スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ブログ移転のお知らせ

ご来訪ありがとうございます。
”陛下の花園”は、月刊LaLa(白泉社)連載中「狼陛下の花嫁」(可歌まと先生)原作の二次創作の小説&挿絵などを綴っています。
王道中心、オールキャラ、オリキャラ ( 管理人: おりざ )


サイト移転しました

ボタン(うさぎ) 2015年5月1日 織座舎ホームページ (http://www.olz.link/)に移転しました。
ボタン(うさぎ) 連載・日記は「 陛下の花園 二の宮 」 http://www.olz.link/blog/ で引き継ぎます。
ボタン(うさぎ) 当サイトは2015年5月1日以前の作品の倉庫としてしばらくの間公開をします。

※お手数ですが、ブックマークしてくださってる方は、上記のサイトへの更新を宜しくお願い申し上げます。



・原作者様ならびに出版社様とは一切関連ございません。
・恐れ入りますがサイトご利用規約をご一読のうえご滞在いただければ幸いです。

[Copyright] 当ブログ内の作品の著作権はブログ管理人に属し、無断コピー・無断転載を禁じます。 ■(C)織座舎 おりざ 陛下の花園 ■

続きを読む

スポンサーサイト

≪目次 2015≫

目次
目次のアップデートが追い付かず、すみません。
ボチボチやりますのでご容赦ください。


続きを読む

狼のーかの花嫁(15)

サイトお引越ししました。(→織座舎新サイト
いろいろご不便をおかけしてすみません。
この後のお話は「陛下の花園 二の宮」でノンビリ更新を続けてゆきたいと思います。ご訪問お待ち申し上げております。


---

引き続き、マッドサイエンティスト老子と夕鈴のシーンからどうぞ。
あの人も出てくるし…。

ファンタジーです。捏造設定の塊です。まるっと飲み込んで、生暖かく見守ってください。
無理なさいませんよう…。

【現パラ】【ファンタジー】【カボチャ】

* * * * * * *
狼のーかの花嫁(15)
* * * * * * *

「よーするに。
この大きなカボチャのタネはな~

陛下とお前さんの
愛の結晶じゃぁあ~~♪
でかしたぞぉ~♪」

張老子の衝撃的な言葉に、床に崩れ落ちる夕鈴。
「よ、嫁入り前の娘に、なんてことを…」とつぶやきながら引き付けを起こしたように身悶えた。暫くしてようやく体を引き起こしノロノロと老子の方を振り返る。

夕鈴は『二人の間には何もない』ことを釈明しようと立ち上がった。
「――冗談は…」
「これは冗談ではないのじゃっ!」老子はすかさず夕鈴の口を封じた。

老子は種の入ったビンを夕鈴の鼻先につきつけ、彼女に説明を始めた。

「まあ、ちょいと落ち着いて話を聴かんかい。
これは、あの御方にとって、実に貴重なタネなんじゃ。恐らくは。」

「はあ…。」
恐らくは、という言葉に、少々腑に落ちない感は否めないが、夕鈴は老子の向かい側の席に座りなおした。

「魔力というのは人の世の理を全く無視したエネルギーでな。
非常に便利じゃが、もろ刃の剣ともいえるのじゃ」

「もろ刃の剣?」

「そう。善なる心で使えば益もある。じゃが、悪の心で用いれば闇に染まる。そして大いなる力を持つな魔法使いはこの闇の魅力に心奪われやすいのじゃ…」

「闇の魅力?」

「そう。この世の全てを統べる大いなる力はことごとく心の負の面を引き出しやすい。
…かつて絶大な魔力を得た者の中には、闇に染まり人々を恐怖に陥れたものも多い。
現代のようにだれもが豊かになり、魔法教育も整った環境であっても時に闇落ちするものが生まれるが、その数は少ない。じゃが、昔はそうではなかったのじゃ。
大いなる魔力を持ったものはほぼ皆、野心に心を乗っ取られ闇に落ちたのじゃ。

その昔、人々を脅かす魔の存在に対抗できるのは、修行を積んだドルイドだけじゃった。
魔封じのランタンカボチャは、魔法使いの持つ魔力を吸いつくし封印する恐ろしいカボチャじゃ。いにしえのドルイドは、この魔を封じ込める力を持つカボチャを見つけだし、魔封じに用いたものじゃった」

「はぁ。それが、この地域に集められてる、あのカボチャ、なんですね?
でもどうして、魔法使いの里で、魔法使いの一番苦手なカボチャを育ててるのか…よく分かりません」

「そうじゃろうな。実はあのランタンカボチャは、最初はふつーのカボチャの中から突然生まれる。夜光りはじめるころに魔封じのカボチャと気が付いても、もう魔法使いの手におえないのじゃ。それで全世界中に我々の隠密をとばし、早期のうちに魔封じカボチャの苗を速やかに回収しこの地で保護しておるのじゃ。あともう一つ理由もある…」

「理由?」

「――ここで育てた魔封じカボチャは、めっぽう美味いんじゃ」

「はあ?」

「もちろん市場で高値が付くが、通常市場には出回らんほどじゃ。
なんといってもここで採れる白陽かぼちゃといえば三ツ星レストランのシェフや世界最高峰のホテルなどから注文が引っ張りだこで、空輸して世界各国に送られんじゃ!」
老子は嬉しそうにニシシと笑った。

「なるほど!」
確かに、あのカボチャたちはみんな福々として立派だった。危険もあるが、その分さぞかし美味しいのだろうと夕鈴は深く納得した。

「…で、それがあの魔封じのカボチャだというのは良く分かりました。
それで、陛下が欲しがっているカボチャっていうのは?」

「魔法カボチャはもっとレアなんじゃ」

「レア!?」

「魔法、というのはそもそも形がない。封じ込めて器に入れておくことができないんじゃ」

「はあ?」夕鈴にはピンとこない。

「魔法の電池みたいなもんがあれば、ヘタッピの魔法使いでも、何でもしでかせるのじゃろうが、魔法の力というのはそういうものではないんじゃよ」

「なるほど」夕鈴は納得した。

「収穫祭で行われる陛下21歳の公開評議じゃが…」
夕鈴は、張老子の話がいよいよ陛下のことに…と思い、ピシッと背中を正した。
「国王、王位継承権の持つ者が21歳になるで行われる儀式じゃ」

「王様にふさわしい魔力の持ち主かどうかを試す儀式、ってことですね?」

「平たく言えばそういうことじゃな」

「正当な王には、魔法カボチャが天からくだされる…。そういうことになっておってな。
どこから手に入れたのかは歴代の王の秘中の秘とされ、魔法カボチャを手にした王以外、誰も知らんのじゃ」

「だから魔法カボチャがレアって。…でも、王様自身が手に入れ方を知らないというのなら、実際手に入らないってことはないんですか?」

「…まあ、中には魔法カボチャが手に入らず、偽物で儀式にのぞみ、こてんぱんに評議会にやられる者もおったものじゃが…。そういう者は王位につけぬか或いはその治世は長くは続かなんだ」

「…なるほど。その儀式って、どんな内容なんですか?」

「最初に三人の評議員が一人ずつ、形、色艶、大きさをで対決するのじゃ。
まずは形。防御力と、その所有者の魔力の質、つまり善なる魔法か闇の魔法かをはかる大事なパラメーターじゃ。堂々とした型のよいカボチャは善なる魔法使いである証、心が闇に染まった魔法使いのカボチャは、いびつな醜い形に育つといわれておる。
色ツヤは魔法の影響力。同じ魔力でも効き目のあるなしが分かれるのがここじゃ。いわゆる攻撃力、じゃな。
そしてなんといっても大きさじゃ――これは…」

「大きさがヒットポイント。つまりトータルの体力のようなもので、
形が防御力、色艶が攻撃力、ということですね?」

「…ほう、お前さん、なかなかのみ込みが良いのう」

夕鈴はニコっとした。夕鈴自身はゲームなどはやらないが(そんな時間があったら勤労につぎ込んでいた)小学校の頃は男子(主に几鍔の周りの男グループ)が相当やりこんでいて、暇さえあればそんな話をしていたのを耳にしたものだった。
当時はいつも『くっだらない、あんたたちそんな暇あったら宿題でもしなさいよ』とわめいていたものだが…。

「それで、三人の評議員さんとの対決に、勝てばいいわけですね?」

「そうであればまだよいのじゃが。それはまだ前哨戦、その後が本番じゃよ」

「本番?」

「つまり、こんどは評議員の用意した退魔カボチャでの攻撃を受けるんじゃ」

「…退魔カボチャ?」
夕鈴はポカンとした。

「いまある畑中の全部の退魔カボチャ対陛下お一人の魔法戦じゃ」

「――えっ?」

「この地にある全ての退魔カボチャを封じられるだけのお力がなければ、国王たる資質は認められん」

「…って。それって、すごく危ないことなんじゃ…だって。退魔カボチャ一つだって、魔法使いにとっては致命的な天敵なんでしょ?
それを、地平線までどこもかしこも広がるあのカボチャと戦うって――
敗けたらどうするんですか!?
陛下も死んじゃうってこと?…後宮に奥さんいっぱいより悪いじゃないですかっ!」

「そのための魔カボチャ、じゃよ」

「じゃ、魔カボチャを陛下もたくさん用意しないとだめなんじゃ――」

「いや、魔カボチャは1つでよいのじゃ」
平然と老子はうそぶくが、夕鈴は興奮してバンと机をたたいた。

「なんで?
たった一つでどうしろって…」

夕鈴は陛下が心配で蒼白になった。

「本来魔法は器に入れることはできん。
だが、魔カボチャにだけは所有者の魔力を貯めることができるんじゃ。
更には魔法使い自身の持つ器量によっては蓄えたその力を何倍、何十倍、何百倍、いやそれ以上に増幅するという…持つ者によっては、ま~さ~に無敵!
それはそれは、ものスゴーいレアなアイテムなんじゃっ!!」

