、こんがりと焼けたお芋が転がり出てきた。


「…夕鈴。熱いから、気を付けて」

黎翔が皮手袋を嵌めて、お芋を拾い上げる。


「…焚き火、楽しいですね」

「そうだな」
顔を見合わせて二人はにっこりとほほ笑んだ。

実は女官長と黎翔が古くからの中でお互いの本性をよく知っており、さらに女官長の正体が陛下にのみ仕える特別な凄腕の隠密であることを、夕鈴は知らない。

ちなみに、女官長の本当の正体が白陽国を脅かす伝説の死神であり、黎翔ただ一人に使える草であることは、李順も知らない。


だから、夕鈴は(陛下は女官長さんがいるからずっと狼陛下の演技をしているのよね」と思っていた。

(女官長さんの前では、ちゃんと仲良し演技をしなきゃ…!)
夕鈴には崩せないラインというものがあった。

夕鈴は少し取り澄まして、黎翔に尋ねる。

「狩り、楽しかったですか?」

「───ん?」

女官長が、黎翔の差し出した焼きたてのお芋を籠に受け止める。

「せっかく外に出て来られたのに。
…もう少し、狩りをご堪能されたかったのでは?」

「いや?
私はこちらの狩りも、今十分堪能している」

「───?」
夕鈴は首をひねった。


厚手の粗布で焦げや炭をこすり落とし包んで渡す。
夕鈴が手に取り、ぽくっと割るとほくほくした黄金色のお芋の断面から湯気が上がった。

「陛下、どうぞ!」

「いただこう。半分は、夕鈴に」

二人で食べる焼けたてのお芋は美味しかった。

「…夕鈴」

「はい?」

「ほっぺたに…」
黎翔が顔を近づけて、ペロリと口元の黄金色の芋片を舐めとった。

「!!」
夕鈴が固まる。
…ぐっとお芋が喉に詰まる。

「慌てて食べると、喉に詰まるぞ?」
と笑いながら、女官長が手渡した竹筒に入った冷茶を差し出す。

「…どれ、飲ませてやろう」
黎翔がにこやかに竹筒のふたを開け、自分の口に含もうと…

(いえ いえっ!!)
涙を浮かべながら夕鈴はブンブン手を振り、もぎ取る様に黎翔の手の中から竹筒を奪いとった。

うう~っと唸りながら夕鈴は慌てて竹筒の栓を抜き、お茶をコクコクと飲む。
黎翔はその背中を丹念に撫でて嚥下を助けた。

「───はぁ…」
夕鈴が息を吹き返すや否や、ジットリと睨まれた黎翔は
クスクス笑いながら竹筒を夕鈴から受け取り、女官長へと戻した。


「…あ!
女官長さんも、どうぞ、焼きたてのお芋を!」

はじめ女官長は遠慮していたが、夕鈴に三度勧められ、ようやく三度目に受け取った。

「全部お芋拾ったら、李順さんの方へ行きましょう」
と言いながら、夕鈴は枝で赤々と燃える落ち葉の燠をつつき、残りの芋を転がした。

焚き火を見つめる黎翔の眼は明々と輝き、優しかった。

焦げた皮を剥ぎ、甘い黄金色のほくほく熱いお芋にかじりつく。
しばし三人は秋の味覚を堪能した。

「熱つ…!」
お芋の熱い部分にうっかり触れた指先を弾けるように引っ込めた夕鈴。
黎翔は彼女を背中側から包むと、その指を捕え、自分の口に含んだ。

夕鈴は顔を赤らめて振り向く。
「…っ!? 陛下っ!」


暫く立ってようやく口から彼女の指を離した黎翔は、こんどは丹念に指先の検分を行った。

「…大丈夫」

(黒頭巾と黒メガネとマスクの下で)女官長は(おそらく)にこにことお二人を見守る(と思われる)。

背中から抱きしめられた夕鈴は逃げることもできず、ただ真っ赤になって固まっていた。

「…こんなところに、紅葉が」

黎翔が夕鈴の染まった耳朶に触れた。
首をすくめて彼女が身を捩る。

「…いや、これは君の一部だったか───」と黎翔は笑った。

「───うっかり、焚き付けてしまうところだった…」と唇を寄せてつぶやいた。

「~~~~~っ!!!」

夕鈴はますます真っ赤に染まりブルブルと震えた。


調子に乗った黎翔はさらに軽く耳朶を齧り

「焚き付けられたのは、むしろ私か? 
…腹が減ったな」
と、その柔らかい感触を楽しんだ。

夕鈴、爆発寸前。

(女官長の前でなかったら、絶対これは爆発してるな…)と
黎翔は彼女の間合いを計っていた。



そのとき

「へーかー!! こっち、準備完了っす~~~!
そろそろバーベキュー、始めませんかぁ~?」
と浩大の大声が聞こえた。

「───あ、あ、あ、あちらでっ!!
李順さんたちが呼んでますっ!!」

黎翔が顔をあげ、ふと力が緩んだ瞬間に、夕鈴は黎翔の腕の中でクルリと身を反転した。


(はぁ…いいところで)
軽く肩を落とした黎翔。

「───ああ、ではそろそろ。」