老子はビンをもう一度振り上げて、ニヤリと笑った。

* * * * * * *

「――とにかく。早くこれを育てねば…
もう、日が無いんじゃ!」

「…でも、あと9日って?
そんなんで、本当に陛下の欲しがってるスゴイ魔カボチャって
できるんですか~?」

「それは、お前さんと、陛下ご自身が
考えることじゃっ!!
とにかく頑張らんかい、バイト娘!!」

ポイっと小屋から送り出された夕鈴はキョトンとした。

小屋に来るときは、ずいぶんと歩いた末、トラックで延々走った気がするが、今外に出されてみれば白亜の殿堂、白陽ビルの目と鼻の先だった。

夕鈴は小瓶に入れて貰ったものを大事に握りしめ、ビルのエントランスに向かう階段を見上げてぼんやり立ちすくんでしまった。

勢い余って飛び出してしまった手前、少々バツが悪い。

夕鈴は『やっぱり…陛下に会わせる顔がない』と踵を返し、クルリと背を向け歩き出したとたん背後不注意で、後ろにいた人にまともにぶつかってしまった。

『しまった!』と思った時には
もう、そのぶ厚い胸板にまともに顔から突っ込んでいた。

太陽の匂いのする作業服。大柄な相手は、倒れかけた夕鈴を「おいおい、大丈夫かい」と両腕を掴んで助けた。
したたかにぶつけた鼻柱を「いたたた…」と押さえながら夕鈴は相手を見上げた。

浅黒い肌に、ザンバラな黒髪を後ろで一つに束ねた作業着の大男。
腕をつかんでいる手は大きくて、熊の掌のよう。

「ぎゃっ、ふ、ふ、ふみまひぇんっ(すみません)!!!」
と夕鈴は1,2歩あとじさる。

「おいおい娘さん、よそ見してると危ないぜ?」
人のよさそうな笑顔でニカっと笑ったあと、「ん?」と夕鈴の額をまじまじと見つめた。

(あっ、そうだった!…陛下の印がおでこに)
夕鈴はあわてて額も手で隠した。鼻と額、隠すところばかりで両手がふさがった。
その手には、大きなタネの入ったビン。

「娘さん。なんだか面白いもん、持ってるなぁー。
…えっと。ビルに用事があるのかい?」

「いや、ちょっと用があるっていうか…その、あったんだけど。
やっぱり、出直そうかって――」

夕鈴があわあわしているのを見て、その男は気の毒に思ったのか

「…まあ、落ち着きなって、娘さん。
そりゃさぞ大事な用事なんだろうな。
こんなところにあんたみたいな娘さん一人で、気後れするのも良く分かるが、なんなら、案内についていってやろうか?」

男が、夕鈴をなだめる為にポンポンと軽く方に手をかけた。
その時、背後から声がした。

「…その手を離せ、徐、克右!」

「――へ?」

*

サイト移転しました。
続きは引き続き「陛下の花園 二の宮」にてお楽しみください。


*

イベント参加予定

今回も黄昏博物館さんのご厚意により、合同サークル託本でささやかに参加させていただきます。
[業務連絡] 新刊・とらさんでの扱い開始しました (2015.4.22) 


■開催日■2015年5月3日(祝)・東京ビックサイト
■SUPER COMIC CITY24(1日目)
■サークル名■黄昏博物館&織座舎

西1ホール I (アイ) - 51b

--≪予定≫-------------
☆黄昏博物館さん 
 ・新刊
 ・既刊 2冊

☆織座舎
 ・新刊白の国サイドストーリーズ
 ・現パラアンソロ
 ・既刊(あるもの※をチョコチョコ)
  ※詳細情報おご希望はコメント欄よりどうぞ

[お知らせ] 遷宮のお知らせ

織座舎ホームページ ( http://www.olz.link/ )にお引越しをすることにいたしました。

突然のご報告となりすみません。
私ももう少し先の話かと思っていましたが、状況が変わったため
急ぎ着手することになりました。


これまでのFCブログ(陛下の花園)での連載中のお話は
 「 陛下の花園 二の宮
http://www.olz.link/blog/ 
にて、引き続き続けて行く予定です。

※お手数ですが、ブックマークしてくださってる方は、上記のサイトへの更新を宜しくお願い申し上げます。



■経緯

当サイトはFC2ブログの無料サーバーを利用させていただいておりました

昨年9月末、FC2に対し警察の強制捜査が行われたと報道で知り
個人的には少なからずも衝撃を受けました。

その後FC2の進退は噂だけで
あまり詳しい情報を得ることが出来ませんでした。

「突然閉鎖されたら怖いなあ」と怯えながらも
やはりFC2ブログさんの使い勝手が良いものですから
念のためサイトのバックアップを取るなどの対策をしたうえで
そのまま利用させていただいている状態が続いていました。

ところが先週2015年4月22日に
FC2の経営と関連性の深い方が逮捕されたと聞きました。

今回もインフォメーションが少なく(大勢の利用者に混乱を招かぬためと思われますが)
不透明なことばかりです。

前回の捜査から約7か月たっての逮捕と時間もかかっていますし
急にどうこうということもないかもしれません。

ただし、無料サーバーを利用させていただいている以上、
突然サーバーが使えなくなる可能性が全くないとは断言できません。

昨年の10月にライブドアブログにミラーサイトを作り、
コンテンツ自体は保護しています(保険)
バックアップ自体は簡単なのですけれども
限られた時間内で「あちらも」「こちらも」手入れをするのは辛く、
手が行き届かないなぁと実感してきました。

不安を抱えているのは精神衛生上あまり宜しくない。

それで今回、
少し手の空いた時期を利用し
思い切って安定的に運営できるサイト一本に絞り、引っ越すことにしました。

サイト構成的には自由度が高いレンタルサーバーを利用することに。(一国一城の主?)

織座舎 ホームページ http://www.olz.link/
├─ ブログ 陛下の花園 二の宮
 
という形で現在引越しをすすめております。

固定的な情報をお知らせしやすいホームページと
日々更新しやすいブログの両方を
併用できる形にしたいと

ホームページのサーバーに、
Wordpress(自家運営のブログ)を設置
で、とりあえず形になりましたので稼働を開始しました。

とりあえず最低限の機能だけの見切り発車なので
今しばらく少々ご不便をおかけするとは思いますが
宜しくお願い申し上げます。

---
■書庫

FC2ブログ「陛下の花園」(当サイト)は
2015年4月末(正確には5月1日未明にアップした狼のーかの花嫁(14)まで)の作品をこのまま置かせていただき
今後しばらく倉庫として利用させていただきます。

新サイトの方には
「狼のーか」の(1)から移植をし、連載を今後も続けて行く予定です。

新サイトの方は、当初できるかぎり作品を移植して稼働する予定でしたが
とりあえずは2015年5月以降の作品で新たに構成する方針にしました。

ぜんぶ連れて行けない理由は、私の技術的限界の問題です…。

Wordpressが英語圏のソフトで
FC2ブログからデータの移植ができるはずなのですけど
やってみたら、日記の数が多くて一筋縄ではいきませんでした…。

まず、英語圏のソフトの為、文字化けが盛大におきて…(文字コードが違う)
形式も違うので、全作品の全コメントの表示/非表示を手動で書き換えの必要がありそうだとか
――とにかく、時間的にも移植は断念しかけています。

そういう理由で
FC2ブログは書庫化して、このまま置いておくことにします。

万が一、FC2が全面的に使えなくなった場合は、
ライブドアブログにミラーサイト(陛下の花園 鏡宮)を開ける予定です。
(当FC2ブログのバックアップサイトとして2015年4月末分までの作品を収蔵)

過去作品に関しては
そんな感じですが、よろしくお願い申し上げます。

*

狼のーかの花嫁(14)

マッドサイエンティスト老子、夕鈴、でっかいカボチャのタネ。

【現パラ】【ファンタジー】【カボチャ】
もう 何でも恋のかたと なんでも来いの方、どうぞ。

* * * * * * *
狼のーかの花嫁(14)
* * * * * * *

張老子が、きつく蓋をしたガラス瓶をそっと振って、目の前にかざすと
中味はカラン、と乾いた音をたてて裏返った。

「お主の、カボチャのタネじゃ」

「――わたしのタネ?
カボチャって、あの、ちょ、ちょっと待ってくださいっ!
私だってカボチャのタネくらい知ってますってば!
もっと、爪くらいの大きさだったと思います。
友達の明玉が『スタイルが良くなって美容に好い』っていうので、近所から種ばっかりかき集めて、煎ってひたすら食べた夏がありました」

老子の手にあるビンを改めて注視して、夕鈴は首をひねった。

平べったい卵型
片方が少しとがっている。
滑らかな表面や色形をみても
言われてみれば確かにカボチャのタネの面影は、ある。

ただ、カボチャにしては、見たことないほど、大きい。
大きすぎる。

異常にデカイ。
というかむしろ嘘くさい。

「…たしかに、私の握った掌の中から出てきたんですよ。
…こんなに大きかったかしら?」
夕鈴はまじまじ今更ながらに思った。

「じゃが、確かに、お前さんの掌の中から、出てきたんじゃろ?」

夕鈴はコクン、と頷いた。

「…もう少し、詳しく聞かせてくれんか?」
老子は、机の上にビンを注意深く置くと、ノートとペンを取り出し、

夕鈴はなにやら難しい顔をして、その後赤面した。

「…嫌なら、無理に話せとは言わん。
じゃが。わしの勘じゃがの。
…もしかするとこれは、大変貴重なタネなのかもしれん。
だとすればこれは、陛下のお役にたつ、万にも一つのチャンスかもしれんぞ?」

「――陛下の。
お役に立つんですか?」

「いや、それは話を聴いてみなけりゃ、わからん。
今、この種をみてふとよぎった
単なる老人の勘、じゃ」

夕鈴はそれを聞いて、一人でブツブツ言いながらイヤイヤしたり、さんざん百面相をした後、ペチペチと自分の頬を両手で叩き、吹っ切れた表情をみせた。

「…もし、万に一つでも、陛下のお役にたつ可能性があるかもしれない、というのなら…お話しします」

(…仕方がない)と夕鈴は思った。

夕鈴はあの人と約束をしたのだ。
そして現実的には高額バイトの前借までしている。

何より彼女自身が、あの優しい人を助けたいと願っていた。

老子がこの大きなカボチャのタネを見て
「万にも一つのチャンス」というのなら、老子は何かひらめいたに違いない。

どちらにせよ、畑のカボチャは危なくて触れないと言われ
あの中に陛下の欲しがっているカボチャがあるとも思えない。
なんとか解決の糸口をたどらねば――。


夕鈴は重い口を開いて話し始めた。
老子は、ノートのページをめくり、まっさらなページを開くと、さっそく記録を取り始めた。

「さて。お主はこれを、いつ、どこで手に入れたんじゃ?」

「今朝、私の手の中から出てきました」

「手の中から出てくる前は? いつ、これを拾ったんじゃ?」

「覚えてません。眼が覚めたときにはすでに左手がグーになってて、どうしても指が強張って開かなかったんです」

「では、昨晩。寝る前に何かあったんじゃな?」

「昨晩…」

夕鈴は両手で膝頭を握りしめるとカッと豹変し、恐ろしい形相で老子を睨んだ。

「~~っ!」

老子はぎょっとして、恐る恐る
「いいんじゃよ、あたりさわりのない辺りから、順を追って話してくれればのう…」
夕鈴は「ううぅぅうーーーー」と暫く唸り声をあげ「…ぷは」と言って肩の力が抜けた。

「最初、夢だと思ってたんです」
「何がじゃ?」
「あの、私が変なこと言ってるって思わないでくださいね?
私も夢じゃないかって、ちょっと自信がないんです…。
――実は昨晩、陛下のホウキに載せてもらって
カボチャ畑の上を飛んで回ったんです」

夕鈴自身は、かなり素っ頓狂なことを話していると半信半疑の口ぶりだが、できるかぎり落ち着いて、順序立てて話そうという努力は見られた。

老子はうつむいたままカリカリと夕鈴の言葉をノートに書きとっている。
「…うむうむ。
真夜中に退魔カボチャの巡回…と。
陛下は真面目にお仕事をされていた、と――」

それを聞いて夕鈴は、ホッとした。
(そうなのね、ここではそれが当たり前なんだ)
よかった、と夕鈴が胸をなでおろしていると、
真面目に言葉を書きとめているはずの老子の肩が、ヒクヒクと小刻みに揺れた。

「…にしてもホウキとは…」
老子がブツブツと独り言を言う。
数式を書いて、計算をして、首をひねり「…いや違う」と、書きかけの数式をジャジャっと線で消す。

「うーむ…ホウキ、ホウキ。
――わからんっ!」

何やら難しい表情をして唸っている老子を見ると、魔法使いは、素っ頓狂のように見えるそれらの行動の一つ一つに何か意味があるのかもしれないと夕鈴にも思えてきた。

「えっと。でも私が魔法使いはホウキに乗って飛ぶんですかと尋ねたから
ホウキがいいなら、ってそんな具合だったと…」

「なんじゃ! それならここの数値は全部、反故じゃ!」
老子は頭を掻きむしって叫んだ。

「…にしても。真夜中のデートは、ホーキで密着ランデブ~♪
ロマンティックじゃのぉぅ~~、ぬししし…」
老子が嬉しそうに漏れるのを夕鈴は聞き逃さなかった。

「――!! 真面目に聞いてくださいッ!」
夕鈴は、机をバン、と叩いた。

「…」
老子は知らんふりをして、ノートに向かって複雑な書きつけをする(フリ?)。

「それで?」と、改めて先を促され夕鈴も気を取りなおした。
(こんなことで怒っちゃダメ。冷静に話さなきゃ)

「その、地平線まで続く畑中の退魔カボチャが光っていてとても不思議な光景でした」
「魔封じのドルイドが用いたランタンカボチャ、とも言われるでのう」

「それで、ホウキに乗せてもらって飛んでたんです。
陛下は『このあたりの畑にあるカボチャはイタズラ者だから、一人の時は決して触っちゃダメだ』っていうんです。そのくせ、私に『大きくて形がよくて色艶よいカボチャを見つけて欲しい』とか…。
――これって矛盾じゃありません?」

夕鈴は少しムキになって老子に零した。

「…って、老子に怒ったってしょうがないですね」
としょぼんした。

「――まあ、そうじゃなぁ」
老子は仕方なさそうに頷く。
長年、魔払いカボチャを保護してきた魔法族の精鋭農夫を見続けてきた。

魔法を吸い取るカボチャは、魔法使いにとっては究極の弱点となる恐ろしい兵器であり、特殊訓練を積んだベテランの隠密農夫といえども、うっかり逢魔が時に退魔カボチャと対峙すれば、時に命を失う惨劇が起きたものだった。

真夜中の逢魔が時に煌々と光るランタンカボチャ。
それは、魔法使いたちにとって恐怖の光でもあった。


「陛下が求めるカボチャは、魔払いカボチャに在らず、
まったく逆の性質を持つ魔法カボチャのことじゃからなぁ…」

「…え?」

「じゃから。魔、法、カボチャ―」

「魔法カボチャ?
あの光ってるのとは別の?」

「そうじゃ。魔封じのカボチャが魔を呼び寄せ喰いつくし封じ込めるカボチャなら、
魔法カボチャは魔法を発する大いなる力の源となるカボチャじゃ!」

「…それって、どこで手に入るんですか?」

「――じゃから、探しておるんじゃ!」

「ッ…って、陛下にも分からないってことですか?」

「そう、じゃ!」

「そんなものを、門外漢の私に見つけられると陛下は本気で思ってらっしゃるんでしょうか?」

「…あれは与えられるんじゃ
人知れず生まれるんじゃ!
それを見つけるんじゃ!
見出し育み、魔力を備えるんじゃ!」

「…よく、分かりません」

「分からんで、結構!
理想の作物を作るまで、
のーかの探求の旅は長いのじゃ!」

(やっぱり、よくわからない…)
そう思いながら夕鈴は少し困ってしまった。

「…んで?
ホーキで、空を飛んだ、と。その続きを訊かせてくれんか」

「あ。はい。
そんなこんなで
陛下のお話し聞きながら飛んでるうちに、
私、うっかりホウキから滑り落ちちゃって――」

「なぬ?」老子は青ざめた。

「…で、畑に落ちて、カボチャに食べらちゃったらしいんです」

「ひえーーっ!? だだ、だだだだだ大丈夫じゃったのか?
いやまさか陛下がご一緒で…」

「それで、ベッドで眼が覚めたときには、もう左手が開かなく」

「フム、フム!」
サラサラとペンをはしらせ、老子は必至で夕鈴の言葉を書きとめていた。

「で、眼が覚めたら陛下が傍にいて」

「――っフム~~っ!!!」
老子の鼻息があがった。

「…って、何にも、何にもなかったですよっ!?
変な想像しないでくださいッ!!…××××っ!!」
夕鈴は、そこから自分で自分の妄想に絡め取られ混乱し、もがき始めた。

「なんじゃ、なんじゃ!
それで、どうやったら手が開いたのじゃ~っ!
何かきっかけは?
何か直接的なきっかけは無かったのかの?
――例えば、ヘーカが寝台の上でお前さんを押し倒してチューしたとか!?」

大興奮の老子が、ズバリと言い当てた。
その途端、ドカーンとマンガの書き文字(擬音)が見開き2ページで炸裂した(かと思われた)。
夕鈴の頭半分吹っ飛んだ(かと思われたが、実際は無事だった)。

マグマのように溶け落ちる彼女の表情をみて、老子はニヤリと笑った。

「なるほどのぉー!!!
ちょっとまて、いや。わかった、よしっ、これじゃ!」

老子は、ノートにサラサラと何やら見たことのない文字や複雑な数式らしきものを書き連ね、途中頁を繰り3ページにわたる計算式を完成させた。

「お主、ヘーカ。
ヘーカの手料理。
これがあって…ホーキ、いやホウキの影響は除外してよいのじゃな、
として、夜間飛行、カボチャに食べられ…」
ブツブツとつぶやく

「ちょっと前。お前さん、もしかして、何か特殊な才能はないか?」

「は?――仰る意味が分かりませんが」

「いや、じゃからっ…!!」
老子は地団太を踏んだ。

「…そのなんというか。
その天然ボケというか…図太さ。
陛下のお傍にいてもあまり感じないとか? 怖いは怖いじゃろうが
その、つまり。…体調が悪くなったりはしないじゃろ?」

「…へ? 何のことですか?」

「朝床を共にしながら
額の印以外に、陛下お力の魔法のマの字すら漂ってこない…」

床に、とこを共に、と…
なんですとーーーー?

「ぎゃーーーーっ!!!」
夕鈴はゴロゴロとのたうち回った。

「んなっ! なっ! 何もありませんっ!!
おかしなことは、いーっさい、ありませんでしたーっ!!」

「それじゃ!
まさに、そのスルースキルじゃなっ!!
分かった!! ありがとう!!」

老子は興奮して、ノートに再び向かってガリガリとさらに激しくペンを動かし始めた。

そして、ピンと何かひらめいた。

「そうじゃっ!!
スルースキル…スルー…
金の…うさぎ… あの事例があったのじゃ?」

老子は慌ててホコリの被った本棚の方へジャンプして、古い書物を取り出し何か調べ物を始めた。

「お主、やったぞ! 
これで何とかなるかもしれんっ!
ここから想定される数値をこの数式に当てはめて――」

老子はノートに向かいなおし、目にもとまらぬスピードでペンを操った。
夕鈴の眼が急激に悪くなったのかもしれないが
老子のペンを持つ腕は1本ではなく2本、いや3本あるようにも見えた。
(もしかすると、魔法かもしれない)

ペンの先からは次々と沢山の訳の分からない言葉や数式が現れた。
そして、今度は落書き…?
醜い大きなカボチャとつるりとした大きなカボチャ
それから…
「このへたくそな動物の絵… 四足の黒い犬のようなものと、耳の長い…これはウサギですか?」
「ええいっ! へたくそは余計じゃ! 黒狼と金兎、伝説の動物じゃ!!」
動物とカボチャの絵の間には複雑な図形と文字の魔法陣が書かれていた。

「これじゃっ!
――謎は全てとけたっ!!!」

老子は両手でノートを高々と掲げ、見せつけた!