気を取り直し、向い合せになった夕鈴に額を寄せるように、黎翔は顔を近づけ、微笑んだ。

妖艶な黎翔の微笑みに、夕鈴はクラクラした。
気絶しそうな顔で目を回す夕鈴の可愛らしさに、黎翔はますます愉悦を感じる。

(黒頭巾と黒メガネとマスクの下で)女官長も(おそらく)微笑んだ(と思われる)。


「…どうぞお先にいらして下さいませ。
私、こちらの焚き火のあとをみてから参ります。」

女官長は残りのお芋を焚き火の中からかきだしている。

「か…籠! 私が持ってゆきます! 
李順さんと浩大にも焼きたてのお芋を食べさせてあげないと」

「…お持ちしますのに」

「いえ! 私が!」
女官長が恭しく焼き芋の入った籠を持ち上げ、夕鈴に渡した。

「では」
籠を両手で持った夕鈴を、黎翔が抱きかかえた。

「ちょ…! 陛下?! 危ないです!」

「君は籠をしっかり持っていてくれ?」
黎翔はニッコリと嬉しそうに焼き芋と夕鈴を持ち運び、バーベキューが行われる炉の方へと歩き始めた。

* * * * * * * * *

李順の仕切りっぷりは見事であった。

バーベキューと、鍋。

どちらも李順が腕によりをかけて仕切りまくった。

愛する肉片と野菜の数々が最高の状態に焼きあがり、各自の胃袋に収まるまで
緻密な計算のもと組み立てられ、粛々とバーベキューと鍋は進行した。


問題があったとすれば、各自の気持ちの問題。

女官長は当初、「国王と食事を共にすることはいたしかねます」とかたくなに固辞していたが、最終的には「バーベキュー道において上下なし」の李順の主張を受け入れる形となった。

また、浩大が李順の指示に従わずチョロチョロと李順の想定外のタイミングで肉のみを奪ってゆくので、李順としてはかなりペースを乱され、「バーベキュー道一段の腕前」上、完璧な采配を逃した感はあった。

浩大は浩大で「生肉でも食べれる」という自負から、かなり自分としては自粛して李順の指示に従っていたつもりだが、ほんとうならもっと生焼けでガツガツ行きたかった、という心残りがあった。

黎翔は李順がバーベキューと鍋の采配に熱中している間、愛らしい兎の調理に熱中し構い倒し、一方兎はといえば必要以上に甘い狼の所作にお疲れ気味であった。

―――しかし、まあ。
総合的に見れば非常に楽しいバーベキュー大会となったことに違いはなかった。

もう一つ。
夕鈴側が問題としていたこと。

それは黎翔が途中で片肌を脱ぎ、次にハッと気が付いたときは、今度はもろ肌を脱ぎ
…いつのまにか上半身裸でバーベキューに参加していたこと。

(なぜ、脱ぐ? たしかにお酒もでてるけど…)


いや。
ここで指摘すればさらに豪快に脱ぐ。

…そういうお方なのよ。

「これは自分にとっては自然なこと」と、とぼけたお顔されるだけ

これまでの経験から、下手に騒ぎ立てれば、さらに露出度と密着度が上がるだけ、と悟っていた夕鈴。

―――知らぬ存ぜぬを決め込んだ。

(うーん。見えないふり)

でも、どうして、膝の上に誘うんです?
無理無理ムリ~~!

真昼間から、裸の男の人に抱きしめられるなんて
心臓が持ちません。

(…真昼間じゃなかったらもっと問題あり、ということに夕鈴は気が付いていない)


目を背けている間にも、手に持っている皿には、李順がどんどんと焼けたお肉やらおやさいやらを乗せてゆく。

「…ん、食べて? どうした夕鈴。
私の取ってきた肉が…口に合わぬか?」

と(裸の)黎翔がアップで心配そうに覗き込む。

「いえっ、いえっ!! おいしいですよっ? 戴きます!!」

寒空というのに、火の回りでバーベキューで焼き立てのアツアツの食べ物と酒を口にしている黎翔は、うっすら汗をかいてつやつやとした肌をしている。


「そうか…君は少し細いから。もっと食べて抱き心地をよくしておくれ?」
とウエストのくびれに手を回し、きゅっと腰を抱き寄せ密着させる。

(ぎゃあああ…ち、近寄らないでくだサイ~~~っ!!)

女官長が(黒頭巾と黒眼鏡とマスクの下で)ニコニコと笑っている(ような気がする)。

ここはバイト妃の腕の見せ所。

「…陛下ったら。お戯れがすぎますうぅぅぅ~!!」

(もう、どうにかしてください。李順さんっ…!!)
しかし李順は鍋とバーベキューの二つを回すことに嬉々として熱中し、二人の間の管理までは手が届きかねた。

「あーあー、やりたい放題翻弄しちゃってぇ。陛下。あとでキョーレツなしっぺ返しくらっても、知らねーぜ?」と浩大は内心思っていた。



その時!