ノートを持って小躍りする老子の姿を、
へたり込んでいた夕鈴は、はぁ…と?訳もわからず見上げた。


「よーするに。
この大きなカボチャのタネはな~

陛下とお前さんの
愛の結晶じゃぁあ~~♪
でかしたぞぉ~♪」

あ…あ、あい

…なんですと?

唐突なフレーズに、
夕鈴の顔色は赤から白へそして灰色に。
彼女は椅子にへたり込むように崩れ落ちた。


*

狼のーかの花嫁(13)

こんばんは~
今日は良いお天気でしたね、4月に夏日とかちょっとびっくりですが
さわやかな初夏の気候を迎え
GWの前半戦スタートも気持ちよさそうですね


久しぶりに真面目な連日更新です。
(驚き)


さて。
飛び出した夕鈴を拾った張老子。
軽トラで流れてたラジオから仕入れた情報で夕鈴愕然。
そしてそして、いろいろ不思議な現象が…。


【現パラ】【ファンタジー】【決して無理しないでください】

* * * * * * *
狼のーかの花嫁(13)
* * * * * * *


「もうお主、知っとるんじゃろ。ここは魔法使いの里で、これは魔法使いラジオじゃよ。ゴシップも多くての、…うしし。暇つぶしで聞き流すにはなかなか良いぞ」
小屋の鍵をあけて、老子が手招きした。

「…ま、立ち話もなんじゃて」
夕鈴は素直に老子の小屋に足を踏み入れた。

簡素な小屋の内部には、農業に関する沢山の古い書物が詰め込まれ、古めかしい農機具と天秤やビーカーやフラスコなどの科学実験装置のような複雑な器具まであった。
老子が小さな椅子を奥から持ち出し、埃を払って夕鈴に座るよう勧めた。
机を挟んで座ると、夕鈴は先ほどの話を続けた。

「あの。さっきのラジオ。
カボチャのコンテストでヘーカが負けたら
美魔女さんたちまとめて後宮入り決定って――?」

ああ、そのことか、と老子はこともなげに肯定した。

「ま、平たくいえばそういうことになるの。
魔力を持つものはその器に相応しいものを、
手にせねばならん」


「ヘーカは納得して?」

「こっちの世界では、そういうしきたりになっておってなぁ。
王にはお世継ぎが必要じゃ。退魔カボチャをこの地に集め管理するのが我らがの仕事。それをしのぐ魔力を有することが国王の条件じゃ。
退魔カボチャが暴れて、我々が逆に封じられてしまったら我ら国民全員に被害が及ぼう。
国王の魔力がいまいちなら、早めに魔力の強い娘と多くの子を設け、より多くの魔力でこの地を支え、さらにはお子の中から次世代のより魔力の大きい王を選ぶことが肝要じゃ」

「…それって。陛下の力量が及ばなければ、つまり大きなカボチャが手に入らなかったら。たったそれだけで、勝手にお妃をたくさん貰わなきゃいけないって、決められちゃうってこと…? 陛下の意思は?好みは――?」

「心配せんと、選りすぐりの美女の魔法のつかい手の中には、そのうち好みのタイプも見つかろうて。この国の長い歴史において過去の王はほとんどが後宮を持ち、そうしてきたものじゃ。いくら強大な魔力の王族といえど、才あふれる連合の総合魔力には及ばぬことのほうが多い…。また、自身が21歳の儀式である公開評議において連合をしのぐ魔力を認めらた時でも、歴代の王はより多くの畑に種をまくため後宮を持ったものじゃ」

「畑に種をまくために後宮…?」
ポカンと夕鈴が見つめたので
「…まあ、そこはおいおい」
とニヤニヤする老子。

「でも、…ちょっと待ってください。
でもそれって、その21歳の公開評議で、王様が勝っても負けても、あんまり違いがないってことじゃないですか?」

「そうではない。
少々意味は異なるが、絶対君主か、民主か。
唯一の王の持つ絶対的な魔力が世を治めるか、
評議員含めた国家という組織の魔力が治めるか、という違いじゃろうな」

(…どっちにしても、ヘーカ個人は、あまり幸せじゃなさそうね)
夕鈴は思った。

「どちらにせよ、我ら魔法使いの国では魔力こそが絶対的基準なんじゃ。
強大な魔力を持つ王を戴くことこそが肝要である以上、後宮が存在しなかった例はほとんどなく、むしろ後宮を持たぬ狼陛下の方がおかしいと誰もが首をひねっておる。
国の存続のためにも、王宮に後宮の存在はあるべきものなんじゃ。
かくいうわしも、歴代王の後宮管理人が正式な役職じゃが、…とほほ、狼陛下は後宮など無用とおっしゃる。おかげでワシは今じゃ毎日畑仕事じゃよ」

「その…後宮って、やっぱり?」
夕鈴は口にしながらなぜか赤面した。

何を想像したんじゃろ、と老子はキャと嬉しそうに悲鳴をあげた。
鬼面の夕鈴が回りこみ、肘鉄を食らわせた。
フーフーとお互い肩で息をして再び席に付く。

「もぉー、先行き短い老人に対して何するんじゃ、乱暴な…!(ブツブツ)
そう、後宮ってゆーのは、お前さんのご想像通り。
たーくさん、奥さんがいるのが、普通なんじゃ。国王陛下には」

「たーくさん?!」

「…それって、嫌じゃないんですか?
ヘーカ、それじゃ気が休まるときがないっていうか…」

「それも仕方がないじゃろ。後宮は陛下のお心を癒すための存在するものであるが、最も大切な存在意義は、国のため、お世継ぎを得ることじゃ。魔法を封じる退魔カボチャを世界から隔絶するは我らが魔法使い一族の宿命。それを束ねる王にはより強大な力を皆が求める。より魔力の強い子孫を残し、国を安定することも魔法使いの国に君臨する王の仕事じゃ。お前さんたち、人間にはちょいと理解できんことかもしれんがな…。
王が生まれながら備えた魔力の器を見極めるには、21歳がその節目。そういうしきたりなのじゃよ」

(…イヤ)と、夕鈴は思った。
だが、口には出せなかった。

(あの優しい人が、勝手にお嫁さんを沢山って。
愛してるわけでもなく、ただ、たくさんのお子を産ませるために…、大勢のお嫁さん?
って…お、お、お子?)

いくら奥手の夕鈴とはいえ、子どもが生まれてくる前の段階におぼろげながらも何事か必要であるということは想像できて、想像するとそれは結構刺激的な内容であった。

「いくらあの方が『妃は早い、今は国を立て直すのが優先だ』とおっしゃろうと今年ばかりは避けて通れまいて。
ま。じゃが、あの陛下のこと。たとえ評議会銀連合が相手でも負けはせんじゃろ。
なんといってもあの方は伝説のアングマールの魔王を凌ぐとまで言われる強大な魔法の使い手じゃからの! 
そりゃーもー、わしもあの方、怖く怖くて…!」

「――アング、マー…?」

「…まあ、とにかく。あの方は強く、厳しい御方じゃ。
お主は心配せんでも良い」

「でも――まだ、カボチャがないって。
私に探してほしいって…」
夕鈴は急に心配になってきた。

「まあ…それはそうじゃが」
老子は言葉を濁した。

「あと、9日しかないって?」

「なんとかするじゃろ。あの方なら。
――まあ、あまり心配せんことじゃ。
ああ、お茶でもいれようかの」

老子は茶を入れるために立ち上がった。

カチャカチャと隅っこから茶器をとりだした老子。
ヤカンに向けて指をパチンと慣らすと、ヤカンの注ぎ口からゆらりと湯気が立った。

老子が茶葉を入れた茶器を用意し、ヤカンを傾けると湯が出てきた。
夕鈴は今の今まで、魔法と言われても絵空事のように感じていたが
今まさに目の前で何事か起き、ピシッと背中を正して老子を指さした。

「…そ、それ。魔法ですか?」

「――ん?」
老子は何事かと眼を丸くして夕鈴の方を見返した。
夕鈴は震える指先で、ヤカンを指さす。

「今、お湯沸しませんでした? そのヤカンの…」

「あーお主、魔法を見るのは初めてかっ!」
老子は手で額をペシッと叩いて、舌を出した。

「いやー、いつもの調子で。
普段、人間の前ではやらんのじゃが。この魔法使いの里では周りは勝手知ったる魔法使いばかりじゃし、老人一人の小屋じゃから、火の用心でのう」

老子は茶器にフタをして蒸らす間、茶菓子を探しにゴソゴソとあちこちを掻きまぜていた。

「…魔法って、そうとう便利、ですね」
まだ半信半疑の夕鈴は、ジイィッと不審げに老子の手元を見つめたが、お湯はたしかに沸し立てで、老子と夕鈴の二人が小屋に来る前に準備などしておける様子もなかったし、タネ仕掛けもなさそうだった。

探し当てたせんべいを一枚早速出して、パリンと頬張る老子。
「ま、わし。これでも相当位が上の魔法使いじゃよ、エッヘン!」
老子本人の談には信憑性が低い気もしたが、老人のメンツのためにも今はそういうことにしておいてあげようと夕鈴は思った。

「陛下も、そういうことできるんですか?」

「…お前さん! なーに言っておるんじゃっ!
ヘーカはものスゴイ魔力の持ち主だぞ?
ヤカンの湯どころか、広いお風呂だって一瞬で沸されるぞい、きっと。多分。
いや見たことは無いんじゃが、やられたこともないかもしれんが、とにかくそれはもう、わしらの何倍もなーんばいもすごいんじゃ!」

何だかやっぱり胡散臭い。

お茶の入った茶器を夕鈴のほうへ差し出し、老子は少し寂しそうに言った。

「とにかく、あの方の魔力はすさまじすぎるのじゃ…。
桁違いの魔力は触れるものすべて、魔を帯びさせると
あの方は自分を戒めて人と人の間にまで距離をとられてしまわれる…」

「…距離?」

夕鈴は考え込んでしまった。
張老子の言う狼陛下と、実際の自分の中での印象で、へだたりを感じたのだった。


そんなことはない…。
あの優しい人はすぐに私にくっついて
小犬のように優しい顔で…

「――私はそんなよそよそしいとか思いませんでした。
この間も、わざわざ朝食を作って、食べさせてくれましたし」

夕鈴の言ったことに、老子はとても驚いた顔をした。

「なぬ?! 陛下の…料理? まさか――陛下の天空農園の…」

「オーブンで焼いた焼き芋と…厚切りのベーコンとソーセージと目玉焼き。
すごく簡単な料理だし、初めてだって言ってましたけど
すごく美味しかったです」

夕鈴は思い出しながら、味を思い出してちょっと幸せな気分になった。

「…そ、それでっ!!
お前さん、身体は大丈夫だったのか?」

真顔の老子のその気迫に、夕鈴はちょっぴり驚いた。
ガタンと机が傾き、お茶が零れた。
「あっお茶がっ!」
夕鈴はこぼれたお茶を拭こうと、ポケットからハンカチを取り出した。
ハンカチを出すときに、ポケットからポロリと何かが零れた。

「もうっ!! 老子ったら、お茶、熱いんですから
気を付けてくださいっ」
夕鈴が机を拭いている間、老子は夕鈴のポケットからこぼれた何かに気が付き、慌てて回り込んで床の上に落ちていたそれを、じいっと見つめた。

「…さっきの件じゃが。
お主、陛下の御手によるものを食べ、本当になんともなかったんか?」

「ええ、別に…」
夕鈴はけろりと答えた。

老子は慌てて傍にあった棚から小さな空の小瓶を素早く取ると、
床の上のものを手で触れない様にそっとビンの中に掬い取った。

「たしかに、お傍で過ごしたお主からは陛下の魔力は感じられん。その額の印のみと…不思議な感じはしていたのじゃが…。
――お主、今これを落したこれに、何か見覚えは?」

「…あ。それ!
つい、持ってきちゃいました」

「つい、持ってきた、とは?」

「昨日、左手の拳が開かなくて、それで、えーっと…たしか陛下に――



××!?」

夕鈴は唐突に今朝のやり取りを思い出し、またもや真っ赤になって噴火した。
夕鈴が一人でのたうつ様子をみて、何かあったと察し、
そのあたりツッコんで訊きたい老子ではあったが
今はこの物の正体が知ることが優先と「それで?」と続きの話を促した。

「――ととととととにかく、手が開いたら
中から出てきたんです、それが」

フムと考え込んで、老子はもう一度ビンの中身と夕鈴の顔を交互に見比べた。

「変なものですか? それ」

「…タネ、じゃ」

「え?」

「カボチャのタネ、じゃ――」



*

狼のーかの花嫁(12)

こんばんは~^^
続きます。

ぶっ飛んだ捏造とか、ダメな方は
早めに離脱下さいますよう…

あんなことやこんなことがあって
勢い余ってビル出(?)した夕鈴。

ひょんなことから
徐々にわかってきたこと、とは――。


復習は
狼のーかの花嫁 (1)~(11)
よろしければご覧ください(*´ω`*)


【現パラ】【ファンタジー】【いろんな人がいろんな役で横切ります】

* * * * * * *
狼のーかの花嫁(12)
* * * * * * *

夕鈴は道路を独りトボトボと歩いていた。
広大な農地を縦断する農道はよく整備されている。端に止まった軽トラが数台。
畑ではせっせと農作業中の人影が遠くにぽつんぽつんとみられた。
その他ほとんど通りがかる車もない。

夕鈴が陛下のためにカボチャを探したのはつい昨日のことだったのに、彼女の眼にはもうその時と違う景色のように映った。

(力になりたかったのに…悔しい)
夕鈴は、ただ彼を助けたくて必死だったはずなのに。

そもそも彼女は高給に目がくらみ、騙されるように狼陛下の偽の婚約者というバイトを引き受けさせられただけだった。
他を屈服させる眼光を放ち、誰からも怖れられる当主、珀黎翔。『狼陛下』と呼ばれるその人物が、実はとても優しい一面を持った人だった。
誰よりも強く、他者を圧倒する狼陛下というのはハッタリの演技と打ち明け、優し気な顔を曇らせて、彼は「10日後にひかえた21歳の収穫祭までに特別なカボチャを探してほしい」と彼女に願った。
陛下と呼ばれる人の意外な一面を見てしまった故の同情と言われれば、確かに夕鈴には小犬のような陛下を捨てておけない気がした。だがもう一方で、あの恐ろしい人に魅かれている自分もいて…複雑な感情に夕鈴は自分自身、戸惑っていた。

「く、く、口づけとか――人の気も知らないでっ!」
彼に寝台の上で口づけされた感触を思い出し、夕鈴はカーッと再び熱が上がり、ボフンと頭が噴火した。

狼陛下のことを、ちょっとでも『カッコいい』と思った自分が悔しい。

「へーかの、女ったらしっ!」

夕鈴は自分が彼に魅かれていたことを素直に認めたくなかった。
だからなおさら腹が立って仕方がない。

「カボチャをくれないとイタズラするよ、って。どういう気よ!
秘密を話すなら、やることやるとか言って、く、く、口づけとか…!!
私が何も知らないからって、馬鹿にして――!」

夕鈴は涙が出そうになったのを必死でこらえた。
「好きでもないくせに…口づけなんて―――」

それが悔しかった。

今なら分かる。
そう「あの人が好き」だと夕鈴は気が付いた。

だから、彼が好きなはずのない自分に対し、あのような行為をしたことが許せなかった。

「狼陛下は、演技上手…」

あの人は、狼陛下を演じているだけ。
妃を愛するふりが上手くて、優しくて。
与えられたその甘すぎる記憶に
まるで愛されていると勘違いしてしまいそうになる。

だけど本当は、縁談よけのバイト。
『誰でもよかったんですよ』と李順さんは言った。
いずれ『ふさわしい誰か』を妃に迎えるとも聞いた。
あの人のやさしさも、ぬくもりも、いずれ誰かのものになる。
私はただのバイトだから、いる間だけ、あの人のお役に立てればいい…。

「ひ、――ヒトを、からかって…!」

ほんのちょっとでも、あの人に魅かれた自分が馬鹿らしくなった。

(泣いたら敗け。からかわれた位で何よっ。
ウソつきの女っタラシのためになんか、私、絶対、泣かない――)

『帰ってやる、帰ってやる、もう帰ってやる――!
カボチャが無くて困るなら、困りなさいっ!!
どうせ私がいなくても、誰か美人で可愛い代わりの女性がすぐに来るに決まってる――』

「所詮、私じゃなくたって、あの人にとって、どうでもいいのよ。
だって、私はただの――バイトだから…」

彼女の目に、悔しさで涙がにじむ。
道もボンヤリして良く見えない。

「でも、私はほんとに心配していたのに。
私は陛下の見方ですよ、って言ったのに…」

その時、軽トラがトトトトトと通りがかって夕鈴の横を通り過ぎ、ブレーキを踏んで止まった。
張老人は、そのしわくちゃな小さな顔を軽トラの窓からにょっきり突き出した。
「…おや、お前さん。こんなとこで何しておるんじゃ!」

夕鈴は、自分が広い農場の真ん中で立ち往生していたことにハッと気が付いた。
溢れそうになっていた涙をグッと押し戻し、彼女は気丈に応えた。

「――帰るんです!」

張老子は天気の話でもするようにさりげなく返した。
「ほう、帰る?
…どこに」

「家です!」

「家。ふむ。…じゃあ、バイトは辞めるってことかの?
…お前さん。前借した給料は、どうする気じゃ?」

それを聞いて、夕鈴はビクリと動きを止めた。

「あ…。あの、――それは」
夕鈴は急に現実が襲ってきた。

このバイトの待遇はものすごく良い条件だった。
なのに、面接を受ける時点で、既に父岩圭に対し、先払いで一時金を渡したため、夕鈴はこのバイトを断ろうにも断れなかった経緯があった。

新たなバイトを探せばいい、でも…
可愛い弟、青慎の夏期講習の費用は、なんとかねん出してやらねば。
あの子の勉強にとって、今が一番大事な時期なのに…

でも、もし。このバイトを断って、違約金とか取られたらそれこそ元も子も――?

「――それは考えてませんでした」
あっさり夕鈴は敗北を認めた。

「まあ。それはさておき。
…茶でも飲みにこんか? わしの畑の小屋ならいつでも大歓迎じゃ」

ひょいと老子が降りて、車をぐるりと回ると、助手席のドアを開けていた。
促され、張老子の軽トラに同乗した夕鈴は、先ほどまでの勢いはどこへやら。
しょんぼりと座って老子の行く先に付いて行った。

車内にはポップスのような軽妙な曲が流れていた。
老子がラジオの音量つまみを指先でつまみ、ふんふーんと下手くそな鼻歌交じりに音を大きくする。
夕鈴にとって初めて聞く曲だったが無言よりは気が紛れた。

彼女が落ち着いたのを見計らってようやく老子が口を開いた。

「…どうじゃ? 上手くいっておらんのか」

「ええ、まあ」

「…にしては、お前さんをえらくお気に召した様じゃな、陛下は!」
うししし、といやらしい笑いをかみ殺し、老子は飄々と運転を続けた。

老子の方から、ときどき「ふん、ふ~ん」と調子っぱずれな鼻歌が流れる。
見るものが見れば、老子のあの寸足らずな短い手足でどうやって車を扱っているのか疑問もわいただろう。
だが夕鈴は車の免許も持っておらず、老子が運転している状況が不自然と感じる余裕もなかった。まさか老子の鼻歌そのものが運転魔法とも思わず、夕鈴は老子の隣に座っていた。

魔法使いである老子の眼には見える、夕鈴の額に輝く狼陛下の印。
長い直線道路に入ったところで、張老人はチラリチラリとそれに視線をやりながら、夕鈴に尋ねた。

「ところで、お前さん。
陛下と、もうチューしちゃったのかの?」
鼻歌の合間に、いきなり核心をズバリとつかれ、夕鈴は一瞬心臓が止まりそうなほどドキリとした。

カマをかけた途端、夕鈴は自分の唇を両手で覆った。

それをみて老子は察し、途端に顔を赤らめ「いや~わし、なーんも心配することなかった。ラブラブなんじゃな~」と言いながら自分もモジモジしながら「甘酸っぱいのぉ~」とか「ヒューヒュー」とかつぶやくものだから、夕鈴にとって…正直ちょっとウザかった。