ガサガサっと林の際の茂みのほうで音がしたとおもった途端、
突如、大きな熊が四足で勢いよく地を蹴りながら咆哮をあげて走りこんできた。

「…熊っ!?」

「先ほどの、熊かっ…!」

黎翔が先ほど林の中で遭遇し、見逃してやった(?)大熊だった。


熊は腹ペコだった。

李順の愛するバーベキューと鍋と、さまざまな食材から醸し出される良いにおいが、熊を刺激した。


―――熊、速い!


ドカドカと暴走し、一目散にこちらに向かってくる。


黎翔は迎撃の姿勢を取り、腰に下げていた山刀を手に取り構える。

「…に、逃げましょう! へいかっ?」夕鈴は黎翔の手を引いた。

黎翔は背中に夕鈴をかばうと、ぎろりと熊の方をにらんだ。

浩大は地を蹴り、愛用の鞭のような暗器を取り出した。

李順は眼鏡の奥から冷静なまなざしで熊を見つめ、
「いくら陛下でも。…大熊相手では分が悪い。…逃げましょう」とつぶやいた。



その時、女官長が懐の中から白い札を2、3枚取り出すと
人差し指と中指の間にそれをはさみ、
素早く熊の方へ差し出しながら、滑るように前へと進み出た。


女官長はすっと黒眼鏡を反対の手でずらし、闇の眼を開くと熊を凝視した。

暗黒の闇の底を目の当たりにした熊は一瞬で戦意を喪失し、尻尾と耳を垂れたその瞬間、女官長は熊の額にペタリと札を張り付けた。

黒眼鏡を元通りかけなおす。

それまで猛り狂っていた熊が一瞬にして停止した。

「…森へお帰りなさい」
熊の額を軽く指ではじくと、熊はハッとしてきょろきょろあたりを振り返り、のそのそ林の奥へと戻っていった。

「すげー! 女官長さん!!
お札とデコピンで大熊撃退っ!? 
マジ~~? すげーーーーっ!」

浩大はゲラゲラ笑った。


「…女官長殿。―――今の札、は何ですか?」

李順は、こんな時でも上ずることなく冷静な声で尋ねた。

「…野生の荒ぶる魂を鎮め、封印する札にございます」

静麗女官長は黒眼鏡ごしに、生真面目そうに答えた。


そのとぼけたようすにますます浩大は、心の中で笑い転げ悶えた。

「―――フム…」
李順は非常に冷静に分析していた。

静麗女官長は舞の名手であり、氣功を操る、という。
こんな技も持っていたのですね。
李順は頭の中の静麗女官長の個人情報にメモを追記する。


「野生の荒ぶる魂を鎮め、封印する札。と…。
それにしても、よい腕前でございました!」

感服したように、李順が繰り返した。


女官長としては本来なら暗器でいかようにも仕留められたが、
伝説の死神の真の姿と陛下の草という立場を、李順や夕鈴に知られたくなかったので、
札という少々オカルトめいた物品で目をくらましたに済まなかった。

李順が信じ込んでくれたのをこれ幸いに
「おそれいります」と深々と頭を下げた。


「では、試させていただきましょう」

李順は女官長の手にあった、残り札の一枚をすっと指で引き抜くと、ペタリと黎翔の額に張った。

「今日は少々おイタがすぎます。陛下。
野生を封印していただきましょう」
と声をかけた。

「…あっ!?」
あまりの不敬な出来事に、夕鈴が固まった。


(何をする、李順!!)と、のど元まで声がでかかった。
だが黎翔はそれを呑み込んだ

(―――ちょっとまて)


どうせ、リーリーが自分の腕をごまかすための
効力も持たぬただの札であると、黎翔は知っていた。
そこで
内心、黎翔は(むうっ)と膨れたが、
ピンとひらめいた。



「…お姉さん? ここ、どこ?」

と額に札をはったまま、夕鈴を見つめると、ごろごろとすり寄るように、夕鈴にぐりぐりと体を擦り付けた。

夕鈴が(ぎゃー)と声をあげそうになり、真っ白になって立ちすくんだ。

「お姉さーん、ぼく。おなか減った…」とますますエスカレートする黎翔。


「…あああ…。童心に戻っておしまいにっ!? へいかっ!?」
李順が慌てた。

「そちらは、…野生の荒ぶる魂を封じる札とは少々違う効能の札のようでございましたね」
女官長はホホホと笑った。


李順が黎翔の額の札をはがそうとすれば、童心に戻った黎翔はするりと逃げ、また再び夕鈴に抱きつきに舞い戻る。

「お姉さーん、たすけてーーー!
怖いおじさんがおっかてくる~~!!」

「…おじさんっ!?」
李順が激怒して、髪が逆立つ。


(…あはは、これも面白いなぁ)

ずるい黎翔はその後も散々追いかけっこを楽しみ、たっぷり夕鈴と李順を翻弄し、楽しいひと時を堪能したのであった。

―――それでこの日の陛下はさいごまでラ族を貫き
(一方的に)たのしく妃とお過ごしだった、そうな


(おしまい)

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