ハンドルから離した両手を揉みしだきながら頬を染めた老子が夕鈴の方へ振り被る。

「で――実際、お前さん。どうなんじゃ?」

「ちょ、ちょっと! 前みて安全運転してくださいよっ!
ハンドルっ、ハンドル握ってください~っ!!」

夕鈴は老子を押し戻し、ちゃんと運転席に座るよう促した。

「…お堅いのう」
「固い柔らかいの話じゃありませんっ! 
事故でも起こしたらどーするんですかっ! その齢で大けがしたら大変ですよっ?
もうっ!」
夕鈴があまりにも真剣なものだから、
老子はブツブツ言いながらも真面目にハンドルを握ってみせた。

「ほれ、大丈夫じゃよ。わしは10年間無事故無違反のゴールド免許だから。
…だがなんじゃか、わし、ごまかされたような気分がするんじゃが?」

「ご、ごまかしてなんかっ」

「チューは、したんじゃろ? そのデコにある印が更に輝いておる。
お前さん、ヘーカとどこまで行ったんじゃ?」

「どっ、ドコ?! 印って」
腰を浮かして車のミラーを引っ張り、
自分の顔が見える位置にあわせると
必死で自分の顔を見ようと覗き込む。

だが人間の夕鈴には、自分の顔に何も変化など見えなかった。
ホッとしながら(老子にまで、からかわれたんだ」と夕鈴は思った。

さらには今朝、寝台の上で受けた彼からの口づけを思いだし、尚更真っ赤になった。

「お前さんの目にはみえなくても、わしにはみえる。
あの方はお前さんを守りたいんじゃろ。
あの方は強大な力をお持ちの特別の方じゃからな…。その額の印が何よりの証拠。
ふぅーーむ? 
…にしては、それ以外からはあのお方の魔力を感じないが――」

「…魔力?」

「…もう、お前さんも、気づいておるんじゃろ?」
老子は少し真面目な顔をして、ハンドルのその先を見つめていた。

『…魔法使い』だと、陛下は言った。あれが冗談なのか、本当なのか、それは夕鈴も混乱していて正直よく分からない。
(でも、彼は。私の耳に入れる必要がないことは一切話さないけど、嘘はつかない。
いつも狼陛下の演技しているから、せめて私の前だけは嘘つかないのが楽だというから…それを私も叶えたかった。
じゃあ、夜ホウキで空を飛んだのも、カボチャに食べられたのも、ヘーカが魔法使いの王様っていうのも、全部――?!)

夕鈴は考え込んでしまった。
そのうち軽トラの音の悪いラジオが聞くともなしに耳に入ってきた。
そのうちラジオの内容の違和感に夕鈴は気づき、耳をすましてラジオに聞き入った。

何故か、先ほどからラジオでは聞いたことのない音楽ばかりかけるし、
人を食ったような冗談めいた話や、時には聞いたことのない言語まで飛び出した。
そして、極め付けの情報コーナーの内容に、夕鈴はギクリとした。

「――このコーナーは、あなたのマジック・ナビゲーター、桃香ちゃんがお送りしまーす♪
さあて今週のパンプキン・トーク情報コーナー。
いよいよ9日間で、待ちに待った収穫祭ですね~。みんな準備は万端ですかー?

コンテストといえばカボチャ・コンテスト。みなさん、期日を守ってしっかりエントリーしてクダサイね♪ 
そして!『ミスター魔術師&ミス美魔女コンテスト』。
例年最高の盛り上がりを見せますよねー。
この後お知らせするけど今年のミス美魔女には豪華特典付きよ!
特典コースは年齢制限有りでクオリティも高い超難関だけど、
腕に覚えのある20代以下のヤング美魔女の皆様、
振るってエントリーしてくださいね!
それから今年の目玉情報。
今年はガチな祭祀儀式も見逃せないですよ。
そう、なんと、今年は歴史的な魔法比べが開催されるんです!
例年、王宮特別祭祀の儀式場で公開評議が開かれるのは皆も知っての通りよね。
でも今年は特別。
だってなんといっても狼陛下21歳の収穫祭ですもの! 
審査対象は、色つやよく、形よく、そしてとびっきり大きなカボチャ!
いったい狼陛下はどんなカボチャを見せて下さるのかしら! 
陛下お一人のお力と、選び抜かれた評議会議員連合メンバーの総合魔力。
果たしてどっちが格上か、今から桃香ドキドキしちゃう。

圧倒的な魔力を誇る狼陛下? 
それともやっぱり古株の練り上げられた魔力を結集した連合? 
ちなみに私のボスも評議会メンバーで参加するんで。
いやー桃香ちゃんもどっちを応援しようか思わず迷っちゃうんですけど~(笑)。

もちろん一対多だから毎回評議会連合が有利でしょうけど
狼陛下のお力はそれをもしのぐんじゃないかって評判も信憑性高いし。
今から白熱した魔カボチャ合戦にみんな期待も高まってるわよ。

そ、し、て♪
なんといっても今どきの魔女子が注目してる最大のポイント!

陛下が評議会議員連合に敗れた場合、
『ミス美魔女』コンテスト20代以下フルスペック部門の
上位入選・入賞者全員は、もれなく後宮入りの栄冠を手にするそうよ♪

家柄、魔力、美しさを兼ね備えた20代以下の皆様、
国中からふるってご応募下さいねー♪
ま、うちのお嬢様にかなう人はいないとおもうけど。
でも特典は上位入選、入賞の全員の大盤振る舞い! 
これは見逃せませんよ、是非エントリーしなきゃ。
だって、陛下。最高に強くてカッコいいものぉ。

最近一人婚約者をお迎えになったというけど、
今回の魔力比べの結果次第でみんなにもチャンスはあるってわけ! 
…かくいう私もお妃様の椅子ねらって頑張ってま~す。
って、お嬢様に叱られちゃうけど、てへ♪ 

どんなお妃様が迎えられるのかみんなウズウズしてますよねー。
そんなわけで、今年の収穫祭は話題性十分、
私もこれから毎日いろんな情報をお届けする予定デス、チェックしてね♪
エブリワン、エブリデイ!
パンプキン・トーク情報コーナーを明日もお楽しみに~っ♪

さ、次のリクエストは
『ケータ君@こんな名曲リクエストするとはオレ様はなんて偉大なんだ』さんから戴いた…」

唐突にラジオはスチャラカなメロディーに切り替わった。

いつの間にか、老子の鼻歌が止んでいた。
「…着いたぞい」

のほほんとした声に、夕鈴はハッとなってキョロキョロあたりを見回した。
軽トラは減速して道の脇に寄せて、張老人はギッとサイドブレーキを勢いよく引いた。
エンジンが止まったとたんにラジオもピタリと音が止んでしまった。
あたりがシーンと静まり返る。

夕鈴は老子の方を振り返り、襟元を掴んで引き寄せた。

「…張老子、このラジオ――?」
「ん? ああ…」
夕鈴はものすごく複雑で変な顔をしていた。

「…これって。もしかして、冗談じゃなくて?
ホントのラジオ放送なんですか?」

「んー…」
老子はケラケラと笑って、バシバシ夕鈴の肩を叩いた。


(つづく)


*

[日記]準備

こんばんは
ミニ・ゆーりん(スパコミのペーパー用)

5月3日(日)東京ビッグサイトでのスパコミが来週に近づきました
荷づくりを始めています。

お荷物に入れようと、ペーパーをかいております。

ちっこい紙なので、ゴミみたいなものですが
もしお立ち寄りされましたら貰っていただければ嬉しいです^^
ミニ・へーか(スパコミのペーパー用)

狼のーかの花嫁(11)

ご無沙汰でした、再開です。

狼のーかの花嫁(11)

ほぼ5か月間のブランクを経て連載再開、
長らくお休みをいただきありがとうございました。

ここまでのお話は… 狼のーかの花嫁 (1)~(10)
よろしければご覧ください(*´ω`*)





【現パラ】【ファンタジー】【微甘】

* * * * * * *
狼のーかの花嫁(11)
* * * * * * *

狼陛下の唯一の妃の部屋は白亜のビルの18階にあった。
天蓋につきの大きなベッドには白いレースをふんだんに用いたネグリジェを身にまとった夕鈴と、狼陛下。

寝台の上で二人はお互いを見つめ合って横になっていた。
覆いかぶさった黎翔を両手で押し上げるように必死で距離を取った夕鈴は、あまりのことに思考停止状態に陥っていた。

目が覚めたら、陛下とベッドで一緒に居て
昨晩はカボチャに食べられて意識を失った…らしい。
そして、
(…ファ、ファーストキス――)
夕鈴は真っ赤になって呆然として彼を見つめ返していた。


真っ白な敷布の上に横たわった夕鈴の金茶の髪が広がり、白い肌を朱に染める彼女を冷静に見下ろしながら、彼は寂しげに言った。


「僕はね。
…魔法使いの王様、なんだ」

そのとき、夕鈴の握り締められていた左こぶしは
それまで開こうとしても開かなかったはずなのに、
自然とゆるみ指の隙間から何か小さなものがポロリと寝台の敷布の上に零れ落ちた。

黎翔は、その零れ落ちたそれに一瞬だけチラリと目をやると、覚悟を決めたようにもう一度とても冷めた表情で彼女を見下ろした。

冷たい紅い瞳に――夕鈴は、思わずゾクリと震えた。

彼を押して二人の距離を取ろうと抵抗していた彼女の腕の両手首を
狼陛下は難なく捕らえる。
力で叶うわけはなかった。
夕鈴は寝台に縫いとめ、寝台に横たわった無抵抗の彼女に狼陛下は覆いかぶさり、
彼女にゆっくりとその端正な顔を近寄せた。

「覚悟もないのに踏み込めば、
痛い目に会う」

低い声で彼はつぶやくと、
動けない彼女にもう一度、ゆっくり口づけを落とした。

重ねて口づけを受けた彼女は
ファーストキスを奪われた上
「魔王」とか、痛い目に、とか――!?
夕鈴の瞳にみるみる涙が溜まる。

「うわああああああああんっ!!」
夕鈴はパニックを起こし、大きな声で泣き叫んだ。


「――!!!」
今の今まで狼だった陛下がさーっと青ざめた。

夕鈴にとっては「初めて」で…
余裕シャクシャクの陛下にとって、そんなのは「よくあること」かもしれない。
けど、自分にとっての「最初」を――
訳も分からぬ理由で、義務みたいに口づけされたくなかった。


「ご… ごめんっ!!」
狼陛下だった黎翔が、一気に青ざめ、小犬にもどった。

夕鈴は余りのショックに、あたり構わず手足をばたつかせ、手近にあった羽枕を探り当てるとそれを掴み、あたり構わず振り回し激しく抵抗をした。

「――で… 出ていってくださいっ!
バカ―っ!!!」

「ご、ごめっ!
今のはダメだった、ゴメン!」
小犬になった黎翔は青ざめた表情で、防戦一方。

「あっち行って~!!!」
夕鈴は大きな声で泣き叫び、陛下にむけてバシバシと枕をたたきつけて暴れた。

夕鈴の大声に、隣室で控えていた者たちがあわただしく動き始めた。
「陛下、お妃様、どうかなさいました――?」とパタパタと足音が近づく。

更に黎翔は慌てた。
「何でもない、お前たちは下がれ!」

暴れる夕鈴を避け、黎翔はどんどんと窓の方へと追いやられる。

「キライ、
狼陛下なんか
大っキライ!!」

夕鈴は叫ぶと、馬鹿力でグイグイと陛下をテラスの方へと押し出した。

ガチャリ、と大きなガラス戸を開く。
轟轟と風が吹き込み、白い瀟洒なカーテンがブワッと巻き上がる。

夕鈴は破れて、羽毛をまき散らす羽枕の残骸をブンブン振り回し、陛下をシッチャかめっちゃか打つと
「出てって!!」と叫び、
陛下を無理やり部屋の外に押し出すと、ぴしゃり、と扉を閉じてしまった。

夕鈴は涙がこぼれる瞳をギュッと閉じ
背中で戸を押し、体全身で彼を拒んだ。

大っ嫌い…

大っ嫌い――


黎翔は蒼白になった。
大っ嫌い、という彼女の叫びが黎翔の胸をえぐった。

「ゆーりん…」

妃の部屋を追いだされ、テラスに佇んでいた黎翔はしょぼんとうなだれ、18階の妃の部屋とテラスを挟んだ向かい側の自室にトボトボと帰って行った。


* * * * * * *

最高級の仕立てのビジネススーツに身を包んだ狼陛下は、真っ白なバラの大きな花束を抱えて立っていた。

白陽ローズガーデンという大温室で栽培された「唯一の花嫁」という名の新品種で、見事に咲き誇った白バラだった。
朝の出来事を反省し夕鈴が落ち着くころを見計らい、謝罪に彼女の部屋を訪れた黎翔。

コツコツ、とノックをして
中の様子をうかがう。

「…ごめん、ゆーりん」

返事はない。

もう一度ノックをし、ノブに手をかけると、鍵がかかっていない。
「ゆーりん、ほんと。朝はゴメン。
――入るね?」
黎翔が扉を開けて、恐る恐る室内を覗き込んだ。

部屋の中には人の気配がなく、誰もいなかった。




(つづく)


*

[日記] ぽっかり浮上 つぶやくだけですみません

こんばんは
お元気ですか?

久しぶりにあちこちめぐり
SNSの日記など更新してみました

電源いれて立ち上がったところで
…パソコンのアップデートがはじまってしまい、今までずいぶんと待機させられてしまいました

そろそろ、魔王様(のーか)の続きを
書きたいなあと思っています。

今まで書いていた5/3のスパコミ用新刊とずいぶんと世界観が違うので
ちょっと自分の中を放浪してリセットの必要もありそうです。

そして超多忙期は過ぎましたが、オールクリアーというわけでないので
体調優先でボチボチになるかと思います。

もわーっとなったら、一気に出力したほうが効率がよく、
そういうときに一気に書きたいのですが
何分、物理的な制約があってすみません


いきなりフッと長期休業に入ったりして
ご心配させてしまったらごめんなさい

特に他意があるわけではなく、致し方なくそういう状況に陥っていると
生暖かくやり過ごしていただければ幸いです。

生存反応がほとんどないように見えるときでも
コメントいただけるのはとても嬉しいです

ふつーの一言でも、
わざわざ書きこんでくださったんだ、とありがたく
とっても励みになります

お返事遅くなったり不義理ばかりしてすみません
本当に、ありがとうございます。


わー
ここまで!!

今回、パソコンの、アップデートが絡んで
タイムアップ~~(笑






* * * * * * * * * * * *
ここからは、本(新刊、既刊本)についての情報です。
ご興味なければスルーください。
* * * * * * * * * * * *


■スパコミの新刊「白の国」
今日、とらさんから新刊登録完了(予約開始)のお知らせメールが入りました
予約できるようになりましたm(_ _)m

■3月の新刊「秘密の苑・刺青の男」
現在、とらさんの残り極僅(数冊)で終了予定です。
私の手持ちもほとんどないためスパコミには持ってゆけなくてすみません。

■「てすさび」、「短編集」 <取り寄せ注文>
とらさんの「取り寄せ注文」4月25日~5月15日だそうです。


以上 失礼いたしました。




*












SS 建国記念のお祝い

今週のあれやこれやをのりきれば、
ほぼ日常が戻って…と思えば
ゴールデンウィークさんがどーんと横たわっております。

思えば、例年一息つけるのがこの時期で
読み専で静かに余生を送っていたのに
ちょっと暇ができた手すさびに
長いブランクを経て再び書きはじめちゃったが2年前のゴールデンウィーク前後でした

当時としては
書きたいお話を書き終わったら再び眠るんだろうなと思ってました。
流れ流れて今も首の皮一枚で残留している日々でございます

4月22日は某SNSの建国記念日。
狼陛下の花嫁という作品が大好きなひとたちの憩いの場をつくってくださった管理人さんと、そのおかげで出会えることができた皆様とのご縁に感謝を込めて。

某国某コミュ(本日までお祭り開催中)に、なんとか今日中に投稿せねば、と書いた作品をこちらにも連れてきました。

たあいのないお話ですが
宜しければどうぞ。


- - - - - - - -
建国記念のお祝い
- - - - - - - -
【両想い・ご成婚未満】


「今日は記念日ですね!」

目の前の愛しい妃が、キラキラした眼で私を見上げた。

「…記念日?」

(しまった!! まったく失念していたっ!!)

今日は何の…いったい、なんの記念日だと?

彼女と出会った日? 
いや、今日はバイト開始の日、じゃない。

初めて口づけをしたのは…?
あれは、『事故チューだからノーカンです!』と激しく否定されたっけ…じゃあ記念日にするようなものとは、違う。

じゃあ、手を握った日?
正直、最初から握りまくっていてわからん。

違う、もっと何か
彼女が喜ぶものだ。

では、――離宮に連れて行った
温泉記念日?

いや、そもそも季節が全く違うし

他に何か記念日になるような…
記念、記念…

――どうしよう、全く分からん。
私な何か大事な日を忘れていたのかもしれない。

「あー…
えっと、ゆーりん。今日ってなんのお祝いだっけ?」


「…やです、陛下ったら。忘れていらしたんですかっ?
ほんとに、こんなに大事な日をっ!!!」

なじるような口調に、ジトっとした目線。


「…あははは、ゴメン。ちょっと忙しくって。
普段スケジュールとか、李順任せだから。
日付感覚が飛んじゃったみたい」

小犬になって、彼女の背後から、スリスリとすり寄る。

腕の中にすっぽり納まった夕鈴は、くるりと私の方に向き直った。

「陛下っ! ダメじゃないですカッ!!
こんな大事な日を忘れるなんて――」

「ごめんっ!!」

説教を甘んじて受ける。
ショボーンと耳が垂れるばかりだ…

「ほんっっとに、ごめんっ!!!」
ぎゅむっと彼女を抱きしめた。

何かの記念日をたとえ忘れていたとしても、
一番大事なのは、彼女なのであって
とにかく彼女が大事なんだと、伝わればよい。
抱きしめて、裁きを待つ…


「…もう」
夕鈴は呆れたように小さなため息をつくと

背伸びをして、うなだれた私の頬に唇をよせ
チュッと小さく。
「建国記念日、です。
陛下。あなたの国が、出来た日、ですよ――。」

「…え?」

「陛下がこの国の王様で
この国を良くしてくれて
いつもありがとうございます…って
お礼を言いたかったんです!」


「…なんだ…!」
思わず腰が砕けそうだった。

普段夕鈴から積極的に愛情表現を形にしてくれることは少なく、
ましてや口づけなど――

「私がこの国のために頑張れるのは
――君がいるから、だが?」

「もうっ!」

夕鈴はぷっと頬を膨らませると
「そーゆー甘い狼陛下っぽいことは、今はいいですってば!
私、正直に自分の気持ちをあらわしたのに、
なんだか茶化されたような気がするじゃないですか」
とちょっぴり怒ったような口調で言い返した。

「――」

怒った彼女も可愛くて
私は思わず真顔になって、思わずゆっくりした低い声になっていた。

「では。
私の本音をそのまま言ってよいのか?」

狼陛下になった私に、少しビクリと緊張が走った夕鈴。
気丈にも挑むようにこたえた。

「どーぞ! ぞんぶんに!」

私はゆっくり彼女を引き寄せると、静かに話した。

「国は、人がいてこそ、国になる。
ここには君がいるから
私にとって
とても大切な国と成ったんだ――。

だから、
建国記念日を言祝ぐというのなら
君と一緒に居られることをまずは祝いたい」

もう、
彼女の返事を待つつもりはなかった。

ゆっくりと顎をとり、
私は彼女に口づけた。

(終わり)



*

脱稿!

終わりました
ね…眠いです…!

白の国サイドストーリーズ(部分アップ)

狼陛下の甘いの攻めっぷりが好きです
でも今回は冷たくて固いとこから、崩壊して、おろおろして、
それで最後 はしゃぎまくるヘイカなとこを書けてたのしかったです。

オムニバスというのか? 
陛下-柳-氾-陛下-夕鈴 な短編です。

第1話の「白い影」は、ブログにあげた短い短編です。
(※加筆修正をして収録)

ここからは、開放感で生じたつまらないつぶやき(たぶん本筋とはなれてる)

経倬さまのお話は、ノリノリで書きすすめましたが(内容はシリアス)
最後柳パパの切なさに書きながらホロリしてしまった…
齢を取りました。

氾家の史晴パパさんに何の楽器を持たせるか考えて
(結局そこはお茶を濁しちゃったんですけど)

陛下がオロオロするお話

そして夕鈴目線のお話
あわせて5話。

外伝的に隙間のサイドストーリー、いろいろ過去やら心障やら親子関係やらを捏造してますので
本誌添いパラレルということで自分の中では落とし前をつけておきました。

絵師さんではないので
ほんとに申し訳ないですが
さくっと一発勝負で描いて
表紙にしました

大好きな和柄のデジタルデータ素材集(市販本)
大判の本ひらくと、どこもかしこも美しい
いつも暇があるとうっとり見てる大御所じょーがんさんのを
今回もというか私浮気しませんみたいなかんじで
涼やかに美しい花を咲かせていただきました。
ありがとうございます。


3月4月はなにもかもいそがしかったですねーっ!
ハッと気が付いたら
4月ももう2/3が経過してしまっておりました

もうすぐGWですもの
なつもちかづくはちじゅうはちや、ほいほい。


寝る、今日はもう寝ます。

*

そのなんというか、現在進行形、修羅場です。

お久しぶりです。
新学期、いやーん、もう、忙しかったですね…。
あと一息ですよ。

さてブログではご無沙汰してしまっておりますが、
5月3日の東京のイベントに誘っていただき
1冊本を書き下ろしておりました。

こちらもあと一息です。

以下はお知らせ(宣伝)になりまので、
ご興味なければご容赦ください。















hyoshi-M.jpg


■タイトル 「白の国 サイドストーリーズ」
■A5判 48頁
■短編小説5本(9割が書下ろし)収録。
■イベント頒布価格:600円(予定) ※通販も予定

<イベント>
05/03(日・祝) 東京ビッグサイト SUPER COMIC CITY 24-1
【黄昏博物館&織座舎】西1ホール I(アイ)-51b

私は今回上京できなくて残念なのですが、
黄昏博物館さんの新刊や、既刊など各種取り揃えておりますので、
ゴールデンウィークでご来場の折には、ぜひお立ち寄りくださいませm(_ _)m
---
<内容>
本編『離婚編』あたりから「白」をモチーフに妄想を膨らませた外伝的サイドストーリー短編小説5篇のファンブック(個人誌)です。ブログ日記で公開した「白い影」(若干の加筆修正して収録)、柳家(経倬さま・義広さま)のお話し、氾大臣(史晴さま)のつぶやき、夕鈴と再会した陛下が悩みまくるお話し、夕鈴視点の微糖なお話しなど、それぞれの視点で書きおろしました。ほぼ9割書下ろしです。
本誌離婚編あたりから69話あたりまでの設定・ネタバレを含む、パラレルのお話しです。
王道設定、本誌沿い、全年齢向け。ちょっと暗めでうじうじ悩める陛下とか出てきますが最後はハッピーエンド。大いに虚構を含む点、ご了承の上お手に取っていただければ幸いです。

SS春の便り

お元気ですか?
久しぶりに朝ゆっくり寝て、久しぶりに夢を見ました。
案外スペクタクルな夢でした(笑





<業務連絡> ご不要な方は飛ばして下さい。
---------------------------
・とらさんのお取り寄せ販売(てすさびの)は明日3/31締切です。5月のスパコミにも若干、持ち込み予定。

・3月新刊の「秘密の苑・刺青の男」は残部あと少々。5月のスパコミ分はありませんので売り切れ御免です。




【69話ネタバレ妄想?】【他愛ないSS】
政務室と廊下。黎翔と名もなき官吏と浩大。
69話の設定を含みますので、念のためネタバレ表記。コミックス派の方はお気を付けてくださいませ。


* * * * * *
春の便り
* * * * * *


――春が来た。


政務室、といえば

年中冬の極北の地のごとく
常にブリザードが吹き荒れていたものだった。

とくに今年の冬はことのほか厳しく、
寒気の超大型低気圧が居座っていた。

「春も近いというのにこの寒さ。
政務室に配属された者は、特別に厚手の綿入りの胴衣を支給しないといけませんね。
…ったく、このモノ入りの時期に。
ですが、有能な者たちばかり。体を壊されてもいけませんし、流行り風邪をこじらせたら大変ですし」
李順がブツブツとそろばんをはじきながら算段をし、その予算を陛下に奏上していたのはつい先日だ。


その政務室に、――春!

* * * * * *


狼陛下の眼前に、重要な案件の文書を広げプレゼンをする若い官吏。

昨日までの勤務経験上、さんざん身に染みている。
裁定をくだされるこの世の終わりの審判のように、
この恐ろしさは何度経験しても慣れない。


端的に、簡潔に。
時間のない陛下の午前で、単語一つも吟味し、早すぎず、遅すぎず、
かまず、通る声で。人品、態度、物腰――総合的なプレゼン能力を試されるのだから、それは大変に緊張を強いられた。

「…フム、それで良かろう」


(え?いいんですか?)

あっさりと書類が通った官吏は、むしろあっけにとられ、どうしてよいのか分からずモジモジした。
以前なら決して妥協は見せず、必ず改善点の一つや二つは…

「――だが、この点とこの点には改善を…
…別の視点で方法を考えて見ろ」

(…来た!!)
涙がチョチョぎれる。

(そうだよな、そんなわけないよな
喜ばせて、突き落とされる、それが人生だよな…)

狼陛下は妥協はしない。
だがしかし、覇気に満ち鋭く明朗でありながら、いつになく優しく感じるのはなぜだろう。

思いもよらぬ角度からの賢作のアイデアまでスラスラと口にする。

(さっと目を通しただけで、どうしてそこまで!?)
――全く。舌を巻く。なんという賢君だろう。
改めて陛下の偉大さを知る若い官吏であった。

「――はっ! では直ちに見直してお目にかけます!!」

「再提出の期限は、明日で良い」


(…え?)

いつもなら「即刻」>「後で」>「遅くとも今日中だ」では――?

「ここまでまとめるにはさぞ苦労だったろう。お前の才能は高く買っている。少し休み、その上で明日までにさらに良くしてまいれ。時に休養は必要だ」


(…なんという
政務室に、春が…!!)

その瞬間、彼の脳内で白陽国に花の訪れを告げる花が咲いた。


* * * * * *

昨日までの重苦しい雰囲気はどこへやら。

国王の決済スピードはいつも以上にキレっ切れで速かった。

だが結果的に適度な休養を挟めるようになり、
官吏の勤務環境は大幅に改善し、作業効率もアップした。

いつものようにうず高くつまれた山のような案件をスラスラと滞りなく片づけ、
「今日はずいぶんと捗ったな。では少し私も休む」
と席を立つ陛下を、臣下たちは恭しく見送った。


今日の分の仕事は片づけた。
この後は自由時間だ――李順も文句は言うまい。

回廊を渡る足取りも軽い。

突然屋根からヒソと声が降ってわく。

「…陛下。なにニヤケてんの?」

「浩大か? ――何だ」
馬鹿を言え、ニヤケてなどおらん!
少々憤慨しつつも、ここで顔に出しては相手の思うつぼ
イジられるだけだ。


「お妃ちゃんが、檻中は殺風景だから、何か花の一輪でも活けられたらって呟いてたナ」


「…」

黎翔は耳に入ったそぶりも見せず、知らんふりで歩速を変えず回廊を歩き続けた。

だが、角を曲がるとき目に入った花群に欄干から手を伸ばし、一番大きく華やかに咲き誇る一輪を手折り袖に入れた。


「ヘーカ。顔がゆるんでタガが外れてるぞ」

「煩い!」

左袖から手刀が飛ぶ。

浩大はヒョイと交わしながら
「…あ、お妃ちゃん!」と小さく叫んだ。

黎翔は思わず満面の笑顔で振りむいてしまった。


「――なわけ、ないじゃん!
自分であんな檻に閉じ込めて、さ」


「…ば、馬鹿者っ!」


ちょっぴり動揺して歩幅が大きくなった黎翔を
クスクスと見送る隠密であった。



「春の便り、か――。
お妃ちゃん、よろこぶだろーなー」




(終わり)


*
検索フォーム
最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィール

おりざ

Author:おりざ
秘密の苑・刺青の男[織座舎]陛下の花園へようこそ。”狼陛下の花嫁”の二次創作作品を綴っています。足跡などお気軽に残していただければ嬉しいです。【新刊】秘密の苑・刺青の男パラレルアンソロジーパラレルアンソロジーとらさんで取扱。【お詫び】拍手コメ御礼お休み中です。本当に申し訳ありません。お返事ご希望分はコメント欄へm(_ _)m

アクセスカウンター
ただいまのご来訪数
現在の閲覧者数:
ありがとうございます
■(キリ番)カウンターでキリのよい番号に遭遇された方はお気軽にご一報ください^^

■オフ活動■ おりざの本[織座舎] 一覧 → こちら
陛下の花園へようこそ
~ご注意~
≪以下あらかじめご了承のうえ、本サイトをお楽しみください。≫

・原作者様ならびに出版社様とは一切関係ございません。
・此のブログは日々の日記並びに二次創作作品の倉庫、管理人本人の自由な自己表現の場です。
・この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件、史実などにはいっさい関係ありません。また原作と異なる設定など、表現、その他多数捏造あります。

・二次創作の場です。
・ブログ内容に関する苦情は受け付けておりません。出来る限り注意は払う意向ですが個人的表現の場という位置づけの運営上、万人に対して万全を保障するものではありません。
・読む際は各作品の冒頭の説明・ご注意等にてご判断ください。読後いかなる不都合が生じても当方はその責任を負いかねます。

・ご感想お待ちしております。

・当ブログ内の作品の著作権はブログ管理人に属し、無断コピー・無断転載は固く禁じます。
Twitter
 
RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。